キヴォトス召喚〜捻れて歪んだ先の分岐点〜 作:熱核戦争先生
ミレニアム自治区
春葉原
ミレニアム都心部にある、電子部品、家電、産業用機械の事なら春葉原、EMP兵器以外の電機機器なら全部揃ってると言われる、キヴォトス最大の電気街。
「相変わずの活況だね」
そんな電気街にシャーレの先生が色んな店を見ながら歩いていた。
工作オタクでも自作パソコンを組み立てない先生でも、春葉原には興味が惹かれるものは無数にあった。
中古の旋盤やフライス盤などの工作機械を販売している店のに隣接している駐車場にはトレーラーに乗った大型の産業用機械が置いてあり、張り紙にはこう書かれていた。
[本日入荷!シリコンリバティ製第16世代縮小投影型露光装置]
まさかの半導体製造装置だった。
シリコンリバティ映像学園自治区の工業地帯を通りかかった際に、誘導灯を付けた警備車に誘導されながら、半導体製造装置を載せたトラックをよく見かけており、歩行者天国となっている春葉原に搬入したものだと関心していた。
向かいの店には、鉱物資源を売っている店があった。
電線やケーブルに使われている銅、スマホやパソコンのバッテリーに使われているレアメタル、鉄、タングステン、ボーキがキログラム単位で売られていた。
「あっ、先生だ」
「こんにちは!」
春葉原の大通りを歩いていたエンジニア部のコトリとヒビキが、先生に気づき挨拶をした。
「やぁ、こんにちは。買い物かい?」
「そうだよ。行きつけの部品屋から真空管が入荷されたって連絡があったので確保しようと向かってるところなんだ」
「古いテレビに使われてる部品だよね?過去の遺物ってイメージがあるんだけど」
「そう思うよね?実は現代社会を維持させるには欠かせない重要な部品でまだまだ現役なんだよ」
「そうなの?」
「それに関しては私が説明しましょう!」
ヒビキに代わりコトリが説明を始める。
「真空管の利点は構造が単純、絶縁破壊に強い、高周波・高出力が挙げられます」
「ごめん、絶縁破壊に強いってどういうことかな?」
聞き慣れない単語が出てきたため、工学とは疎い先生には分からなかった。
コトリに変わりヒビキが分かりやすいように説明を始める。
「先生、この世にある全ての電子機器はどうやって動くかな?」
「電気だよね?」
「そう。電気...要は電流を流して機械を動作する。その電流が通り道の電線から外れて、感電・漏電火災・短絡《ショート》を防ぐための防護措置を取る。ゴムやプラスチックとかの合成樹脂、陶器、紙が電流を通しにくい絶縁体って言うのを使うんだ」
「その前提知識を踏まえた上で、絶縁破壊と言うのは絶縁体が絶縁耐力以上の電流を流されることによって、使われている素材が溶けたり燃えることによって破壊されるわけです!それに対して、真空管の内部は燃焼に必要な空気がないため、これが絶縁体の役割を担っているのです!」
「真空管が絶縁破壊に強いと言われる所以だね」
「これらの特性を活かし、マイクロ波を照射し物体を温める電子レンジのマグネトロン、強力な電波を送信する通信・放送衛星の送信回路の進行波管、電子を金属にぶつけ電磁波を発生させて物体を透過させるレントゲンや非破壊検査に使われるX線のX線管など、まさに現代の最先端技術を支える老兵と言っても過言でありません!」
「もちろん、デメリットはあるよ。消費電力が大きい、寿命が短い、機械的な振動や衝撃に弱い、物自体が大きいとかね」
「それらデメリットを克服して登場したのが半導体という訳です!半導体の登場によって、真空管を使った初期のコンピュータをビル一棟分の大きさから、このように手のひらサイズに乗るスマートフォンや関数電卓にまで収まり、速く高精度な演算能力を実現したわけです!」
「そ。僅かな電力でもとちゃんと動くし、寿命も長くて頑丈。最近じゃ、電子レンジのマグネトロンを半導体に置き換えるために実用化が進んでる。半導体は革命的発明品だよ」
ヒビキとコトリの解説を聞き先生は思わず聞き入り関心していた。
「なるほど...ところで、真空管使って何か作るの?」
「うん。エンジニア部への開発依頼でね。毛穴が見える解像度を持つ偵察衛星を作るんだ。撮影した写真を地上に送信する進行波管が必要不可欠なんだ」
...使用目的を聞こうと思ったが、聞いてはいけない気がしたので辞めた。
「ここ最近、人工衛星を打ち上げてるでしょ?そのせいで人工衛星に必要な進行波管が不足していて値段が高騰しているから、なかなか入手出来なかったんだ」
「異世界転移で人工衛星が喪失したからね...」
進行波管以外の人工衛星に使われてる各種部品、更に日本の空中艦隊構想で使われる反重力機関にも真空管が使われるため、その煽りを受けている。
「そう言えば、先生は春葉原に何の用事で来てるんですか?」
「春葉原の家電屋さんで、日本製製品の展示販売会が開催されてるらしくて、それを見に行こうと思ってね」
「なるほど...噂の日本製品か。ミレニアムでも最近、日本人をみかけるよ」
「はい。日本のメーカーや研究所務めの方達でしたね。知り合いもその人達と話し込んでたようでした。確か、八菱重工と石高島播磨重工と言う会社だったと聞きます」
上記2社以外にも、
「そろそろ行った方がいいんじゃない?」
先生は話にふけて時間が経ってることに気づき2人に聞く
「そうでした!こうしちゃいられない!それでは先生、また部室に寄って行ってください!」
「じゃあね、先生。エンジニア部は、いつでも待ってるよ」
2人は行きつけの部品屋を目指しその場を後にする。
2人の姿が見えなくなるまで手を振り続けた。
春葉原マルチメディアセンター
家電製品の他に日用品、スポーツ用品などを取り揃える春葉原の大型家電量販店。
最新の製品をどこよりも早く入荷し、どこよりも早く売るのがこの店の強みである。
最上階にある多目的フロアに先生は立ち寄った。
この多目的フロアこそ、もう一つの強みであった。
キヴォトス各地の名物を販売する物産展、高級ブディックから矯正局の囚人が作った商品を売る販売会などを開催する会場にもなる。
今回は「電撃開催!日本製家電販売展示会」と銘打った、日本の代表的な電機メーカーによる販売展示会だ。
日本・キヴォトス双方の民間人との交流促進と親善、日本側メーカーがキヴォトスで事業を本格的に進出する前段階として、何が売れるかを調べるために試験的に販売している。
クロノスのネットニュース、モモッター等の各種SNSでも話題となり、またヘイロー持たない獣人でもアンドロイドでもない大人の
会場には出展した日本企業の社員を護衛するヴァルキューレとC&Cの生徒が不審者がいないか目を光らせている。
商品の販売や説明をするのは出展企業の日本人社員。
学園都市という事で、生徒にとって親近感があろう、19~24の若手社員が多くを占めている。
展示ブースは各企業ごとに分かれており、松音電機産業の洗濯機、TEISHIBAの冷蔵庫、大阪神金属工業のエアコン、アイリスオータカの布団乾燥機、八菱電機の高級路線家電など、各企業自慢の製品を前面に押し出し展示していた。
見た目も性能もキヴォトスの家電メーカーと変わりないものであったが、中には目の付け所がシャープな物、「その発想はなかった」物もあった。
2人のミレニアム生が、あるブースて展示している室内機のフレーズに興味を示していた。
「ジェットエンジンの翼形状設計を応用?」
そこに、先生と同じ見た目をした大人の人間...おそらく出展してきたであろう日本企業の社員が製品の説明を始める。
「はい、こちらは八菱重工で手がけている航空機用ジェットエンジンで培った技術を応用した“カモノハシエアコン”です。従来型より省電力と大風量を実現しています」
「ジェットエンジンの設計を室内機に応用するとは考えもしなかったね」
「ねー。せいぜいエンジニア部がジェットエンジンを自爆機能付き扇風機に応用するぐらいだよ」
別のブースでは子連れの雀型獣人の女性が、HAYABUSA Gründer.I.G.と言う企業が展示販売する空気清浄機を見ていた。
「蚊取空気清浄機?」
「奥さん、お目が高い。当社自慢の“蚊取空気清浄機”です。蚊の習性を利用し殺虫剤不要。蚊のシーズンが過ぎても普通の空気清浄機としても使用できますよ」
「殺虫剤不要は子供のことを考えると良いわね。ちょうど、空気清浄機が壊れてたし買い換えようと思ってたところね。1台買います」
「ありがとうございます!決済等の手続きはこちらでお願いします!」
先生は感心しながら展示ブースを見て回る。
「何か良いものないかな...」
「おや?」
パンター・テェルモフラッシェ工業という企業の炊飯器に目が入る。
「家庭で土鍋ご飯?」
どうやら、内釜に本物の土鍋を使っている炊飯器らしい。
フウカやミモリが欲しうな物であった。
「気になりますか?」
その声に気づき、先生は振り返る。
そこには、小柄で眼鏡をかけた黒髪ボブヘアの女性が立っていた。
松音電機産業/TEISHIBA/大阪神金属工業/八菱電機/日立原製作所/パンター・テルモフラッシェ工業/東京電機逓信工業/HAYABUSA Gründer.I.G./アイリスオータカ/富嶽ゼネラルエレクトリック/YONKO/象協印製作所/八菱重工冷熱/大正浪漫家電産業集団/南日本国営兵器産業廠