ガンダムSEED 架空国家の憂鬱   作:zero3 ガイル

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第九話 北アフリカ3

 

CE71年5月5日。アフリカ大陸での戦闘での活躍により『砂漠の虎』とその名を轟かせたアンドリュー・バルトフェルド。MSの操縦技術もザフトの中でも上位に位置し、指揮官としても優秀であり『砂漠の虎』の異名はザフトでは有名で、地球連合の中でも彼はMSパイロットとしての実力だけでなく、戦略や戦術にも長けている事は知られてる為にザフトの指揮官の中でも最も注意すべき人物としてリストアップされている為に、今回の地球連合のアフリカ侵攻作戦に対して極東連邦は宇宙軍からも応援を要請して新造戦艦であるペガサス級まで参加させてる事からも砂漠の虎の脅威度が高い事の証拠であった。

 

その砂漠の虎の異名を誇るバルトフェルド本人は自身の部隊が使用している陸上戦艦であるレセップス級の会議室にて自分が作ったブレンドコーヒーを飲みながらタブレットを操作していた。

 

「予想以上に進軍速度が速いな」

 

「すいません隊長、至急お知らせしたい事が」

 

バルトフェルドが呟くと、扉が開き彼の副官であるマーチン・ダコスタが緊急の報告をする為に会議室に入ってきてきたのだ。

 

「ああもう知ってる。今度はホワイトの部隊が極東連邦のMS部隊と戦って敗れて撤退したんだろ」

 

「ご存知でしたか」

 

「あそこの部隊は練度も高くてバクゥを含めてMSの数もそれなりに揃っていたと記憶してたんだけどね。極東のMSの実力は予想以上という事か」

 

「はい、実際に極東と対峙したMS隊は壊滅状態で生き残りは僅かで、アフリカ共同体に至っては提供したジンオーカーIIやレストアしたジンのMS部隊が全滅したそうです」

 

「ようやくビクトリアの敗戦の混乱を納めたと思った矢先にこんな事態になるなんてね。全くついてない」

 

いつもの様に余裕な表情を崩さないで笑って話す自分の隊長に対して真面目なダコスタは呆れてため息を吐きたくなる心情になったがそこは我慢して報告を続けた。

 

「笑い事ではありませんよ。それより隊長の指示通りに改修を実行に移していますがよろしいんですか?」

 

「ああ現状、これ以上の戦力と人員の派遣は見込めないのは事実だからね。今の戦力だけだと連合のMSに対応するのは難しい、だから出来る限り底上げして勝てる確率をあげておきたいのさ。現在の進捗状況は?」

 

バルトフェルドは既存の戦力だけでは連合の攻勢に耐えることは難しいと判断して、ビクトリア基地攻略の前線基地司令官グレイクと同様に本国から頑なに禁止されているナチュラル用OS搭載MS提供の提供を実行してアフリカ共同体に提供している。

 

ダコスタもグレイクの副官達の様に当初は反対していたが、彼も真面目だけが取り柄の人間ではなく、ナチュラル軽視のコーディネイターでもないので、現状の北アフリカのザフト単体の戦力だけでは連合に対抗することは難しい事を把握してる為にバルトフェルドの提案に最終的に納得して積極的に協力している。

 

だからこうして上層部の命令を無視して独自の判断で動いているバルトフェルドの命令に今でも従っているのだ。

 

「現状の進捗状況はディンアタッカーの改修状況は70%で、ザウートスティンガーの改修は85%でもう少しで全機完了するとの事です」

 

ディンアタッカーとはバルトフェルドが制空戦闘機としての役割を与えられたディンに対して戦闘機から攻撃機に最適化する為に北アフリカに派遣されている技術者達に現地改修を命じた機体で、ザウートスティンガーもバルトフェルドの命令で本来なら砲撃戦に特化した支援MSであったが連合の航空戦力が思った以上に強力で、制空権を確保する事が難しいという事もあって連合の航空戦力に対抗する為に対空戦闘能力に重点をおいた現地改修されたザウートである。

 

「それは上出来だ。それと例の件はどうなってるダコスタ君」

 

「其方は我々との取引がなくなる事を恐れて傭兵を派遣する事をすんなりと了承してくれました。それと、ジャンク屋から比較的原型を留めているジンとジンのパーツを追加で購入しました」

 

「それも直ぐに修理して使える様にしてくれ。今は人手もそうだが一機でも良いから戦えるMSが欲しいからね」

 

この会話の後の五日後に、MSを含めた機動兵器や陸上戦艦の補給の為に進軍を停止していた北アフリカ反攻作戦に参加していた地球連合の大部隊は進軍を再開する。北アフリカにおけるザフトの影響力を完全になくす為に砂漠の虎を筆頭とした北アフリカのザフト地上軍と、ザフトに協力するアフリカ共同体を完全に打破する為に地球連合軍と、地球連合の進軍を食い止める為にザフト・アフリカ共同体の連合軍が遂に衝突した。

 

CE71年5月10日。連合・プラント大戦の中でも最も大規模な地上戦と称される北アフリカ攻防戦と呼ばれる戦いが遂に始まった。

 

ザフトのMS部隊は宇宙・地上でも大抵が自身の力量に絶対の自信とナチュラルを見下している傲慢な思考が合わさって連携を蔑ろにして個人プレイに走るザフト兵パイロットが目立ち、連携を駆使して戦うパイロットがいない訳でもないが、それでも連携が連合パイロットと比べて杜撰な事が多い為に最終的に個人プレイに走るケースが多く見られていた。

 

しかし、砂漠の虎の異名を誇るバルトフェルドの部下達はその様な事はなく、アフリカ大陸で主戦力となっているバクゥで編成しているザフト部隊の連携は連合のMS部隊に匹敵、もしくは一部は上回っている程に高かった。

 

「コイツら思った以上に厄介だ。全然崩れねえ!」

 

そのため思った以上に上手い連携にユーラシア連邦のガンキャノン部隊に所属する一人のパイロットが愚痴り出しながら両手に保持している90ミリマシンガンを乱射する。これまでのザフトのMS部隊は連携しても一機でも撃破されれば直ぐに連携に歪みが生じて連携は解除されて個人プレイに走って各個撃破されるケースが多いだけに驚愕していた。

 

「連合のキャノン付きのMSの火力と装甲は思った以上に強力だ。大きい風穴を開けられたくなかったら絶対に動きを止めるなよ」

 

「「了解!」」

 

ナチュラル軽視のコーディネイター至上主義の考えはバルトフェルドの部下にもいるが、戦場で私情を持ち込めばナチュラルもコーディネイターも関係なく戦死する確率は高くなって生き延びる事は難しいのは誰もが理解しているので、最近になって増えてきた戦場に私情を持ち込むザフト兵と違って戦場に持ち込まない様に冷静に戦う事を心掛けていた。

 

場所は変わって大西洋連邦が担当している管轄。

 

「この新型機、かなり強いぞ」

 

「自由に飛べないMSなのにディンアタッカー相手に!」

 

大西洋連邦MSであるストライクと、そのストライクをベースに開発されたダガーシリーズの一つである陸戦型ダガー三機の小隊がディンアタッカーの中隊を次々と撃破していた。

 

別の戦線ではディンの改修機であるディンアタッカーで編成している部隊がアークエンジェルに配属されたミア・アズラエルを隊長とするキラ・ヤマトのストライクと陸戦型ダガーに搭乗する事を許可されたトール・ケーニヒ、サイ・アーガイルと共に戦っていた。本来なら階級的にムウが隊長となるべきだが、MA乗りである彼がキラやミア以上にMSを操縦する事は難しい為にムウはアークエンジェルを含めた連合の陸上戦艦を防衛する防空任務に専念していた、

 

「よーしテメーら、チャーンと教えた通りに動いてエレーデスヨ。生卵から半熟卵に昇格させてやるデースヨ!」

 

「は、はい!」

 

「それでも半熟卵なんだ」

 

「ハハハ……」

 

ミアの言葉にキラ達は苦笑いする。キラ達にとってミアは恐ろしい鬼教官でもあったが、同時に頼りになる大人の女性でもあった為にキラ達はミアを信用していた。これまで頼りになる大人がいると言えば無理矢理戦わされた事を除けばムウもマリューも常識的な軍人と違ってコーディネイター関係なく一人の人間として扱ってくれた為に人間的に信用は出来るが頼りになるとは言えなかった。

 

そもそもヘリオポリスから脱出するまでアークエンジェルは非常時とはいえ、軍の常識が全く通用しない環境と戦場の過酷さもあって目に見えない亀裂がキラ達を襲っていた。

 

事情が事情なだけに軍の常識を全く知らない、訓練もろくに受けないで軍に入隊し、キラに至っては大西洋連邦の最高機密のG計画のMSに搭乗して命を奪う覚悟ないまま戦場で戦う事になってしまい、更には月面で家族同士で仲が良かった親友がザフトに入隊しており、ヘリオポリスを襲う実行犯の一員となっていた事もあって心身共に追い詰められていた。

 

そんな状況の時にミアが派遣されて、キラ一人がしっかりと戦わなければ皆んなを守れないという重圧から解放され、プライベートでは面倒見が良い事もあってキラ達の中に知らない間に生じていた亀裂を修復させた事もあってキラ達は心身共に救われた。

 

「くそ、自由に飛べない陸戦仕様のMSにディンが負けてたまるか!」

 

そう叫んで撤退を選択しないで仲間の仇を果たす為にディンアタッカーのパイロットはストライクもヤバいが、一番厄介なのはミアが操る陸戦型ダガーである事を理解して先にコイツを倒さないとヤバいと感じでミアの陸戦型ダガーに照準を合わせて90ミリ散弾銃を撃った。散弾という名の通りに幾つにも弾が分散して陸戦型ダガーに襲い掛かりディンアタッカーのパイロットは当たることを確信したが、ミアは当たる直前に最小限にスラスターを吹かせて回避した。

 

必殺の攻撃を回避されてディンアタッカーのパイロットは驚くが、ならばとジンに標準的に装備してある重突撃機銃をフルオートにして撃ちまくるが、そんな攻撃を嘲笑うかの様に接近しながら回避して背中のラッチに装備しているビームサーベルを引き抜いて上空に飛んでディンアタッカーを真っ二つに切り裂いた。

 

「自由に飛べないなりにヤリよーはあるんデスーヨ。あんまりコッチを舐め腐ってんじゃネエデスヨ。おら、行くデスヨ半熟卵ヤロウドモ!」

 

『了解!』

 

そう呟いてミアはキラ達に命令を下して次の標的を探す為に移動を開始した。

 

両軍共に一進一退の攻防を展開されてるが、それでも地球連合とザフト・アフリカ共同体との戦力差はかなりあり、MSの性能でも大西洋連邦・ユーラシア連邦が採用している陸戦型ダガーやガンキャノンと比べてそこまで大差が開いていない事もあって旗艦のレセップス級にて全体の指揮をとっているバルトフェルドの下にザフトが不利な報告が目立つ様になってきた。

 

『こちらS25地区、至急応援を、うわぁー!』

 

『ダメだ極東のMS部隊が止められない。誰でも良いから助けてくれ!』

 

『こちらアポロ中隊。数えきれない数のリニアガンタンクの部隊が接近中。我々だけでは対処は無理だ。至急増援を!』

 

流石の余裕を崩さないバルトフェルドも味方の不利な報告が無線越しで次々と聞いてしまえば焦り、余裕の表情が崩れて表情を歪める。

 

「まさか此処までとは…連合の戦力を甘く見たつもりはないが、僕自身も彼等を過小評価していたみたいだ。仕方ない」

 

「隊長、やはり本国から送られた例の『アレを』……」

 

「ああ、『アレ』を使うとなると評議会の御曹司を矢面に立たせてしまう事になるから出来れば使いたくはなかったがやむを得んな。もう戦力の出し惜しみをしてる場合じゃない、此方もラゴゥで出撃する、後の指揮は任せたぞダコスタ君」

 

「……分かりました、ご武運を隊長」

 

自分の隊長が自ら前線に出撃すると分かってダコスタはバルトフェルドに敬礼する。

 

このまま戦えば地球連合の勝利は間違いないとこの場で戦っていた大半の将兵達が確信していた。しかし、この五分後に地球連合の勝利を確信していた思いに冷水を浴びせられる事になるとは、地球連合将兵の大半が思いもしなかった。

 

冷や水を浴びせられる事になる理由が、僅か二機のMSの出現とは余計に思わなかっただろう。

 

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