キヴォトス召喚〜捻れて歪んだ先の分岐点〜 作:熱核戦争先生
サンクトゥムタワー
会談会場となっている会議室には、リン、アユム、モモカ、アオイ、カヤなどの各室長と先生が待っていた。
「リンちゃん、見て!大きい飛行機が飛んでるよ!エンジンいっぱい付いてるよ!」
先生は高度をギリギリまで落としてD.U.上空を旋回している戦略爆撃飛行艇“シンホウ”を子供のようにはしゃぎながら見ていた。
「先生、落ち着いてください」
リンは先生のはしゃぎように注意しつつどこか微笑ましいと感じていた
「飛行機なんて空港にいけば腐るほど見れるのに」
アオイは不服そうな顔をしながら、シンホウを忌々しく見ていた。
「あっ、気を悪くしてたら、ごめんね」
先生は、シンホウ派遣に関して連邦生徒会内で一悶着があったのを知っていたため、慌ててアオイに謝っていた。
「いつまで引きずってるのさ。結果的に、今のD.U.の犯罪発生率は驚異の0パーセントなんだよ?」
モモカは、いつもはどこかしらで起きてる銃撃戦が、今日に限って1発も響いてない事に、シンホウ様々だと感じていた。
「結果的に見たらそうね。でも、そんなに相手の提案をホイホイ呑んでたら、いつか取り返しがつかないかもしれないのを理解してる?」
「そ、そんな大袈裟な」
モモカは困り顔をしていた。
「最初こそ、利害が一致する提案を持ちかける。徐々に主導権を握り、相手に有利な条件へとエスカレートしていき、結果的にこちらが損する結果になる。今回の提案も、治安悪化とヴァルキューレの対応力の限界という、私達の痛いところに付け込んで爆撃機を派遣し、治安を正常化させる...まさにそれよ」
アオイの言い分は過激だと思ったリンは、彼女に注意をした。
「アオイ、貴女の言いたいことは理解します。しかし、相手は先生と同じヘイローを持たない人達です。彼ら彼女らにとって、ここは死地。そんな死地に生身一つ覚悟を決めて、私達との会談を挑もうとしてるのですから、言葉は慎んでください」
「危険を承知だなんて、ビジネスの世界では常に付き物。相手がヘイロー持たない人間で死んでも、代わりは幾らでもいるわ。貴女も、同じ*1へーべの学生ならビジネスの基本ぐらい習ってるわよね?」
一触即発の中、先生は事態を収拾しようとした。
「アオイ」
「何かしら?先生も私に何か言いたいの?」
「財務室長として、組織の利益やリスクを天秤にかけてる君の視点は正しい。君がここまで強く最後まで反対してるのは、大切な居場所や仲間を守りたいからだよね」
先生からも咎められると思い身構えていたアオイにとって、この言葉は拍子抜けだ。
「でも、そんな血生臭い損得勘定を、君のような生徒にまで背負わせたくはないな」
「確かに、冷酷で無慈悲な世界に足を踏み入れるのは、組織を守るために間違ってないかもしれない」
「その反面、何か大切なものを忘れてしまうかもしれない...私は君が早くからそんな風にって欲しくないんだ」
先生は一呼吸置いてまっすぐアオイの目を見て話す。
「だから、その汚れた天秤をかけるような役割は、今は
先生は彼女の肩に手を置き、教師として、大人として、責任を負う者として安心させるように微笑んだ。
サンクトゥムタワー前ロータリー
小原達を乗せた車列はサンクトゥムタワーのロータリー前に止まる。
サンクトゥムタワー警備担当のヴァルキューレ生が整列し彼女達を迎え入れていた。
広々とした玄関中央からは、連邦生徒会の制服を着た金髪クラウンブレイドの生徒が小原達の前まで来た。
「初めまして、日本帝国の皆さん。連邦生徒会次席行政官の浅瀧トウコです」
「外務省大東洋局の小原来乃実です。以後お見知りおきを」
小原とトウコは互いに握手をした。
「では、会談会場まで案内します。僕に付いてきてください」
「小原さん、我々はどうしましょう?」
護衛の水兵が自分たちも付いて行くべきかどうかの指示を仰いでいた。
「護衛の方は2名まででしたら、同行は可能です」
「では、隊長は同行お願いします。残りの1人はそちらの采配で決めてもらって構いません」
トウコに連れられ、エレベーターに乗り込んだ。
「港からでも見えてましたけど、このビル高いですね」
「本当にね...東京エアロポリスより高いんじゃないかしら?」
小原達の疑問の声を聞いたトウコが代わりに解説をした。
「失礼。サンクトゥムタワーは、浮遊部分も含めて高さは22万mあります。そのうち1350mまでの階層は業務階層で、ここに連邦生徒会の中枢機能が集約しています」
22万mと言う高さに小原達は絶句していた。
世界最大の電波塔である東京大電波塔が867m、異世界転移後に完成した世界最大の超高層ビル“東京エアロポリス”が1380mのそれより遥かに高いのだ。
サンクトゥムタワーより高いとされる、帝国の高層建築物は現状、構想段階の大陸間軌道エレベーターの
「ちょっと待ってください。残りの約21万mは浮いてるのですか!?帝国の土木建築技術で見ると、浮遊してい部分だけでも数十億トンはありそうですよ?」
「建築には明るくありませんが、僕が知ってる範囲でお出しできる情報としては、浮遊方法は強力な反重力となっています。その階層部分は制御権が集約している、ほとんどが無人エリアなので中身はがらんどう。重さに関しては、ミレニアムの量子測定器によって、浮遊部分の重量は約8000万トンという分析結果が出ています」
小原達は耳打ちをしながら話す。
「反重力...これは魅力的ですよ。ミリシアルが供与を渋ってる純正浮遊魔法の代替案になり得ますよ」
純正浮遊魔法は、先の大戦でアニュンリールが戦線投入したボラルリア級空中魔導巡洋艦...要は空中戦艦パル・キマイラ本来の性能を出す同系列艦が搭載していた浮遊魔法を、ミリシアルがリバースエンジニアリングした物だ。
本来の性能を引き出したこともあってか、日本もパル・キマイラの存在を把握してから提唱された、“空中艦隊構想”本格的導入への道が開き、純正浮遊魔法の供与を何度か打診していたが、その度にはぐらかせたりして出し渋られていた。
技術形態がほぼ同じで、こちらと互換性があり複雑な
江口に続き他の職員も続けて言う。
「それだけじゃないです。素材分野はもちろんのこと、量子関連技術に関しては帝国の喫緊の問題であった科学技術停滞を打破する事も...!」
小原はまさか、自分達が外交交渉する相手が日本帝国を救う重要な存在である事に武者震いをした。
「確かに、国防総省と科学技術省は取っ付きそうね。これは責任重大な国家繁栄と存亡に関わる。良い結果を持って帰らなくちゃね」
ポーン
エレベーターは会場がある階層に着いたことを教え扉が開いた。
階層を表示する電光掲示板には、「第485業務階層986階」と表示されていた
ここにも警備が付いており、ヴァルキューレ生ではなく連邦生徒会の制服と水色のベレー帽を被った直属警備部隊だった。
トウコに付いていき、ある部屋の前に止まった。
《第12大会議室》
ここに、会談する相手相手が待っていることを感じた。
「いよいよですね」
「えぇ」
小原達は落ち着きを払い、軽く身だしなみを整える。
トウコがノックし、「どうぞ」と返ってきた
「では、皆さん。良い結果が持って帰れるよう、頑張ってください」
トウコからの励ましの言葉を貰い部屋に入った。
登場したへーべとはオリジナル学園です。
へーべ総合学園と呼ばれているキヴォトスの中高一貫校でトリニティと同じお嬢様学園。
主に政治・経済・経営を重点的に学ぶ学園で、歴代連邦生徒会長や連邦生徒会幹部と言った中枢部に関わる生徒さんの多くがこの学園出身者で、影響力に関しても三大学園に匹敵し無視できない学園です。
主な部活動としてはミクロスクール部、帝王学研究部、経営実践部、商店部、監察委員会、吹奏楽部などがあります。