Memory of Debris【完結】   作:びこーず

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Memories17:混乱

敵味方不明のMA出現により、<バーミンガム>のブリッジは情報整理に追われていた。

 

「大型MA2機が突っ込んでくる!各隊近接防御態勢!」

 

「なぜ試作3号機がいるんだ!?どこが許可を出した!」

 

そこに一本の通信が、試作3号機があるはずのラビアンローズからもたらされた。

ワイアットは一読して頭を抱え、即座に<アルビオン>へ通信を開いた。

 

「シナプス大佐、今回も強奪されました、では済まないぞ。今となっては2号機の強奪に協力していたのではないかと疑っているほどだ。それとも何かね、ガンダムは強奪される呪いにでもかかっているのかね」

 

「はっ、すべては私の責任です。この上はウラキ少尉の暴走を止めるべく、<アルビオン>を発進させ……」

 

「今の話を聞いていたのかね。もういい、貴官は絶対に動くな。武装を解除してラビアンローズの一室から出るな。試作3号機はこちらで破壊する」

 

苦々しい顔をしているモニターを殴りつけ、通信を切ったワイアットはため息をついた。

そのまま疲れた様子でラビアンローズに駐留する部隊に<アルビオン>クルーの拘束を命じた。

 

「ここまで状況を理解しない艦長などあり得るのか。戦争の狂気というやつは本当に厄介なものだ」

 

そう独り言を残し、参謀長に命じた。

 

「試作3号機の識別を敵とせよ。あと、もうしばらくで状況が動くので、作戦通りに準備せよ」

 

 

 

 

「化け物じみた推力だな、3回躱しても全く衰えない」

 

「ただ小さいミサイルはカンバンみたいですね、ビームライフルを撃ってきます」

 

「よし!此処は一番、覚悟を決めないとな」

 

軽口を叩いているが、ケリィは敵を見切っているわけではない。

そこで座席の脇から注射器を取り出し、迷いなく体に突き立てた。

一年戦争からの骨とう品だが、効果は高い。すぐさま心臓がうなりだす。

高G環境で揺らされた頭が冴えわたり、敵が遅く見えた。

 

 

コウ・ウラキは好奇心や向上心の強い、本来視野の広い少年だ。

しかし度重なる失敗と、それが原因としか思えない<アルビオン>の解任。

クルーとの衝突を経て、怨恨の根は彼の視界を覆ってしまった。

ある女性エンジニアの協力で3号機を強奪してから、彼は吹っ切れた。

 

「貴様らがいなければ!俺の日常は!!」

 

正面に濃紺のザクが見えた。自分に屈辱を与えた存在と重なる。

ウラキはスロットルを開き、トリガーを引いた。

しかし敵は巧みに回避し、当たらない。画面いっぱいに映るように感じた瞬間。衝撃。

 

下から突撃したヴァル・ヴァロのクローがデンドロビウムのボディに突き刺さる。

ウラキはサーベルを向けようとするが、そのアームごとクローが挟んでいた。

 

「もらったぁ!」

 

ヴァル・ヴァロの大型メガ粒子砲のカバーが開き、ケリィは勝利を確信した。

放たれた光線が白いMAを貫き、爆発。ヴァル・ヴァロはとっさに腕をパージして距離を取った。

 

「やった、俺はガンダムを……」

 

続く言葉は声にならなかった。ノイズの走るモニターの奥で、ガンダムがライフルをこちらに向けていた。

ケリィは理解した。白い巨体と合体、分離ができるガンダム。

 

「ハッ、どんな手品だよ」

 

もはや指一本動かない。しかしケリィは未だに勝利を確信していた。

瞬時にガンダムの首が両断され、飛び上がった影は、真上からコクピットを打ち抜いた。

火花を上げて宇宙をさまようガンダム。そして重々しいボルトアクションを行う紺色のザク。

 

 

ケリィは眩しい気持ちで満たされながら、ぼんやりモニターを見ている。

そこにザクのモノアイが点滅し、ケリィにモールス信号を送ってきた。

 

・-・ ・・ ・--・

R.I.P.(安らかに眠れ)

・-・ ・・ ・--・

 

「お疲れ様。ケリィ大尉」

 

死霊がまた一人、戦士を連れ去った。

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