ガンダムSEED 架空国家の憂鬱   作:zero3 ガイル

31 / 45
第二十六話 カーペンタリア基地攻略戦・後編

 

CE71年現在では、地上から宇宙に上がる方法は二つのやり方が主流となっている。

 

一つは大気圏内から貨物・人員・宇宙船などを大量に打ち上げる事が出来るマスドライバーを利用する方法である。このマスドライバーを利用する事で地上から宇宙に対して大量輸送が可能となってるため、地球連合の宇宙軍の補給を支えるだけでなく、地球各国の宇宙経済を支える要とも言えるほどの重大な拠点である。ザフトがビクトリア・パナマ・オーブといったマスドライバーがある地域を集中的に攻撃を仕掛けたのも、それが理由であった。

 

そしてもう一つは、西暦時代から使用しているHLVによる打ち上げである。

 

しかし、HLVの打ち上げにはマスドライバーを利用した打ち上げと比べて欠点がある。一つ目はマスドライバーを利用した打ち上げと比べて大量輸送に向かない事、二つ目は打ち上げコストがマスドライバーと比べて高い事が欠点にあるため、大量輸送となるとマスドライバーに及ばない。

 

しかし、HLVが廃れず現役で稼働しているのもHLVはマスドライバーにはない大きい利点がある。まず一つ目は、HLVの発射台はマスドライバーの施設を建設する為の建設費用より安く、理事国の様な大国でなくてもHLVの発射台が作れる事、二つ目は、建設する土地がマスドライバーほど制約が少ない為にHLV用の打ち上げ施設の建設の制約がマスドライバーと比べてかなり緩やかであるからだ。

 

この様な利用で、マスドライバーほど重要度は高くないが、HLVは世界各国で今だに現役で稼働している。

 

そして、ザフト最大の地上基地であるカーペンタリア基地にもHLV打ち上げ施設を建設している。地球連合の猛攻を防ぎ切るのは難しいと判断したカーペンタリアの基地司令は、宇宙に少しでも多くのザフト兵を宇宙に逃す為にHLV打ち上げまでの時間稼ぎをする様に、カーペンタリア基地の守備隊に所属するMS部隊に命令を下していた。

 

「こちら第15MS小隊。エリア6に凄まじい数の敵MSが上陸した。我々だけでは対処できない。支援砲撃を要請する!」

 

『こちらHQ。現在砲兵隊及び支援MSの砲撃は地球連合の巨大MAを相手に集中している。其方に支援砲撃を実行する事は出来ない』

 

「ふざけるな、このままだとエリア6の戦線が崩壊するぞ!」

 

『悪いが……まて、いま新たな命令が入った、エリア6を防衛しているMS部隊はポイントCまで後退する様に』

 

「……了解」

 

「隊長、司令部はなんて命令を」

 

「守備隊はポイントCまで後退だ」

 

エリア6の防衛についていたMS小隊の隊長がその様に言った瞬間に地面を揺らす様な衝撃と爆音が響き渡る。カーペンタリア基地のHLVの第一陣が打ち上がり、宇宙に向かって勢いよく飛んでいく。HLVが宇宙に飛び上がっていく姿を確認した第十五MS小隊のパイロット達は、満足そうな表情になる。

 

「隊長、どうやら第一陣は無事に飛んだ様ですね」

 

「よし、次の第二陣も無事に打ち上がる様に絶対に守り抜くぞ」

 

「了解です隊長」

 

ザフトの第十五MS小隊の隊長の言葉を聞いて返事を返し、司令部の命令通りに指定されたポイントまで後退を開始する。そしてHLVが打ち上がる様子は地球連合軍の方でも確認はされたが、一部の部隊を除いて地球連合はHLVが打ち上がった事は気にせずカーペンタリア基地の制圧に集中していた。

 

「改めて全軍に通達しろ、宇宙に逃げるザフト兵は無視して我々は基地の占領に集中しろとな」

 

カーペンタリア基地攻略を実行している部隊は司令官達の命令を聞いて、HLVで宇宙に逃げるザフト兵達は相手にせずにカーペンタリア基地攻略に向けて進行を開始した。功を焦った一部の部隊の命令違反もあったが、作戦進行に支障を来たすレベルではなかった。それはカーペンタリア基地の守備隊にとって悪夢であり、特にユーラシア連邦の巨大MAのビグザムの圧倒的な火力と、それに随伴するユーラシアのリオンIIと、リオンII同様に極東からライセンス生産したガーリオンによる上空からの攻撃に対して、ザフトのMS守備隊は圧倒されていた。

 

「くそ、巨大MAに全くダメージが与えられねえ!」

 

「バリアの様なモノを展開されてるせいでビームも防がられて、コッチの攻撃が全く通らない」

 

「それより航空隊はどうしてるんだ。こうも上から集中攻撃をされちゃあ巨大MAに攻撃が集中できねえよ!」

 

「ダメだ、これ以上は航空隊を回せないって通達が来た。他の戦線も連合の航空隊相手に手一杯だそうだ」

 

「クソッタレ!」

 

ジンとシグーで構成されているMS部隊は重突撃機銃を撃ちながら悪態をつく。何とか戦線を維持しようと奮闘しているザフトのMS部隊であったが、それでもビグザムは止まる事はなく、大量のビームの雨をザフトのMS部隊に降らせ、そのビームの雨に飲みこまれたMS部隊とリニアガンタンク部隊は次々と破壊されていく。

 

「圧倒的だなビグザムは」

 

「ええ、ビグザムが量産された暁にはザフトなんてあっという間に叩けますよね」

 

砲手の言葉を聞いた瞬間に、ビグザムの機長は何故か巨体で厳つい顔をした男性兵士が砲手と似た様な言葉を言いながら高笑いしている様子が突然と脳裏に浮かび上がり、ビグザムの機長は困惑した。

 

「どうしました機長?」

 

「あ、いや何でもない(なぜいきなり強面で巨体なパイロットが脳裏に浮かび上がったんだ?)」

 

どうしていきなり見知らずの巨体な強面の男性が高笑いする姿が脳裏に浮かび上がったのかビグザムの機長は不思議に思い、カーペンタリア基地攻略までスケジュールが多忙であって休み暇がなく、自分が思った以上に疲れていると思い、作戦が終了したら上に休暇申請をしようとビグザムの機長は決めるのであった。

 

なお、CEと違う歴史を歩んだ宇宙世紀という並行世界で、ビグザムという機体名で宇宙艦隊に特攻を仕掛けて大損害を与えて、ビグザムの砲手と似た様な言葉を言って高笑いしていた事は事実であった。

 

因みに前世が宇宙世紀出身の大和会の会員は、ユーラシア連邦がジオンの戦略MAであるビグザムを作り上げた事を知ってユーラシア連邦にジオンの人間が転生していると警戒したが、ユーラシア連邦にジオンの人間は転生しておらず、全くの偶然である事を知って、宇宙世紀出身の転生者は肩透かしをくらった気分になったと、非公式であるがコメントしている。

 

ーーー。

 

「ポイントDのMS部隊との連絡が入りません!」

 

「此方も第八MS中隊および、第三戦車大隊との連絡が入りません、既に壊滅したと思われます」

 

次々とカーペンタリア基地のMS・航空・戦車部隊の壊滅状態の報告が司令部のオペレーター達から告げられてくる。

 

もはやカーペンタリア基地は既に陥落寸前となっていた。

 

しかしカーペンタリア基地の司令官はこの結末を予想はしていた為にオペレーターの言葉を聞いてもどこか冷静となっていた。それは現在のザフトには、地球連合の圧倒的な物量を覆せるだけの兵器が存在せず、更に兵器を操るザフト兵の大半は素人で、地球連合の兵士全員は玄人となっている事も決定的な差となっていた。

 

いくらプラントのコーディネイターの素質が優秀でも、マトモに訓練していない兵士が直ぐに使い物になる事はない。かつて有視界戦闘が当たり前の時代のとある戦闘機パイロットのエースは記者達にこう告げている「素人が操縦する戦闘機は鴨と変わらない」と。実際に素人が操縦しているMSなどデカいカカシと変わらず、それはプラントのコーディネイターにも当てはまり、素質が優秀でもマトモに訓練しなければ使い物にならない事は、この戦争で嫌というほど証明されてきた。

 

既にHLVで可能な限りのザフト兵を宇宙に逃した事もあって目的は達成された。これ以上戦っても無駄に命がなくなるだけと判断して、基地司令官はある命令を下す。

 

「これ以上戦っても無駄に戦死者が出るだけだ。全部隊に降伏する様に通達しろ」

 

カーペンタリア基地の司令官の決定に、副官の立場にある黒服は異議を唱えた。

 

「司令、我々はまだ戦えます!」

 

「考え直して下さい!」

 

「我々はザラ議長よりカーペンタリア基地を絶対に死守する様に命令されてるんですよ!」

 

ザラ派の副官の言葉を聞いて、カーペンタリア基地の司令官は呆れた表情になって副官達に話す。

 

「ザラの命令だと? あんな狂信者の命令に絶対服従するなど馬鹿か貴様は」

 

「ザラ議長を侮辱するのですか司令官⁉︎ ザラ議長閣下は我々コーディネイターの為に動いているのですよ」

 

「俺はとてもコーディネイターの為に動いているとは思んな」

 

だいたいベテラン兵士を宇宙に逃し、マトモに訓練させないで徴兵した若いザフト兵を時間稼ぎの道具にしている時点で、カーペンタリア基地の司令官は、パトリック・ザラはプラントの未来の為に動いているのではなく、逆にプラントの未来を破滅させる為の存在にしか映らなかった。

 

まあ、それでもプラント市民達が戦争を早期に終結させる事が出来ると信じてパトリック・ザラを選んだ事は、プラント市民にも責任はある。

 

しかし、パトリック・ザラのコーディネイターなら何をやっても許されるという西暦時代の最悪な独裁者と同じ様な事を実行している事にカーペンタリア基地の司令官はうんざりしており、元々本人は穏健派のクライン派の人間であるため、過激派のザラ派とは意見が合わなかった。

 

「ザラの命令よりも、俺達の仕事は一人でも多くのザフトの……」

 

カーペンタリア基地の総司令部に突然と銃声が響き渡る。

 

基地司令官が話している最中に一人の副官が拳銃を取り出して、拳銃の引き金を引いて司令官に撃ったのだ。副官の一人が、味方である筈の指揮官を拳銃で撃つという行為に、総司令部にいる誰もが信じられない行動を目にして驚愕して動けないでいた。

 

「な……何を……」

 

「貴様はザフトの指揮官ではない!下等なナチュラルに捕虜になる行為を容認するなど、コーディネイターに許される行為ではないのだ!」

 

「ば……馬鹿、や……ろう……」

 

カーペンタリアの指揮官はその言葉を最後に、息を引き取った。そして拳銃で指揮官を撃った黒服は総司令部で宣言する。

 

「司令官は戦死した。これより私がカーペンタリアの基地の司令官として命令する。どんな事があってもナチュラルに降伏は絶対に許さん、カーペンタリアを死守せよ!」

 

カーペンタリア基地の指揮官を殺したパトリック・ザラを信奉する黒服の命令に、この場にいる誰も逆らう事が許されない様なオーラを纏っていた事もあって反論が出来ずにいた。既にカーペンタリア基地の戦力で地球連合に勝てる要素は皆無に等しかったが、カーペンタリア基地の新たな司令官の命令により、ザフト地上軍は徹底抗戦を続けた。

 

パトリック・ザラの狂気のカリスマに当てられた黒服が新たな指揮官となった事で、プラント本国から見捨てられ、勝ち目がないと分かりながらもザフト地上軍のザフト兵の多くが最後まで抵抗をやめようとせず、中には降伏を装って奇襲をするという馬鹿げた行動を起こすザフト兵や、他にも「ザラ議長万歳!ザフトに栄光あれ!」と、叫び地球連合兵士に特攻を仕掛けるザフト兵もいた為に、突然と狂気じみた行動を起こすザフト兵に、ザフト兵と対峙する地球連合の兵士達は恐怖を感じた。

 

それでも兵力差は圧倒的であった為にカーペンタリア基地は陥落はした。しかし、狂気じみたザフト兵の行動に地球連合は悪戦苦闘し、オセアニア地域のザフト地上軍の影響力の排除が完了したのはカーペンタリア基地攻略を開始した一週間後の事であった。

 

ザフト地上軍最大の基地であるカーペンタリア基地は陥落した事で親プラント国であった大洋州連合も地球連合に降伏し、親プラント政策を推し進めていた政権は解散させられて、大洋州連合の新政権は、地球連合よりの新政権が誕生する事になり、大洋州連合は地球連合に参加するのであった。

 

こうしてザフトの地球での影響力は完全に排除されて、ザフト地上軍はゲリラ活動をする事しか出来なくなり、軍事的に地球連合の脅威となる存在ではなくなった。

 

しかし、地下に潜伏を決め込んだザフト兵はザラ派であったため、軍事的に脅威ではなくなったザフト地上軍だが、テロリストと見れば充分に脅威という事もあって、地球連合はテロリストと化したザフト地上軍の対処に四苦八苦するのであった。

 

ーーー。

 

『地球連合の兵士達の多くは、戦争が終盤に差し掛かった時期のザフト兵の狂信的な行動に恐怖したと証言を残している。特に地球連合の兵士達は、ザラ派に属するザフト兵の多くが「パトリック・ザラ万歳!ザフトに栄光あれ!」と叫びながら自爆特攻をしたり、降伏を告げても無視して戦い続け、降伏したザフト兵を殺そうとする光景を目にしたと証言した。

 

ザフト兵の狂気じみた行動は、パトリック・ザラの狂気のカリスマに当てられた為と結論づける歴史家も多くいる。実際にカーペンタリア基地攻略戦に参加した大西洋連邦指揮官は、パトリック・ザラを、西暦時代最悪な独裁者の一角に例えられるアドルフ・ヒトラーと重ねて、地球連合はパトリック・ザラをヒトラーの再来と称する様になり、カーペンタリア基地攻略戦後から地球連合では、ザラ派のザフト兵をザラの私兵、またはザラ親衛隊と称する様になり、ザラ派のザフト兵は地球連合にとって恐怖の対象となったのであった。

 

更にパトリック・ザラの狂気のカリスマの影響力は現代にも残っている。それを証明する様に、ザラ派の元ザフト兵グループは、テロリスト認定された過激派ブルーコスモスと並び、最悪なテロリストグループとして認定されている。パトリック・ザラのナチュラルに対する強大な憎しみは、今だに収まる事は知らずに、彼の怨念はザラの後継者によって受け継がれている事を認めざるおえない。

 

CE95年 3月9日。 大西洋連邦 スターライトタイムズ記者 メアリー・ミッチェル』

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。