ガンダムSEED 架空国家の憂鬱   作:zero3 ガイル

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第十五話 NJC、技術提供

 

 

 

「我々の提案を受け入れてくれてありがとうございます皆さん」

 

「いえいえ我々の方こそ感謝しています。これでNジャマーの災害に苦しんでいる人達を救えます」

 

「極東連邦政府の決断に我々は敬意を評します」

 

CE71年5月22日に極東連邦の首相である赤星を含めた地球連合の代表達による調印式が終わるとお互いに手を取り合うシーンになった途端にカメラマンのシャッターが一斉に切られてカメラの光が地球連合各国の代表達に浴びせられた。

 

地球連合代表による調印式の内容はNJCによる取り決めによるものであった。NJCの技術提供に関して慎重な姿勢だった極東連邦はついにNJCの技術を各国に提供する事を踏み切ったのだ。

 

無論極東連邦政府もNJCの技術を提供をするのはかなり渋っていた。

 

NJCの取り扱いを誤ってしまえばブルーコスモス過激派によって復興より先にNJCを核ミサイルに搭載して扱うには目に見えており、かといって秘匿を続ければエネルギー不足に苦しんでいる各国から非難されて極東連邦が孤立してしまう。

 

NJCの対応について頭を痛めていた極東連邦政府であったが、ムルタ・アズラエルが突然極東連邦政府と話がしたいと通達が来たのだ。ムルタ・アズラエルとは大西洋連邦の経済界に多大な影響力を誇る大西洋連邦経済界の重鎮で、その影響力は世界各国の企業や政治家達も無視が出来ない人物だ。そんなブルーコスモス盟主であり、大西洋連邦経済界代表するアズラエル財閥総帥のムルタ・アズラエルが極東連邦に突然訪問し、そんなムルタ・アズラエルが極東連邦政府対して求めているものは完成したNJCの提供であった。

 

ムルタ・アズラエルは提供してくれる技術に見合った金額は絶対に支払う様に各国の首脳を説得する事を約束しますと言ったが、極東連邦政府はムルタ・アズラエルが言ったNJCの技術提供に関して難色を示した。

 

今の彼は過激派、中道派、穏健派とも違う彼独自の派閥とも言えるアズラエル派を形成しており、過激派ほどコーディネイターに対して厳しい処置をする訳でもなく、かといって穏健派の様にコーディネイターに甘くはない。ブルーコスモスで台頭してきたアズラエル派は、どちらかと言えば中道派に近く、彼の方針は何度も説明されてるが、これ以上第一世代コーディネイターを作らせない、地球で暮らすならナチュラルが示したルールを守る範囲ならコーディネイターでも自由にして貰っても構わない、ただしプラントの様に独立国家を作ることは許さないという考えが基本であった。

 

その様な派閥をブルーコスモスで形成しており、最近は過激派筆頭格であるロード・ジブリールを含めた実力がある彼のシンパも世界各地で国家反逆罪で捕まった事もあって、現在のブルーコスモスはアズラエル派閥一強という感じだ。

 

そのため過激派と比べて妥協点を見出せす事も可能だが、それでも以前の彼は学生時代からコーディネイター撲滅の為には手段を選ばないブルーコスモス過激派に所属し、最近まではジブリールと並んで過激派筆頭格の人物であった為に素直に信じて良いのかという懸念もあった為に極東連邦政府はムルタ・アズラエルを警戒していた。

 

当然の様に極東連邦……いや、大和会の会員達が自身を警戒していると考えてる為にアズラエルも警戒されている事は百も承知であった、しかし彼は今回の交渉に関しては絶対の自信を持っていた。

 

「これまで僕がやってきた事を考えればNジャマーを無力化する技術の提供を渋る気持ちは分かりますよ。ですが、貴国がNジャマーを無効化する技術の出し惜しみを続ければ首を締めるだけと思いますが」

 

ムルタ・アズラエルの言葉の通りに事実である。NJCを使用すれば核ミサイルが復活する事は事実だが、NJCがなければ地球全土にばら撒かれたNジャマーの影響で使用出来ない原子力発電所の復活も出来ないのだ。実際に極東連邦としてもエネルギーや食料不足の援助にも限界はあるため、早いところ各国の復興が完了して自立して欲しいというのが極東連邦の本音でもあった。

 

不安は残るが極東連邦は地球各国に対してNJCの技術提供を決めた。この情報は世界中を駆け巡り、NJCの調印式の様子は世界各国のテレビ局とマスコミ達によって報道された。

 

こうして地球各地で停止している原子力発電所は復活していき、エイプリル・フール・クライシスによって生じた災害に対して必要なエネルギーを入手する事に成功した事により地球各国の災害地域の復興が本格的にスタートしたのであった。

 

なお、この調印式の三日後、CE71年5月25日にザフト軍は大西洋連邦によって制圧された南アメリカ合衆国のパナマに設置されてるマスドライバーを破壊する為にパナマ基地に攻撃を仕掛けたのであった。

 

ーーー。

 

最近は宇宙と地上でも敗北が続き、トドメに第二次ビクトリア攻防戦、北アフリカ攻防戦に敗北してしまった事でザフト軍はアフリカから完全撤退してしまった。アフリカの完全撤退はザフトの地上侵攻作戦を支える為に必要な地上の天然資源拠点を失ってしまった事を意味しており、ザフト地上軍の大幅な戦力低下は免れなかった。現時点で親プラント国の大洋州連合管轄のカーペンタリア基地の戦力は安定してる為に余裕はあるが、アフリカ全土が地球連合軍に奪還され、アフリカに対して更なる戦力増強を決定した事もあってアフリカ大陸に近いザフトのジブラルタル基地の陥落は時間の問題とされていた。

 

そんな連戦連敗の状況が続いてザフト軍の士気と兵力は大幅に低下し、敗戦が続いた事によって多数のザフト兵士の戦死が響いて兵員不足は限界まで来ていた事もあって徴兵制の採用と訓練短縮によるザフト兵の練度とモラルの低下は指揮官クラスのザフト兵にとって頭が痛い問題となっていた。

 

そして極東連邦によるNJCの情報提供が引き金となってこれまで全面的に協力していた大洋州連合の同盟関係に綻びが生まれた。今まではプラントの高い技術力とエネルギー輸入よって大洋州連合の経済力は戦前以上に上がって国民の暮らしが豊かになった事もあって選民意識が強いプラントのコーディネイターに対して不信感は強いものの、プラントとの同盟で豊かになったのは事実であるため国民は大洋州連合政府の政策を支持していた。

 

だが、最近は地球連合に連戦連敗が続いた事、極東連邦が地球連合加盟国や中立国に対してNJCの技術提供を行った事もあって、大洋州連合に存在していたプラントとの同盟に最初から反対していた政治勢力が同じ様にプラントとの同盟反対していた国民達の支持を受けて復活し、政府の政策を支持していた国民の中にも本当にプラントとの同盟を継続して平気なのか?と、不安が蔓延し始めたのだ。

 

この状況にパトリック・ザラは焦りを見せていた。このままでは自身が本当に信用している人間にしか明かしてない『新兵器』の完成を迎える前に地上にいるザフト軍が全滅してしまい、地球連合が本格的に宇宙に進攻を開始してしまうと考えていた。

 

こんな状況では地上での巻き返しは難しいと判断したパトリックは何が何でも『新兵器』の完成まで地上で時間を稼ぎたいと考える。しかしザフトの実力に不信感を抱き始めた大洋州連合に対してザフト地上軍が健在である事を示さなければまずいと考えたパトリック・ザラは、本当は地上の戦力をこれ以上無駄にしたくない、しかし見下しているナチュラルの国に対して不本意ではあるが、同盟国としての信用を取り戻す為にパナマのマスドライバーを破壊してザフトの軍事力を健在であるとアピールする為にザフト軍はパナマのマスドライバーを破壊する為にパナマ基地に侵攻を開始した。

 

「早くパナマに着かねえかな、下等なナチュラルをぶっ殺してやるぜ」

 

「ああ、無能なナチュラルをたくさん殺せると思うと興奮するよな」

 

「俺達新人類に逆らった事を後悔させてるぜ!」

 

「首を洗って待ってろよナチュラル!」

 

この様にパナマ基地のマスドライバー破壊の為に進軍したザフト艦隊のMS部隊の若いザフト兵パイロット達はこの様に息巻いていた。そんな様子に対してベテランパイロットであるザフト兵達は呆れた様子であった。

 

「アイツら戦場をゲームか何かと勘違いしてないか?」

 

「どうして本国の連中は世間知らずでプライドだけは一丁前のガキ達を徴兵してよこしたんだよ」

 

「なあ、アイツらに高度な連携が出来ると思うか?」

 

「言うな、考えただけでも頭が痛い」

 

「評議会の御曹司様も今回の参加にする事が決定してるんだ。これ以上頭が痛くなる案件は勘弁してくれ」

 

戦場ではナチュラルもコーディネイターも等しく死ぬ。それは開戦初期から地球連合と戦ってきたベテランのザフト兵士達は骨身に染みていた。しかし本国から来た新兵達はその様な事を考えていない。

 

奴らは自分達にはザフトが誇るMSが与えられており、下等なナチュラルが扱うゴミ兵器はMSの的でしかない、ナチュラルがMSを実戦投入しているという話も最近は聞くが、ナチュラルが扱うMSは大した事ないと決めつけており、ナチュラルに新人類である我々コーディネイターの様に上手くMS扱える訳がないため連中のMSは我々の良い的になるだけだと新兵達は考えてるだろうなとベテランのザフト兵士達は思っており、頭がお花畑な連中の考えに呆れてため息を吐くのであった。

 

「一応パナマ攻略に必要な戦力は揃えましたが」

 

「兵の質に不安があるかね」

 

今回のパナマ攻略作戦にクルーゼ隊の隊長であるラウ・ル・クルーゼも参加しており、今回のパナマ攻略戦に必要な数と戦力は揃える事に成功したが、ザフトのベテランパイロット達が懸念した様に実践経験を知らない新人が多い事に艦隊の艦長や指揮官達は心配していた。

 

「その通りです。命令を無視して先走ってしまわないか不安です」

 

「なに、いくら生意気に見えようとも彼等も死にたくはないだろう。作戦成功の為にきっちりと働いてくれるさ」

 

「だと良いのですが」

 

「彼等を信用したまえ、指揮官である我々が不安に陥っては士気に影響する」

 

そんな艦隊指揮官の心配事に対してクルーゼは余裕を持って返事を返した。エリート部隊の隊長であるクルーゼの自然で余裕のある対応に艦長を始めとした乗員達も安心した。しかし、余裕そうに見えるクルーゼであるが彼の心情は余裕な見た目とは裏腹にかなり焦っていた。

 

(何故だ、何故こうも上手くいかない。血のバレンタイン、エイプリル・フール・クライシスの影響でコーディネイターとナチュラルが互いに激しく憎み合い滅ぼし合う関係を構築した。プラントは予想通りに破滅に進んだ、しかし思った以上に地球側は冷静でコーディネイター全てを抹殺する様に動いていない。何故だ、何故なんだ!?いや焦るな、まだチャンスはある。愚かな人類全てを私が裁く為にも!)

 

自身の運命を恨み、その恨みは地球や宇宙に暮らす全ての人類に向けられ、ナチュラルもコーディネイターも関係なく人類全てを絶滅させる為に動いた狂気の復讐者であるラウ・ル・クルーゼは自分が描いたシナリオが途中から上手く機能してない事に焦っていた。しかし、それでも自分に人類全てを裁く権利があると考えているクルーゼは、自身が描いたシナリオが崩れた為に必死に次の策を考えるのだった。

 

史実世界では本当に彼の描いたシナリオ通りにナチュラルとコーディネイターは互いに破滅に向かっていた。しかし、この世界では彼の描いたシナリオを根底から崩すイレギュラーの存在が多数存在していた事もあって、クルーゼが描いたシナリオはイレギュラー達によってメチャクチャにされてしまった。

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