ガンダムSEED 架空国家の憂鬱   作:zero3 ガイル

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第二十七話 カーペンタリア低軌道・クルーゼの焦り

 

地上でカーペンタリア基地攻略戦が始まり、勝敗の行く末が地球連合の勝利で終わろうとしている頃、カーペンタリア基地司令官の命令でHLVの発射を成功させて地上から宇宙に脱出に成功したザフト兵達は、救援の艦隊が来るまでの間は、HLVが無防備であるため、カーペンタリア基地から持ち出す事に成功したジンと、数少ないシグーを合わせて12機のMSで護衛していた。

 

こんな絶好の機会を見過ごす地球連合ではなく、地球連合宇宙軍の小艦隊がカーペンタリア軌道で無防備にしているザフト軍に対して攻撃を開始した。

 

そもそもカーペンタリア基地攻略部隊がHLV発射を無視して宇宙に逃したのは、カーペンタリア基地攻略を優先させた事は事実であるが、それ以上に宇宙に上がったHLVは宇宙船に回収されるまでは無防備状態である事は理解していた為に、カーペンタリア基地から宇宙に逃げたザフト兵の対応は宇宙軍に任せた方が効率が良いと判断したからだ。

 

「ガーランド隊長、このままでは持ちませんよ」

 

「弱気になるな!もうすぐ救援艦隊が到着する。それまで持ち堪えるんだ!」

 

大西洋連邦宇宙軍の小艦隊といっても、その規模はガーランド隊の数倍以上の規模のMSを展開する事が可能であるため、小艦隊から次々とストライクダガーとダガーLが自分達に襲いかかり、その様な絶望的な状況に新米のザフト兵の一人が弱音を呟くが、シグーに搭乗するザフトのMS部隊のガーランド隊長は弱気になった部下に対して叱咤激励をする。

 

それでも部下の言う通り、このままでは数の暴力で自分達は壊滅してしまい、無防備となっているHLVを破壊され尽くされてしまう。どうしたらいいんだとそう思っていた時に大量のビームとミサイルがストライクダガーに襲い掛かかり、しかもピンポイントでストライクダガーに命中して、HLVと自分達に当たらないという神技を見せつけられて、ガーランド隊のMSパイロット全員は唖然とした。

 

「俺はヴェステンフルス隊隊長のハイネだ。エース部隊の俺達が来たんだ、絶対に助かるぜ、お前達は」

 

ジャスティスに搭乗しているハイネ・ヴェステンフルスが、ガーランド隊に自信をもってそう告げる。

 

ヴェステンフルス隊、敗走が続いて今ではMS隊の大半は素人となってしまった現在のザフトにおいて数少ないエースだけで構成されている部隊である。

 

エース部隊と称されているだけあり、ザフトが誇るハイエンド機であるフリーダム、ジャスティスを筆頭に、ジンの後継機として開発されたゲイツで構成されている部隊であり、母艦はフリーダムとジャスティスの二機しか搭載が出来なかったエターナル級を改良して艦載機を増やした改エターナル級を母艦として活動している部隊である。

 

そんなザフトが誇るエース部隊の登場で、士気が落ちかけていたガーランド隊の士気は元に戻る。ガーランド隊の士気が戻ったのは名ばかりのエース部隊ではなく、本物のエース部隊が登場したからだ。

 

実際にハイネを隊長とするヴェステンフルス隊の実力は本物で、あれだけ悪戦苦闘していた地球連合の艦隊より多数出撃したストライクダガーとダガーLを次々と撃破していき、更に自分たちの逃げ道をふさぐ様に展開していた地球連合の後続艦隊と思われる部隊相手に、大型ユニットを装備しているジャスティスが次々と敵MSを破壊していき、大型ユニットを装備しているため火力と加速力は増加するが、小回りが利かなくなり、回避が難しい筈なのに、敵船とMSのビーム、ミサイル、機銃を回避して、大型ユニットの装備されている大型ビームサーベルで敵船ごと敵MSを切り裂いていく光景を見せつけられたから、ガーランド隊の士気が元に戻ったのだ。

 

そんなガーランド隊の士気が戻った事を察したハイネは、無線越しで彼らに地球連合の宇宙艦隊相手に大暴れしているミーティアを装備しているジャスティスについて説明する。

 

「あそこで暴れてるジャスティスのパイロットはザフトでも上位……いや、一番の凄腕の『新米』パイロットで、ヴェステンフルス隊が誇るスーパーエース様だ」

 

まあ、本人にエースパイロットとしての自覚がなく、自分に自信がないことが欠点ではあるけどなとハイネは心の中で呟く。

 

いくらジャスティスの性能がダガーシリーズより遥かに上といっても、正式な艦隊とは言えないが、それでも今ここで自分達が対峙している小艦隊より規模がある地球連合の艦隊を相手に大暴れして次々と敵船とMSを撃破していく光景に、ハイネも認めるしかなかった。

 

救援艦隊の救助が完了するまで足止めを請け負っているMSパイロットの名はレオン・キャンベル。MS操縦技術以外は落第と称された、前世の記憶を保持しているロボマニアのザフトのMSパイロットは、低軌道でパナマ攻略戦を成功させた立役者は、ここでも自慢の操縦技術を発揮して、救援艦隊が救助を完了するまでの足止めという役割を完璧にこなしていた。

 

「落とせ、あのMSを絶対に落とすんだ!」

 

そしてこの事態に、いくらザフトが誇るハイエンド機であるジャスティスが相手といえ、たった一機のMSに大西洋連邦宇宙軍の中艦隊が翻弄されている事実に、この艦隊の指揮官は認める訳にはいかなかった。それは一機のMSに中規模の艦隊が手も足も出ずに翻弄されている事実を認めたくないのもあるが、それ以上に大西洋宇宙軍の醜態をこれ以上晒す訳にはいかないという焦りもあった。

 

何しろ地上では最近まで膠着状態が続いていた地上戦線に変化が訪れ、北アフリカ戦線で勝利を重ねてから地球連合は勝利を重ねてザフトに占領された地域の奪還に成功し、今現在も作戦が継続しているカーペンタリア基地攻略戦も成功すると地球連合軍上層部は認識していた。

 

地球連合の地上軍は活躍を続けているなかで、大西洋連邦宇宙軍は地上戦線と比べて大した戦果もなく宇宙軍全体に焦りが見えていたのだ。何しろ地球連合宇宙軍で目立った活躍をしているのは極東連邦宇宙軍くらいのもので、地上と比べて物量を生かしにくい環境も手伝って、大西洋連邦宇宙軍はザフト宇宙軍に対して目立った戦果を出していないため、宇宙軍は陸軍・海軍・空軍と比べて立場が厳しいものになっていた。

 

「大西洋連邦宇宙軍の実力を見せつけてやるのだ!」

 

ここでたった一機のMSに翻弄されて、大した戦果を上げる事も出来ずに損害だけを被ったら、自分は降格されるだけでなく、自分が所属している大西洋連邦宇宙軍の派閥から見限れて、出世コースから外れてしまうという恐怖心から血気に逸り、怒鳴りながら指示を出すが、その思いは虚しく、レオンはミーティアに装備しているビームソードを展開して艦隊の指揮官が乗艦しているアガメムノン級を真っ二つにして、指揮官を戦死させた。

 

これにより、大西洋連邦の艦隊指揮官が戦死した事により、艦隊の指揮系統が乱れて混乱してしまう。残存している艦隊の艦長達が混乱を納める為に動くが、烏合の衆と化してしまった艦隊やMS部隊は、レオンにとって鴨でしかなくなった為にミーティア装備のジャスティスに撃破されていく。

 

そしてレオン本人は相変わらず……。

 

(辞めてやる、絶対に辞めてやる。最終回まで絶対に生き残ってやるんだ!)

 

このように心の中で、原作最終回が来たらザフトを絶対に辞めてやると叫んでいた。

 

既にこの世界はレオン本人が知る原作世界とかけ離れた世界である事は理解している。しかし、それでもレオンは原作知識という役にたたない知識に縋りついていた。それが簡単に千切れる蜘蛛の糸の様なものであったとしても、レオンはそれに縋りついてメンタルを保って戦いを続けていたのだ。

 

なお、HLVでカーペンタリア基地から宇宙に脱出したザフト兵達は、ハイネ率いるヴェステンフルス隊の活躍により多くのザフト兵は救助された。

 

そして救助活動に最も貢献したハイネの部隊は大々的に宣伝され、特にレオン・キャンベルはザフト地上軍の敗戦が続き、ついには地球におけるザフトの影響力が完全に排除された事を少しでも払拭する為に、プラント上層部はレオンの活躍を誇張気味に全世界に向けて発信した。

 

自分がプロパガンダに使われてレオン本人はうんざりしてるが、プラントの独裁者となったパトリック・ザラに逆らう度胸もないし、ザラに歯向かったらザラのシンパに何をされるか分かったものではない事を理解してるため、レオンは素直に受け入れたのであった。

 

更にレオンが、パナマに続いてカーペンタリアの低軌道で大暴れして地球連合の宇宙軍大打撃を与えた為にレオンに異名を与えられる事が決定し『赤い彗星』の異名が与えられるのだが、地球連合は、たった一機で大暴れして、地球連合の艦隊に大打撃を与えたレオンを赤い彗星という異名で呼ぶ事はなく、『ザフトの赤い悪魔』と呼ぶようになり、レオンを恐れるのであった。

 

ーーー。

 

そして、ハイネが率いるヴェステンフルス隊がカーペンタリア基地を脱出したザフト兵を救援活動を実行している同時刻。プラント本国では、地上におけるザフトの影響力が完全に排除されてしまい、パトリック・ザラは更に暴走を続けてナチュラルに対する憎しみを増す姿は世界の破滅を願うラウ・ル・クルーゼにとっては願った展開であったが、クルーゼの表情は険しかった。

 

(プラントは私の思い通りに破滅に進んでいる。ここまでプラントが追い詰められては、あの男も例の兵器を使用する事は躊躇わないだろう。だが!)

 

相変わらず地球連合のプラントに対する憎しみが低く、クルーゼの予想通りに動いていない為にクルーゼは焦っていた。

 

クルーゼも自分のシナリオ通りに進ませる為に、地球連合がコーディネイターの憎しみを増長させて、ナチュラルとコーディネイターがお互いを憎しみ合わせる関係に戻すために、パナマの蛮行というシナリオを用意した。クルーゼの予想では、これでブルーコスモス過激派の勢いは増して、ナチュラルはコーディネイターの憎しみが復活し、昔の様にコーディネイターを滅ぼすために動こうとするだろうし、その様にするためにブルーコスモス系のマスコミにいち早くパナマの蛮行をリークして、地球各国の憎しみを増長させる様にクルーゼは動いた。

 

しかし、クルーゼの予想に反して一部の過激派のブルーコスモス会員が見境なく暴れて地球各国の警察機関に抑え込まれ、地球のコーディネイター達も地球連合に協力する様になり、更に地球のコーディネイター達は自分達の秘密を公開して、逆にナチュラルと地球のコーディネイターと協力体制が構築される様になって、地球連合の基盤は更に強固なものとなったのだ。

 

(いったい誰が私のシナリオを崩し、私の破滅の願いを邪魔する。ロゴス、一族、それとも大和会か!)

 

自身が思いつく限りの地球で根を張る最強の秘密結社の名が浮かぶがクルーゼは直ぐに否定した。

 

あいつ等は自分が最も嫌悪するアル・ダ・フラガ同様に金と権力があれば神にでもなれると勘違いしている俗物の組織であり、自分の様に世界の滅亡を望んで行動している自分の真の目的を知るはずがないと思っており、自分のシナリオを邪魔しているグループは他にいるとクルーゼは考えていた。

 

だが、クルーゼは大きなミスを犯していた。それは、クルーゼは大和会を過少評価していることが原因で、彼はロゴスや他の政治家同様に大和会が設立した真の目的を理解していない事であった。

 

大和会はクルーゼの目的に対してある程度は認識している為に、クルーゼの妨害工作をおこなっている。そもそも大和会は、あらゆる並行世界の転生者達をバックに強大化した組織であるため、クルーゼの様な破滅願望を持つ人間とも対峙していた経験がある転生者達もおり、クルーゼが見下している大和会の会員によって妨害工作を行われている事にクルーゼは気が付いてなかった。

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