ガンダムSEED 架空国家の憂鬱   作:zero3 ガイル

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第三十一話 地球連合の報復

 

「負傷者が多すぎる、救護艇をもっとよこしてくれ!」

 

「ダメだ、完全に機体がイカれてやがる!」

 

「母さん……母さん……」

 

ボアズ攻略を行っていた地球連合の大艦隊の半数が壊滅状態になっていた。地球連合各国の旗艦から救援要請と阿鼻叫喚の声が無線越しから聞こえ、経験が浅いオペレーターはあまりの非常事態にパニック状態になりかけ、それを経験が豊富なベテランが何とか支えて地球連合艦隊は体制を保つ事に成功していた。

 

だが、ボアズの防衛を任されていたザフトの守備隊は大混乱に陥っていた。突然本国の方から高エネルギー反応を感知したと思ったらボアズを巻き込み守備隊の宇宙艦、MSの殆どが破壊され、ボアズの司令部に指示を貰おうにも、ジェネシスから発射された高出力のガンマ線により、ボアズ司令部は壊滅してしまった事もあってボアズ守備隊は統制が取れない状況になっていた。

 

「た、隊長……」

 

「ふざけるな、味方ごと攻撃しやがって!」

 

地球連合の不可思議な行動に疑問に思い脱出したヴェステンフルス隊はジェネシスの攻撃から免れて無事であったが、隊長のハイネを始め、素直に喜べるものではなかった。

 

(くそ、ザラは前々から狂っているとは思っていたが……!)

 

流石に味方を巻き込んで大量破壊兵器を使用するとは思わなかった為に、ハイネはパトリック・ザラに対して激しい怒りを抱く。地球連合がボアズに大量に集まったと判断した段階で味方ごと大量破壊兵器で攻撃する事を躊躇なく実行したパトリック・ザラ率いるプラントに対する味方意識は完全になくなった。

 

「俺はザフトを抜けて地球連合に味方する」

 

「隊長!」

 

隊長であるハイネの判断にヴェステンフルス隊の隊員の一人が驚愕する。

 

「おまえ達も分かっただろ。パトリック・ザラと、ザラの私兵を倒さない限り、俺達が守りたかった故郷を取り戻す方法はないんだよ」

 

ハイネの言葉に隊員の誰もが反論する事は出来なかった。実際に味方ごと大量破壊兵器で攻撃したパトリック・ザラに対して不信感が強いのは確かであった。ハイネの言う通り自分達を捨て駒にしたパトリック・ザラの味方をしたくない、しかし、今まで戦争で戦ってきた地球連合に味方するのもどうなんだ?という考えも強かった。

 

ここでプラントを裏切って、地球連合に味方をする事を決めたら、自分達は今まで何の為に戦ったのか分からなくなるからだ。

 

「自分は隊長の意見に賛成します」

 

ハイネに賛同する様に声をかけたのはレオンであった。レオンはザラの思想ややり方に共感しておらず、今のプラントの空気も嫌いであった為に、パトリック・ザラ打倒というハイネの考えに賛成であった。まあ、それ以上に「これ以上ザフト陣営で戦ったら絶対死ぬしな」という打算的な考えもあるが……。

 

「賛成してくれるのかレオン」

 

「はい、俺もザラがトップのプラントの空気は好きじゃないんで。故郷が平和になるなら連合に味方する事も抵抗感ないですよ」

 

「ふ、ありがとうなレオン。他はどうする?」

 

ヴェステンフルス隊で一番のエースパイロットがハイネの意見に賛成したという事もあって、ザフトのまま戦うか、地球連合に寝返るかで迷っていた隊員達も賛成に回って地球連合に味方する事が決定した。

 

こうしてヴェステンフルス隊は生き残ったボアズ守備隊のMS部隊にも、地球連合に寝返りプラントで恐怖政治を実行しているパトリック・ザラを打倒して、自分達の故郷を取り戻そうと説得するように声をかけた。

 

最初はヴェステンフルス隊の隊員達と同様に故郷を裏切る事に抵抗感があったが、ハイネのカリスマと、ザフトでも名高いエースパイロットであるレオンのネームバリューも合わさった事で地球連合に味方する事に賛同するザフト兵は増えていき、ハイネは徹底的に裏切る事を宣伝するためにオープン回線で堂々と宣言した。

 

「パトリック・ザラが率いるプラントに未来はない。俺達ボアズの生き残りはプラントの真の自由を得るために地球連合に味方する!」

 

ボアズの生き残り部隊はパトリック・ザラの横暴なプラントを見限り球連合に味方する事を堂々とオープン回線で宣言した為に、その通信内容はヤキン・ドゥーエで指揮を取っているパトリック・ザラの耳にも入っていた。

 

「議長、残存するボアズの守備隊が裏切りました」

 

「ふん、大局を理解しない無能が」

 

ザラ派のザフト兵の報告をつまらない表情で呟くパトリック・ザラ。パトリックはナチュラルに味方するコーディネイターの裏切り物を地球連合同様に殺すように命令を下す。

 

「それよりジェネシスの再発射はまだか?」

 

「申し訳ありません。ジェネシスの重要な機関にトラブルが発生して再発射が不可能となっています」

 

「直ぐに修理しろ、敵は待ってはくれんのだぞ」

 

オペレーターが機械トラブルが起きた事を聞いて早急に修理する様にパトリックは命じる。モニターに映っている地球連合の艦隊を睨みつけ、もう少しで自分の復讐は完了すると実感し、自分の全てであった妻のレノアを奪ったナチュラル達を抹殺する事が出来ると実感すると更にパトリックの狂気は増していき、その狂気にザラの思想に共感するオペレーター以外は恐怖心を感じるのであった。

 

そして、ジェネシスの攻撃で混乱する艦隊を何とか立て直した極東連邦艦隊は、月面基地よりジェネシス破壊を優先する様に通達され、核ミサイルは無論、例のX計画の兵器を使用する事が許可されたのであった。

 

X計画で開発されたのは戦略クラスのMSであり、それを使用するには莫大な制約が組み込まれている。そのうちの一機はMSでありながら核弾頭を運用する事が可能であり、そして今回の作戦で運用するMSは核弾頭を使用する以上に運用に制約があるが、コロニーを跡形なく消し飛ばす事が可能なビームを撃つ事が出来る。

 

「各国艦隊の根回しは終わった、後はガンダムゼロXの出撃を待つだけだな」

 

「そうですね司令」

 

「ガンダムゼロXの状況は?」

 

「後少しで出撃前の安全装置の解除が完了するそうです」

 

「そうか、出来ればガンダムゼロXは使用せずに終わってほしかったが仕方ないか」

 

ガンダムゼロX。大和会が開発したG兵器と似たフェイスで右肩にサテライトキャノンと呼ばれる強力なビーム砲を搭載したMSは、とある並行世界で地球連邦と宇宙革命軍と呼ばれる二大勢力による宇宙戦争で使用されたMSであるガンダムXをベースに作られた戦略MSである。

 

ベースとなったガンダムXは、本来ならサテライトキャノンを使用する為には月面の太陽光発電システムから受信したスーパーマイクロウェーブで充電した膨大なエネルギーをダイレクトに使用して放つという兵器だが、その様な膨大なエネルギーを充電させる月面基地を建設する事はCE世界では難しいため、ガンダムゼロXはガンダムXと違い、事前に莫大なエネルギーを出撃する前に充電して使用する方式となっている。そのため一発でもサテライトキャノンを撃ったら再使用する為に膨大な時間が必要とするため、ベースとなったガンダムXと比べてサテライトキャノンを撃つ事に制約が多い。

 

それでも、ガンダムゼロXが使用するサテライトキャノンの威力は本家と勝るとも劣らない強大な火力を保有してるため、一撃でジェネシスを破壊するだけの火力は保有している。

 

ガンダムゼロXが発進し、ジェネシスに照準をロックするとサテライトキャノンを撃つ為の最後の安全装置が解除される。

 

「サテライトキャノン、最終安全装置を解除」

 

「よし、サテライトキャノンの発射を許可する」

 

「了解、サテライトキャノン発射!」

 

極東連邦宇宙軍の艦隊司令官の言葉と共にガンダムゼロXのパイロットはサテライトキャノンのトリガーを引いてサテライトキャノンは発射された。通常のMSサイズから発射されたとは思えない大出力ビームはあらゆる敵船・敵MSを区別なく破壊していき、威力は下がる事なくジェネシスに向かって進んでいく。

 

その頃、ジェネシスの機械トラブルの修理が完了し、ジェネシスの再発射が可能となった事でパトリック・ザラはジェネシスによる攻撃再開の指示を出していた。

 

「議長、ジェネシスの修理が完了しました」

 

「ああ、二射目は残存の地球連合艦隊、そして次は」

 

「月面基地ですね議長」

 

「そうだ、それでナチュラル共は我々に逆らえるだけの戦力はなくなったも同然だ」

 

「ほ、報告!強大なエネルギー反応がジェネシスに向かって急速に接近しています!」

 

「なんだと!」

 

オペレーターからの報告を聞いて驚愕するパトリック。彼が見た光景は、モニターに映し出された超強力な高出力なビームがジェネシスに向かって接近し、ジェネシス周辺にいる艦艇とMSも巻き込んで破壊されていきジェネシスに直撃する。

 

本来なら強力な電力により展開しているジェネシスのPS装甲は、物理攻撃は無論、大抵のビーム兵器に対しても強い耐性を保有しているのだが、強力な実弾とビーム兵器をものともしないPS装甲で守られていたジェネシスはサテライトキャノンのビームエネルギーには耐えられずに破壊された。

 

「そ、そんな……」

 

「ジェ、ジェネシスが……」

 

先程は地球連合の大艦隊に大打撃を与えたプラントの技術の結晶とも言えるジェネシスが破壊され、更にジェネシス防衛の為に展開していた宇宙艦隊とMSの多くも破壊されてしまった。唯一プラントが圧倒的な戦力を保有している地球連合相手に逆転して勝利できる可能性があったジェネシスの破壊は、ザフト軍の士気を容易く打ち砕き、プラントの僅かな勝利の可能性すら打ち砕いた瞬間でもあった、

 

ーーー。

 

『ジェネシスの破壊。連合・プラント大戦終盤に差し掛かったボアズ攻防戦で起きたザフト軍が誇る最強の戦略兵器の破壊は、地球連合の勝利が決定した瞬間であった。何しろ地球連合の圧倒的な物量を覆せるだけの大量破壊兵器として脅威的な破壊力を保有していたジェネシスが破壊された事は、既に連合・プラント大戦の開戦初期に稼いだMSというアドバンテージを失ったザフトが巻き返せるだけの戦力は既になかったザフトにとって致命的であった。

 

何よりパトリック・ザラがボアズが陥落寸前のところで、友軍の撤退が完了してない段階でジェネシスを使用した事も敗北を決定づけ、更には情報戦という点でもザフトは地球連合に大きく遅れを取っていた事もザフトの敗北を早めた要因となっている。

 

それは、地球連合は既にボアズ攻略戦の前にジェネシスの情報をプラントの穏健派として知られるクライン派の人間と秘密裏に接触し、クライン派からジェネシスの情報を提供された事もあって、ジェネシスの脅威をボアズ攻略戦に参加していた地球連合の艦隊司令官達は理解しており、そのため地球連合はミラージュコロイドで隠していたジェネシスを展開した時にボアズ攻略が完了する寸前に撤退指示を出した事もあって艦隊壊滅は避けられて、ザラ派の人間が想定した以上に被害は少なかった。

 

しかし、ボアズ守備隊についたザフト軍は悲惨であり、そもそもジェネシスの情報が使用する前までパトリック・ザラが徹底的に限られた人間にしか明かしていなかった為に、ジェネシスの存在を知るものはボアズ防衛についていたザフト軍にはいなかった事もあって一部の部隊を除いて撤退行動が遅れた事が原因で、ジェネシスによる被害は地球連合よりもザフト軍の方が多かった事が戦後の調査で判明している。

 

味方すら捨て駒にし、無差別にジェネシスを使用するパトリック・ザラの非情な行動に、ボアズで僅かに生き残ったザフト軍の多くはパトリック・ザラに激しい怒りを感じてザフト軍を離反し、地球連合に味方する様になった事もあって、この時点で数少ないザフト軍の兵士は離反していき、パトリック・ザラ率いるプラントの孤立化は更に進んでしまった。

 

この様なパトリック・ザラの異常な行動は現代でもナチュラルは無論、プラントのコーディネイターでも激しく非難されており、パトリック・ザラの名は非常な狂信的な独裁者の意味合いが強く、現代のコーディネイターの多くはザラ派の元ザフト兵のテロリストグループを除いてパトリック・ザラを「コーディネイターの面汚し」と、強く認識している。

 

CE98年 6月25日 帝国新聞社記者 山本旭』

 

 

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