ガンダムSEED 架空国家の憂鬱   作:zero3 ガイル

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第二十三話 プラントの暗雲

 

後にオーブ攻防戦と称された戦いはザフト離反部隊、地球連合の義勇軍の援軍を得ることが出来たオーブ軍の勝利で終わった。今回の敗戦と、プラントの一方的な通達による中立国に対する侵攻は数少ない地球連合の親プラント勢力は更に低下し、中立国もプラントの強硬的な姿勢に不信感がさらに増して中立国は完全に連合よりとなってしまった。

 

オーブ攻防戦による敗退、更にザフト兵の中にパトリック・ザラの方針に反発してザフトを離脱してオーブ軍に寝返った事もあってザフト軍に大きな亀裂が入る事になる。理由としては過激派No.2のエザリア・ジュールの息子のイザーク・ジュールと、同じく過激派議員のダット・エルスマンの息子、ディアッカ・エルスマンですらザフトを離反してオーブ軍に寝返った事がキッカケであったからである。

 

二人を知る人物達からはナチュラル軽視が目立つ典型的なプラントのコーディネイターであった。その二人がザフトを身限りオーブ軍に寝返った事がキッカケで作戦に参加したザフトのMS部隊の半数近くが離反した事もあって、現在の最高議長であるパトリック・ザラへの不信感の大きさを証明した様なものであった。

 

今回のイザークとディアッカの離反はプラント最高評議会でも激しく問題視されており、イザークとディアッカの親であるエザリアとダットは難癖に近い理由でプラント最高評議会を辞任に追い込まれて左遷されてしまった。エザリアとダットの二人に変わって選出された新たな議員は、議員としての能力は二人と比べて高くはないが、典型的なナチュラル軽視が目立つコーディネイター議員でありパトリックの信奉者に近い議員であった為にエザリアとダットという過激派の議員がいなくなっても問題はなく、逆に二人と違い、パトリックの信奉者であった為にパトリックの影響力拡大に大きく貢献したのだ。

 

今回のオーブ侵攻の敗退と、イザークとディアッカの離反で過激派の影響力は低下すると誰もが思った。しかし過激派が失態を犯したにも関わらずパトリックの影響力は弱まるどころか余計に強くなり、パトリックの独裁的な権力が強固となるキッカケとなった。

 

プラント最高評議会の議員やパトリックの信奉者でない市民達は、プラントがパトリックの独裁国家になりつつあると実感し、パトリック・ザラの底知れぬ狂気のカリスマに議員の誰もが恐怖心を抱くようになっていた。

 

ーーー。

 

「そうか、連合との交渉は失敗に終わったか」

 

プラント最高評議会を辞任し、半分隠居に近い生活を送っているシーゲル・クラインだが、それでもプラント穏健派として未だに絶大な影響力を誇り、自宅で地球連合と交渉に出向いていたカナーバ議員とテレビ電話で話し合っていた。

 

『すいません。パナマの蛮行に加えて、オーブに対する一方的な侵略行為により、地球各国はプラントに対する不信感が強まり、連合はプラントが負けを認めなければ戦争は辞めないと思われます』

 

「やはりパナマの蛮行とオーブの侵攻が原因か。現段階で連合が交渉のテーブルにつく可能性は低いという事か」

 

『はい、それに極東連邦がNJCの技術提供を地球各国に開始した為に地球全土の原子力発電所が復活し、地球の復興は凄まじい勢いで進んでいます。地球連合のプラント本国に向けての本格的な侵攻は時間の問題かと』

 

プラントの独立というプラントのコーディネイターの悲願達成が難しいという事を知るとシーゲルは険しい表情になる。

 

シーゲルはプラントは既に開戦初期に国力の差を埋めるだけの圧倒的なアドバンテージが無くなった事を理解した。

 

地球連合との圧倒的な国力の差を埋める為にプラントはMSとNジャマーいう虎の子を開発して早期決着を望んで戦争に勝利しようとしたが、地球連合の抵抗は凄まじく、プラントが開発したMSも連合も開発が成功し、今ではプラント以上に発展もさせて技術力の有利などなくなっており、多少軍事に詳しい人間なら地球連合とプラントの戦力比など考えるのも馬鹿らしい程に差があるのは明白であった。

 

(早期に決着をつける。それが国力で劣るプラントが連合に勝利する唯一の方法だったが……)

 

シーゲルも、序盤はプラントが連合相手に勝利を飾る事は出来ると確信していた。

 

しかし、国力で圧倒的に劣るプラントの方が先に息が切れて、地球連合の圧倒的な国力にすり潰されて敗北する未来は目に見えていた。

 

そのためシーゲルは、MSという虎の子のアドバンテージを活かしてプラントが有利のうちに講和交渉を始めて独立を勝ち取ることが、国力で圧倒的に劣るプラントが地球連合に勝利できる唯一の方法として、早期講和を望んで交渉に望んでいた。

 

シーゲルは穏健派故に過激派から弱腰と非難されてはいるが、それでも最高議長に選出されただけあり、講和だけを叫ぶ無能ではない。彼は穏健派故に血のバレンタインという悲劇を受けながらも戦争の拡大を望まない平和主義者ではあるが、それ以上にプラントの現状を一番理解もしていた。いくらコーディネイターの個々の力がナチュラルより優秀でも、プラントと連合の国力の差を考えれば、長期戦になれば負ける事は理解している為に、プラント最高評議会の議員達に早期講和を訴えていたのだ。

 

それが理由で、最初は血のバレンタインの報復に過激派が提示した地球全土の核による報復攻撃は、地球に住むナチュラルがコーディネイターに対して激しく憎しみを抱いて、損得勘定抜きにした復讐戦に移行して戦争の長期戦になる事を恐れて実行をさせなかった。

 

しかし過激派を納得させる為には報復攻撃を実行しなければいけず、シーゲルは過激派との妥協案で、提示した核攻撃による報復からNジャマーの地球投下という作戦を自身が作戦を提案して、過激派を納得させた。

 

Nジャマーにおける原子力発電所の停止を理事国に限定すればナチュラルのコーディネイターに対する憎しみを最小限に抑えられると思っていたが、シーゲルが想定した以上にNジャマーの効力は強力だった。

 

無論過激なザフト兵の独断で地球全土にNジャマーを投下するという想定外の事態となったが、それでもNジャマーの効力は数機地上に投下しただけで地球全土に効力を発揮してしまうため、シーゲルの予想以上に地球全土の原子力発電所が停止してしまった。

 

地球全土にNジャマーの効力が発生してしまった為に、一部の地域を除いて地球は極度のエネルギー不足に陥り、プラントが血のバレンタイン以上の悲劇を地球に起こしてしまった事もあって連合とプラントは互いに激しく憎しみあい、両軍共に歯止めが効かない状況になった為に、シーゲルの予想に反して戦争は長期戦に移行してしまった。

 

『可能性が低いことは承知していますが、引き続き交渉は続けたいと思っています』

 

「すまないが頼む」

 

そう言ってシーゲルはテレビ通信を切ってため息を吐く。既にプラントの国力は限界に来ている。優秀な人材がザフトに集中し、戦争の長期化に伴いザフトに志願した兵士の多くが戦死、または捕虜となってしまった事で、プラント国内のベテラン職員の数が少なくなってしまった。

 

そしてザフトも多くの兵士が戦死した事もあって人手不足が深刻化し、シーゲルの次に最高評議会議長に選ばれたパトリック・ザラが現状の志願制だけでは人手不足を解消できないと判断して徴兵制を実行した事で更なる人口減少が起こり、職場によっては30代や40代のベテランが存在せず、成人したばかりの若者や定年間際の老人しかいない職場も最近は増えて、プラントの経済力は大幅に低下していた。

 

(パトリック。お前は何処を目指しているのだ……)

 

シーゲルには今のパトリック・ザラはプラントの独立と未来よりも、一人でも多くのナチュラルを殺す為に動いている様にした思えなかった。

 

かつては理事国からプラントを独立をさせて、コーディネイターの理想郷を作る為に一緒に協力していた嘗ての君は何処にいったのだと、血のバレンタインから変わってしまった友の姿にシーゲルは深い悲しみを感じていた。

 

ーーー。

 

オーブ攻防戦に勝利したオーブでは、新首長となったセイラン家がオーブ攻防戦の勝利に深く貢献したザフト離反部隊と地球連合から派遣された義勇軍に対して盛大なパーティを開いて持てなそうとしていた。

 

理由としては故郷を裏切ってまでオーブを守ってくれたザフト離反部隊や、オーブの危機に対して義勇軍を派遣してくれた地球連合に対する感謝というのは表向きな理由だが、アスハ家派閥に属するオーブの政治家や軍人は、セイラン家が地球連合に加盟しようとした事が原因でザフトがオーブに攻め込んで来たと認識してる為に、今回のパーティはセイラン家が必死に自分達の失態を少しでも誤魔化す為のパーティであると認識してる為に、アスハ家派閥の面々からの反応はかなり冷ややかであった。

 

アスハ家派閥の人間の指摘通り、オーブ攻防戦に勝利するキッカケとなったザフト離反部隊や義勇軍に対してはオーブの政治家・軍人・国民の大多数はかなり好印象であるため、セイラン家は自分達が主催するパーティを開いて自分達の失態を少しでも帳消しにするために開催したのだ。

 

まあ、それでもパトリック・ザラ政権下のプラントでは、何は難癖をつけられてオーブに攻め込んで来るのは時間の問題であったので、全てがセイラン家のせいではないが……。

 

「聞いたぜタケル。お前、ついに九歳の少女を口説いたってな」

 

「ちょ、誰からそんなデマを聞いたんだよ!」

 

そんなオーブが開催したパーティに義勇軍として派遣された武とユウヤも参加していた。タケルが幼女を口説いたと聞いてユウヤは面白そうと思い武に聞いてきた。

 

「いやいや、お前が助けた家族に少女がいただろ」

 

「確かにいたけど、俺は助けただけで何にもやってないぞ」

 

「整備員達が助けた少女がお前に惚れてたって言っていたぜ、流石は恋愛原子核だな」

 

面白そうなオモチャを見つけた様にユウヤは武を揶揄う。そんなユウヤに反撃する為に自分も同じようなネタを提供して反撃した。

 

「お前もパーティに来る前にオーブの女性パイロット三人を口説いたって俺は聞いてるぞ」

 

「だ、誰がそんなデマを言いやがった」

 

「アレは見てそう言えるか」

 

武が指を刺した方向に同じ様にパーティ参加していたオーブ軍の女性のMSパイロットの三人組は、顔を赤くしてユウヤを見る度に身体をモジモジさせていた。

 

この三人組はアサギ、ジュリ、マユラの三人娘で、オーブ攻防戦の時に湾岸沖でピンチになった所をユウヤに助けられており、それからユウヤの活躍を見て凄いと驚くと、後にユウヤが連合を代表するエースパイロットと知る。更に「写真以上にカッコいい……」と、呟きユウヤを改めて見るとそう感じて、命を助けてくれた事もあって余計にカッコよく見えて、ユウヤに惚れていた。

 

武は反撃してやったぜと言わんばかりの得意げな表情になって続けて話す。

 

「やっぱり口説いてるんじゃん。クリスカとイーニャに言いつけてやろう」

 

「ぐぅ、既に幼女を三人口説いた犯罪者に言われたくねえ」

 

「な、タマも霞も俺と同い年だ。お前だって人の事を言えねえだろ」

 

「イーニャも見た目が幼いだけだ」

 

「ドッチもドッチデスーヨだ。このヤロウ」

 

そんな武とユウヤのやりとりに呆れた表情で声をかけたのは、同じ様に義勇軍として派遣されたミア・アズラエルであった。いつもラフな格好をしているのだが、今回はパーティに参加してるためドレス姿となっている。ムウ曰く「見た目だけなら立派なご令嬢」と評価されるだけあって、ドレス姿が似合っていた。

 

所属が極東連邦と大西洋連邦と違えど、階級的に上官であるため二人はミアに敬礼するが「今はイイデスーヨだ」と、言って敬礼をやめさせた。

 

「全くテメーらをラブになった女性達に同情スルーデスヨ。こんなスケコマシをラブにナリヤガルデスーカラ」

 

二人はミアの言葉に何も言い返せないし、二人はミアが苦手であった。初対面でいきなり「テメーらから女の敵のニオイがプンプンしやがるデース!」と独特な口調で暴言を吐かれ「モシテメーらがワタシの部下だったら一夫多妻去勢拳が発動してタデスーヨ!」と、散々な言われようであったからだ。

 

まあ、女性関連に関しては武もユウヤも反論の余地はなかった。

 

「あーやっぱりミアお嬢様はハーレムは許さない感じ?」

 

そこにムウとマリューも合流して、ミアに対してムウが質問する。ムウは極東連邦のパイロット達と親しく話すと、武とユウヤのモテ話を聞き、武とユウヤの故郷の恋人達が彼女公認のハーレムを許されてる事を聞いて「良いよね若者は」と羨ましそうに呟いて、マリューやナタルから白い目で見られて呆れてられていた、なおマリューは表情にこそ出していないが、武に対して「声はキラ君とそっくりなのに」と、真面目な少年であると認識しているキラと違い、女性関係で派手な武に関してはかなり呆れていた。

 

「当然デスーヨ。乙女である私はゼーテエ許さないデスヨだ」

 

(((乙女?)))

 

と、彼女を知る人間達からかなり衝撃的な言葉を彼女は発したと理解するだろうが、その事に対してツッコミを入れたらミアにしばき倒されるため、誰もミアの言葉にツッコミを入れない様にするのが懸命なのだが……。

 

「隊長が乙女って……!」

 

「似合わない似合わない」

 

「ククク……」

 

と、ミアに聞こえる様に話すオルガ、クロト、ジャニーの三人が笑いながらそう言うと、ミアは「アァ!」と、言ってキレてしまい、三人の首根っこを掴んでパーティ会場の外に出て、バキバキ!ドゴン!トゴン!メキョメキョ!という凄まじい音が響き渡るのであった。

 

「全く騒がしい奴らだ」

 

自身がプラントの最高評議会の息子であり、ザフト離反部隊の事実的隊長という事もあって先程までオーブの重役たちに囲まれて重役達の対応に四苦八苦しながらも対応し、ようやく解放されて一息着く事が出来て休んでいたイザークは、ミア達の騒がしい様子に呆れていた。

 

そして自分の親友であるディアッカは、ようやくお堅い連中の対応から解放されたと喜んで、パーティに参加している女性達をナンパしていた。イザークは親友の姿に相変わらずだなと呆れていた。

 

(まさか俺がこの様な選択をする事になるとはな)

 

以前の自分なら考えられない事だとイザークは心の中で呟く。

 

やはり自分が変わるキッカケになったのはヘリオポリスでG計画のMSを鹵獲した所から始まり、ストライクに苦杯の飲まされ続けたから自分は変わったのだとイザークは強く認識していた。

 

(そのストライクのパイロットがまさかナチュラルではなく同じコーディネイターで、しかもオーブの民間人であったとはな……)

 

そのストライクのパイロットであるキラは、仲間や家族と楽しそうに話をしていた。イザークは改めてキラを見るとクルーゼ隊の猛攻を凌いだ凄腕パイロットに見えなかった。何処にでもいる年相応の民間人の少年という印象しかなかった。

 

イザークはキラ達と話す機会が訪れた時に、キラ達は元々民間人であり、ヘリオポリスにザフトが侵攻してきた時にキラは友人達を守る為になし崩し的にストライクに搭乗して、クルーゼ隊と戦ったと説明を受けると、イザークとディアッカはキラの話を聞いて衝撃を受けた。

 

まさか、自分達に苦杯を飲ませ続けていたのが民間人であり、アークエンジェルに避難民が乗っていた事もあって、もし間違えてアークエンジェルを轟沈させてしまったら、自分達は民間人の大量殺害を実行していたかもしれないからだ。

 

そしてキラがアスランとは幼少期からの親友である事もイザークは衝撃を受けて、どうしてアスランがストライクと戦う事にあんなに躊躇していた事に疑問であったが、幼い頃からの親友と戦場で殺し合っていた事を聞いて、そんな悲劇があっていいのか!と、衝撃を受けた。

 

それを知らなかった自分はアスランに対して、ストライクと戦う事に躊躇していたアスランを馬鹿にし、ちゃんと戦う様に言っていた自分はなんて無神経な奴だったんだと、過去の行いを思い出したイザークは自分の行為に強い嫌悪感を抱いた。

 

(今更謝ってすむ問題ではない事は理解している。そして、生まれ故郷に弓を引いた俺がこれからどうするべきか、どう行動するべきなのか、その方針も決まってはいない、それでも俺は!)

 

立ち止まる事は許されない、戦い続けるんだとイザークは心の中で叫ぶ。

 

故郷を裏切るという行為を決断した自分を信用して着いてきてくれた親友と部下達の為にも、何よりプラントの未来の為にも俺は絶対に立ち止まらないとイザークは誓うのであった。

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