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核の光が収まるにつれて、目を覆いたくなるような惨状が広がっていた。
観艦式の艦隊はほぼ全滅と判定してよい状態な上、爆発の余波で通信不能に陥っていた。
混乱する宙域に、最初に到着したのは<バーミンガム>であった。
レーザー通信から発光信号、信号弾。統制艦としてあらゆる手段を使い呼びかけた。
『バーミンガムが指揮を引き継ぐ。連邦軍は仲間を見捨てない』
<バーミンガム>は救助作業を指揮しながら、広い艦内を開放して病院船としても機能した。
さらに残存艦艇から各1名を集合させ、緊急の会議を行った。
「諸君、見ての通り状況は最悪と言っていい」
艦隊の40%を喪失。コロニーの強奪と月への落下コース変針。
全員の憎しみを込めた視線が、ワイアットの隣に立つ男に突き刺さる。
「デラーズの一党は演説然り、今回の暴挙しかり、完全に狂信者だ。だからこそ理性のある敵が今回我々に情報を持って投降してきた」
戦傷生々しい歪な顔をした男は深々と全員に頭を下げた。
「ゲール・ハント元ジオン軍中佐であります。現在デラーズフリートに潜入しているシーマ艦隊と共に、本作戦を阻止するべく粉骨砕身努めます」
「諸君らが彼らに憎しみを抱くのは当然だ。しかしここで強く確認しておく。我らのなすべきことは何か。いみじくも故コリニー提督が演説された通り、この世界の蹂躙を止めるのだ。争いを治めるために我らの力はあるのだ。多少はいがみ合っても良いし、取っ組み合いも結構だ。思考を止めずに見定めるように」
その後は月を経由して地球へ向けられるコロニー阻止に向けて、あわただしく作戦が練られるのだった。
その席で2度の殴り合いと数えきれない罵りあいを経て、ゲールは一部の信頼を得ることに成功した。
コロニーへの毒ガス注入に関する真相をワイアットが説明したことも大きかった。
解散した後の部屋で、ワイアットは顔を腫らしたゲールを見て笑った。
「益々男を上げたな、ゲール」
「ひょろ腰の間抜けばかりかと思ってましたがね、案外いい拳してやがる。これならこっちも信用してやろうって気持ちにはなりますね」
「相互理解が深まったようで何よりだよ。私にはその方法が理解できんがね」
しばしの沈黙の中で、ワイアットはこれからの行動を頭に描く。
策は巡らせた。しかし戦場はそれだけではないことも理解している。
「うまくいくだろうか」
ぽつりとこぼれた言葉に、ゲールは即答した。
「普段なら“どうせこの世は一天地六”と言うんですが。俺の惚れた女が本気なんだ。今回ばかりは勝ちますぜ」
攻撃地点から撤収したガトー艦隊は全く追撃を受けることなく、本隊へ合流した。
デラーズとガトーの艦隊は後方から移動しているコロニーとシーマ艦隊を待ち、コロニーを護衛しながら移動する予定だった。
ガトーは合流と同時にデラーズに戦果を報告したが、想定より少ないことと、強固な防衛線についてデラーズは眉間にしわを寄せる。
「戦果に関しては想定を下回るが十分と考える。ただ、なぜ戦艦が守備をしていたのか」
「事前に情報が漏れていた可能性があります。そのうえで政治的内紛の結果、あえて全軍に知らせていなかったのでは」
「……シーマか?」
デラーズは出立時の様子がどうも腑に落ちていなかった。
ガトーはシーマ自体に嫌悪感があり、同意したかったが否定材料を思い出す。
「本作戦の全容は中佐には伝えておりません。知っているのは閣下と私、後は我々の側近のみです」
微妙な沈黙の中、自分の信じる部下たちへ向きそうな疑惑を抑えるため、問題を先送りにした。
「もうじきシーマが報告に戻る。それとビィ中尉の記録を突き合わせるとしよう」
その後まもなく、シーマ艦隊とアクシズ先遣艦隊が同時に合流した。
彼らの背後には巨大なコロニーがゆっくりと回っていた。
「おい、なんだよあの光……嘘だろ」
<アルビオン>に届いた映像を見ながら、キースは一歩下がった。
クルーは静まり返り、自分たちの結果を突き付けられた。
2号機追跡は失敗した。ガトーの核攻撃を防げなかった。
「やりおったな、馬鹿者が」
シナプスの絞り出すような怨嗟の声。
しかしただ一人無言で見つめるパイロットがいた。
飛び去る2号機を、その向こうのガトーをドロリと睨みつける。
「3号機が要る。待っていろ、お前ら全員皆殺しだ」