ガンダムSEED 架空国家の憂鬱   作:zero3 ガイル

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第二十八話 レオンの憂鬱

 

地上でのザフトの軍事的影響力は完全に排除されて主戦場は宇宙に移行した事もあって、大西洋・ユーラシア・東アジア・極東を中心に宇宙軍の軍備増強が始まった。世界各国のマスドライバーもフル稼働させて、地上から大量の物資が宇宙に打ち上げられ、宇宙軍の戦力は日に日に増していた。

 

既にNJCにより原子力発電所が復活した事に加えて、Nジャマーにより原子力発電所が使えない間に研究されていた、原子力に変わる既存のシステムより効率的な太陽光発電システムの開発に成功している事もあって、現在の地球連合の生産力は戦前を遥かに上回っている。地球のエネルギー問題は解決しており、更なる軍事力の増強を始めても賄えるほどのエネルギーを生み出す事に成功したため、Nジャマーの被害からの復興活動は順調に進んでいた。

 

そんなプラントに本格的に侵攻を始めようよしていた地球連合に、更なる大きな変化が起きていた。

 

ついに中立を保っていた中立国が中立を破棄して、地球連合に参戦する事を決定した。それは中立国で一番の技術力と軍備を保有し、戦争に参加する事を最も嫌ったオーブも例外なく地球連合に参加した。

 

中立国の突然の中立破棄と地球連合に参戦する行為は、地球連合の一般人や軍人からすれば、日和見を決め込んでいた中立国が勝ち馬に乗るために参戦した様に見えてしまい、この段階での中立国の参戦はプラントは無論、味方となる地球連合側も中立国に対して不満が強い。それは中立国も強く理解しているが、それでも中立を捨ててまで地球連合に参加するには訳があった。

 

地球連合とプラント市民の多くが感じている勝ち馬に乗ることも事実だが、それ以上に中立国が中立を破棄してまで地球連合に参加する事を決定した理由は、中立国はプラントを『国家』として認識する事を止めた事が最大の理由であった。

 

可笑しな表現になるが、地球連合と中立国はプラントを国家として承認していなかったが、連合・プラント大戦が本格的に開戦が始まった段階で、地球連合と中立国はプラントを『国家』として認めて戦争をしていた。

 

地球連合政府は、表向きはプラントを地球連合が保有しているコロニーを不法占拠しているテロリスト集団として対応しているが、プラントは開戦前から国家としての基盤を構築しており、軍事力もテロリストの規模を遥かに超えており、国力の差はあれど、プラントは政治基盤と軍事力は地球各国が認めるレベルに達していたため、地球連合は開戦した段階でプラントを一国家と認めて戦争を始め、国対国という同じレベルで政治も軍事も地球連合と中立国はプラントに対して対応してきた。

 

しかし、地球連合とプラントの関係はCE71年代から崩れ始めた。

 

それは、シーゲル・クラインが議長であった時代のザフトは、少なからず国際法を無視した行動をしたザフト兵もいたが、それでも地球連合が許容できる範囲であった為に大きな問題に発展することはなかった。だが、パトリック・ザラが新議長に就任してからザフト兵は暴走する様になった。

 

パナマの悲劇による捕虜の虐殺に始まり、中立国だったオーブに一方的に侵攻を開始して、軍事施設と全く関係がない市街地の無差別攻撃、トドメにカーペンタリア基地攻略戦では降伏を偽装して油断している連合兵を攻撃する偽装降伏という完全に国際法を守らないザフトの蛮行に対して、ついに地球連合も中立国もプラントを国家としてではなく、凶悪なテロリスト集団として認識する様になったからだ。

 

そしてCE71年7月15日。中立国が中立を破棄して地球連合に加盟した。中立国が中立を破棄して地球連合に加盟した事は、プラントが本格的に国家として認識しなくなった事を意味しており、プラントが独立国家として承認される可能性がゼロになった事を意味していた。

 

それでも、地球連合との講和を目指そうとプラント穏健派は必死に和平交渉しようと奮闘するが、地球連合がプラントを完全にテロリストに認定してしまった為に、プラント穏健派の奮闘は全て空振りに終わった。

 

そして現在のプラント本国の空気は、過激派を除けば最悪であった。

 

「何処に言ってもナチュラルを滅ぼせ、ナチュラルに死をって十字軍じゃないんだから」

 

カーペンタリア基地から脱出したザフト兵の救出任務を終えたレオンは、次の任務まで本国で休暇を取る事を許されたため、現在は実家の自室のベットで仰向けなってうんざりした様子で呟いた。

 

せっかく貴重な休日を貰ったのだから街に出て楽しんでいけば良いのにと、実家から通うよりも学びたい音楽学校がレオンの実家からの方が近いという理由で居候しているプラントの歌姫と声だけはそっくりな自分の従妹に呆れられたが、レオンは現在のプラントの空気を嫌っており、自宅でのんびりする方を選んだ。

 

実際にコーディネイター至上主義者ではないレオンが、本国の空気を最悪と思うのは無理はなかった。

 

「コーディネイターの未来の為に我々は戦うのだ、いや戦い続けなければいかんのだ!

 

ナチュラルが我々コーディネイターを宇宙の化け物と叫び、確実に滅ぼそうとする事は明白だ!その実例が血のバレンタインという悲劇なのだ!

 

我々がナチュラルを屈服させて、我々コーディネイターが真の支配者とならなければ未来はないのだ。立ち上がれプラントの国民達よ!コーディネイターの真の自由と独立を守るために、ザフトは、君達愛国心のある国民の力を誰よりも必要としている!」

 

「コーディネイターに未来を!」

 

「野蛮なナチュラル共に死を!」

 

暇つぶしにテレビを点けたら、いつの時代の話だと言いたくなる様な選民思想を植え付ける映像がテレビに映っており「またジオンの様な事をやってるよ」と、レオンは呆れた様に呟きテレビを消した。

 

このように、パトリック・ザラが議長に就任してからプラントの空気は最悪で、戦争反対を言えば戦犯扱いになる空気もあり、その様な空気を作っているのはプラントの中でも特に過激な『国民突撃隊』という組織のせいでもあった。

 

パトリック・ザラの様なコーディネイター至上主義達で結成された『国民突撃隊』という組織は、反戦活動やナチュラルの融和を訴える組織や市民に対して「プラントの裏切り者!」と断言して、過激な暴行を加える事も辞さないやばい組織である。初めは学生の部活動レベルのコーディネイター至上主義達の集まりでしかなく、大した影響力もなかった。しかし地球連合との徹底抗戦をやめない、ナチュラルとの融和を考えていないパトリック・ザラにとっては都合がよかったのか、パトリック・ザラが強大な後ろ盾となったおかげで急速に勢力を拡大した事もあってプラントの警察組織も手が出せない程に強大化した過激組織である。

 

この組織の存在を知ったレオンは内心「何処の英雄伝説の騎士団だよ」と、呆れていた。

 

だが、後ろ盾が過激派筆頭格であるパトリック・ザラであり現最高議長である事もあって、過激派でないプラント市民はパトリック・ザラの恐怖政治を思わせるやり方に恐怖していた。

 

(本当にどうなっちまうんだ、この世界は?)

 

最初は原作通りに進む事は犠牲も大きくて色々ヤバいと認識していたが、原作主人公を筆頭とした主要キャラ達のように立ち回る自信もなかった為に極力原作に関わらない様に心掛けたが、原作以上に地球連合が強力であった為に。自分が知る原作知識が役に立たないという事態になった。

 

何しろSEED世界では存在しない極東連邦という勢力が現れたり、スパロボの機体が出てきたり、ゴジラシリーズのメカゴジラが現れたり、宇宙世紀のMSやMAが出てきたりともう滅茶苦茶だ。

 

それでも原作の本質は変わっていない、最終的にはプラントが負けて敗戦となってもプラントは存続するかも知れないと、深く考えずに楽観的に考える様にしてはいるが……。

 

(原作通り、あの狂信者と、破滅願望がある仮面野郎がまだ生きてるからな……)

 

レオンはそこだけが心配であった。何しろ原作を知っている人間からすれば、パトリックとクルーゼはSEED世界でも指折りにヤバい人間である事を嫌というほど理解しているからだ。

 

パトリックはナチュラルへの復讐心だけで、まだ地球には大勢のコーディネイターがいるのに、ナチュラルを滅ぼす弊害という理由で関係ないと言わんばかりにジェネシスで皆殺しにしようとするし、クルーゼは自分の生い立ちと寿命が短い事が原因で世界を憎しみすぎて人類全てを抹殺しようとするし、本当に厄介な連中がまだこの世界で生きているのだ。

 

もしかしたら地球滅亡エンドもあるかもしれないと思い、レオンは億劫になり、少しでも気分を紛らせる為に、プラントの歌姫であるラクス・クラインの曲を聴いて気分を落ち着かせる事にした(何故か反戦活動は絶対に許さない国民突撃隊も、ラクス・クラインの曲を聴いたり流したりすることは黙認されていた)。

 

徴兵される前は音楽に興味はなかったが、ラクス・クラインのガチファンである従妹に強く進められたので、半ば強制的にCDを購入させられたが、今はとにかくラクス・クラインの曲を聴くと落ち着く事ができる為にラクスの曲を聴いていた。

 

少し聴いただけでレオンは自分の心が穏やかな気持ちになる事を理解し、ラクス・クラインがプラントの歌姫と言われる事がよくわかる気がするのであった。

 

レオンがラクス・クラインの曲を聴いていると、音楽学校から帰ってきた従妹から「ロボオタクもようやくラクス様の良さが分かったようね」と、ドヤ顔された事に少しイラっとしたレオンは、声がラクスに似ている従妹の頭を軽く拳骨を食らわせた。従妹は馬鹿になったらどうするつもりと抗議されたが、レオンは気にせず軽く聞き流した。

 

なお、レオンは休暇が終わり、ボアズの防衛任務につくように通達された直後に、ラクス・クラインがプラント穏健派のザフト兵と一緒に離反し、完成したばかりのフリーダム五号機、ジャスティス四号機が搭載されている改エターナル級と一緒にプラントから脱出した事をレオンは隊長であるハイネより知らされて、思わず「このタイミングで離脱するのかよ!」と、叫びそうになったのであった。

 

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