キヴォトス召喚〜捻れて歪んだ先の分岐点〜   作:熱核戦争先生

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少し不思議な話

「皆さんは、量子力学における多世界解釈をご存知でしょうか?」

 

加藤の口から出てきた聞き慣れない単語に一同は顔を見合せた。

 

「いや、何だねそれは?」

 

「初めて聞く言葉だが」

 

蕪木と合歓垣は首を傾げ、小原と江口は苦い顔をする。

 

「物理、勉強...うっ、お腹が」

 

「今年の物理は難しかったですね...」

 

「や、やめてくれ!聞きたくない!それはオレに効く!」

 

テツヨ達は現役の学生と言う事もあってか阿鼻叫喚となっていた。

 

「彼女達の反応や持ち物を見るにキヴォトスにも量子力学は存在していますし、多世界解釈と同一の物はあると思います。それを前提に話は続けますね」

 

量子力学は現代の科学技術発展において重要な分野である。

半導体などの電気機械技術を始め、医療、エネルギー、軍事などの技術発展に貢献してきた。

テツヨが持つスマホにを見た加藤は、半導体が内蔵されてる事や物理学を理解している事を踏まえ話し始める。

 

「量子力学はシュレティンガーの猫と言う思考実験や量子力学の観点からの国土転移現象の研究が最も有名な分野です。多世界解釈は結論から言ってしまえば世界は一つだけではないと言う仮説です」

 

「「「世界は一つではない?」」」

 

荒唐無稽な仮説に蕪木やテツヨ達の声が重なった。

 

「そうです。多世界解釈は量子測定が行われた際に波動関数が分岐し、その結果によって生まれた世界が並行世界として独立し進行するのが基本的な考えとなっています」

 

「その量子測定や波動関数とは一体何かね?」

 

蕪木は加藤に質問する。

 

「量子測定は量子の状態を測定する事で波動関数は量子測定で測定された量子の状態を複素数値関数で表します」

 

「全くわからんな」

 

それでも分からない蕪木達に分かりやすく説明するため士官室にあった旧世界の海図本を手に取る。

 

「多世界解釈を分かりやすく説明すると、量子を船に波動関数は海図と見立てましょう。海図の通りに船が進んで行くうちに航路が2つに別れます。船はどちらかの航路を選んで進むことなりますね」

 

加藤は海図にある適当な航路を選び船に見立てた指でなぞっていく。

 

「この別れた航路を分岐した世界とします。量子である船が航路を選び進んだことが量子測定となります。しかし、選んだ航路が天候や海賊の襲撃で到着が予定より遅くなりました。一方、選ばなかった航路は天候も良く、海賊対策で派遣されていた海軍艦隊が辺りを警戒していたため、海賊の襲撃がなかった事を後で知ります」

 

加藤は海図本を閉じる。

 

「こう思うはずです。「こっちの航路選んでいれば予定通りに到着してたかも。いや、早く到着していたかも」と。これが多世界解釈です」

加藤の説明を聞き蕪木達は納得した顔をする。

 

「つまり、尾崎さん達がいた世界やキヴォトスは私達とは別の選択をした並行世界の地球であり欧州という事ですか?」

 

小原の言葉に加藤は頷きながら補足する。

 

「見方によってはそうです。尾崎さん達から見れば私達がいた世界や欧州大陸は、別の選択をした並行世界の地球でキヴォトスと解釈できます」

 

「私達は並行世界同士の存在という事ですか...なんと言うか信じられません。まさか、そんな事象が実際に起きるなんて」

 

テツヨは目の前にいる人物達が別世界の“地球でキヴォトスの人間”であることに目を丸くしていた。

 

「まだこれは憶測に過ぎません。恐らく多世界解釈以外の事象が提唱される可能性もあります。その一つに“文明収束進化論”がありますが、私の意見としては多世界解釈が有力と思います」

 

文明収束進化論とは、類縁関係の遠い生物間で似通った生殖器官がある生物の収束進化論を、異なる地域若しくは惑星で科学技術や文化形成などの人類活動が文明レベルで似通った事を仮定した現象のことを指す言葉だ。

このような言葉が生まれた背景に、日本帝国が新世界へ転移した時と同じくして第二文明圏に国土ごと転移してきたグラ・バルカス帝国の科学技術や意匠が日本含む地球諸国と似通っていたことから由来し、文明収束進化論として一般化するようになった。

ちなみに本来の意味である生物間での収束進化論と区別をつけるため生物収束進化論と文明収束進化論に分けられるようになった。

閑話休題。

 

「とにかく、学者による専門チームを組んで原因をを究明し結果を待つしかありません。一海軍軍人である僕の意見が正しいとは限らないので」

 

「可能性に過ぎないとは言え酷似してる理由の一つに納得したよ」

 

海軍一の変わり者と言われてる加藤の意見に蕪木と合歓垣は納得するように頷いていた。

 

 

「ミレニアムの特異現象捜査部行きの案件だね」

 

「全知の学位を持つ彼女の事ですし、納得行く仮説が提唱されるでしょう」

 

「あそこの部長、オカルト話が好きって聞くしノリノリで話に乗りそうだ」

 

テツヨ達はミレニアムの全知の学位を持つ天才ハッカーを頭の中に思い浮かべていた

 

「なるほど、わかりました。来訪理由も含めここで知り得た情報を連邦生徒会に報告します。私達は一旦母艦に戻り今後の対応含めキヴォトスとの通信をしますが、連絡要員で護衛に1人か2人残しても良いでしょうか?」

 

「構いません。良い返事が来ることをお待ちしていますよ」

 

テツヨからの要望に蕪木は快く承諾した。

 

 

 

 

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