キヴォトス召喚〜捻れて歪んだ先の分岐点〜   作:熱核戦争先生

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遠き同胞との邂逅

信濃士官室

 

加藤に案内されたテツヨ達は日本側の代表者が集まる士官室に入室した。

士官室には洋上迷彩服を着た小柄で人柄の良さそうな初老の男と大柄で立派な逆三角形体型の中年の男が2人、パンツタイプのスーツを着た黒髪姫カットの女といかにもチャラそうな見た目をした男の2人が立っていた

 

「ようこそ信濃へ。私が信濃艦長兼欧州大陸派遣艦隊司令の蕪木紀夫です。会えて光栄です」

 

テツヨ達はまさか人柄が良さそうな男が司令官だった事に目を丸くしていた。

 

「ヴァルキューレ警察学校海警局の警備艦ワタツミの学級委員長尾崎テツヨです」

 

テツヨに続きメイサとオオカも名乗る。

 

蕪木を機に残りのメンバーも名乗り始める。

 

「軽空母冲鷹の合歓垣誠です。原隊は第2艦隊の第1水上打撃群で信濃も同じ部隊の所属です。よろしく」

 

大柄の男は見た目に反し淡々としていた。

 

「日本帝国外務省大東洋局から派遣されました、小原来乃未です。で、こっちのいかにもチャラそうなのが私の部下の江口君です」

 

「小原先輩一言余計ですよ...えっと紹介預かりました、同じく外務省大東洋局の江口蘭兵衛です」

 

スーツ組の男女はキヴォトスの学園で言う外交委員会の役人のようだ。

 

「どうぞ座ってください。護衛の方も席は用意していますのでどうぞ」

 

「では失礼します」

 

蕪木に促されるようにテツヨ達は椅子に座る。

両者は士官室用の長机を挟んで相対する。

 

テツヨが最初に切り出した。

 

「蕪木司令、キヴォトスへ来た理由に関して改めて聞いても良いでしょうか?」

 

それに対し蕪木と小原が理由を説明をする。

 

「わかりました。私達はこの世界へ転移してきた欧州大陸...キヴォトスの実態調査と現地勢力との接触を図るために艦隊を編成して派遣され今に至ります」

 

「現地勢力との接触...つまり私達との接触ですか」

 

テツヨ現地勢力が自分達であることに気づく。

蕪木に変わり、外務省組の小原と江口が説明に移る。

 

「その通りです。帝国政府は貴女方キヴォトス政府との間に友好関係を築くことを望んでいます。私達が所属する外務省はキヴォトスとの国交を締結するために派遣されました」

 

「両国間との国交締結を始め貿易協定や経済協定などの経済分野、軍事同盟や兵器・軍事装備輸出などの国家安全保障分野でも両国間との連携を取る準備はできております」

 

一通りの経緯を説明しテツヨ達は納得した。

蕪木達はキヴォトスに害を成す存在では無いことに安堵した。

 

「ひとつ宜しいでしょうか?」

 

合歓垣がテツヨ達に疑問に思っていることを聞こうと手を挙げた。

 

「合歓垣さんでしたね。何でしょうか?」

 

「尾崎さん達は先程から学校の名前を出しているのは何故でしょうか?そもそも、重要な話をしてる場にに尾崎さん達学生さんが出てくること自体おかしいのだが...」

 

合歓垣はテツヨ達が学生でヴァルキューレ警察学校という学園や教官がいない事に気になっていた。

テツヨはキヴォトスの常識が外界に通じるはずもないことを思い出し、一から説明を始める。

 

「...私達の実態を知ってもらう必要がありますね。キヴォトスは自治権を持つ数千の学園とキヴォトス全域の行政権を持つ連邦生徒会によって構成されている学園都市の事です。教師は連邦捜査部シャーレの先生と主要4教科と副教科の基礎部分だけを教える教師のみです」

 

「貴女達はそのキヴォトスの学生さんって事ですか?警察と言えば専門知識が必要ですけど、それを指導する教官はいないのですか?」

 

「入学した1年生の間は2年生や3年生の上級生から基礎などを教わったりしています。学園外から特別講師として招かれる時もかりますが、基本的に各学園自治区の統治や行政の運営の大半は私達生徒が担っています」

 

キヴォトスもとい彼女達に対して抱く違和感を知ることになった蕪木達は目を丸くしていた。

 

「つまり生徒であり公務員でもあると?」

 

「はい。私達はキヴォトスの治安を守る公僕です。ヴァルキューレ警察学校は特定の自治区持たない連邦生徒会防衛室指揮下の特殊学園の一校です」

 

特殊学園は連邦生徒会が定めた、キヴォトス全土の統治や行政に必要な学園の事を指す。

特殊学園の特徴は行政委員会直轄で特定の自治区を持たない代わりにキヴォトス各地に拠点が設置されている事が多い。

特殊学園の例としてヴァルキューレ警察学校、SRT特殊学園、ブリギッド消防学校、ラーズグリーズ航戦高等学校、アポロ航空宇宙学校、ムルキベル産業総合研究学園、ミンテージ経済学校、メティス図書学校などがある。

 

テツヨ達の正体とキヴォトスのを実態を知った蕪木達は信じられないと言う顔をしていた。

 

「学園都市と聞いて学院制のパンドーラ大魔法公国、マギカライヒ共同体、アガルタ法国みたいな体制かと思いましたが、そんな感じはしませんね」

 

「“学”と言う名前の政治体制ではあるが、あの3カ国は実質的な国家でキヴォトスのような完全な学園都市ではないな」

 

蕪木と合歓垣は耳打ちで学院制と共産的学院制を採用している新世界の3カ国の例を挙げる。

 

「先程から聞く欧州大陸と“この世界への転移”とは何でしょうか?」

 

メイサは蕪木が言う欧州大陸と言う聞いた事もない単語が気になっていた。

 

「これは失礼、その事に関して説明しますね。“この世界への転移”と惑星から別の惑星へ国土が物理的に移動する現象のことを指し、私達は“国土転移現象”と呼称しています。欧州大陸は我が国が転移する前の惑星にあった大陸の事です。我が国の偵察衛星がキヴォトスを捉えた際に地形が欧州大陸に酷似していたため、当初は欧州大陸がこの世界へ転移したと考え、キヴォトスを知るまでは欧州大陸として呼称していました」

 

小原からの説明を聞いたテツヨ達は、現在キヴォトスで起きてる異変を知ることとなる。

 

「惑星から惑星への転移...まさか、人工衛星のロストと海域保護封鎖令の発令って、この国土転移現象が原因って事?ミレニアムの特異現象捜査部行きの案件じゃないか 」

 

「可能性はありますね。まさか、ここ最近の出来事をここで知ることになるとは...連邦生徒会へ伝える事項が増えましたね」

 

メイサとオオカの言葉にテツヨは頷いていた。

 

「なるほど...キヴォトスとその欧州大陸が似ていたのですね。どれだけ似てるのでしょうか?」

 

テツヨはタブレットを取り出し地図アプリを開く。

タブレットに表示されてるのは連邦生徒会が作成したキヴォトスの地図だ。

 

「こちらが、転移前に撮影した欧州大陸の衛星写真と偵察衛星が撮影したキヴォトスの衛星写真です」

 

小原はクリアファイルから2枚の写真を取り出す

 

テツヨ達はタブレットの地図と写真をそれぞれ見る。

少し離れたところに座っていた護衛の生徒も気になり一緒に見ていた。

 

「似てるどころかそっくりそのままじゃないか...」

 

「こんな事があり得るのですか?」

 

メイサとオオカは酷似しているどころか、そっくりそのままな事に困惑していた。

 

「私達も困惑しています。外見は私達が知る欧州だと思い、いざ行くと中身が全くの別物ですし...何がなにやらさっぱりです」

小原はお手上げ状態だと仕草を取っていた。

 

「ちなみにキヴォトスがあった世界もとい惑星は何と呼ばれていたのでしょうか?」

 

加藤はキヴォトスがいた惑星の名前に気になっていた。

 

「キヴォトスがあった惑星の名前も地球と呼ばれていました」

 

更に惑星の名前まで一致してる事に蕪木達は驚き困惑していた。

 

「惑星の名前は同じなのに全くの別物...どうなってるんだ」

 

次から次へと上がる新たな情報に両者ともに頭が混乱してきていた。

静寂が続く中、声が上がる

 

「私から良いでしょうか?恐らくこの事象に関して説明が付くかと思います」

 

声の主である加藤に注目が集まる。

 

「何かあるのか?是非話してくれ」

 

蕪木は藁にもすがる思いで加藤に話すように促す。

 

「私たちはこの世界に転移してきた欧州大陸の実態を調査するためにこの地に派遣されました。しかし、実際は姿形は私達が知る欧州大陸ではなく、その中身は相反するような似た文明形態を持つ学園都市キヴォトス。キヴォトスが転移する前の惑星の名前は同じく地球との事。そこで、私はある仮説を立てました」

 

加藤は一呼吸置き周囲を確認する。

彼はある言葉を口にした。

 

「皆さんは、量子力学における多世界解釈をご存知でしょうか?」

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