Memory of Debris【完結】   作:びこーず

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Memories01:異物

理想でお腹は膨れないし、理想で夜露は凌げない。

 

しかし理想は人を動かす。

彼らに食事を用意させ、豪華な邸宅を建てさせることができる。

 

『この場にいる奴で、女子供を縊り殺したことのあるやつは居ないんだろうねぇ』

 

ご立派なもんさ。シーマは心の中で吐き捨てつつ、艦隊司令としてキリリとした表情を作った。

ホールにはデラーズフリートの将官のみが集まっており、先ほどの報告による熱気が冷めやらぬようだった。

 

<核兵器搭載の試作モビルスーツを奪取せり>

 

全員がガトーの功績を称えながら盛んに情報交換をし、互いの艦隊・部隊の連携や協力関係を確認している。

 

『星の屑作戦』

 

彼らの悲願である戦争計画。シーマは詳細が分かり次第即座に売り払い、連邦に寝返る算段であった。

しかしそのために、彼女はこれ以上異物扱いされるわけにはいかなかった。

シーマ艦隊は毒ガスによる虐殺の実行犯であり、はっきり言って信頼されていない。

とにかくどこかで功績を上げ、作戦の詳細を手に入れる必要がある。

 

「シーマ中佐殿」

 

取り入れそうな将官を探していたシーマがふと視線を落とすと、小柄な青年男性が敬礼をしていた。

彼女は記憶の中から人物を特定すると、階級の低さに内心舌打ちした。

 

「ビィ中尉だったかい?坊やの大将はもう帰っちまったよ」

 

彼はガトーの部下では最も優秀なパイロットとして、シーマも記憶していた。

ガンダム奪還作戦でも護衛として随伴し、追撃してきたMSを単騎で撃退したと聞く。

ガトーの下でニコニコしている不気味な腰ぎんちゃく。シーマの感想はこの程度だった。

 

「はっ、本日は私的にお話をしたく、参上した次第です。まずはこちらを」

 

そう言ってビィはシーマに一冊のバインダーを開いて差し出してきた。

その表紙にシーマは絶句し、常に持っている扇子を取り落としそうになった。

 

『星の屑作戦実行における分析結果』

 

シーマはバインダーを受け取り、すぐさま閉じてビィを睨みつけた。

 

「どういうことだい?ビィ中尉」

 

罠ではないのか、十分あり得る話だとシーマは考えた。

ガトーは常々こちらを疑っており、真偽を確かめるために手を打ってきた可能性。

であれば書類を即座にデラーズへ持ち込み、偽りなく報告すべきだ。

 

「小官の目的はデラーズフリートに属しながら、機を見てシーマ様の艦隊に匿っていただくことです」

 

同じことを考えていたのか、それともこちらの思惑に合わせようと見せかける嘘か。

シーマは扇子をパチリと閉じると、廊下へ踵を返した。

 

「ついてきな中尉。ウチの艦内で話を聞こうじゃないか」

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