ガンダムSEED 架空国家の憂鬱   作:zero3 ガイル

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第二十四話 カーペンタリア基地攻略戦・前編

 

北アフリカ攻防戦の敗退により北アフリカの完全撤退、それに続くようにジブラルタル基地の陥落により、地球におけるザフトの最重要拠点は大洋州連合管轄のカーペンタリア基地だけとなってしまった。地球におけるザフトの影響力を完全に排除する為に地球連合はザフト地上軍最大の基地であるカーペンタリア基地攻略に向けて軍備を増強し、準備を進めていた。

 

カーペンタリア基地も、地球連合が大規模攻勢を仕掛けてくると理解している為に、地球連合の反撃に備える準備を進めていた。

 

現在のカーペンタリア基地は、北アフリカやジブラルタルから敗走した兵士も受け入れて、ザフト兵の『数だけ』は充実していた。特にジブラルタル基地より脱出したザフト兵を助ける為にカーペンタリア基地きっての海戦の達人であるモラシム率いるMS部隊の奮戦により、脱出した多くのザフト兵をカーペンタリア基地にまで撤退させる事に成功したが、その代償に地球連合のMS部隊の数の暴力により、モラシムのMS部隊は壊滅してしまった。

 

モラシムの奮戦により、多くのザフト兵を救出に成功したおかげで何とかザフト兵の『数だけ』は充実していた。しかし、現在のカーペンタリア基地のMS事情はお世辞にも良いとは言えなかった。

 

「これで本当に戦えるのか?」

 

カーペンタリア基地司令官は、カーペンタリア基地の戦力状況が良くない事もあって頭を痛めて呟いた。

 

実際にカーペンタリア基地のMSの主力は、地球連合のゲシュペンストやダガーシリーズの登場で旧式化したジンや、ジャンクと化したジンのパーツをジャンク屋から購入したレストアしたジンが大半を占めており、それでもMSの数不足を補う為に戦車の車体に中破したジンの上半身を乗っけた様なMSモドキに加えて、鹵獲した地球連合のダガーシリーズやアクシオですら戦力に加えないといけない程にカーペンタリア基地はMSを揃えようと奮闘していた。

 

カーペンタリアの基地司令官も、旧式化したジンやレストアしたジンが中心では地球連合の猛攻に耐えられないと分かってるため、本国に対して再三に渡り、新型のゲイツ、またはディンやバクゥといった地上専用MSを配備する様に進言したのだが、ゲイツの配備は宇宙が優先され、他の地上用MSの配備もとある理由により配備が出来ないと言われたのだ。

 

そのためカーペンタリア基地に対して新型機配備は後回しにされ、本国より送られてくるMSは払い下げ当然の様に送られてくる旧式化した古びたジンと、ゲイツの量産が始まって生産がストップしたシグーという有様で、要請した新型機に対しても、陸戦型に改修されたゲイツが少数だけ送られる程度であった。この様な露骨なまでの宇宙優先の本国の対応に、カーペンタリア基地司令官は本国の考えを理解した。

 

(本国の連中は地上の俺達を時間稼ぎの捨て駒にするつもりか……!)

 

それが証拠にジブラルタル基地が陥落し、ジブラルタル基地から撤退したザフト兵がカーペンタリア基地に合流を果たした途端に本国は大幅な配置転換を実行した。地上にいる実戦経験豊富なベテランの大多数を宇宙に上げて、そのベテランの抜けた穴を徴兵されたヒヨッコ以下の新兵で補わせるという明らかに地上を蔑ろにしたやり方に、カーペンタリア基地司令官は本国のやり方に怒りを覚えた。

 

だがプラント本国でも、こんなあからさまにカーペンタリア基地を時間稼ぎの捨て駒扱いする様なやり方に反対意見は根強かった。しかし、パトリック・ザラは周りの反対意見を気にする事なく実行して、ザフトの最重要拠点であるボアズとヤキン・ドゥーエの守りを強固にする為に経験豊富なベテランを宇宙に上げて、実戦経験がない新兵を地上に下ろすというやり方を強行した。

 

本来なら地上にいる全てのベテランを宇宙に上げたかった様だが、流石にそれは強権を握っているパトリックでも不可能であった為に、少数ではあるがベテランのザフト兵を地上に残す事になった。だが、新人とベテランを極端に変える強引な配置転換に戦争初期の段階からパトリック・ザラに賛同していた過激派議員もパトリックの暴走に対して脅威に感じ、パトリック・ザラにプラントの未来を任せては、プラントの未来は崩壊すると判断して、パトリック・ザラのシンパを除いて、過激派・中道派・穏健派とプラント最高評議会の派閥など関係なく結託し、パトリック・ザラに対抗する為の地下組織を結成した。

 

そしてCE71年6月26日。地球連合は大西洋・ユーラシア・極東・東アジアからなる大艦隊を編成し、地上のザフト勢力の影響力を完全に排除する為にカーペンタリアに進軍した。

 

地球連合の大艦隊の中核を成しているのは大西洋連邦と極東連邦の艦隊であり、特に二カ国は正規空母を改装してMS運用能力を可能となった空母が数多く運用されており、空母以外にも空母を護衛するイージス巡洋艦・駆逐艦もかなりの数が派遣してる為に、二カ国共に海洋国家らしい規模の艦隊を編成していた。

 

そしてユーラシア連邦と東アジアは、極東と大西洋同様に正規空母を改装してMS運用能力を確保した空母を保有しているが、それでも極東連邦や大西洋連邦と比べて数が少ない為に、その数を補う為に輸送艦を改装して作られたMSを運用可能な母艦を多数建造しており、他の船舶の数だけなら極東と大西洋を上回っていた。

 

「しかし陸軍はロンだけでなく、ワンフーまで海軍に提供する事によく納得したな」

 

その大艦隊の一角である東アジア艦隊の指揮官であるリン中将は、今回のカーペンタリア攻略作戦の為に、東アジア初の量産型MSであるロンだけでなく、ロン同様に開発に成功した重MSであるワンフーも海軍に提供する事に反対しなかった事に不思議に思っていた。

 

ワンフーとは東アジアが開発に成功した重MSであり、アクシオやゲシュペンスト同様に重厚な見た目に加えて、ロンと違ってホバー走行が可能であり、その走行速度は地上の王者と呼ばれるバクゥに匹敵する速度を保有している。

 

「本当は反対していたと思いますが、上からの命令で従わざるをえなかったと思いますね。何しろロンのデビュー戦はパナマでケチがついてしまいましたからね」

 

「確かにパナマではロンのデビュー戦は散々だったからな。その失態が帳消しになる様な戦果を今回の戦いに期待して、陸軍に圧力をかけて海軍にMSを提供する様に迫ったわけか」

 

「そうですね、何せ我が国は今大戦で成果らしい成果がありませんから上も必死なんですよ。少しでも成果をあげて米帝と日帝に対してアピールしたいようですから」

 

「戦後の為にか」

 

いくらプラントが弱体化したとはいえ、ボアズやヤキン・ドゥーエといった宇宙の戦力が健在であるため気が早いとリン中将は感じるが、それでも上としては理事国の一角というメンツを守り、そしてこれ以上の醜態を他の理事国に見せたくない為に必死なのだろうと上の浅はかな考えに呆れるリン中将であった。

 

そしてカーペンタリア基地の防衛を任された地上部隊はというと、ザフト地上軍最大の軍事基地という名に相応しい程にMSを始めとしたリニアガンタンクや、インフェストゥスやアジャイルといった航空兵器の数は充実している様に見えるが、カーペンタリア基地の主力はザフト徴兵された新兵ばかりという有様であった。

 

「来るなら来やがれナチュラルども!」

 

「俺達が返り討ちにしてやるぜ!」

 

実戦を経験してない徴兵されたばかりのザフト兵達は、コーディネイター至上主義者らしい選民意識に凝り固まった過激な思想に染まった結果、今や過激派ではなくザラ派と称される様になり、若者達の間で蔓延している過激な思想は、かつて西暦時代最悪な独裁者の精鋭部隊を連想する様になり、地球連合だけでなく良識があるザフト兵でも、ザラ派のザフト兵はザラの私兵、またはザラ親衛隊と称される程に国際常識を知らない異常集団と認識されていた。

 

「本当にナチモドキのアイツらがマトモに戦えるのか?」

 

「だよな、どうして俺らの政治家達は、ザフトなんかと手を組む事が大洋に利益があると思ったんだよ」

 

「おい、あんまりデカい声でザフトや上の連中を批判するな。また親衛隊気取りのザフトのクソガキ達に難癖をつけられるぞ」

 

「分かってますよ車長。でも車長だってザフトや現政権の連中をよく思ってないですよね」

 

リニアガンタンクに搭乗している大洋州連合所属の戦車兵である砲手と操縦手が徴兵されたザフトの陰口を叩いて、それを車長が注意するが、砲手と操縦手同様に車長も親プラント支持を辞めない現政権と、徴兵されたザフト兵の傲慢な振る舞いにはウンザリはしていた。

 

自分達を引き立て役の様に扱い、我々ザフトが勝利する為の壁役くらいには役に立てよとか、それが下等なナチュラルの仕事とか、プラントの技術力に群がる寄生虫など、明らかに自分達を見下した発言をしまくる徴兵されたザフト兵と乱闘騒ぎを起こした事は何度もあった。その度にカーペンタリア基地のベテランザフト兵が騒ぎを収めていたが、最近はそのベテランの大半が宇宙にいってしまった為に、最近はカーペンタリアに派遣された大洋州連合の兵士と、徴兵されたザフト兵とのトラブルが増加していた。

 

そのため、大洋州連合の兵士達は前々からザフト兵のモラルが低い事に不満があった。最近は徴兵された兵士が主力となって余計にザフトのモラルが低下した事で、トラブルが多発して不満が貯まる様になった。ザフトや大洋州連合の政治・軍上層部に不満を抱く現場の兵士は増加傾向にあった為に、兵士達の士気は地球連合の兵士と比べてかなり低くなっていた。

 

ーーー。

 

カーペンタリア基地攻略戦がついに始まる。開戦の火蓋を切る様に地球連合艦隊はイージス艦とフリゲート艦の多数のミサイルをカーペンタリア基地に向けて発射する。カーペンタリア基地に発射された多数のミサイルを迎撃する様にカーペンタリア基地て大洋州連合海軍のイージス艦やフリゲート艦が追撃のミサイルと対空砲を発射し、カーペンタリア基地に迫る大多数のミサイルの迎撃に成功したが、それでも全てを迎撃する事が不可能であった為に少数のミサイルの着弾を許してしまった。

 

地球連合の艦隊から大西洋連邦からスカイグラスパーとジェットストライカーを装備した105ダガーが出撃し、極東連邦とユーラシア連邦もガーリオンとリオンといった空戦用のMSとMAが次々と発進してザフトのディンを筆頭とした空戦部隊と衝突する。水中ではザフトのグーンとゾノ、地球連合は極東のズゴックEとハイゴッグ、大西洋連邦はディープフォビドゥンと、各国を代表する水陸両用MSが衝突した。

 

「コイツら素人か?」

 

「ああ、戦闘機動が雑すぎるぞ」

 

極東連邦海軍所属のパイロット達は、リオンやガーリオンにとってザフトのディンが鴨同然の様に撃墜し易い相手と認識しているとはいえ、ディンを飛ばすのに一苦労の様な軌道をするザフトのディン部隊に困惑していた。

 

「油断するな。お前達はリオンの上位機種のガーリオンを渡されてるんだ。海軍や空軍パイロットにとって憧れのガーリオンを託された事を他のパイロット達が納得する働きをしろよ」

 

「了解です」

 

自分と同じようにガーリオンに搭乗を許されてる隊長の言葉を聞いてガーリオンに搭乗している羽間少尉はディンに向かって攻撃を開始する。

 

ディンもガーリオン相手にドッグファイトを仕掛けようとするが、無理矢理人型で空を飛ばす様に設計されたディンと、航空機から発展して重力制御装置であるテスラ・ドライブを搭載しているガーリオン相手の空中戦はガーリオンの方に軍配が上がり、ディンはガーリオンの機動性と運動性に追従できないでいた。それでも何とか当てようと90ミリ散弾銃を撃ちまくるが、ガーリオンのパイロットは即座に正面を向いてソニック・ブレイカーを発動して、ディンの90ミリ散弾銃の散弾を弾き返した。

 

「リオンなら通用しただろうが、ガーリオンに散弾は通用しねえよ!」

 

ソニック・ブレイカーを発動した状態でディンに勢いよく突撃する。ディンも焦った様に90ミリ散弾銃だけでなく、重突撃機銃も乱射してガーリオンを撃墜しようとするが、ソニック・ブレイカーが発動しているガーリオンのエネルギーフィールドを貫通する事が出来ず、ソニック・ブレイカーを展開したガーリオンはディンに突撃し、ディンを粉々に粉砕した。

 

「よし、またまたスコアを献上してくれてありがとさん」

 

「油断するなと言っているだろうが、それにディン一機に時間をかけ過ぎだ。作戦が終わったら一から鍛え直してやるからな!」

 

「うへぇ、了解です」

 

羽間は隊長に怒鳴られて、作戦が終わって本国に帰国したらスパルタ特訓が待っていると思うと億劫な気分になるのであった。

 

そして海中では両軍の艦隊の艦船を破壊しようと、地球連合とザフト両軍は激しく戦いあっていた。

 

「は、速い!」

 

「ナチュラルのMSになんでグーンが追いつけないんだ!」

 

ザフトが誇る水中用MSと同じモノアイを採用している、極東連邦の水陸両用MSであるズゴックEとハイゴッグの水中機動に、グーンがついていけずに翻弄されていた。何とかズゴックEとハイゴッグを撃破しようとグーンは両腕に装備している魚雷発射管から魚雷を一斉発射し、ゾノは首周りに装備している魚雷発射管から魚雷を発射するが、巧みな操縦技術と、核融合炉による倒的なパワーから生まれた推進力により、回避されてしまう。

 

「う、うわあああ!」

 

そしてグーンはハイゴッグに接近されてグーンのMSパイロットは恐怖心から叫び出してしまう。グーンにはジンの重斬刀や後継機であるゾノの様な近接攻撃手段がないため、グーンのMSパイロットは何とかその場を離れようとするが、グーンはハイゴッグを振り切る事が出来ずに、グーンの後継機の当たるゾノが採用しているクローに似た武装でハイゴッグはグーンを貫き、腕に固定されてる水中でも使用可能なビームカノンで攻撃をしてグーンはビームカノンで貫かれて爆散した。

 

「海を詳しく知らないコロニー育ちの連中に負ける訳にはいかないからな」

 

「ああ、もうグーンとゾノが水中の王者じゃない事を教えてやるぜ」

 

ズゴックEとハイゴッグに搭乗している極東連邦海軍所属のMSパイロット達はそう言ってグーンとゾノに対して攻撃を再開する。

 

カーペンタリア基地の守備隊も何とか持ち堪えようとしているが、戦闘に参加しているザフト兵の大半が素人という事、更に地球連合の圧倒的な物量に加えてMSという土俵で対等以上に戦う事が可能となった事もあって、地球連合の圧倒的な戦力差にザフトは押されまくっていた。

 

そして地球連合は劣勢のザフトにトドメを刺すようにユーラシア連邦のMS専用空母から新型MAの発進準備が完了しようとしていた。

 

「司令、ビグザムの発進準備がもう少しで完了するそうです」

 

「そうか、機体に不備がない様に最終チェックを怠らない様に頼むよ艦長」

 

「は!」

 

ユーラシア艦隊司令官の命令を各部署に伝える為に艦長はオペレーター達に指示を送る。整備員達もMAビグザムの最終調整に入り、機体に不備がないか機体点検を再度実行し、出撃準備を整えようとする。

 

「艦長、私はMSが強力な兵器である事を認めている。これからの戦場の主役がMSになる事も今大戦でそれは証明された」

 

「はい、ザフトのMSに地球連合の既存兵器は一方的に敗北しました。より性能が高いMSを保有する事が国防が有利になる時代になりました司令」

 

「しかし艦長、我々はザフトの技術を全て模倣する必要はないのだよ。それは北アフリカとオーブの戦いで極東がキッチリと証明してくれた」

 

北アフリカでグルンガストが、北アフリカに進軍した地球連合の戦力の三割を葬ったザフトの新型MSを撃破し、オーブでは機龍がザフトのMS部隊を一方的に蹂躙した。司令官はその光景をモニター越しではあったが、極東連邦の特機の圧倒的な戦闘力に驚愕した。

 

そしてユーラシア連邦では大型MAドクトリンを完璧にするため、極東連邦同様の特機構想を真似て作られたのがビグザムであった。最初は動力源の問題で開発が困難であったが、極東連邦がNJCの技術を提供した事により動力問題を解決し、大型MAビグザムは完成した。

 

出撃準備が完了すると、ユーラシア連邦の大型空母からユーラシア連邦が誇る大型MAビグザムが発進した。

 

「機長、前方に展開するザフト・大洋州連合艦隊をロックオンしました」

 

「よーし、スーパースキュラ発射だ」

 

「了解」

 

ビグザムの機長の命令を聞いて砲手はビグザムに搭載されているイージスのスキュラをより大口径にしたスーパースキュラを発射した。

 

ビグザムのスーパースキュラの大出力ビームに飲み込まれた大洋州連合の艦隊は次々と轟沈していき、それに巻き込まれる様にザフト艦隊もビグザムのスーパースキュラの高出力ビームに飲み込まれて破壊尽くされた。

 

ユーラシア連邦の新型大型MAであるビグザムの圧倒的な火力により、ザフト・大洋州連合の艦隊の殆どが轟沈したためザフト・大洋州連合海軍は壊滅した。

 

こうして敵海上部隊を壊滅させた地球連合艦隊はMS部隊を次々と発進させて、カーペンタリア基地攻略に向けて地球連合MS部隊はカーペンタリア基地守備隊と交戦を開始し、地球連合とザフト・大洋州連合の主戦場は海上から陸地に変わったのであった。

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