第二次ビクトリア攻防戦が連合の勝利に終わり、北アフリカ地域のザフトの影響力低下を抑えようと躍起になっているころ、地球連合の極東連邦の次に大きな影響力を保持している大西洋連邦の経済の中心地であるニューヨークでは、大西洋連邦の経済・政界を始めとしたあらゆる勢力に多大な影響力を誇るブルーコスモスの派閥抗争が激化していた。
派閥といっても大小様々であり、何の影響力もなくコーディネイターを標的としてテロ活動を続ける自称ブルーコスモスも含めればその数は数十万人以上も存在する。
そんなブルーコスモスの中で最も経済力・政治力に長けた人材が多く在籍している派閥は過激派、中道派、穏健派による三つのグループである。
今のブルーコスモスの中で一番影響力を保持している派閥といえば何処なのかと言われれば大多数のブルーコスモス構成員は過激派と答えるだろう。ただ、その過激派が問題であり、ブルーコスモスの共通点はこれ以上コーディネイターを増やさない事は共通認識なのだが、過激派の大多数はコーディネイターの根絶やしを視野に入れてる為にブルーコスモスで最も過激な派閥と認識されていた。
そのため過激派は中道派や穏健派から最も嫌われており、中道派と穏健派もコーディネイターに対するアプローチの違いで対立関係にあるがそれでも過激派の様に根絶やしにしてやるという過激な発想にまでいってないので、二つの派閥は過激派の対応に四苦八苦していた。
「宇宙の化け物達の影響力と戦力は大幅に下がっている!今こそ化け物達の砂時計諸共破壊して一掃するべきだ!」
「だから何度も同じ事を言わせないで下さいよ。例え開戦当初と比べて宇宙・地上の戦力が低下していても地上はエネルギーと食料共に不足しているんですよ。エイプリル・フール・クライシスの大被害による立て直しがまだ完全に終わっていない現状でプラント本国に侵攻して本気で勝てると思っているのですか?」
「それが弱腰と言っているんだ!戦力も食料もエネルギーも足りなければ、極東、ユーラシア、東アジアにもっと圧力をかけて奴らに出させれば言い!」
特に過激派の中で最も影響力を保持しているアズラエル派閥とジブリール派閥の口論は日に日に激しさを増していた。そんな二人のやり取りにブルーコスモスの会合に参加している他のメンバー達はウンザリした表情で二人の口論を聞いていた。
「冗談じゃありませんよ。ユーラシアや東アジアならともかく極東によるエネルギーと食料支援があってようやく空の化け物と互角に戦えてるんですよ。ただでさえ今でも地球復興という名目で無理をしてエネルギーと食料を支援して貰っているのにこれ以上無理な要求をすれば彼等も黙っていませんよ」
ブルーコスモス過激派の二大巨頭の一角に称され、ブルーコスモスの盟主に選ばれているアズラエルではあるが、彼はコーディネイターを撲滅したいという思いが強いのは事実であるが、それ以上に彼は世界経済の大多数を掌握し、世界経済をコントロールしている秘密結社ロゴスの一員でもあるため、アズラエルもそのロゴスの中で絶大な影響力を保持している商人の為に、ジブリールの様に狂信的な宗教家というより、商売人としての側面も持ち合わせてるので、ジブリール以上に損得勘定がうまい人物だ。
大和会の重鎮達からもコーディネイターに対するコンプレックスがなければ、更に商人として成功して若くして世界経済のトップに君臨する商才とカリスマがあると評価されていた。まあ、現在まで無茶な行動を起こさないのもザフト相手に自身が思っていた以上に地球連合が対等に戦っている事もあってアズラエルの自尊心を満足出来ている事もあって冷静に物事を決める事が出来ているのも理由であった。
そのため本人としてもプラントに核を撃ち込んだ事は想定外で、アズラエルと深い繋がりがあるサザーランドから報告された時は驚愕し、多くの理事国の企業の出資によって作られたプラントを自分から破壊してどうするんだと呆れた様子であった。後になってルーズベルトにジブリールのシンパが秘密裏に核弾頭を持ち込んで撃ち込んだ事が判明していた。
「そもそも貴方が核を撃ち込まなければこんな面倒な事にならなかったんですよ。エイプリル・フール・クライシスの影響で戦前の暮らしを取り戻すのに何年かかるか分かっているのですか?こんな状況を引き起こしておいて更に無茶を通そうというのはいくら何でも話が良すぎませんか」
「何を言う!あれはプラントに核を撃ち込まないと判断した日和見を決め込んだ貴殿に変わって私が代わりを務めたまでです!盟主である貴方が全面的に協力して下さればプラントにいる化け物達を根絶やしにする事は容易な程に核を用意する事が出来た!地球の今日までの状況を引き起こしたのは私ではなく貴方だ!」
その後もアズラエルとジブリールによる言い争いは続き、どの派閥の所属と関係なく会合の参加者達は最近はアズラエルとジブリールの言い争いの仲裁に奔走させられ、仲裁に入ればしばらくは両者共に落ち着くのだが、しばらくしてからまた言い争いが再開されてその度に仲裁をさせられるブルーコスモスのメンバー達は疲れ果てていた。
二人のうちの一人はブルーコスモスのトップであり、もう一人は過激派の筆頭格で過激な宗教家の一面が強くて話が通じない相手であるが、それでも影響力は無視できないので、そんな二人を嫌でも仲裁しなければいけないのであった。
会合が終了してしばらくして、アズラエルはニューヨークの国際空港の自身が保有しているプライベートジェットで自身の意見を大西洋連邦軍に反映させるための人物であるサザーランドとテレビモニターで話し合っていた。
「全くあの狂信者には困ったものですよ。何で高い金を払ってまで作ったプラントを破壊しなければいけないのか、アレは大西洋連邦を始めとした理事国の出資によって作られたものと完全に忘れてますよね」
『それは理解してますが、ジブリール様の言うことに一理はありますよ。化け物達の多くはあの砂時計にいるのですから』
「軍人なら将来の最大の脅威がいなくなって良いかも知れませんが我々商人や政治家は困るんですよ。殲滅戦争を行う予算をどうやって捻出するんですか、歩兵一人に与える小銃を含めた標準的な装備を揃えるだけでも大西洋連邦の一般的なサラリーマンの月収並みの費用が必要な事は貴方も理解していますよね」
『私は軍人ですので経済に詳しくはありませんが、そのくらいは……』
「何よりプラントにある設備は理事国を含めた地球経済を支えるのに必要なものです。今回の戦争を引き起こした発端であるプラント独立派には消えてもらう事は確定してますが、それでも殲滅戦争をされては困るんですよ」
アズラエルはサザーランドにある程度愚痴に近い形で話を終えるとブルーコスモスとの会合の後には表の顔である経済人としての顔に戻らなければいけない。アズラエルにとって次に向かう会社は重要な取引先という事もあり無下に出来ないので、取引先との会議に出席するまで少しだけ時間もあるためアズラエルは仮眠をとる事にした。
(全くコッチの都合も知らないで好き勝手に暴れやがって!)
ジブリールに先導されて無差別テロを起こす末端構成員と、ブルーコスモスでもないのにブルーコスモスを名乗って暴れる自称ブルーコスモス達の暴走に対してどうして自分が尻拭いしなければ行けないのかとアズラエルは心の中で愚痴り、ブルーコスモスだからといって好き勝手にテロを起こされては非常に困る。いくら世論が反コーディネイターだからと言っても限度があるからだ。
そもそもコーディネイターはプラントにいる連中だけでなく、ナチュラルと比べて数が少なくても地球に住んでいるコーディネイターもそれなりにいる。実際にはプラントのコーディネイターよりも地球出身のコーディネイターの方が数が多いし、大西洋連邦もオーブや極東連邦ほどでは無いにしろ経済にガッツリと組み込まれているので、過激派の自分が言うのもあれだが無作為にコーディネイターを排除されても困るのだ。
これまで通りに自分達ナチュラルが示したルールを破らないで活動し、これ以上第一世代コーディネイターを誕生させないで地球のコーディネイターの様に暴れないで普通に生活を送るなら問題がないというのがアズラエルの考えであった。だが、ジブリールはブルーコスモスをまるで十字軍の様に扱い、遥か昔の人類が馬や帆船くらいしか移動手段がなかった時代の宗教戦争を再現させようとしていてアズラエルからしたら頭が痛い思いであった。
そう言えば最後に妻の手料理と可愛い娘にあったのはいつだっけと思い、これ以上仕事を増やされたら更に会う機会が減って愛想を尽かされて離婚されてしまうかもしれない、そうなったら酒に溺れて死ぬかもなと思いながら眠りについた。
ーーー。
CE71年4月中盤頃になると北アフリカのザフトおよび友好国であるアフリカ共同体を打破する為に南アフリカ統一機構、極東連邦、ユーラシア連邦を軸とした大部隊がアフリカ侵攻作戦に向けて準備が勧められていた。
その中でも極東連邦軍の部隊は凄まじく、制空権を握る為にリオンを軸としたMA部隊に加えてMSもアクシオ、ゲシュペンスト、ガーリオンが多数配備され、水陸共に行動が可能で移動司令部という異名がある陸上戦艦の『薩摩級』と、その薩摩級よりも砲撃能力を高めた『伊勢級』に加えて宇宙軍からもMS母艦としての能力に加えて長門級宇宙戦艦よりも高い攻撃力を保有している新造艦であるペガサス級が二隻ほど参加している事もあって南アフリカ統一機構の兵士達は驚いていた。
「一回の作戦にこんだけの数が参加するのかよ」
「相変わらずスゲーな極東は」
今回の作戦の中核は現地軍である南アフリカ統一機構と、極東連邦とユーラシア連邦の三軍が戦力の主戦力となっているが、地球連合に所属している事もあって東アジア共和国や大西洋連邦の部隊も少なからず参加しており、大西洋連邦の部隊にはヘリオポリスから脱出したあのアークエンジェルも今回のアフリカ侵攻作戦に参加していた。
「まさかこんな大規模な作戦に参加する事になるなんてな」
「ええ、少し前なら考えられない事だったわ」
ザフトによるヘリオポリスの突然の襲撃により正規の兵士達の大多数が戦死した為に本来なら技術士官で宇宙艦隊の指揮もやった事がないマリュー・ラミアスがアークエンジェルの艦長となってしまった。理由は自分より高い階級の人間がおらず、自分も含めて艦長経験がなかったらであり、そんな事情であった為になし崩し的にアークエンジェルの艦長となった。そして、本来ならG計画のパイロットの護衛として派遣されたムウ・ラ・フラガも自身が所属する母艦が轟沈した事によりアークエンジェルになし崩し的に所属する事になった。
そんな絶望的状況でありながらオーブの民間人であったキラ・ヤマトが偶然にもG計画のうちの一機であるストライクに搭乗した事により色々な困難があったがヘリオポリスからザフトの追撃を何とか振り切る事に成功して無事に地球に降下する事に成功した。
だが、それでもクルーゼ隊の追撃は凄まじかった事もあって本来の目標であったアラスカから北アフリカに降下ポイントがズレてしまった。しかしアークエンジェルは幸いにも第二次ビクトリア攻防戦でザフトが敗戦してしまった事もあって北アフリカの影響力低下し、更に現アフリカ共同体の政権が政権トップの政治家の一族出身の民族だけ優遇する政策も火種となった事もあって反連合・ザフトのテロ活動が活発化して、その火種を消す為に奔走していた事もあってアークエンジェルは見逃されていた。
ザフトの追撃はないと分かってもザフト勢力圏にいる事には変わりはないため、ラミアス大尉は極東連邦やユーラシア連邦が駐屯しているビクトリア基地に行く事を提案した。このまま海に出るのは得策ではないため、それなら多少のリスクをとっても連合で最も強大な軍事力を保有している極東連邦が駐屯しているビクトリア基地に行く事を提案したのだ。
ラミアス大尉の提案にムウは賛成したが、しかし二人の意見にバジルール少尉は反対した。例え地球連合に所属しているとはいえ他国の軍隊に軍事機密の塊であるアークエンジェルとストライクをこれ以上見せたくないとバジルール少尉は反対したのだ。しかしムウは極東もユーラシアも既にMSを保有してる為に大西洋連邦のMSに興味はないだろうと言い放つ。実際にアルテミスに入った時もユーラシア連邦はアークエンジェルとストライクに対して興味を示さなかった。
こうしてラミアス大尉の提案通りにビクトリア基地に進む事になった。なお、この時の判断で本来の歴史なら明けの砂漠というレジスタンス組織に身を置くカガリとキラは再会するのだが、ビクトリア基地に向かう判断に加えて、砂漠の虎が明けの砂漠とは違う武装組織の鎮圧に向かっていた事もありカガリとキラは再会するキッカケがなくなった。
ビクトリア基地に向かう過程でザフトの部隊と何度か遭遇してしまうが、クルーゼ隊やバルトフェルトの部隊と比べて練度が低かった事もあって追撃を振り切り無事にビクトリア基地に逃げ込む事に成功した。
極東連邦に保護してもらい十分な休息を貰い、補給が完了したらアラスカに戻る予定だったが大西洋連邦の本部から暫くはビクトリア基地に待機する様に通達が入り、詳しい内容は説明されなかったが、アフリカで大規模な作戦が展開されるので、アークエンジェルもその作戦に参加する様に通達が入った。
本部からG計画のデータを元に開発された宇宙用の装備をオミットされた先行量産型MSである陸戦型ダガーと呼ばれるMS四機とパイロットがアークエンジェルに一人派遣された。
「オラオラ、ちゃーんと走りやがれデスヨーダ!」
本部より派遣されたパイロットはビクトリア基地の外でオーブから緊急処置という特例で大西洋連邦軍に入隊したキラ達を鍛えていた。
「オメエら体力なさすぎデース。軍隊舐めんてんのか言ってやるデースヨだ!」
「そ、そんな事を言われたって」
「わ、私達はつい最近まで普通の学生……」
「急にそんなこと言われても」
「な、何で私まで……!」
「つい最近まで民間人だからって甘くして貰えると思ってるデースカ。甘えよアマアマデスヨ!ショートケーキにガムシロップをぶっかけるくらいにアマちゃんデスーヨお前ラ!」
キラ達を鍛えているのは大西洋連邦から派遣されたミア・アズラエル。大西洋連邦で有名なアズラエル財閥の一族の出身の女性パイロットである。しかし彼女はブルーコスモスを毛嫌いしており本人曰く「蒼き清浄、蒼き清浄と叫んで自分が正義と思いやガル気狂い連中の組織に好んで入いる馬鹿はいネーデスヨ」との事。それに加えてアズラエル財閥の令嬢として規則正しい生活で生きる事に嫌気がさして高校を卒業と同時に家を飛び出して軍に入隊してMAのパイロットになった異色の経歴を持っている。
そんな彼女には秘密があり、実は彼女、前世の記憶を保持しており、彼女は21世紀の日本人として生きた時の記憶を保持している転生者である。しかし転生者だが大和会の事は何も知らない極東連邦とは何の縁もない大西洋連邦で産まれた前世が日本人の転生者である。
彼女は知らないが、転生者として産まれた神様特典を知らないうちに保持してる人間であり、人間の限界点の身体能力とNTに匹敵する勘の良さを特典として貰っている。
その事もあってナチュラルでありながら頭脳は並だが身体能力は一般的なコーディネイターを遥かに上回り、NTに匹敵する勘の良さもあるためMA乗りとしてはムウに匹敵するほどに高い事もあり、何よりアズラエル財閥の一族という血族もあって先行量産型のMSパイロットに選ばれたのだ。
実際に軍隊としての生活が長い事も戦争前から宇宙海賊や雇われ傭兵相手に実戦経験を積んだ事に加えて、NTに匹敵する感の良さもあってシミュレーションとはいえストライクと比べて総合的なスペックで劣る陸戦型ダガーでキラはストライクで挑んだが彼女に勝てず撃破判定を貰い続けた。この事にキラと、キラがコーディネイターとして考えても高い能力を保有している事を理解していたキラの友人達も驚愕していた。
「この間まで民間人だった人間に負けるほど軍人は甘くネーでンスよ。コーディの生まれ持った高いスペックだけで勝てるほど世の中は甘くねーんデスヨ」
それを言ったら本人も神様特典を保持してるためキラとどっこいどっこいのギフトを貰っているのだが、ミア本人も、撃破判定をくらったキラも知る由もない。
とにかく彼女は自分はキラより上という事を分からせた事でミアはキラ達の鬼コーチに君臨してアフリカ侵攻作戦までオーブ組を徹底的に鍛える事になったのだ。
「彼女には助かってるわ」
「まあな。これまで坊主一人に頼りっぱなしだったからな」
「それでもアズラエル中尉に徹底的に鍛えられてキラ君たち毎日死にそうになってるけど大丈夫かしら?」
「私はアズラエル中尉の行動に賛成です。彼等は非常事態とはいえ何の訓練も受けずに軍に入隊してしまいました。今までは軍の常識を教えてこれませんでしたから良い機会です」
実際にアークエンジェルはキラ一人に重圧が押し寄せた事もあって、キラはいつ精神が崩壊しても可笑しくなかったが、そんな状況でキラを上回るMS操縦技術を持っているミアの存在はキラの負担を軽減し、キラがコーディネイターでも気にしない度量と意外にもプライベートは気さくな人柄の為に言動が可笑しい事を除けばキラ達からマリューやナタルとはまた違う頼りなる姉貴分になるには時間はかからなかった。
こうしてアフリカ侵攻作戦までキラ達はミアに徹底的に扱かれて地獄を見るのであった。
登場人物紹介
ミア・アズラエル
性別 女性
年齢 26
種属 ナチュラル
大西洋連邦の中で大規模な影響力を誇るアズラエル財閥の一族出身の女性。ムルタ・アズラエルとは親戚であるため一応面識はあるが、ムルタ・アズラエルがブルーコスモスの盟主の立場にいる事によく思っていない為に印象は最悪。
見た目は金髪のショートの淑やかな美人の外見なだけに、独特なデスヨ、デスーヨに代表される様な口調と自他共に口が悪い為に誰にでも毒舌であるため大抵の人間はあまりのギャップに困惑する。
実は前世が21世紀初頭の日本人の記憶を持つ転生者だが、本人はあまり気にしていない。本人は知らないが人間の限界値の身体能力とNTに匹敵する感性という特典を貰っている為に長い軍隊生活により培った経験も備わって一般的なコーディネイターの兵士を軽く凌駕する身体機能と操縦技術を身につけている。
気に入らない相手には区別なく本気の毒舌対応をするため上官や年配の人間からは嫌われているが、意外にも面倒見が良い性格の為に比較的年が近い人間や後輩からはかなり好かれている。