Memory of Debris【完結】   作:びこーず

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Memories12:感情

宙域図のホログラムが浮かぶ中、赤と青のコマが並んでいる。

巨大な海図を睨むのはデラーズ、シーマ、ガトー、そして参謀や側近だけだ。

<グワデン>の作戦室では、計画と現実のすり合わせが始まっていた。

 

「なぜ敵は追ってこない!」

 

デラーズは盤面に手をついて怒鳴った。その直後に我に返って咳ばらいをした。

間を埋めるようにガトーが考察する。

 

「我々は月へのコロニー落としを示唆しました。その上で追手や迎撃が無いのは“月を見捨てた”、“迎撃の秘密兵器がある”もしくは“月に落とされることが無いと確信している”のいずれかでしょう」

 

二人が向けている視線を素知らぬ顔で受け流しつつシーマはさらに整理していく。

 

「いずれにせよ確実なのは、我々と同等以上の戦力が待ち受けていること、コロニーに対する策があるだろうということです。つまり作戦の正否そのものが怪しくなってきています。閣下、その上で月軌道到着までに決断が必要かと」

 

すでに到着まで3時間もない。

デラーズにとっては業腹だが、シーマの言うことは正論だ。

仮に全作戦が筒抜けであれば月と地球を結ぶ線上には連邦艦隊が待ち構えている。

そして観艦式と月での異常が情報漏洩の可能性を濃くしている。

 

ガトーはシーマこそが内通者であると感じていた。

コロニー奪取における報告はビィと同様のものだったので信用したが、その際のビィの発言が気にかかった。

 

『シーマ中佐はアナハイムから特別なMSを受け取っていました』

 

シーマを初めから疑っていたガトーは、デラーズに進言し、彼女に対して作戦は秘匿していた。

そのためアナハイムへの交渉もシーマとは別の人間が行っていたのだ。

アナハイムからシーマへ作戦が伝わっていたとしたら。

そこまで推理しながらも、ガトーは行動に出られなかった。

現状でシーマ艦隊と事を構えれば作戦どころではない。

 

 

 

それぞれの思惑が沈黙の下でぶつかっている。ここでガトーの側近が通信機を下ろしながら割り込んできた。

 

「失礼いたします。月面宙域よりこちらへ接近する不明機1。民間周波数でケリィ・レズナー元大尉と名乗り、ガトー閣下の艦隊へ合流を求めています」

 

ガトーは今までの推理が吹き飛んだ。そして珍しく興奮した様子で側近に振り返る。

 

「なに!ケリィ・レズナー大尉、来てくれたか!」

 

ガトーは表情も明るく、デラーズとシーマにその合流者を紹介した。

ケリィは片腕をなくしたパイロットで、自分の戦友だと。

その技量と精神を褒めるガトーはわずかに早口で饒舌だった。

 

昔の戦友と再び轡を並べる喜び。デラーズはここで決断した。

 

「作戦を続行する。このまま逃げ帰っては、ジオン戦士の生者と死者双方に合わせる顔が無い。なにより……」

 

デラーズは、自身の心を鼓舞するために強調して言い放った。

 

現にコロニーはあるのだ!と。

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