アフリカ大陸の完全撤退により地球におけるザフトの影響力は下がってしまった。最近は地上・宇宙共に地球連合部隊との敗走が続き、最近では北アフリカ攻防戦で多数の戦死者を出してしまった事がトドメとなってしまい前々から地上侵攻作戦から言われ続けていたザフトの人手不足は許容できる範囲を大幅に超えてしまった。
そこでプラント最高評議会は、これまでは反対意見が根強かった事もあって実行に移せなかった徴兵制を採用する事を決定した。当然の様にパトリックの決定に反対意見は強かったが、それでも現状の志願制だけでは兵員が全く足りず、足りない兵員を賄う方法に対して傭兵を雇ったり、親プラント国家である大洋州連合から提供してもらう案もあったが、傭兵は勝ち馬に乗る方を選択する傾向が強い為に戦局が不利な現状では裏切る可能性が高い事たもあって足りない兵員を傭兵で賄う事はリスクが高い事もあって却下された。
そして大洋州連合に兵力を提供してもらう案も、大洋州連合は親プラント国家で積極的にプラントと協力はしているが、プラントに協力する現政権に対して反対勢力が根強く、最近はザフトが連合に対して不利な状況が続いてる為に自国の利益だけを追求した場合はプラントをいつ裏切っても可笑しくないと考えてる為に大洋州連合に兵力を提供してもらうには傭兵同様にリスクが高い事もあって却下した。ただそれ以上にパトリック自身が大洋州連合を所詮はナチュラルの国と考えてる為に信用してない事も大きい。
その様な理由により徴兵制が採用された訳だが、即時に兵員不足を解消したい狙いもあり、本来の訓練カリキュラムを大幅に縮小した事もあってザフトが示した基準値を下回るザフト兵が増加、そして訓練短縮により開戦前より習っていた最低限の軍隊のモラルに関する科目も撤廃してしまった事もあって開戦初期から問題視されていた感情に走って国際ルールを守らないザフト兵士が更に増え、そうした行為に走ってしまう新兵に注意しようとすれば、プラントのコーディネイター特有の選民意識の塊のプライドの高さもあってプライドが刺激されて指揮官に反発する新兵が多発、それが原因でザフトの指揮官達は統制を取ることが更に難しくなってしまった。
そうした新兵の問題が多発した事により、もう少しマシな新兵を送ってくれ、どんな基準で徴兵した兵士を選別している、国際問題ばかり起こす連中を送ってくるな!と、現場のザフト指揮官達が本国の決定に対して凄まじく抗議したが、パトリックが国際基準そのものがナチュラルが示したルールでコーディネイターである我々が守る必要がないという暴論を展開して現場の抗議をいっさい無視して、文句を言う暇があるなら兵士達を統制する努力をしろと言わんばかりの態度であった。
だが、パトリック・ザラの現場意見を無視するやり方にザフトの指揮官クラスの多くが「このまま本国の連中の言うことを聞いて大丈夫なのか?」と、不信感が高まりパトリックのやり方に懐疑的となっていった。
それはプラント本国の評議会の面々も同じであり、現場の意見を聞かない、新人類のコーディネイターは何をやっても許されるという独走的なパトリック・ザラの暴走的な行動に対して、同じ過激派の中にも「いくら何でもやり過ぎだ」という思いが強くなり、パトリック・ザラにこのままプラントの舵取りを任せて大丈夫なのかと不安が高まっていくのであった。
そして大西洋連邦でも大きな動きが起きていた。大西洋連邦のアメリカのニューヨークに存在するブルーコスモスの過激派の中でもムルタ・アズラエルの次に影響力を保有しているロード・ジブリールの別荘に大西洋連邦警察の特殊部隊が雪崩れ込み、睡眠中のロード・ジブリールの寝室に突入した。
ロード・ジブリールは突然警察の特殊部隊が現れた事に驚いた。自身が保有しているこの別荘にはごく少数の自身が選抜して選んだ信用している人間にしか明かしてないのに、そんな場所に突然警察の特殊部隊が突入した事で混乱するが、直ぐに特殊警察の隊員達に激怒した。
「無礼な!私を誰だと思っている!」
「ロード・ジブリール、貴方には逮捕状が出ています。我々と一緒にご同行をお願いします」
「逮捕状だと、私がいったい何をした!?」
「貴方には大西洋連邦政府より国家反逆罪の罪状が出ています。超法的処置により大西洋連邦政府から貴方を逮捕する事を許可されています。抵抗をしなければ手荒な扱いは致しません。改めて申し上げます、我々と一緒にご同行をお願いします」
「ふざけるなぁぁああ!!」
ロード・ジブリールは捕まってたまるかと抵抗するが、この様に暴れる人間を制圧する事を想定して厳しい訓練を受けていた特殊警察の隊員達は直ぐにジブリールを取り押さえ、彼に手錠をかけて連行した。
ロード・ジブリールは最後まで「はなさんかあぁぁあ!!」と、叫んでいたが警察の特殊部隊の隊員達は気にせずロード・ジブリールが逃げない様に数人かがりで取り押さえて警察車両に入れて、その場を後にした。
「今回の件、ご協力感謝します」
『構わんよ。我々も奴には手を焼いていたからな』
『このまま暴走を続けては我々の利益を大きく損なうからな』
『然り』
ロード・ジブリールが逮捕されて直ぐにブルーコスモスの盟主というトップの座にいるムルタ・アズラエルは自身が保有している別荘にていくつものテレビモニターに映る中年と老人達と会議をしていた。
ムルタ・アズラエルがテレビモニターで会話している人物達はロゴスと呼ばれる組織に加入している人物達であり、そのメンバー達に共通しているのは軍事・医療・科学・金融・食品とジャンルこそ違うがアズラエル同様に世界経済を牽引する人間という事である。
実際に各国を代表する大企業は一部の例外を除いて基本的にロゴスの影響下に入っており、史実世界にてオーブの首長となったカガリも「彼等のグローバルカンパニーと関わりがない国などあるものか!」と言った様にロゴスとは世界の資本そのものである為に、彼等の存在をよく知る人間達からは「民衆が知らないだけで、ロゴスは既に世界征服を完了している」と言われている。
因みに極東連邦もロゴスの傘下に入っている訳ではないが、それでも上記の通りに世界経済で彼等と関わりのない企業は存在しない為に極東連邦も大西洋連邦ほどではないが、ロゴスとは少なからず関わりはある。
「それは同意しますね。何しろ極東連邦の『例の組織』が秘匿してる技術は僕も、そして貴方達も是が非でも欲しいですが、ジブリールやそれに深く関わる連中がいては秘匿技術を提供して貰う為の交渉も出来ませんからね」
『例の組織、大和会か』
大和会の言葉にテレビモニターに映る人物達の多くが眉間に皺がよる。
ロゴスは西暦時代から大和会のメンバーに苦杯を飲まされた事が数多くあり、彼等を排除、または傘下に収めようと裏工作を何度も行ったがその度にロゴスは返り討ちにあった。
大和会もロゴスに対して警告としてその時代のロゴスの幹部を暗殺、または重要な傘下企業を買収、または倒産させる様な事を大和会は実行して、ロゴスメンバー達に自分達の領域を犯せば利益だけでなく命もなくなるという事を見せつけてきた。そのため現在のロゴス方針としては大和会と仲良くするつもりはないが、東アジアの様に敵愾心を丸出しにして積極的に敵対する様な事はせずに、お互いの領域を犯さない様に監視し合う冷戦状態を構築していた。
『しかし本当に大和会が鹵獲したザフトの新型MSにNジャマーを無力化する事が可能な装置が搭載されているのか?』
『貴様の勘違いという可能性もあるぞ』
「何も僕の思い込みだけで判断していませんよ。北アフリカに進軍した戦力の三割を葬った二機の新型MSの火力と機動力を確認して判断したんですよ。僕も改めてアフリカで暴れる新型MSの戦闘記録映像を見ましたが、あれだけの火力と機動力は従来のバッテリー機のMSでは5分で無くなってしまうとMSの専門家も断言しています。にも関わらずプラントの新型はバッテリー切れを起こさずに問題なく戦闘を継続していました」
『確かに我々もザフトの新型の性能は確認はしたが』
『プラントも極東連邦と同様に新型融合炉の開発に成功し、MSに搭載可能な程に小型化した可能性は?』
「それこそあり得ませんね」
ロゴスの老人の言葉にアズラエルは断言した。
「連中が極東連邦の量産MSにすら採用している小型高出力核融合炉を採用してるならとっくに量産MSに採用してますよ。連中の能力とプライドの高さは僕は最も理解していますからね」
実際に他の連合国家もプラントも極東連邦が採用しているMSの動力源に核融合炉を採用している事は分かっている。
しかし、どの様にして核融合炉をMSサイズに小型化したのか、核融合炉で発生する超高温のプラズマ場を閉じ込めるのに必要な技術が全く分からないのだ。
分かってるのは極東連邦が採用している核融合炉は、核融合炉の起動で発生している超高温のプラズマ場を特殊なフィールドを展開している事までは連合・プラントの技術者は理解しているが、核融合炉に使用するのに必須な特殊フィールドの原理が全く理解出来ない為に、連合もプラントも戦場でジャンクと化した極東連邦のMSを鹵獲して徹底的に解析したが、現在でも分かっていない為に連合・プラントの技術者達は現代の技術では理解が出来ない古代のオーパーツを解析している気分になったとコメントしていた。
まあ、大和会の方でも宇宙世紀出身の技術者の説明でミノフスキー粒子について説明されたが、最初は本当にその様な粒子があるのか疑問に思っていた。しかし、実際に技術者の言う通りにミノフスキー粒子は発見され、従来の原子力よりクリーンで、莫大なエネルギーを生み出す事が可能なミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉は完成した。
そしてミノフスキー粒子は核融合炉の開発に活用されるだけでなく、あらゆる場面にも活用出来る事が判明しており、特にミノフスキー粒子を戦場で扱った場合は従来のレーダーや精密誘導兵器は使い物にならず、戦場は第二次世界大戦時の有視界戦闘が主流となる事も判明した。
そのため、ミノフスキー粒子を無作為に扱ってしまったら大変な事になってしまい、一年戦争以降はミノフスキー粒子がばら撒かれた時の事を想定してインフラ設備を整えた宇宙世紀だが、CEでその様な対策をされていない為にミノフスキー粒子を使用してしまえばNジャマー以上に地球・プラント関係なくインフラは壊滅してしまう為に大和会では戦場でのミノフスキー粒子の使用を頑なに禁止にした。
「そんな事よりも問題はNジャマーを無効化する装置です。Nジャマーを無効化する技術を使用する事が出来れば原子力が復活し、エネルギーや食料事情は戦前と同じレベルにまで回復しますよ」
『確かにな、今の我々が優先すべきは原子力の復活』
『原子力が復活すれば停滞していた経済活動も戦前と同レベルにまで戻す事が出来る』
『ああ、そうなれば今以上に兵器の生産量を増やす事が可能となり、規模で圧倒的に劣るザフトを壊滅させる事は更に容易くなる』
『然り、我々が高い金を払って作ったものを勝手に盗んだ挙句に独立を宣言した愚か者に現実を思い知らせねばならんからな』
ロゴスのメンバー達はブルーコスモス過激派の様なコーディネイター撲滅にさして興味がない。実際に彼等の傘下企業にはコーディネイターも在籍しており、ブルーコスモス過激派がいくらコーディネイター撲滅を叫ぼうとも地球経済にコーディネイターはガッツリと組み込まれている為に完全排除は不可能であるからだ。
実際にロゴスも現在のアズラエルと同様にこれまで通りにナチュラルの利益に貢献し、地球のコーディネイター達のように自分達が示したルールを守る範囲なら自由にして構わないというスタンスだ。
だからといってロゴスは別に人道主義者という訳ではない。彼等はいかにして莫大な利益を自分達のモノにするというのが行動原理であり、実際に莫大な利益が生まれて自分達のモノにする環境を作る為なら戦争さえ始めるという考えの持ち主だ。それを利用する為にナチュラルVSコーディネイターの構図を作る為にロゴスはブルーコスモスを支援してきた。
しかし最近は自分達の意図に反して暴走する案件が増え、更には自分達と同じロゴスメンバーであったロード・ジブリールもロゴスの資金源でブルーコスモス過激派を支援して暴走する始末であり、挙げ句の果てに地球連合で自分のシンパを扱って高い金を払ってまで作ったプラントに核ミサイルを撃つという蛮行まで実行した事もあってジブリールの暴走はロゴスのメンバー達にとって許容できる範囲を大きく超えてしまった。
そこでブルーコスモスでジブリールを疎ましく思っていたアズラエルにロゴスのメンバー達は協力して、ジブリール本人と、ジブリールと深く関わっているブルーコスモスのメンバーや実力がある地球軍に在籍するブルーコスモス過激派のシンパ達を何かしらの罪状を捏造して捕まえて無力化させた。現在残っているジブリールシンパの連中は声だけがデカいだけの無計画に暴れるテロリストと変わらない為に、アズラエルにとってもロゴスメンバー達にとっても大した脅威ではないからだ。
「そうですね。思い上がった空の化け物達に誰が主人であるか分からせる必要がありますね」
ニヤリとした表情になってアズラエルは呟く。
その後も会議は続いたが、流石に深夜帯の緊急会議という事もあって普段よりも会議の時間を短縮して会議は終了してテレビモニターが消えた。ロゴスとのテレビ会議が終了してアズラエルはホッと一息をついて、一仕事を終えた自分のご褒美に自身のとっておきのウィスキーをグラスに入れて飲むのであった。
(ジブリールが消えてくれたおかげで極東連邦との交渉はスムーズに行きますね。まあ、そのせいで老人達に高い貸しを作ってしまいましたが其処は必要経費として割り切りましょう。何よりジブリールを排除したおかげで)
アズラエルは一つの写真を見る。何年か前にアズラエル家の親族達が集まって開催されたパーティの時に親族一同が集まって撮った写真であり、大勢の親族達が写っている写真の中には自分と溺愛してる娘を一緒に抱っこしている妻が写っている。そして写真の隅に綺麗なドレスを着用して一人だけ不機嫌な表情を父と母に咎められている様子で写っているミア・アズラエルがいた。
「これでようやくミアの力を利用しようとする力のある不埒な輩はいなくなりましたね」
ムルタ、アズラエルは自身がブルーコスモスのメンバーであり盟主になっている事もあってミア・アズラエルに嫌われている事は充分に理解していた。しかし……。
「ミア、君が僕を嫌っているのは充分に理解してるよ。でもね、君はアズラエル家の……いや、僕にとっての希望の星なんだよ」
小さい頃に同級生のコーディネイターに軽くあしらわれた事が強いトラウマとなっていた。それを払拭する様に力で勝てないなら知識で奴らを上回って奴らより上になってやると考えていたが、知識でも同じ努力をすればコーディネイターの方が有利という厳しい現実も分かってしまった。
そんなコーディネイターに強い劣等感を抱いてムルタが大学に進学したばかりの時に親戚の関係者が集まるパーティの参加していた。その中にはコーディネイターのグループもおり、そのコーディネイターのグループは親に甘やかされて育てられたのか、プラントのコーディネイターの様に選民意識が高い事もあってナチュラルを見下した様に発言してミア・アズラエルに絡んできたが、次の瞬間、ミアが起こした凄まじい行動がムルタの目に強く焼きついた。
ミアがそのコーディネイターのグループ達を紙切れの様に一瞬で殴り飛ばしたのだ。あまりの現実離れした光景に僕も周りも唖然とした。しかし、コーディネイターのグループはナチュラルのしかも自分達より遥かに年下の女性にやられた事にプライドが刺激されて逆上して食器のナイフやフォークを手に持って襲いかかったが……。
「テメーらのプライドのタカさは相変わらずデスネコノヤロー、努力もシネーガムシロップの様に甘いコーディに現実を教えてヤルデスーヨ」
彼女独特の口調と共に圧倒的な蹂躙が始まった。コーディネイター達は一方的に殴られた、蹴られ、思いっきり叩きつけられてた。一方的にボコボコにされたせいでコーディネイターのグループのリーダー格が許してくれ!と、ミアに謝ったが……。
「ナイフとフォークで私をキルシヨウトしたデスヨネ。直ぐに謝って許されとるオモイアガルならケーキにハチミツをかけるくらいテメーはアメーデスヨ」
そう言って蹂躙を再開して、コーディネイターのグループ達は生きてるのが奇跡というくらいに重症となっていた。
この騒動を引き起こしたミアは親から凄まじく怒られたが、本人は気にする様子もなかった。僕も呆気に囚われたが、僕はミアが気になってミアに声をかけた瞬間にアッパーカットを喰らって僕は気を失った。後から聞いたけど僕にアッパーカットを放った事で余計に会場は大パニックになったらしい、僕はアズラエル財閥の後継者だからパニックになるのは無理もないけどね。
ミアが話をかけようとした僕にアッパーカットを放った理由は「ブルコスが私に声をカケヤがったらからデスーヨ!」との事らしい、彼女はブルーコスモスをかなり毛嫌いしていたらしい。まあ、僕がコーディネイターが憎くてブルーコスモスに入っている事は親族の間では有名だったからね。
父はパーティをメチャクチャにし、僕にアッパーカットを浴びせたミアに凄く大激怒してミアに対して制裁しようと考えていたが、僕はこの時すでにミアのファンとなっていた事もあって必死に父を説得してミアに対してお咎めなしにする様に頼んだ。
父親は納得がいかなかったが、被害を受けた僕が許すといった事でミアはお咎めなしとなった。
あの出会いが僕はミアの熱狂的なファンとなり、僕にとっての希望の星になった瞬間かな。あの光景は今でも忘れる事が出来ないし、生涯忘れる事はないと思うよ。
・ロゴスは大和会の存在は知っていますが、設立した真の目的である転生者の監視と保護の目的は知りません。
・ミアの出会いでムルタ・アズラエルのコーディネイターに対する強い劣等感が払拭されて、原作以上に商売人としての側面が強くなりました。現在の彼が一番許さないのは妻と溺愛してる娘と、本人の希望となっているミアに手を出して利用する輩ですwww。