Memory of Debris【完結】   作:びこーず

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Memories04:寄り道

ビィの機体を収容したシーマ艦隊は、移送中のコロニー奪取のために本隊と別れた。

無線も届かない距離になった段階で、ビィはデトローフやシーマに自身の機体の投棄と自爆処理を願い出た。

 

「確かに少佐の目や耳が付いてるだろうし、奪取作戦時のせいにすれば処分はできる。けど良いのかい?」

 

「問題ありません。代わりに予備機体を回していただけませんか」

 

デトローフは頭の倉庫を整理し、ハンガー奥に放置状態のMSを思い出した。

 

「1機あるにはあるが、ありゃ骨董品のザクだ。一応整備してるから動くがな、本当に一応だ」

 

ビィが武装やオプションをいくつか尋ねて、デトローフは首をかしげながら正直に答える。

脚部ランチャー、クラッカー、ヒートサーベル、ザクマシンガン。

一番デトローフを困惑させたのは、MSの塗料と地上降下用パラシュートだった。

ビィが満足そうに頷いていることに、シーマは訳あり少年兵の一端を察した。

 

「これだけあればガンダムにだって勝てます!」

 

「正規のゲルググを捨ててオンボロザクとゲテモノ装備に飛びつく、ガトーの護衛はさぞ面倒だったろうね」

 

正面切っての戦闘において、MSの性能や武装は勝敗を大きく左右する。

その差をひっくり返す方法は、もちろん正面で戦わないことだ。

偽装、奇襲、陽動、攪乱。泥臭い戦い方に慣れている証左。

反対に、ガトーは教科書通りの延長線で実力のあるパイロットだ。

ビィは苦笑いで答えると、カスタムの要求をまとめて整備班長の下へ去っていった。

 

「シーマ様、あの坊主は使えますかい」

 

シーマは自身の仮説を組み立てていたが、ふっと笑い扇子を開いた。

 

「分からないね、まぁ一回戦わせてみればはっきりするだろうさ。その前に一仕事だよ」

 

 

 

旗艦<リリー・マルレーン>は目的の進路を大きく外れた宙域に到着し、信号弾を打ち上げた。

この信号弾を敵が見ているとも限らない。クルーは今までの振る舞いが嘘のように、整然と行動を開始した。

ビィは早速機体を外部のカタパルトに移動させる。

 

「ビィ中尉、発艦します」

 

地味な濃紺のザクが打ち出され、スラスターを短く使い飛び上がった。

遠目でザクの機体は宇宙の闇に溶け込み、味方ですら視認が難しい。

燃料を節約し、慣性を最大に生かす隠密の機動癖。シーマは自身の推論にほぼ確信を得ていた。

 

「まぁ生き残るだろう。さて、こっちの方はどうだろうねぇ」

 

漆黒の宇宙に返答の信号弾が確認され、奥から白い戦艦が現れた。

連邦軍の威信と慢心を具現化したような艦隊の司令塔<バーミンガム>は、打ち合わせをしていたシーマ側のクルーにとっても威圧感を感じさせる。

シーマは『星の屑作戦』計画書のコピーを持ちながらシャトルで戦艦に近づいた。

 

「裏取引の交渉にそんな目立つ艦で来るところが、あの大将らしくて不安になるよ」

 

 

 

 

『艦長、接近する艦艇を捕捉。指示を』

最初の捕捉はビィから<リリー・マルレーン>にもたらされた。

電波など、逆探知されやすい方法ではなく、手短なレーザー信号にデトローフは頷く。

 

『逆方向へ遅滞戦闘。深追い無用』

ビィのザクは返信代わりにスラスターを一瞬だけ光らせ、闇に消えていった。

敵味方の識別は関係ない。この現場は誰にも見せるわけにはいかないのだから。

 

 

 

「コウ、なんか白いのが見えるぜ」

 

キースはジムキャノンの最大望遠で、接近してくる白い何かを凝視する。

コウはジムキャノンの向きを確認し、フルバーニアンでも物体を捉える。

宇宙を慣性で漂っている白い布。

コウ達は、それが地上降下用のパラシュートであることは理解したが、意味は分からなかった。

 

「熱源は、あるがMSほど強くない」

 

「とりあえず撃っとくか」

 

画像認識でロックオンをかけるキースを、コウは押しとどめた。

これまでに接敵した経験から、発砲して場所を知らせてしまう可能性を考える。

コウは通信を開き、母艦である<アルビオン>に指示を求めた。

 

『哨戒中に接近する微弱な熱源、排除のために発砲してもよろしいでしょうか』

 

キースも自然と意識をコウに向けた。

その瞬間、ジムキャノンのコックピットに熱源接近の警報が鳴った。

視界一杯に広がる白に、背後からの熱源。

 

「つーかまえた」

 

振動と轟音が左右に響いた。

一気に警報が増え、両腕のリンクが切断されたことを叫んでいたが、キースはパニックに陥り確認できない。

 

「うわぁ!!」

 

コウはキースの絶叫で振り返ると、彼は死霊を見た。

両腕を切断されたジムキャノンの後ろ、腰に腕を回し、魂を連れていく存在。

 

「それじゃあ、楽しんで逝きましょうねー」

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