Memory of Debris【完結】   作:びこーず

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Memories15:敵中

両軍の戦端は消極的な形で開かれた。

コロニーと共に前進するジオン艦隊に対し、連邦艦隊はその長射程を活かし、後退しながら一方的に砲撃していた。

先行させた戦闘機隊による弾着観測射撃により、砲撃は驚異的な速度でデラーズ艦隊へ収束し始めた。

 

「第3射、夾叉!」

 

「よし、一斉射に切り替え、MS接近まで撃ちまくれ。司令、さすがに艦隊戦では我が方に利がありますな」

 

「その通りだ艦長。しかしその得意分野が十全に機能しておらん。そのうち接近戦になるだろう。MSは展開済みか」

 

頷く艦長を満足げに見ながら、ワイアットは戦場を俯瞰した。

得意の艦隊戦で敵戦力の大半を揉みつぶす予定だったが、シーマ艦隊を避けている関係でペースが遅い。

早々に接近戦に持ち込まなくては間に合わないが、MSの戦闘では互角に持ち込まれる可能性がある。

 

「そろそろ敵にも動きがあるだろう。全軍即時後退を準備しておけ」

 

「後退、でありますか。紳士としては情けない限りですな」

 

分かり切った皮肉を飛ばす艦長に、ワイアットはカップで口を隠した。

そしてガトー艦隊の位置にある、解析済みのデコイ風船を睨みつけた。

 

「敵の策を受け流し、そこから一気に逆撃をかける。諸君、忙しくなるぞ」

 

 

 

 

「やはりだ。連邦の腰抜けめ、多勢で引き撃ちとは。よほどシーマを当てにしているな」

 

全速で回り込みながら、ガトーは初めて搭乗するノイエ・ジールの推力に驚いていた。

巨体故のすさまじい推進力、多彩な武装、Iフィールドによる強力な防御機能。

一人で扱うには荷が重い代物でありながら、ガトーはすでに感覚をつかみつつあった。

 

「少佐、興奮しているのは俺も同じだ。しかし奇襲だ。冷静に行こうぜ」

 

後方を追尾できるヴァル・ヴァロも、化け物のようなスペックを持っている。

それを個人で修理したケリィ大尉の執念。ガトーは目頭が熱くなるのをこらえ、冷静に敵を睨んだ。

 

「もう間もなく接近戦だろう。頃合いだと思うが、大尉」

 

「同意するよ少佐。はは、俺は戻ってこれたんだな」

 

「泣かせてくれるな大尉。部下が見ている」

 

参ろうか。

 

満足げに発した声と共に、2機は戦場に駆けだした。懐かしい風が二人を通り抜けた。

 

 

 

 

最初に感知したのは最右翼の連邦軍巡洋艦<マドラス>だった。

この艦は観艦式の攻撃から辛うじて生き残った幸運艦で、生き残ったクルーは復讐に燃えていた。

艦長もコリニー提督の写真をブリッジに置き、弔い合戦であると公言していた。

 

「アンノウン2、反応強い!右舷天頂方向より急速接近!」

 

「ワハハ、教科書通りで拍子抜けだな!機雷に嬲られながら砲撃の洗礼を浴びてろ。撃て撃て撃て!」

 

<マドラス>は主砲を上下に撃ち分け、敵を機雷原に誘い込んだ。

しかし敵は教科書通りではなかった。

後方の敵機が発射した大型ミサイル。それは一筋の糸を引きながら、巡洋艦の脇を掠めた。

 

「教科書通り過ぎて逆に警戒しちまうぜ!」

 

直後の爆発、<ヴァルヴァロ>と<マドラス>の間に真珠のネックレスが現れた。

光の連鎖は機雷を誘爆させ、ガトー達の花道を作り上げる。

 

「見せてもらうぞ!貴様らの覚悟の程を!」

 

爆圧の余波から回復した<マドラス>にとって、2機はすでに至近だった。

慌てて主砲を放つも、先頭のMAの前に霞のように消えてしまった。

<マドラス>の艦長は即座に確信し、後方へ無線を開いた。

 

『こちら<マドラス>!側面の敵はビグザム同様、ビームが効かない!ビームを使うな!』

 

繰り返そうとするが、その無線は<マドラス>撃沈と共に掻き消えた。

通りすがりに<ノイエ・ジール>のサーベルを振りぬいただけ。

それだけで巡洋艦が横一文字に裂けたのだ。

前面のMSを蹴散らしながら、ガトーは笑った。

 

「他愛ない。鎧袖一触とはこのことか」

 

「しかしIフィールドがバレた。少し回避を強いられるだろうが、扱えそうか?」

 

「君がいるのだ、無茶はせずとも済むだろう?」

 

ケリィは笑いながら、自分が驚くほど高揚しているのがわかった。

やはり戦場こそ居場所である。自分は戦いたいのだ。

 

その時、ジャンク屋の隅で悲しい顔をしていた彼女を思い出し、彼は踏みとどまった。

戦場は狂気に満ちており、吞まれるのは一瞬の出来事。

 

 

 

 

そして狂気は唐突に姿を現す。

 

『死ねよやぁ!!!』

 

短距離無線のオープンチャンネルに、ガトーが聞いたことのある声が響いた。

とっさに飛び退った残像を太い光線が貫いていき、ガトーは戦慄する。

 

天頂から我儘な美女が、バズーカの花を咲かせながら飛び降りて来た。

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