カーペンタリアの大洋州・ザフト海軍が壊滅状態となった事で、カーペンタリア基地攻略戦の戦場は海から陸に変わろうとしていた。
「おいおい嘘だろ」
「艦隊を薙ぎ払いやがったぞ」
「なんて化け物だよ」
カーペンタリア基地の艦隊を壊滅状態にしたビグザムの圧倒的な火力に、ジェットストライカーを装備している105タガーとダガーLで編成されてる大西洋連邦のMS中隊のパイロット達は驚愕していた。
「呆気に取られるな。俺達に与えられた橋頭堡確保という任務を忘れたのか!」
ビグザムの圧倒的な火力に呆気に囚われてる部下達に対して大西洋連邦のMS中隊の隊長であるカーティス・エドワーズ少尉は叱責し、部下達も「了解!」と返事を返してカーペンタリア基地の港付近に展開しているザフトMS部隊に対して攻撃を仕掛ける。
このカーティスが率いるMS中隊は、ブルーコスモスの影響力が強い大西洋連邦では珍しいコーディネイターだけで編成されているMS部隊であるため、カーティス本人もコーディネイターという異色のMS部隊である。
更にカーティス本人は、開戦当初より大西洋連邦に所属していた珍しいタイプのコーディネイターであった。開戦当初から地球連合に所属するコーディネイターは、コーディネイター差別が少なくブルーコスモスの影響力が少ない極東連邦軍の割合が多いため、反コーディネイター感情が特に強かった大西洋連邦に所属するカーティスはかなり珍しい部類に入るだろう。
そんな針の筵状況でカーティスが大西洋連邦に所属して戦っていたのは、大西洋連邦で暮らすナチュラルの両親が迫害されない様に、戦って地球のコーディネイターはナチュラルの味方である事を証明するため、そして病弱な母親の治療費を稼ぐ為であった。
カーティスはコーディネイター製造が特に厳しい現代では珍しい、親がナチュラルである第一世代コーディネイターである。彼がコーディネイターである理由は、自分の母親は現代でも治療が困難な原因不明の病に犯されているからであった。
そんな現代でも治療が困難な病弱な身体を持つ母親は、普通に子供を産むと命を落とすリスクが高く、ナチュラルのまま子供を産めば、健康障害を持った子供が生まれるリスクが高いということを告げられた。
障害を持って生まれる子供の将来と、父親が母の身体を心配して当初は子供を産まない方針であったが、それでも母親が子供が欲しかった事もあって、父親と両親を説得して子供を産む事を決意した。母親は障害が持って生まれるリスクが高いならと子供に対して遺伝子治療と健康のコーディネイトを施して、自分の子供をコーディネイターにする事で解決しようとした。
親しい友人や仲が良い親戚達から、子供をコーディネイターにすればブルーコスモスの粛清対象になり、子供をコーディネイターにしたナチュラルの裏切り者認定されて君達まで殺されるぞと心配されて、子供をコーディネイターにする事は反対されたが、どうしても子供が欲しいというエゴで子供を産むのに、障害を持って生まれたら子供が可哀想と思い、健康に育って欲しいと願ってカーティスに健康と遺伝子治療によるコーディネイトに施したのも、父と母なりの子供に対する愛情であった。
そんな両親の愛情を深く理解しているカーティスは両親を愛して尊敬していた。だからプラントが引き起こしたエイプリル・フール・クライシスで、コーディネイターの迫害だけでなく憎悪も高まった事を理解しており、自分が迫害されたりするのは構わないが、ナチュラルである両親がブルーコスモスの標的になる事を恐れ、地球のコーディネイターとプラントのコーディネイターは違う事を証明して、少しでも両親にナチュラルの憎悪が向かない様に、大学を中退して軍に入隊した。
自分が戦場で戦う事によって両親の迫害がなくなると信じる以外にも、父親が勤めている会社がエイプリル・フール・クライシスの影響で会社経営が傾いていた事も理由であった。会社経営が不安定で父親が勤めている会社も多くをリストラしており、父親もいつリストラの対象となっても不思議でなかった為に、カーティスも少しでも家族の助けになりたいと考えていた。しかしこんな不景気な世の中で手っ取り早くマトモに大金を稼ぐ手段は軍に入隊する事であった為、軍に入隊すれば父親だけでなく、病弱な母親の治療費も稼げると考えての事であった。
こうしてカーティスは大学を中退して軍に入隊する事を決心した。心優しい両親は当然の様に反対したが、少しでも両親の助けになりたいと考えていたカーティスは両親の反対を押し切って軍に入隊した。
軍に入隊した当初はカーティスはかなり苦労した。入隊した時期がエイプリル・フール・クライシスから間もない時期であった事も理由だが、やはり大西洋連邦はブルーコスモスの影響力が強い事もあって穏健派や中道派でもコーディネイターに対して否定的な事は共通してるため、特に軍はコーディネイターに否定的な人間が多かった為にカーティスは入隊して直ぐに孤立した。
学生時代なら自分からコーディネイターと告げなければコーディネイターとバレないのだが、軍に入隊する場合は今まで生きた経歴が全て調べられてしまい、彼はキラ・ヤマトの様な強い後ろ盾もないため、カーティスは軍に入隊して直ぐにコーディネイターとバレてしまった。
更に彼は分類的にコーディネイターに属されるが、地球出身の多くのコーディネイター同様にナチュラルより健康という以外はスペック的にナチュラルと変わらない為に、それが余計にブルーコスモス信者から「手を抜いてるのか!」「馬鹿にするな!」と、難癖をつけられる事も多々あり、結果を残してもやはりコーディネイターという理由でズルをしていると努力を否定される事もあった。
そんな状況でもカーティスは腐らずに、大西洋連邦が本格的にMSを運用するまでは鹵獲したジンやコピー機で自分と同様に地球連合に参加したコーディネイターと一緒に戦い続けて何度も死にかけたが、パナマでザフトが捕虜の虐殺を実行してから状況が変化し、地球のコーディネイター達が地球連合に協力すると大々的に表明する様になってから、地球連合のコーディネイターに対する扱いも変わってきた。
これまで地球のコーディネイターは迫害される事を恐れて自分がナチュラルであると偽って生きた。素質がナチュラルと変わらない事もあって、プラントに移住しても、本当に金をかけてコーディネイトされた、多くのナチュラルが良く知る才能が溢れるコーディネイター達の社会に馴染める自信もなかった為に、地球で生きる事を選択した数億人のコーディネイター達は、ナチュラルと偽って生きる事が自分達の生存戦略と信じていた。
しかし、エイプリル・フール・クライシスとパナマの蛮行を実行したプラントのコーディネイター達の自分達こそコーディネイターの代表という態度に対して、地球のコーディネイター達はプラントのコーディネイターと自分達地球のコーディネイターと一緒の扱いをされる事に憤慨し、一緒にされたくないと強く思う様になった。これ以上コーディネイターの悪評がプラントのコーディネイター達に拡散されてはたまらないと思い、ナチュラルと偽っていた地球のコーディネイターの多くが自分はコーディネイターであると公表する様になり、地球在住のコーディネイターの秘密を世間に大々的に公表する事も決定した。
「我々の殆どは健康な事以外はナチュラルと変わらない」
この様に発言し、メディアを通じて地球のコーディネイターの秘密を世間に公表したのだ。
地球在住のコーディネイターの殆どは、ナチュラルより健康という以外はナチュラルと変わらないという事実を公表した。この公表で、ナチュラルと健康面以外に素質に差がないコーディネイターが地球各地で数億人いるという事実が広く知れ渡ると、世界中に衝撃が走る。
「本当にお前はコーディネイターだって嘘だろ。だってお前は俺より成績悪かったし運動神経だって下から数えた方が、でもアイツらが言った事が本当なら」
「確かに風邪をなかなか引かない奴だったけど、それ以外は俺とアイツに違いなんて……」
「信じられるかよ。ナチュラルの俺と対して変わらないお前が……!?」
と、この様にコーディネイターと告白を受けたナチュラル達は、つい昨日まで友人や同僚だった人間が実はコーディネイターと知って驚愕する事例が各国で多発した。この告白によって世界は今以上に混乱し、ひょっとしたらつい昨日までの友人や同僚が自分達をコーディネイターと知って迫害するのではと、告白した地球在住のコーディネイター達も恐怖心もあった。しかし思った以上に混乱は少なく、地球在住のコーディネイターに対する差別は少なかった。
「コーディネイターと言っても、こんなものか」
この様に呆れた様に呟くナチュラルが多く、自分達が知る運動神経が抜群で頭脳明晰な完璧超人なコーディネイターはプラントに住む一握りのコーディネイター達で、殆どのコーディネイターは自分達と変わらない事を理解したからだ。
(ようやく地球ではナチュラルとコーディネイターが手を取り合う理想の社会が築かれようとしてる。血のバレンタインで同胞が沢山死んだ事には同情するが、それでも俺達地球のコーディネイターが望んだ世界が現実になろうとしているんだ。自分達の感情も制御できないプラントのコーディネイターの暴走が原因で、俺達が望む世界を壊されてたまるか!)
カーティスは感情も制御できないで無差別に暴れるプラントのコーディネイターを激しく嫌悪しており、感情を上手く制御もできない連中がコーディネイターの代表面するのも我慢ができない。地球在住のコーディネイターが理想とする世界が築かれようとしているのに、それを壊そうとする敵は絶対に許さないと判断して、カーティスはプラントのコーディネイターを同族と思わず、明確に敵と判断して、地上にいるザフトのMS部隊を相手に引き金を引き続けるのであった。
ーーー。
そして大洋・ザフト艦隊が壊滅した事で海から陸に戦場が変わった事もあって、続々と地球連合のMS部隊がカーペンタリア基地のMS部隊と交戦を開始する。敵の数は予想した通りの物量作戦を展開してきたが、地球連合のMS部隊の攻勢が思っていたより弱い事に、陸戦型ゲイツに搭乗しているベテランザフト兵は違和感を感じていた。
(何を考えてるんだ連中は?)
予想した以上の物量でカーペンタリア基地を攻撃している事に間違いはない。しかし、地球連合のMS部隊はまるで何かを待っている様に感じており、開戦初期から戦場で生き抜いてきた自分の勘が告げていた。
「な、なんなんだよアレは……」
「隊長、あれは何なんですか!」
「大きすぎですよ!」
隊長と呼ばれるベテラン兵の勘は的中していた。それは50m以上はある巨大なMAがカーペンタリア基地に向かってる来ているからだ。巨大MAに随伴している上空を飛んでいるMSがゲイツと同サイズという事もあって、巨大なMAの大きさがより分かりやすいくらいに巨大である事を理解させられてしまった。
「報告にあった北アフリカとオーブで確認された巨大MAか……!」
陸戦型ゲイツのパイロットが呟いた時に、巨大MAに対して上空から攻撃を開始するディンとグゥルに搭乗して攻撃を仕掛けるジンの部隊であったが、次の瞬間巨大MAから大量のビームが上空に放たれてディンとジンは次々と撃ち抜かれて撃破されていく。生き残ったディン部隊や、陸上のリニアガンタンクやジンタンクが一斉に巨大MAに攻撃を仕掛けるが、巨大MAに展開したバリアみたいものが展開されて防がれ、巨大MAは無傷であった。
「ば、化け物……!」
巨大MAに攻撃を仕掛けたザフトMSのパイロットが呟いた瞬間に、巨大MAの前面に固定されている大口径のビーム砲のビームに飲み込まれていく。大口径のビーム砲から発射された高出力ビーム砲により、港に停泊していた艦船や、港を防衛する為に配置されていたMS部隊やリニアガンタンク部隊を全て巻き込んで破壊し吹き飛ばしていく。巨大MAであるビグザムの圧倒的な火力により自分達を遮る障害がなくなった事もあって、後続のMS部隊が次々とカーペンタリア基地に上陸を果たしていく。
その様子はカーペンタリア基地の総司令部でも確認は出来るくらいに凄まじい火力であった為に、総司令部の総指揮官とオペレーター達は驚愕していた。
「被害は、被害状況を知らせろ!」
総指揮官の副官である黒服の一人がオペレーターに被害状況を知る為に命令を下すが、ビグザムの圧倒的な火力により、MS部隊を含めたカーペンタリア基地の守備隊の被害はかなりものであった為に現場も混乱しており、被害状況を知る為の肝心な情報が直ぐに総司令部に届く事がなかった為に余計に混乱した。
「いま状況報告が入りました。先程の巨大MAの攻撃で守備隊の戦力の三割が失われました!」
「残存している守備隊より報告、大規模なMS部隊が続々と基地に上陸を開始したと報告が入りました。エリア4は現状の戦力では持ち堪えられないとの事です。至急増援を求む!と何度も通信が」
あっという間に大洋・ザフトの艦隊が壊滅させられ、カーペンタリア基地の守備隊も直ぐに壊滅的な被害を受けた為に、現場の部隊長や現場の兵士達から救援要請の報告が総司令部に届き、オペレーターや指揮官達は現場の救援要請に対する対応に四苦八苦していた。
カーペンタリア基地の総司令部が混乱している状況でも、地球連合はそんな事を知らんといった様子で次々とカーペンタリア基地にMS部隊が上陸を開始した。
大西洋連邦と極東連邦の部隊はユーラシア連邦の様な巨大MAが存在してなかったため、大西洋・極東と対峙しているザフトのMS部隊は混乱がなかった為にしっかりと連携が取れてかなり拮抗していたが、それでも大西洋連邦と極東連邦続々と後続部隊が到着すると数の差をカバー出来なくなり、ザフトのMS部隊は大西洋・極東のMS部隊に次々と撃破されていき、戦線が崩壊しようとしていた。
「同じ土俵で戦えばコーディネイターといっても数の暴力は通用するんだな」
「ああ、リニアガンタンクに乗っていた時はザフトのMSは恐怖でしかなかったのにな」
「それとビームライフルの火力もスゲーよ」
ストライクダガーに搭乗して戦う大西洋連邦のパイロットは、MSという兵器がどれほど強力なのかと改めて実感した。開戦初期はザフトのMSに痛い目にあっただけに、今では油断さえしなければストライクダガーで戦えばザフトのジンは怖い存在ではなくなったからだ。
更にビームライフルの火力も凄まじく、メビウスとリニアガンタンクの火力では貫く事が難しかったジンの装甲を簡単に貫通させる事が出来るため、これからの時代はビーム兵器が主役になっていくのだろうと大西洋連邦のパイロットは実感するが、史実世界ではこの何年か後に、ビーム兵器に対して絶対的な防御性能が誇る装甲がいくつも開発される事になるのだが、この時点では知る由もなかった。
登場人物紹介
カーティス・エドワーズ
性別 男性
年齢 21
種族 コーディネイター
大西洋連邦所属のMSパイロット。ブルーコスモスの影響力が強い大西洋連邦では珍しい大西洋連邦軍に所属するコーディネイター。
本人も地球出身の多くのコーディネイターと同様にナチュラルより健康な事以外は素質はナチュラルと変わらないコーディネイターであるため、コーディネイターの素質はそんなに高くはない。
軍に所属している経緯はエイプリル・フール・クライシスによる影響でナチュラルのコーディネイターに対する不信感がこれ以上強まらない為に、プラントのコーディネイターと地球のコーディネイターとは違う事を証明するためと、エイプリル・フール・クライシスの影響で不景気となった事もあって両親に負担をかけたくないという思いから親の反対を押し切って大学を中退し、地球連合に入隊した経緯がある。
最初はブルーコスモスの影響力が強い大西洋連邦に所属した事もあって、コーディネイターという理由だけで迫害され、コーディネイターという理由だけで鹵獲したジンのパイロットにされて何度も死にかけて苦労したが、パナマの虐殺から地球在住のコーディネイターに対する扱いがだいぶ柔らかくなった事はかなり嬉しく思っており、ナチュラルと地球在住のコーディネイターとの共存の道が開かれつつあると感動している。
そのため、プラントのコーディネイターを能力が高いだけで感情を制御できないコーディネイターのなり損ないと思っているため良い感情を抱いていないため、プラントのコーディネイターはコーディネイターの悪評を振りまく側迷惑な連中と強く認識している。