ガンダムSEED 架空国家の憂鬱   作:zero3 ガイル

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第十二話 NJCの扱い、プラントの衝撃

 

CE71年5月15日。北アフリカ攻防戦に大敗したザフトは、アフリカにおける影響力は完全になくなってしまった為にアフリカの完全撤退を決定した。

 

ザフトのアフリカの完全撤退によってザフトの武力を頼れなくなったアフリカ共同体の現政権は崩壊して、親プラントから地球連合よりの新政権が発足し、前政権が行った特定部族を優遇する政策は撤廃する事を確約した。

 

地球連合よりの新政権に対して今まで前政権で甘い汁を吸って良い思いをしていた部族グループと、北アフリカで善政を引いていた砂漠の虎にすら反発した筋金入りのレジスタンスグループは新政権はザフトから地球連合に権力が移っただけだと感じて『明けの砂漠』を筆頭としたレジスタンスグループ達は新政権に反発した。

 

しかし、新政権は発足した時に確約した特定の部族を優遇する様な政策を行っていなかった事もあって権力者に良い感情を抱いてない筋金入りの反抗心がある『明けの砂漠』の様なグループと、前政権で甘い汁を吸っており、自分達の部族を優遇されなくなった事に反発したグループを除いて多くの国民は新政権を支持をした。

 

そのため国民の支持を集められなくなってしまった『明けの砂漠』の様なレジスタンスグループは自然消滅し、前政権支持派の反政府グループも自分達を虐げていた事もあって協力するグループはごく少数であった為にリーダー格が直ぐに捕まってしまい、指示する人間がいなくなった事もあって統制が取れなくなり、幾つのグループに別れて新政権にとって大した脅威ではなくなってしまった。

 

因みに『明けの砂漠』というレジスタンスグループにオーブ氏族の一つであるアスハ家の人間であるウズミの娘のカガリ・ユラ・アスハが参加していた事が発覚した。一応地球連合もカガリがレジスタンスに参加していた事は分かっていたが、特に興味を示さなかった事もあってその件は黙認した。しかしオーブの氏族会議で連合が深く追求した場合は大きな国際問題となってオーブの立場が危うくなっていたとして氏族の代表達はアスハ家を非難した。

 

なお、この国際問題一歩手前の事件はカガリ本人がまだ成人してない大人ではないという事、そしてオーブ国民に絶大な支持を集めてオーブ政府内にも多数のシンパがいるウズミの娘という事もあって大きい罪には問われなかったが、それでもカガリがこれ以上やらかせば黙認してくれた地球連合が本格的に動いてオーブの立場が危うくなると判断して、オーブ政府はカガリを強制帰国をさせる事を決定した。

 

因みにカガリのせいで色々とやらかしたアスハ家は首長ではなくなり、セイラン家が新たな首長になったが、それでも長年オーブの首長として君臨し、首長時代の功績が凄まじくデカい事もあってアスハ家でなくウズミ個人を崇拝している国民・政治家は多数存在していた事もあって、オーブ政治の中核は今だにウズミが握っていた。

 

史実世界ではキラと深く関わって世界の命運を握る重要な働きをする事になるカガリだが、この世界では結局キラと縁がなかったのか最後まで関わる事はなかった様だ。

 

そして場所は変わって極東連邦の転生者・非転生者達の経済人・政界人の中でも選りすぐりの人間だけが選ばれて参加する事が許される極東連邦の究極の利害調整機関である大和会。

 

そんな大和会の会員である極東連邦の政治・経済を担うトップ達は、今回の会合に参加してる誰もが空気が重く、表情が暗かった。

 

「どうするんですか『アレ』」

 

「いや、どうするもこうするも」

 

「ここにいる誰だって判断に困りますよ例の『アレ』は」

 

「ですよね」

 

大和会に選ばれた政界・経済界の重鎮達でも色々と困難な問題に対して議論を交わした続けて対処してきた。しかし、数多くの難題に対して対処してきた大和会に勤めて長いベテラン会員でも極めて難解な問題を突きつけれられたものであり、それは大和会最高議長に選ばれている赤星首相も同じだ。最高議長に選ばれた本人も今回の議題に関して高度な政治的判断を要する為に即決する訳にはいかなかった。

 

「北アフリカに進軍した連合の戦力の三割を壊滅させたザフトの新型MSを鹵獲したと報告を受けた時は自分はあまりに大きい戦果に大変喜びましたが」

 

「直ぐに冷や水を浴びせられるとは思わなかったでしょうね」

 

「それは同感だ」

 

「ああ、鹵獲したザフトの新型MSの動力源がNJCを搭載した核エンジンを使用してると分かればな」

 

そう、大和会の会員達が極めて困難な解答を求められた代物とは、北アフリカ攻防戦で連合の戦力の三割を壊滅させたザフトの新型MS二機に搭載されてる核エンジンを使用可能にしてる代物が、プラントがCE70年4月1日に地球に投下して地球全土に猛威を奮って原子力を完全に停止させたNジャマー。そのNジャマーの効力の一つである原子力停止という機能を無力化させて原子力を復活させる事が可能となったNJCが搭載してある事であった。

 

「我々も含めて各国のNJCの完成は急務だったのは事実だからな。現物が手に入ったの悪い事ではない」

 

「そうですね。NJCの現物が手に入ったおかげでまだ実用段階まで進んでいなかった我々のNJCの研究は一気に進んでNJCは直ぐにでも完成しますよ」

 

「NJCが完成すればNジャマーによって停止している原子力施設は復帰して世界中のエネルギー不足は解消されてエネルギーに関しては戦前と同じレベルに回復しますからね」

 

「ああ、原子力が復活すれば世界各国の復興も一気に進み、地球各国の暮らしは短期間で戦前と同じレベルに復活する」

 

「だが、現時点で無闇にNJCの技術を世界に公開する訳にはいかないがな」

 

「まあ……そうですよね」

 

NJCが完成したからと言って無闇に扱う訳にはいかなかった。

 

エネルギー不足による難民・食料問題の解決という事だけを考えればNJCを使用して世界各国で停止している原子力発電所を復活させてエネルギー問題を解消させるべきであり、地球国家で初めてNJCを完成させてエネルギー不足を解消させたという実績があれば、極東連邦は地球各国における影響力を更に高める事が出来るという事を考えれば極東連邦の政治家達も直ぐにNJCを使用して各国の外交を有利に進めたいだろう。

 

ブルーコスモス過激派という存在がいなければが付くが……。

 

「下手に完成したNJCを各国に配ったらブルーコスモス過激派が黙っていませんよ」

 

「ですよね。連中の息のかかった人間に渡れば原子力発電所より先に核ミサイルの方を優先して使いますよ」

 

「そうなれば血のバレンタインの再現ですね」

 

「いや、それ以上にNジャマーを地球に投下した報復という理由をつけてプラントのコロニー全てに復活した核ミサイルを撃ちかねないぞ」

 

「血のバレンタイン以上の惨劇を起こすという事ですか、そんな馬鹿なと言いたいですが」

 

「今のブルーコスモスは過激派が盟主だからな」

 

ブルーコスモスが大西洋連邦を中心に経済・軍事にも多大な影響力をある事が原因で大和会もNJCの扱いに対して慎重にならざるを得ないのだ。大和会の会員が言った様に無闇にNJCを提供してしまえばブルーコスモスの息がかかった人間が核ミサイルを復活させてプラントのコロニーに全て撃ち込んでプラントのコーディネイター全てを全滅させるまでやりかねないからだ。

 

この大和会の内容をブルーコスモスの盟主であるムルタ・アズラエルが知れば「何で僕が高い金を払ってまで作った物を自分で破壊するんですか」と、心外だと言わんばかりに抗議しただろうが、それはこの世界の本人は損得勘定で動いてる為に核ミサイルをプラントに撃つ決定は下さないだろうが、史実世界ではNJCの技術を手に入れたら核ミサイルを復活させてプラントのコロニー全てに撃ち込む事に何の躊躇もなく実行していた。

 

「ですが、NJCの技術を秘匿し続ければ我が国は非難されて最悪孤立してしまいますよ」

 

「何しろ我が国と一部の国を除いて原子力が使えない弊害でエネルギーと食料不足の解決の目処が立っていませんからね」

 

「そんな状況でNJCを秘匿し、NJCの技術を極東が出し惜しみしてると認識されたらエネルギー不足や食糧不足に悩む各国はプラントより先に極東を倒せと動きますよ」

 

「分かってる。分かってはいるが、そう簡単に各国にNJCを提供する訳には……」

 

まさかザフトの新型MSを鹵獲した事が、ここまで高度な政治的問題に発展するとは大和会は思わず頭を痛めるのであった。

 

ーーー。

 

しかし大和会以上にプラントはフリーダムとジャスティスが極東連邦に鹵獲された事に頭を痛めていた。

 

「それは本当に事実なのか」

 

「ザラ議長、私も信じたくありませんが事実です」

 

CE71年四月にプラント最高議長に就任したパトリック・ザラは北アフリカ攻防戦で、プラントの技術の結晶というべきフリーダムとジャスティスが極東連邦のMSに敗北しただけでなく、二機とも極東連邦に鹵獲されてしまったという事実を信じられない様子であった。

 

「そんなまさか」

 

「ナチュラルのMSに敗れただけでなく鹵獲されてしまうなんて」

 

「何かの間違いではないのか」

 

フリーダムとジャスティスの敗北と鹵獲された内容は評議会のメンバー達のショックはかなりのものだった。

 

「悪いが詳細な内容を教えてくれ」

 

「分かりました」

 

誰もがフリーダムとジャスティスの敗北と鹵獲というダブルパンチで動揺を隠せない中で、パトリック・ザラも下等なナチュラルに誇り高きコーディネイターの結晶であるフリーダムとジャスティスが敗北しただけでなく、鹵獲された事にハラワタが煮えくり変える思いだが、それでも何とか表情を表に出さないように冷静な表情を保って二機が鹵獲された時の詳細な情報をユウキに教えてもらった。

 

「これがフリーダムとジャスティスが敗北し、鹵獲された時の映像です」

 

ユウキは北アフリカ攻防戦に参加したパイロットから提供されたデータを再生した。

 

フリーダムとジャスティスに同伴していた生き残ったディンが記録した戦闘記録映像を用意されたモニターでパトリック達は確認したが、その内容はとても信じられない内容であった。

 

「なんだあの巨大なMSは腕を飛ばしたぞ」

 

「威力は確かに凄いが、腕を飛ばすリスクを考えるとデメリットの方が大きいぞ」

 

「MSの長所をなくしてどうするつもりなんだ?」

 

「なんだあのメチャクチャな機動は!?」

 

「あんな動きをすれば我々コーディネイターでも凄まじいGによって気絶してしまう」

 

「MSで格闘技!?」

 

「そんな馬鹿な、あれだけ連続で殴ればMSのマニピュレーターがイカれてしまうぞ」

 

随伴していたディンの映像は戦闘記録映像の為に荒い映像であったが、それでもフリーダムとジャスティスが撃破されて鹵獲されるまでの内容はしっかり録画されていた為に評議会のメンバー達は……。

 

「流れた映像は本当に真実なのか、我々に出来の悪いSF映画を見せた訳ではあるまいな」

 

あまりにも俄かに信じられない内容だった為に眉間に皺を寄せた険しい表情でパトリックは呟く。フリーダムとジャスティスと対峙した巨大MS(特機)がスラスター付きの腕を飛ばしたり、目からビームを出したり、通常のMSも常識外れの機動を披露しただけでなく、MSで格闘技の様な動きでフリーダムを倒した映像が出れば無理もなかった。

 

「信じられないのは無理もありませんが事実です。この戦闘映像を提供したディンのパイロットだけではありません。地上でもフリーダムとジャスティスと戦っていた様子を確認している兵士は大勢おり、アフリカから撤退して生き残った兵士達の多くが映像に映っている内容と同じ事を報告しています」

 

「つまりは我々は遥か昔の西暦時代のロボットアニメの様なMSに負けたという事か」

 

「その通りです」

 

ユウキの言葉に評議会のメンバー達は何とも言えない表情となる。まさか、こんな遥か昔のロボットアニメの様なMSを作って実際に運用して、プラントの技術の結晶であるフリーダムとジャスティスに勝利したのだから。

 

「とにかくこの事実を広まっては国民が混乱しますから情報統制を行いましょう」

 

「それは仕方ない」

 

「それよりも本当に厄介な事になりましな」

 

「全くだ。まさか連合……いや、極東連邦にフリーダムとジャスティスを鹵獲されてしまうとは」

 

「二機の動力源の秘密は既に暴かれたと考えていいでしょう」

 

「そうなれば血のバレンタインの再現だ」

 

「しかし極東がその様な蛮行に走るでしょうか?」

 

「何を悠長な事を言っている。連中も地球連合の一員である事を忘れているのか」

 

「極東がやらなくても大西洋連邦は実行するでしょうね。連中のバックにはブルーコスモスがついていますから」

 

「防衛を強化するのは前提として、とにかく今は人手が足りない」

 

評議会のメンバー達の懸念通りにフリーダムとジャスティスが鹵獲された事でNJCは地球連合に解析され、核ミサイルの復活は時間の問題とされた為にパトリックはプラントの防衛戦略を根本的に見直す必要に迫られたのであった。

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