二十四年前に連合・プラント大戦と呼ばれた大戦にて、徴兵制でザフトに入隊しMSパイロットとして戦ったマウロ・グラッパは、戦争終結後は生まれ故郷であるプラントを離れて、自分の父の生まれ故郷であったユーラシア連邦のイタリアのナポリで小さな飲食店を経営している。
現代でもプラントのコーディネイターは選民意識の塊で、ナチュラルや自分より能力が低いと感じるとコーディネイターですら馬鹿にするイメージが地球では強いが、マウロはそんな典型的なプラントコーディネイターと違う。ナチュラルとコーディネイターと区別せず気さくで人当たりも良く、誰に対しても面倒見が良い性格のために美味い飯を食わせて貰い相談にも乗ってくれるとあってナポリではちょっとした有名人であった。
そんな彼は、かつて大戦に参加していた自分を世間知らずのガキであったと今でも思い出すと恥ずかしくなるとコメントしている。
「プラントにいた時の俺は本当に世間知らずのクソガキだったよ。新人類に選ばれたコーディネイターにかかれば何でもできる。自分は無敵のヒーローと同じだってな。それはタダの勘違いだってあの時は思い知らされたよ」
マウロ・グラッパは語る。当時18だった彼は徴兵制度で徴兵されてザフトに入隊し、他の同期メンバーと同様に新人類である俺達コーディネイターがナチュラル共にお仕置きして、誰が地球の支配者なのか分からせてやる!と、当時は疑いもなく信じていた。そしてそれは大きな過ちであったと彼は語った。
それは彼の最初で最後の戦いでもあったオーブ侵攻作戦の時であった。
彼にとって今回の侵攻作戦が初陣であり、初の実戦で緊張もしていたが、それ以上に同期のMSパイロットの多くが認識しているオーブはナチュラルと仲良くする裏切り者のコーディネイターがいる国と認識しており、彼はオーブに在住しているナチュラルは無論、俺達コーディネイターを裏切ったオーブのコーディネイターに罰を与えてやると息巻いて出撃していたのだが……。
「い、嫌だぁぁあ!」
「なんなんだよコレは!」
「こんな事があっていいのかよ!」
次々とオーブ本島にたどり着いたザフトのMSが落とされて、無線越しで仲間の悲鳴が響き渡る。
マウロはオーブ本島にたどり着いた途端にこれは夢だと、俺は夢を見ていると現実を否定したい気持ちに支配されていた。
理由は自分の目の前で金属で覆われたTレックスの様な全長50mはありそうな巨大MSが大暴れして、ザフトのMSを次々と破壊している光景を目の前で見せられたら、誰だってこれは現実じゃなくて夢だと言いたくなるだろうとマウロは心の中で呟く。
実際にTレックスの様な巨大MSは目や口から高出力なビームを乱射し、背中の翼つきの飛行ユニットに装備してある二つの砲塔からも同じレベルの高出力のビームも発射して、極め付けはミサイルランチャーも装備して撃ちまくり、近づいたMSはザフトが誇る水陸両用MSゾノ以上に鋭い鋭利な爪でバターの様に切り裂いていく。
ザフト軍も何とかTレックスの様な巨大MSを破壊しようと、対艦攻撃用の500ミリ無反動砲キャットゥスと、拠点攻撃用の装備であるD装備と呼ばれる武装で固めたジン部隊が、大型ミサイル発射筒キャニスやゲイツが配備されるまではザフト軍MSで標準的なビーム兵器であったビームランチャーのバルルス改で一斉に攻撃を開始した。
普通なら宇宙艦を想定した対艦攻撃用の500ミリ無反動砲のキャットゥスと、拠点攻撃用のD装備の武器の一個中隊分の一斉攻撃に耐えられるMSなど存在しないのだが、Tレックス型巨大MSはザフト軍MSの一個中隊分の一斉攻撃に対して全くの無傷であり、あまりの非現実的な光景にマウロは絶望した。
俺はザフトに徴兵されてザフト兵となってナチュラル相手に戦争をする為に地球に来た筈なのに、俺はいつから現実の戦争からCEより前の西暦時代に流行った怪獣映画の世界に迷い込んでしまったんだ?頼むから早く夢から目が覚めて現実に戻ってくれ!
そんな人類の兵器が怪獣には通用せず、怪獣という理不尽な存在相手に人類は無力という怪獣映画の登場人物になってしまった事実を認めたくないためか、これは夢だと思い込みたいのか、現実から目を逸らそうと色々と考えていた時にTレックス型MSの口がコッチを向いた瞬間に高出力ビームが発射されて、その高出力ビームは自分に迫り、もはや避けようもないと考えて恐怖のあまりに目を閉じて意識を失った。
次に彼が目を覚ました時にオーブが用意した軍病院のベットであり、マウロ・グラッパは奇跡的に命が助かった事に驚愕し、そして自分はまだ生きていると実感すると、嬉しくて涙目を止める事が出来ずに人目を気にしないで泣き続けた。
「生きてる、俺は生きてるぞぉぉお!」
どうして助かったのかは本人も分からないが、マウロはあんな化け物を相手に戦って命が助かった事は奇跡であると実感し、あの化け物と戦って容易く蹂躙されて、自分が何でも出来る超人と勘違いしたガキという事を嫌という程に分かりきって、マウロはプラントの典型的なコーディネイター至上主義思想をやめて、現実をちゃんと認識して真面目に生きようと決めたのであった。
「ターゲットロックオン。メガバスター発射」
そしてマウロ達がTレックス型の巨大MSと称していたのは極東連邦がグルンガストとは系列と別系統の特機であり、名前は機械の龍として機龍と命名されている。
見た目はマウロが言った様に怪獣映画に出てくる様な巨大な恐竜を連想する見た目をしており、この機龍の開発チームの中核となっているのは極東連邦の大和会に所属する転生者であるのだが、開発チームの責任者達に共通しているのは、CEとは違う並行世界の地球で原爆に耐える事が出来る巨大生物ゴジラを始めとした、ゴジラに匹敵する戦闘能力を保有している巨大生物に対抗する為に開発された対怪獣用兵器に関わった事がある科学者達で構成されていた。
開発陣達の世界は微妙に違う場合もあったが、彼らに共通しているのはゴジラという人類が対抗できない怪獣が存在する世界の出身という事であり、この世界にゴジラの様な怪獣が現れた歴史もなく、怪獣という存在が怪獣映画の存在でしかないという認識であった。
しかし万が一ゴジラがこの世界に現れたらと考えた時に彼等は恐怖した。この世界が自分達の前世と比べると科学技術は進んでいる事は理解しているが、それでもこの世界にゴジラを始めとした怪獣に対抗する為の対怪獣用兵器は開発されておらず、こんな状況でゴジラを始めとした怪獣達が現れた場合に現用の兵器だけでは太刀打ち出来ないと強く認識していた。
科学者の中には自分達より遥かに進んだ科学力があるこの世界の兵器なら大丈夫という科学者もいたが、ゴジラ世界出身の科学者の中には23世紀という遥かに科学が進んだ未来世界の人間が作り上げたメカキングギドラも、そのメカキングギドラを解析して作り上げたメカゴジラですらゴジラは返り討ちにした実例がある為に未来技術を過信する事は出来なかった。
彼等はゴジラの脅威を嫌というほど強く認識してる為に、異常という程にゴジラに対する圧倒的な恐怖心から万が一に備えて、この世界でもゴジラに対抗する為の兵器を開発をスタートさせようとしたが問題が生じた。それは対怪獣兵器を開発する為の予算がない事であった。対怪獣用の為に兵器を作りたいと言ってもCE世界の住人は彼等の話を真剣に聞いてくれる人間は殆どおらず、彼等の話を聞いた政治家や軍人達からは「怪獣映画の見過ぎ」とバカにされた。
しかし何処かで自分達と同じ様な転生者が多く所属する大和会の噂を聞きつけて、彼等は大和会と接触を果たして大和会に所属する事になり、大和会に所属したおかげで莫大な予算を確保できる様になって彼等は対ゴジラ兵器の開発予算を確保した。しかし、大和会は開発予算を出す条件として開発する兵器を侵略に使うつもりはないが、対ゴジラ兵器はどんな状況であろうとも国防の為に使用する事を絶対条件とし、彼等が想定している対怪獣だけでなく、対人類にも使用を認めさせる事であった。
この提案にゴジラ世界の転生者達は難色を示した。それは対怪獣兵器は怪獣にだけ使用するというのがGフォースや特自に所属していた彼等の絶対的な規律であったからだ。
そのため人類に対怪獣兵器を使用する事は絶対に反対であった。しかし、大和会にはゴジラ世界とは違う並行世界出身者の科学者も多く存在しており、ゴジラ世界の転生者達だけを特別に扱うつもりもなかった為に、このまま駄々をコネ続ければ開発計画は白紙となってしまう事を恐れたゴジラ世界の転生者達は大和会の提案を飲むことにしたのだ。
そして今回は機龍の初陣であり、機龍の性能を確かめる為に実戦導入された。当然の様にゴジラ世界の転生者から反対されたが、本当に彼等が作った機龍が実践で使える事を証明する為に今回のオーブ戦に実戦導入さるたのだ。
(しかしスゲーなこいつの性能は、グルンガストとはまた別枠でヤバい機体だな)
グルンガストに匹敵する強靭な装甲と火力に加えて、生き物様に動く事が出来る柔軟性に、機龍のパイロットに選ばれた柳田中尉は機龍の性能に対して改めて驚愕し、怪獣映画の怪獣の様に暴れる事が出来る機龍を頼もしく思うのであった。
ーーー。
『相変わらず極東はフィクションのキャラクターデスーヨダ。常識ってヤツをシラネーノかとイイテエーデスヨ』
『おいおい、それは隊長がいうのかよ』
『本当だよね。隊長が一番非常識の存在なのに』
『同感』
『アァ、テメーらまたシメラレテーノデスカ、帰ったら垂直ブレンバスターの刑デスーヨ』
オルガ達はミアに対して理不尽だ、暴力反対とブーブーと文句を言う声が無線越しから聞こえる。キラもミアが言った様に極東連邦の非常識(それでも一番の非常識はミアだとキラも思っている)という事には同感であった。
実際に怪獣映画やロボットアニメの様な出てくる様な巨大MSが暴れ回り、MSが戦隊ヒーローの様な曲芸を披露しても問題がないし、アークエンジェルに搭載されている最大火力である陽電子砲のローエングリーンを遥かに上回る火力を発射する重力技術を応用したキャノン砲をMSに装備させて運用してるのだがら、ミアが言う極東は非常識という言葉に同意していた。
そんな事を考えながらミア達がカタパルトから発進していき、自分の番になっていた。
『ジェットストライカースタンバイ。キラお願い、オーブを、故郷を守って……!』
オペレーターのミリアリアの言葉にキラは頷く。何の因果で自分が大西洋連邦のMSパイロットになって戦い続けるのか理由がまだ分からないし、大西洋連邦のコーディネイターの希望になりつつあるとミアに言われてもキラには実感がわかない。
大西洋連邦軍に入隊してもオーブはキラにとって……いや、キラだけでなくトール、サイ、ミリアリアにとってもオーブは故郷であるのだ。コーディネイターと分かっていても理解がある友達と、コーディネイターであっても受け入れてくれたオーブという国はキラは大好きだからだ。
『ストライク発進どうぞ』
「キラ・ヤマト、ストライク行きます!」
故郷であるオーブを守る為にキラはアークエンジェルから飛び立つ。
なお、今回のオーブ侵攻作戦に反対していたザフトのMS部隊がザフトを離反して、ザフトからオーブ軍の味方につき、その離反部隊にはヘリオポリスから自分達を追撃してきた鹵獲されたデュエルとバスターもいるという事もあってキラは驚いていた。
先遣隊として到着した極東連邦のエース部隊もザフトMS部隊を圧倒して戦局はオーブ軍が有利と聞いてキラ達は出撃する前に喜んだが、ザフトMS部隊が無差別に攻撃し、オーブ本島の市街地まで攻撃している事が分かるとキラ達は表情は青ざめ、直ぐにどうしてそんな事をするんだ!と、キラは珍しく怒った。
「うわぁぁああ、オーブから出ていけ!」
「な、あれ、ぎゃああ!」
「す、ストライク、うわぁぁあ!」
いつも以上に容赦なくキラは戦っていた。キラは今回のザフトの無差別攻撃の話を聞いて、ザフトはキラにとって明確に絶対に倒すべき敵と認定してしまった。まあ、これに関しては平和に暮らしていたヘリオポリスを襲撃し、故郷であるオーブ本島を無差別攻撃したという事もあったから無理はなかった。
「俺達を忘れるなよキラ!」
「オーブをメチャクチャにされて怒ってるのは俺達も同じだ!」
そしてトールとサイもジェットストライカーを装備した105ダガーでオーブに侵攻しているMS部隊をビームライフルで攻撃をする
故郷をメチャクチャにされて、キラ達はザフトの蛮行に怒りながら次々とザフトのMS部隊を撃破していく。
「アイツら無茶しやがって」
まあ、今回に限っては自分達の故郷をメチャクチャにされて怒るな。冷静になって戦えと言っても聞いてはくれないだろうと、ムウは心の中で呟く。
「まあ、今回もフォローに回りますか」
若者をフォローするのは大人の役目ってねと呟きながらムウはキラ達の援護をするのであった。
ーーー。
「アイツら張り切ってやガリマスネ」
「な、速い!」
「テメーらがスロウリィナンデスーヨ」
そう呟きながらミアはリッパーを巧みに操縦し、ビームダガーでディンとグゥルに搭乗しているジンを次々と切り裂いていく。テスラドライブ搭載型と言うべきか、ジェットストライカーで無理に飛ばしているストライクと違って、重力制御の恩恵を受けている為かリッパーは飛行しても無理なく飛んでいる。
そんなテスラドライブの恩恵は空を自由に飛べるだけでなく、機動性と運動性も向上している。更に核エンジンでバッテリー切れを心配しなくなった事と、ミアの操縦技術に追従出来る事もあって、リッパーの変則的な機動と加速に対してザフトのMS部隊は追従できないでいた。
「なんて動きだ!」
「あんな動きをどうしてナチュラルに!」
「よそ見は厳禁だよ、抹殺!」
ミアの驚異的な操縦技術に驚愕しているザフト兵に対して、クロトはレイダーガンダムに装着されているスラスター付きハンマーであるミョルニルを発射して、グゥルに乗るジンは破壊する。
そしてクロトに続くようにジャニとオルガも連携して次々とザフトのMSを倒していく。
「コイツら弱い……」
「ああ、拍子抜けだ」
「だよねえ、キラと模擬戦したら一対一で勝てた試しないから本格的に軍事訓練したコーディネイターはもっと強いと思って警戒しちゃったけど」
模擬戦でキラと何度も対戦したが、自分達の機体より旧式のストライクで戦っているのに、オルガ達はキラと一対一の模擬戦で一回も勝てなかった事もあって訓練したコーディネイターはもっと強いと思って警戒していたが、オルガ達は自分達が思っていた以上にザフト兵が弱い事に警戒して損したと感じていた。
「けどいいじゃん……」
「だよね、相手が弱ければ仕事は楽だしさ」
「ああ、隊長に良いとこ見せて罰を軽くして貰おうぜ」
そういえばそうだった!なに思い出させてんだよ、うるせーと言った様に言い合いをしながらもオルガ達の連携に狂いはなく、互いの長所と短所を補いながらザフトのMSを倒していく。一騎当千の様な強さを誇るミアやキラの個人技とは違った強さをオルガ達は披露していた。
こうしてオーブに侵攻していたザフト軍は自軍からMS部隊が離反し、極東連邦と大西洋連邦のエース部隊がオーブ軍の味方に入った事もあって次々とMS部隊が撃破されていき、艦隊も半数以上が轟沈、または大破してしまった事もあってこれ以上の戦闘継続は不可能と判断してオーブから撤退する事を決断する。
オーブに侵攻したザフト艦隊の撤退により、後にオーブ攻防戦と呼ばれた戦いは義勇軍とザフトから離脱したMS部隊がオーブ軍に味方した事により、圧倒的に不利であったオーブ軍がザフトに勝利した。オーブはこの戦いで勝利した事により、中立国のオーブとしての地位を万全なものとし、逆にザフトは今回の敗戦に加えて明らかに恫喝とも言うべき内容でオーブに侵攻した事もあってプラントに対する批判は更に増し、今回の件は地球連合穏健派でも庇えない事もあって、元々望みが薄かったこの段階での終戦という道筋もなくなってしまい、プラントは余計に追い詰められてしまった。
なお、ザフトを離脱してオーブ軍に味方したザフト兵を調べた時にヘリオポリスを襲撃したザフト兵がいる事が発覚した。特にイザーク・ジュール、ディアッカ・エルスマンはプラント最高評議会の議員の息子という事もあって彼等の扱いに対してオーブ軍の意見が別れた。
ザフトを離脱してオーブ軍に味方したから罪に問わない様にするべきという声と、いいや、彼らに厳しい処罰を下すべきだ!と二極化していた。そんなふうに意見が別れていた時に、ウズミが自国を捨ててまでオーブに味方した彼等の恩をオーブは仇で返すつもりかと発言し、ヘリオポリス襲撃はイザークもディアッカも指示する側ではなく、命令されただけと判断されて罪に問われる事はなかった。
登場人物紹介
マウロ・グロッパ
性別 男性
年齢 18(CE71年代)
種族 コーディネイター
徴兵されてザフトに入隊したMSパイロット。当初はプラントの典型的な選民思想が強いコーディネイター至上主義のコーディネイターであったが、オーブ攻防戦に参加した時に義勇軍として参加した極東連邦の特機の一つである機龍と交戦し、怪獣映画に登場する様な怪獣と同じ様な理不尽すぎる暴力に晒されて、それを奇跡的に生き残った事もあって価値観が変わり、終戦後は現実を直視して真面目に生きる事を決意する。
終戦後は父親の生まれ故郷であるイタリアのナポリに移り住み、ナポリのレストランで何年か働いた後に独立して小さな飲食店を開く。ナポリでは値段の割に美味い飯が食えると評判で、気さくな人柄と面倒見の良さもあって地元の人間の間ではちょっとした有名人となる。