『その声、忘れはしない!』
バズーカを捨てながら、機体下部のアームから光が伸びる。
ガトーはすぐさまサーベルで切り返す。
ビームがはじける閃光、そしてすれ違う白い巨体。
その後から弾速の遅いバズーカの雨が降り注いだ。
ノイエ・ジールは横へローリングしながら躱すも、ヴァル・ヴァロは小回りが利かなかった。
「ちぃい!」
翼端からスパークを発する機体を立て直しながら、ケリィは高速ですれ違った機体を確認した。
「MAにガンダムが乗ってる!」
遥か彼方でスラスターの切り返す光が見えた。ガトーとケリィはすぐに加速し、連邦艦隊のただ中へ突っ込んだ。
あのMAの巨大さを見るに、味方に配慮した取り回しは難しい武装ばかりに違いない。
逆にこちらはどこを撃ってもいいのだ。
「少佐!あいつそのまま突っ込んで、ってなにい!?」
遠方から狙撃してくると踏んでいたケリィは目を疑った。追撃してくるMAは迷うことなく武装コンテナを開いたのだ。
打ち出された弾体はミサイルでも弾丸でもない。ロックオンすらされなかった。
つまり広域を薙ぎ払う武装。
次の瞬間、大量の白い帯が蜘蛛の巣のように一面をはい回った。
小型ミサイルに簡易的な追尾機能があるとしても、敵味方の識別はしない。
たちまち敵の無線は阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。
『ミサイルだ!回避しろ、回避ぃ!』
『味方だ!撃つな!』
当然ガトーたちにもミサイルの雨が降り注ぐ。
しかし回避をしようにも周囲が敵艦や残骸で溢れており、衝突の危険は大きい。
「大尉合わせろ!抜け出すぞ」
ノイエ・ジールの各砲門で残骸漂う一点に射撃をしながら、その穴へ飛び込む。
ヴァル・ヴァロも続こうとするが、制御スラスターの一部を吹き飛ばされており、若干遅れる。
ミサイルを避けるために2機とも全速で残骸に突っ込んでいった。
「うおお!くそったれ!」
ノイエ・ジールは残骸の衝突で脚部のプロペラントタンクが破損。投棄を強いられた。
さらにサブジェネレータを積んだ肩のユニットが損傷。1基のジェネレータが停止した。
ヴァル・ヴァロはより被害が大きく、機体を庇って片方のアームクローがなくなってしまった。
推進スラスターもいくつか損傷しており、全力での機動はほぼ不可能となった。
そして白い悪魔はヴァル・ヴァロの後方に迫りつつあった。
ガトーはケリィを庇うために振り返ったが、速度差から距離が開いており飛び込むには遠い。
「大尉!回避!」
ガトーは叫びながらメガ粒子砲を撃ち込んだ。しかし敵に届いたはずの光線は瞬く間に掻き消える。
同じフィールド持ち、ガトーは武装選択の誤りに愕然とした。
白い悪魔の角のような砲がヴァル・ヴァロを至近に捉えた。
突如白いMAに火花が散り、機体が大きく傾いた。
そして味方の無線がガトーたちの耳に届く。
『ビィ中尉、援護します!』
『イザベラ少尉、参ります!』
ヴァル・ヴァロの前に濃紺の高機動型ザクⅡが、対艦ライフルの排莢をしながら躍り出る。
そしてゼロ・ジ・アールがMAに牽制のビームを撒き散らし、距離を取らせる。
ガトーは胸の熱を抑えながら、ビィに怒鳴った。
「馬鹿者!お前たちは」
「カリウス先輩達に追い出されました!余裕だからお前たちは散歩でもしてろと!」
感動に浸る間もなく、敵MAは旋回をしながら再度突入してくる。
ケリィは4機の状況を判断し、越権行為をすることにした。
「少佐とイザベラ少尉は先に行け、あの化け物は俺とビィ中尉が引き受ける」
ガトーはケリィと行きたかった。しかしヴァル・ヴァロの損傷をみて言葉が詰まる。
ビィのザクⅡは打撃力にかけるし打たれ弱い。
濃密な弾幕に飛び込んで荒らすには、イザベラと組む方がいい。
「すまん!少尉、行くぞ!」
ガトーとイザベラは再び中央を目指して飛び去っていく。
ケリィは自身の役回りが終わりつつあることに満足していた。
もはや長期の戦闘には耐えられない。しかしあの化け物に食らいつけるのは自分しかいない。
片腕に力が入る。
『見ろ!俺は片腕でも立派に使命を全うし、戦場にいる。俺はまだ戦える!』
「ビィ、奴を止めれば仕留められるな」
「大尉殿の考えはわかりますが、それでは……」
「中尉、俺は楽しいんだ。楽しみの邪魔はせんでほしいな」
ビィは納得したように白いMAに向き直る。
ケリィは動力のリミッターを外した。
「さぁ即席のバディだ、行こうか相棒!」
「You got it buudy!」