キヴォトス召喚〜捻れて歪んだ先の分岐点〜 作:熱核戦争先生
この作品は今のところそういう要素はないか抑えてるし
作品の方向性もコミカル路線は辞めるかってほぼ決まっちゃってるし
ムー・ミ帝・グ帝etc「「そんな御託より私達の出番は?」」
D.U.鐘崎港
D.U.唯一の海の玄関口にして、キヴォトス最大の港湾拠点である鐘崎港。
周辺には、飲食店や屋台が無数に割拠する“ラミニタウン”、美術館があり芸術の街として形成されているプラドアベニュー、電機商店街のコーギータウンなどの商業エリアもあり、商業・観光都市としての側面も持ち、鐘崎港に勤務する港湾職員の生活を支えている。
先の全人工衛星のロストによる海上での遭難事故を防ぐために、ヴァルキューレ海警局によって保護先導され、鐘崎港に収容できなかった多くの船が沖合に停泊していた。
カイザーPMCの満載排水量40000トン級強襲揚陸艦“アクラメイター”、キヴォトスの軍需企業であるKAZEYAMAの物流部門から独立した子会社のKAZEYAMA.L.C.の弾薬輸送船、百鬼夜行発の長距離フェリー“ええでるわいす”、タコさん海賊団のフリゲート“ピンク・ハインド”など、合法非合法問わず大小様々だ。
その周辺には、ヴァルキューレ海警局のD.U.駐留の第2警備艦隊と大エイギル学園の戦艦が共同で海上治安活動をしていた。
交易船“ヘルメス”
ブリッジ
オデュッセイア海洋高等学校商船部に所属するヘルメスは、沖合いに停泊していた。
既に日を跨ぎ、ブリッジには当直要員の生徒がいるのみだ。
「陸が目の前にあるのに、なんで半舷上陸できないのさ!!」
通信科2年生の薄雪トオルが、じたんだを踏みながら悔しがっていた。
「仕方ないよ。連邦生徒会からは混乱が収束するまでは不要不急の半舷上陸は自粛しろってキツく言われてるんだから」
航海科2年生の大広ネムも肩を竦めていた。
ヘルメスは、水産加工部の練物フライ、ツナ缶、カニ缶などの水産加工品を、キヴォトス本土に輸送する定期船として、鐘崎港に来ていた。
キヴォトス本土でしか手に入らない貴重な嗜好品やスイーツ、最新の電化製品や銃火器などの物品を積み替えして船団に戻る予定で、その間に鐘崎港周辺で半舷上陸する予定だったが、先の騒動により混乱収束までの間、積み替え作業から半舷上陸は出来ない状態に陥っていた。
「別に、積み替え作業できなくても半舷上陸ぐらいできるのに、連邦生徒会はお堅すぎるんだよ」
「上陸して面倒なトラブル起こされたくないんだよ。ここ最近のモモッターやクロノスの報道を見てると、D.U.のヴァルキューレ本校と分校が生活安全局まで動員して一斉出動してるらしいし」
ネムはスマホを取り出し、モモッターの画面を開く。
タイムラインには、D.U.各地にヴァルキューレ生が警備についている写真、三つ編みのツインテをした生活安全局の生徒がおんぶや抱っこされ、両脇に子供達と手を繋ぎながら避難誘導している写真、長距離トラックの運転手が海峡大橋のインターチェンジで正義実現委員会に通行禁止と停められ納入先に怒られると言う愚痴の投稿などが流れていた。
「あっ、ラミニタウンが全店舗休業してるって」
彼女は自身のスマホに表示されているラミニタウンの公式ホームページのお知らせをトオルに見せた、
「今頃は、ラミニタウンでアイデルマイスの“生クリームカスタードパイケーキ”を食べて、鐘崎港限定の港湾作業ペロロ様のぬいぐるみを買ってたのに〜!!」
彼女の止まらない愚痴にネムが眼鏡を外した。
トオルも、しつこすぎてキレたとのだと思い身構えたが...
「うぅ...グスン」
泣いてしまった。
あまりの予想外なことに目を丸くしていた
「私だって...8時開店してから10時で完売する...“こだわりバターのズッシリケーキ♪”をホールごと買いたかったのに...」
「おぉ〜同志よ〜」
彼女達は元々予定していた半舷上陸ができないストレスに晒されていた。
オデュッセイア海洋高等学校は、船団での行動が基本で一度出航してしまえば一年以上は陸に戻れない。
商船部のような、陸に上がる必要がある部活はオデュッセイアでは人気の部活であり、競争倍率が高い部活となっている。
商船部以外にも陸に上がることができる部活は、養殖研究部、漁業部、飛行艇部、クルーズ運営部、アイランドの一部業務などである。
「うぅ...いっそうのこと殺してくれー!」
トオルはウィングに出て、力いっぱい大声で叫び、静寂が支配する海原に声が木霊した。
しばらく夜風にあたりながら、何も無い空間を見ていた。
「...ん?前方からなにか来てる?」
異変に察知したトオルは双眼鏡を手に、異変があった方向を凝視する。
「なんだ、海警局の警備艦か」
双眼鏡にはシラトリ分校所属の海警局第203警備分隊旗艦“ワダツミ”の姿があった。
「人騒がせだな...って、後ろになんかいる?」
だが、ワダツミの後ろに、黒い影らしきものもが朧気ながら見えた。
ワダツミが近づくにつれその影も相対的に大きくなっていき、しまいにはワダツミがただの小舟に見えてしまう程の大きさにまで迫っていた。
「船?にしても大きいな」
鐘崎港から発されるサーチライトでその全容が明らかになった。
そこには巨大な3連装砲2基が真正面を捉え、ビルのように高い艦上構造物が聳えだっていた。
誰が見ても分かるように、それは戦艦だった。
突如として現れた戦艦に、沖合で停泊していたヘルメス以外の艦船の乗組員もその存在を認識し騒然となっていた。
海警局第2警備艦隊総旗艦“インドミタブル”
大型警備艦インドミタブルの学級委員長“五階堂アキコ”は、ワダツミが連れてきた“獲物”に卒倒しかけていた。
「ヒ、ヒエェェェェ!!
カイザーPMC強襲揚陸艦“アクラメイター”
アクラメイターの艦橋ウィングでは、突如として現れた戦艦に海兵は戦慄していた。
「なんだあの戦艦、データにはないぞ!?」
「ど、どうするんだ?艦長に指示を仰ぐか?」
「伍長、艦長を叩き起してこい!」
KAZEYAMA.L.C弾薬輸送船
他とは違いブリッジでは、お祭り騒ぎとなっており、当直以外の寝ている乗組員を叩き起こすために船内放送の音をMAXにしていた。
「おい、カメラ持ってこい、カメラ!」
「あのデカい大砲でウチの
「開発の奴ら、試験標的があれだったら喜ぶぞ!」
大エイギル学園戦艦アンドロメダ
アンドロメダの航海艦橋では、アンドロメダ学級委員長の山南シュランが対空用高角双眼鏡に釘付けになっていた。
「嘘でしょ...なんてデカイんだ化け物め!」
「白々しい。どこかで聞いたセリフ」
「昨日見た映画のセリフだね」
他の生徒からツッコまれながらもシュランの顔は満足気だった。
「トオル!なんか、あのデカブツが現れてから、無線がうるさいよ!」
ブリッジの通信機からは、突如現れた戦艦に関して色んな船の無線が右往左往に飛び交い混線していた。
「船長に知らせないと!内線内線!」
トオルは備え付けの内線で船長室に連絡をする。
「船長?寝てるところごめん。今外が大変なことになってるの!来てもらった方が早いからブリッジに来て!」
ネムはマジマジと謎の戦艦を見て、あることに気づく。
「あの戦艦は、本当にキヴォトスの物なの?」
謎の戦艦は、目の前にいるエイギルの戦艦とはどこか違いがあった。
約100年前までは、オデュッセイア、トリニティ、ゲヘナ、最盛期のアビドス、百鬼夜行、レッドウィンターなど多くの学園が大艦巨砲主義を掲げ、戦艦の建艦競争が苛烈化していたが、建造コストや維持コスト、運用する人員の多さなどの理由により、エイギルを除き戦艦は記念艦や予備役、スクラップなどで一線を離れ廃れた。
そんな多くの学園にとって無用の長物であり、それでも維持しているエイギルを時代遅れの学園と見るほどに、戦艦の存在意義がほとんどないのが今のキヴォトスの共通認識だ。
だが、目の前の戦艦はそうには見えなかった。
現代的な艦上構造物に、
更に重量バランスを整え重心を一定にするアルデバラン・スロープと呼ばれる特徴的な船型構造もあった。
まるで、常に戦い続け、洗練し、生物のように進化し続け得たようだ。
その上で、まだ進化し続けている
「レヴィアタン...か」
謎の戦艦はゆったりと重厚感を出しながら鐘崎港へ堂々と入港した。