キヴォトス召喚〜捻れて歪んだ先の分岐点〜 作:熱核戦争先生
忘れがたき故郷
中央暦1659年
1639年の国土転移現象から20年の時が経った。
新世界に国土ごと転移した地球を代表する超大国“日本帝国”は地球の常識が通じない、この世界で数々の国家間戦争や文化の軋轢を乗り越え順応し新世界においても軍事的・政治的・経済的な面で確固たる地位を築いていた。
新世界の多くの国家が古の魔法帝国の復活に恐れ来るべき日に備え軍備拡張路線に突入していた。
古の魔法帝国との戦争の音が着実と近づく中、2月4日の日が登り始める頃小笠原諸島から東に1000km離れた海域で非常に強力な青白い発光色が発生。
発光色は遠く離れた神聖ミリシアル帝国の港湾都市カルトアルパスでも確認された。
同時に日本列島、ロデニウス大陸、フィルアデス大陸、アルタラス島において大規模な通信障害が発生。
これらの地域は日本が主導とする大東洋経済共栄圏の勢力下で日本製電子機器や経済システムなどが広く普及していた事もあり、通信インフラはもちろんのこと軍事・政治・経済・産業・交通・金融・医療などの分野で影響が出ており復旧に1日を要した。
2月8日、一連の事件を受け日本帝国政府では閣僚や専門家による対策会議が開かれ現内閣総理大臣の伊野直也をはじめ各中央省庁の大臣や長官、民間からは帝国大学の教授などが参加。
対策会議で判明した事は発光色は国土転移現象ではあり、発光源たる海域に大陸か島が転移してきたことである。
しかし発光色に関しては日本が転移した時の太陽のような黄金色でもなければ古の魔法帝国が復活する時の暗黒色のどちらでもないと言うこと。
これらの報告を受け日本帝国政府は高高度戦略無人偵察機と偵察衛星による海域偵察を実施。
偵察機と偵察衛星がもたらした画像は帝国政府首脳部に激震が走った。
そこには一生会う事はないだろうと諦めていた欧州大陸の姿があったからだ。
名将ハンニバル・バルカ率いるカルタゴ軍が超えたアルプス山脈、欧州の火薬庫と呼ばれたバルカン半島、世界に大帝国の名を轟かせたイギリスのグレート・ブリテン島などの姿も確認できた。
地上には高層ビルと思わしき人工物や工業地帯や農業地帯も確認でき人が居住している事も明らかになったが、転移前の欧州の衛星地図と見比べたところ今回の欧州とは明らかな差異があった。
転移から20年も経っており差異があるのは予想していたが、ベルギーのフランデレ地域には推定200から700mの超高層ビルが無数に建ち並ぶメガロポリスを形成し、オランダが近未来的な街並みとなっており、ポーランドの一部地域が砂漠化し、イタリアが京都を彷彿させるような古都になっていればフランスがフィクションに登場する中華街を彷彿させる街並みになっているなど20年と言う時間でここまで差異が出るには常軌を逸していた。
だが新世界と旧世界とで流れている時間には大きな差があり、10000年前の種族間連合と魔王軍との戦争に、90年前の大東亜戦争末期の旧大日本皇國軍部隊が召喚され戦争に介入している前例もあり証明されている。
今回転移してきた欧州も同様に旧世界の方でも時間が経っているのだろう。
不可解な点は幾つかあるが、直接現地に行って現地住民との接触を試み真相を明らかにすべく日本帝国政府は外交団の派遣を決定。
2月11日、外交団を乗せた帝国海軍第2艦隊所属の艦艇10隻からなる欧州大陸派遣艦隊が神奈川県の横須賀海軍基地から出航した。