キヴォトス召喚〜捻れて歪んだ先の分岐点〜 作:熱核戦争先生
ネームドキャラと日本帝国との会談回です。
サンクトゥムタワー第12会議室
会議室には、リン達連邦生徒会高官と小原達日本帝国外務省職員が机を挟んで相対していた。
まず、連邦生徒会側が紹介に入る。
「日本帝国の皆様方、はじめまして。遠くはるばる“学園都市キヴォトス”へようこそ。私は連邦生徒会長代行兼首席行政官の七神リンです」
リンはクマやニキビをコンシーラで隠し、血色の良いチークでメイクをした顔でにこやかに歓迎する。
「日本帝国外務省大東洋局の小原来乃美です。当外交団の団長を務めています。本日は会えて光栄です、七神リンさん」
小原もリンの歓迎の意を返すように挨拶をする。
「外務省の江口蘭兵衛です。七神行政官の、早速で申し訳ないのですが、連邦生徒会長代行兼首席行政官とはどう言った役職なのでしょうか?」
「そうですね、恐らく聞いた事もない長ったらしい役職名を言われても分からないのは当然ですね。連邦生徒会長はキヴォトスの代表です。現在、連邦生徒会長は失踪しており、今は首席行政官である私が生徒会長の代行を務めています」
「連邦生徒会長...我が国で言う内閣総理大臣と言った所でしょうか、その役職者が現在失踪中と?」
江口は、「あれ、ひょっとして政情が不安定な勢力と交渉してる?」と感じ不安を覚えた。
「それは...心中お察しします」
小原は自分より歳下の未成年者なだけあってか、労いの言葉をかけていた。
「ありがとうございます...それでは本題に入りましょう」
リンは会話を早々にして、本題に入った。
「小原さん達がキヴォトスへ来訪した理由についてですが、詳細な理由を教えてくれませんでしょうか?」
リンは、日本帝国と接触した際に現場からもたらされた情報の精査をするために詳細な理由を聞こうとした。
「もちろんです。時は遡ること、約1週間前にキヴォトスがある海域から強力な青白い発光現象を確認したところから始まります。先の現象があった海域に、偵察衛星や無人偵察機で確認した所、大陸が転移していたことが判明。その大陸こそが今いるキヴォトスです」
小原は、比較用として日本列島とロデニウス大陸も含めた現在の海域の写真とキヴォトス転移前の写真を出す。
そこには確かに、何も無かった海域にキヴォトスがあった。
「なるほど...こうして実物で見ると実感できました」
「財務室の扇喜アオイよ。その写真が本物と言う確証はあるのかしら?」
アオイは、レッドウィンターに精巧な捏造写真を作る技術を持ってることを知ってるため、小原が出した写真もその技術を使って写真を捏造した可能性もあると見て追求した。
「扇喜室長が疑いにかかるのは無理もありません。しかし、これは紛れもない事実です。私達はあくまで本当の事を述べてるに過ぎません。それに貴女方に対して嘘をつくメリットもありません」
小原の目は嘘をついてる訳でもなく真剣な眼差しにこの事実を述べていた。
少なくとも、今の時点では嘘をついてないことだけはわかった。
「そう...確かに嘘をついてるようには見えないわね。ごめんさない」
「いえいえ、最初は誰もこんな事象は信じきれませんよ」
「防衛室の不知火カヤです。日本帝国とキヴォトスが転移した世界について詳細なお話を聞かせて欲しいのですが」
カヤは、この転移した世界がどれほど危険なのか、それとも安全なのかを知りたがっていた。
「不知火室長でよろしいですね?日本帝国とこの世界について、纏めた資料をお配りします。それを拝見してください」
1人の外務省職員が出した全員分の資料をリン達に渡す。
「では口頭で説明いたします。日本帝国は、国土面積688000k㎡、総人口2億5千万人の四方が海に囲まれた日本列島を主とする海洋国家です」
紙をめくる音が室内に響く。
「交通室の由良木モモカだけどさ、東京の人口のケタ間違ってない?D.U.の人口より多いけど?」
「いえ、その人口の数値はそれで正しいです。
「いや、簡単に落ち着いてるとは言ってるけど、それでも十分多すぎるよ...」
モモカは交通室の幹部なだけあって、最盛期の人口と安定期の人口の鉄道等の混雑率を想像し背中に変な冷や汗をかいていた。
「続いて、キヴォトスが転移し世界についてです。惑星の大きさに関しては、我が国がいた地球を基準に直径は2.5倍の31890km、表面積は6.3倍の32億k㎡、重力加速度は9.8065m/s2、気圧は平均1015hPa、自転周期は23時間58分8秒、公転周期は365日となっています」
リンは惑星の規模に対して、惑星環境がキヴォトスが元いた惑星である“地球”と大差ないことに驚いていた。
少なくとも、生命活動上問題ないことはわかった。
「地理について、大陸は接触未接触も含め30の大陸が確認されています。現在我が国とキヴォトスがいるセクターの大陸はほんの一部に過ぎません。さらにそれらの大陸には無数の国家があり、それぞれ第一文明圏、第二文明圏、第三文明圏、大東洋経済共栄圏、南方世界、ラニアケア共栄圏に所属しています」
大陸の数に目を回していた。
キヴォトスが元いた世界も外界には大陸の存在はまことしやかに知られていたが、長年閉ざされていたため確認のしようがなかった。
更に、自分たちがいるエリアの大陸は一部に過ぎないことに世界は恐ろしい程に広いと知った。
それから、民族構成、各勢力圏の国家、魔法や魔導などの概念、古の魔法帝国の復活とそれに備えた戦争の準備が着々と進んでることなどが説明された。
始まってから2時間。
まるで8000年分の記憶を脳内に注ぎ込まれたような感覚になるぐらいの情報量だった。
リンは頭の痛さを覚えつつ、話に戻る。
「わかりました。おおよその情報については理解しました。では、日本帝国は私達に対して何が望みですか?」
小原が政府の意向を伝えるために口を開く。
「はい、日本帝国政府の意向としまして対等関係を築くための国交締結、文化交流、通商条約、技術供与などを望んでいます」
江口も続けて語る。
「特に、キヴォトスの反重力技術、素材技術、量子技術は我が国から見て非常に魅力的な物と感じています」
「連邦捜査部シャーレです。何故それらの技術を?」
ここで先生が出る。
今までの経験から、ここは大人である先生が出るべきだと判断してのことだ。
「我が国はこの世界に転移してから多くの物を失いました。その中でも優秀な科学者や技術者と海外の最新研究や技術などのデータが入らなくなったことにより、我が国の科学技術は停滞。国力衰退の懸念を孕んでいます。また、現在掲げている国家プロジェクトで、魔導技術を導入するものが幾つかあるのですが、その高度な魔導技術を持つミリシアルなどの主要魔法国家から思うように供与がされずに至っています」
「なるほど...」
先生は日本側の状況を理解する。
とは言え、こっちが一方的な貢ぎ側では対等とは言えない。
「仮にそれらの技術を供与するとして、
さっきとうってかわり、先生は試すように日本がキヴォトスに返せる物は何かと聞く。
小原も、「さすが、生徒を第一に思う教育者なだけある」と感心していた。
同時に「一筋縄でいかない人だ」と感じていた。
「対価としては、我が国の各種人工衛星の一時的供与、衛星網再構築における各種協力、転移によって不足している食料・資源の期間付きの無償提供、キヴォトスが求める我が国の技術、軍事同盟、キヴォトスの新世界進出の仲介と支援等多岐にわたります。これらの詳細に関しては、担当の者との調整が必要になります。他に何か求めてるものがありましたら、できる限りにことはします」
既に本土の帝国政府宛にキヴォトスの各種技術に関する情報を専用の端末で報告しており、総理を始め各省庁の大臣や閣僚、経済団体や学術団体のドンまでもがこぞって、短い時間の間に各種技術供与の見返りが取り決められていた。
転移時の、クワ・トイネとクイラに対するODA以上に早く、日本としては国力衰退を回避する費用としては、これぐらい安いものだと感じ持ってうる物全てを出し切っていた。
「軍事同盟に関しては、生徒の命に直結する内容で重すぎます。これに関しては考え直して欲しい」
小原は、帝国政府がやっつけで決めた案だったため、この案に関しては軌道修正が必要だと感じた。
「重々理解しています。元いた世界でも度々問題になっていましたし、これに関しては慎重に議論し決めていきたいと思っています」
あまりの見返りの内容に、先生以外の連邦生徒会メンバーは頭が追いついていけてなかった。
特に人工衛星の一時的供与と打ち上げ協力に関しては、今のキヴォトスにとってはこれ以上ないほどの美味しい提案であった。
転移前の水準まで戻すとなると、時間を要してしまいキヴォトスの経済が停滞ないし鈍化する恐れもある。
それに衛星打ち上げに関する補正予算も莫大な物となっておりこれもボトルネックとなっている。
ただ、リンだけはこの提案に関しては悩んでいた。
(果たして、この対価はそれ相応なの?)
リンは、カイザーコーポレーションによるアビドスでの債務問題を使った陰謀、アリウス自治区の生徒会が取っていた学園方針とそれによって引き起こされた騒動を思い出していた。
これらは共通して、大人たちが自分達の私利私欲のために生徒達を騙し利用していたことだ。
幾ら、この死地に覚悟決めて会談に挑んでる小原からの提案とはいえ、そう易々と提案を受け入れて第3のアビドスやアリウスを再現しても良いのだろうか?
リンは代行とはいえ、キヴォトスを導く立場の者として悩んでいた。
「リン...」
先生が彼女の傍によって言葉をかけた。
「君が感じた直感を信じて選ぶといいよ」
リンは「え?」という顔をした。
「無責任に聞こえるかもしれないけど、理屈だけでは決めきれないのもある。自分が良いと思ったらその直感を信じて進むのも手だよ」
「最終的には君の判断を尊重するよ。大丈夫、どんな結果になっても先生はついて行くよ」
「それに何かあったら先生も皆の前で誠意の全裸土下座するから」
先生は成人女性の小原がいる前でも構い無しにいつものノリで言ってしまってた。
「先生、それはやめてください」
リンは咎めつつも先生の言葉でどこか肩の荷が軽くなっていた。
リンは他のメンバーの顔を見る。
他のメンバーも同様、どこかリンを信じているように見えた。
あのアオイすらも、「仕方ないわね」という顔をしながら見守っていた。
見終えたリンはメガネを取り小原達に決定を告げる。
「わかりました。日本側の提案を受け入れましょう」
事を見守っていた小原達の表情は緩んでいた。
「...七神行政官の英断、感謝します」
「とんでもないです。ただ、内容によっては連邦生徒議会や他の学園と協議する必要もあります。場合によっては技術供与ができない可能性もあります」
「わかりました。そこに関しては深く協議して妥協案を見つけて行きたいと思っています」
「えぇ。良い結果になるように最前の努力は尽くしましょう」
リンは小原の前に手を出す。
「こちらこそ」
小原も握り返し、強く固く握手を交わした。
ちなみに信濃の艦長である蕪木と、副長の加藤は自衛隊漂流戦記から来てます。
この世界では日本帝国海軍軍人として職務を務めていますね
この2人以外にも久世、市ノ瀬、板井、小山、池田、土居、松本、猿渡とかのメンバーもこの世界にも存在します。