バーサーカーの方のローラン 作:隣の家に晩飯凸する止まらないゴルシ
Ruina始めたらァ……ローランがかっこよすぎてェ……
プロローグ
人理漂白。突如としてカルデアに反旗を翻した、彼らクリプターは、異星の神との契約に基づき、人理を文字通り漂白した。地球に生き残った数少ない人類は、この一連の事件を解決せんとし、旅路の終着点へ――南極、旧カルデアへと航路をとっていた。
ノウム・カルデア。それが、今を征く最後の人類が集まった、人理保障機関の名だった。
その、最後のマスター、藤丸立香。彼は今、食堂へ向かっていた。
「あっ、ローラン!」
彼の視線の先にはローランが居る。だが、セイバーとしての―もっと言うならば、シャルルマーニュ十二勇士のローランではない。バーサーカーの、それも、
「おう、マスターか。これから食堂に?」
「うん、そういうローランも?」
「あぁ。サーヴァントってのは、飯を食わないでいいらしいが、どうもあのアーチャーの作るパジョンは美味いんだよなぁ……。」
他愛もない会話を交わしながら、食堂へと歩いてゆくと、そこには「来るのは分かっていた」と言わんとしているかのように、お目当ての品があった。勿論、ローランはそのパジョンを見ると、奪うようにしてパジョンの皿を持って席へ着いた。その速さは正に、神速と言っても疑いようのない速さであった事を、藤丸は当分の間覚えているだろう。
「ローラン。」
パジョンを貪る彼が、こちらを見て応える。「うん?」
「今、霊基はバーサーカーとして此処にいるけど、適正はアヴェンジャーの方が高いの?」
「あ~……そうだな。単純な戦闘力と、こう…精神的なスタミナで言うなら、アヴェンジャーの俺の方がベストだ。だけど……う~ん、あっちの俺は、バーサーカーよりバーサーカーしてるからなぁ。」
そういえば。ふと、藤丸は思う。
彼は、一体どんな人生を送ってきたのだろう。無論、マテリアルから、彼の英霊と成った経緯は知っている。だが、あれでは寧ろ、反英霊だ。
「……ローランってさ。」
「おう。」
「一体――」
どんな人生を送ってきたの、という問いは、聞きなれた警報に搔き消されてしまった。艦内放送は、マスターたる藤丸と、その目の前に居るローランを指名してきた。十中八九、特異点か何かだろう。
二人は目を合わせると、指令室へと走り出した。
Ep1.記憶
「来たな、二人共。早速だが、微小特異点が発見されたので、その対処を二人には頼む。」
ノウム・カルデアの所長、ゴルドルフ・ムジークはそう言うと、ふうと一段落着いた。
「今回の微小特異点は、正直放っておいてもすぐ消えるサイズだが、こういうのに限って、とんでもない厄ネタを抱え込んでいる。従って、慎重に動くこと!」
言ってしまえば、それはただの安全確認だ。だが、それを欠かさずわざわざ言うのは、やはりゴルドルフの持つ他者への思いやりなのだろう。そう考えると、藤丸はなんだか胸が温かくなるように思う。
「以上! 生きて帰ってこい、藤丸!」
その言葉と共に、ローランと藤丸はレイシフトを始めた。
降り立った場所は、どこか、酷い臭いのする、薄暗い路地だった。何か、乳製品の腐ったような―ともかく、酷い腐敗臭と鉄の臭い。これはー。
「血の臭い……?」
「……」
ローランは喋らない。どこか、焦っているような、何かに対する恐怖を抱えているような、そんな感じだった。
「ローラン。ここは―」
「ああ。ここは都市―の、裏路地だろうな」
都市か。彼のマテリアルで一度だけその記述を目にしたことがあった。曰く、都市は26の区域に分かれており、その一つ一つを、それぞれの企業が、「翼」として"担当"する、と。その裏路地、ということは、ここはその企業による自治の及ばぬ範囲――無法地帯と言って良いだろう。(厳密には一概にそうとも言えぬが)
「とりあえずは、移動するぞ、マスター。ずっと此処にいるのは―」
オススメしない、とローランが言い終える前に、ぞろぞろと辺りから何人かのチンピラが出てきた。ボロボロの服装に、小汚い肌。チンピラ、と藤丸が感じたのは、彼の価値観に照らし合わせた結果であって、実のところ、藤丸の眼前の彼らは、チンピラなどよりも、よっぽど裏稼業に慣れているし、そこらを行く一般人より、ある程度は強い。最も―。
「下がってろ、マスター。」
ローランより、はるかな格下である事は、藤丸にも分かった。
そこから行われたのは、語るに堪えない虐殺であった。いくつもの特異点と、7つの異聞帯を切除した藤丸も、多少なりとも、グロテスクな情景への耐性を持っているつもりであったが、なんだかこれはどうにも堪えた。
「ひとまず、ここがどこなのかを知りたいけど―。」
「L社。」
やっぱり、ローランは分かっていたようだった。彼は続けた。「より正確には、その跡地……みたいなとこだ。」
そこから、ローランによる都市の解説が始まった。
まず、先のとおり、都市は26に分かれており、その一つ一つで、翼と呼ばれる企業が自治を行う。そして、嘗てのL社と呼ばれる翼が担当していた地区にレイシフトしたようだった。現在のL社は"折れて"おり、そのアルファベットを冠する企業はまだいないらしい。
「で、あそこに見えるのは―」
「ああ。信じられないことに、図書館だな……俺の親友が、あそこで司書をやってるのさ。」
「図書館……こんな殺伐としたところで、図書館かぁ~。」
「ただの図書館じゃないぞ。まぁ色々あって、今は外郭……都市の外に放置されてるはずなんだが、ここにあるってコトは、どうも外に追いやられる前らしいな。」
あるいは、そういう特異点か。と、ローランは言ってから、遠くを―図書館を見つめた。藤丸は、それを止めなかった。
『お! どうやら、無事にレイシフトできたようだね、藤丸君!』
通信をつなげると、まず出てきたのは、ダヴィンチの、その一言だった。とりあえずの現状説明を終えると、ダヴィンチから、信じられない一言が飛んできた。
『藤丸君、いいかい。どうやら、その特異点では、サーヴァントの簡易召喚ができないらしい。』
「えっ!?」
『恐らく、その特異点において、我々の知る抑止力とは全く別の何かがある。それを排除しなければ、サーヴァントはそこに至れないんだろう。』
「でも――」
ローランは、此処にいる。バーサーカーの彼は此処にいるのだから、現にサーヴァントがレイシフトできている。
『ローラン、自分の身体に何か異常はないかい?』
「異常? ……そういや、受肉してるな…こりゃまた何でだ?」
『……どうやら、いつもとは勝手が違うようだね…もし、そちらでローランが死んだりすれば、カルデアの方で召喚されていた、サーヴァントとしてのローランの意識がどうなるのか、見当もつかない。できるだけ、いつも以上に注意を払ってくれ』
通信を切って、術式を試しに起動すると、辺りが青白く光るだけで、確かに簡易召喚が行えないことが分かった。こうなると、ローランとできるだけ一緒に行動するべきだろう。
「さて、どうしよう、ローラン。」
「ん、まずは資金の調達だな。なぁに、安心してくれ。俺たちがレイシフトしたこのタイミングが、俺が復讐鬼になる前なら……まぁ、資金は山ほどあるさ。てなわけで、ひとまず9区に行くぞ。」
ローランはそう言うと、藤丸の前を歩き出した。だが、前を行く彼の背は、妙に、憂わしさを感じさせた。