ガンダムSEED 架空国家の憂鬱   作:zero3 ガイル

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この二次創作を描く時から決めていた最後です。リスペクトする小説を参考にしていますから


第三十三話 終息する戦い、反逆の刃

 

ヤキン・ドゥーエ陥落は既に時間の問題で、圧倒的不利なこの状況でザフトが地球連合に勝利する事は不可能であった。

 

「もうやってられるか!」

 

「ああ、こんな狂信者の連中と無理心中なんて俺はごめんだ!」

 

この様にザラ派ではないザフト兵は、降伏してもザフト兵に疑心暗鬼が強い連合兵が相手では助かる見込みが低いことを理解しても、このまま戦い続けても勝てない事も理解していた。それなら少しでも助かる見込みがある可能性にかけて、ザラ派以外のザフト兵の多くが地球連合に降伏した。

 

こうして、ただでさえ少ないザフト兵が減った事でザフトは更に不利になったが、最後まで抵抗を諦めないのは狂信的なまでにコーディネイター至上主義者のザラ派のザフト兵であるため、その抵抗は尋常ではなかった。そのため、形勢は圧倒的に地球連合が有利であったが、ザラ派の自分を鑑みない激しい抵抗に地球連合の兵士達は恐怖していた。

 

そして、大西洋連邦が担当するエリアでは、ザフトのトップエースであるラウ・ル・クルーゼが率いるクルーゼ隊と、大西洋連邦のエース部隊であるムウを隊長とするアークエンジェル隊との闘いが終わろうとしていた。

 

アークエンジェル隊にはスーパーコーディネイターであるキラ・ヤマトと、ナチュラル詐欺とも人類のバグとも同僚から称されているミア・アズラエルに加えて、アズラエル財閥が誇るザフトのスーパーエースに匹敵する操縦技術を保有しているブーステットマンの三人組、そしてそれを率いるのは開戦初期からMAでMS相手に互角に戦っていたエンデュミオンの鷹の異名を誇るムウ・ラ・フラガが隊長のエース部隊はクルーゼ隊の面々を次々と撃破していた。

 

既にクルーゼ隊の生き残りは隊長のクルーゼだけとなっていた。

 

「くそ、いい加減に落ちろクルーゼ!」

 

「イイ加減にシツケーデスヨ!」

 

『まだだ、まだ終わらんよ……!』

 

そう言ってクルーゼは抵抗を止めずにドラグーンによるオールレンジ攻撃を仕掛けるが、既にドラグーンの数はキラやミアといった規格外なパイロットによって三分の一は破壊されており、ドラグーンのオールレンジ攻撃の脅威は激減していた。

 

更に核エンジンを搭載したストライクとプロヴィデンスの性能は然程離れておらず、何よりムウ本人がオールレンジ攻撃を得意とするメビウスゼロに搭乗していた経験でドラグーンの攻撃に対して理解があることもあって、ドラグーンによるオールレンジ攻撃に対して致命傷を免れていた。

 

何よりクルーゼが、ムウだけでなくキラやミアといった、クルーゼでも少しでも気を抜いたら直ぐに撃墜されてしまう規格外なパイロットを相手にしてることもあって、ムウはクルーゼと互角に戦える事が可能となっていた。

 

「なんて奴だ……!」

 

「つ、強い」

 

それでもクルーゼはアークエンジェル隊を圧倒していた。レイダーの右腕を切り裂き、カラミティとフォビドゥンを大破寸前まで追い込み、トールとサイが搭乗している105ダガーは既に戦闘不能(無事に脱出している)であり、ムウのガンバレルストライカーもガンバレルと四肢を全て破壊されて戦闘継続は不可能となっており、既にアークエンジェル隊のMS部隊でMSの原型が保って戦闘が可能なのは、エールストライカー装備のキラのストライクとミアのリッパーだけであった。

 

「ダメだ強すぎる……!」

 

「無駄口をタタクヒマがあるナラ、ハンドとレッグを動かせデスヨ!」

 

『いい加減に諦めたまえ、その方が楽になる』

 

「ソレハこっちのセリフデスーヨだ。オラ、合わセルデス―ヨだキラ!」

 

「はい!」

 

通信越しのクルーゼの言葉をそう返すミラは残っているリッパーのビームサーベルを引き抜き、それに合わせる様にキラもストライクに残っている残り一本のビームサーベルを引き抜き、スラスターをフル加速させてプロヴィデンスに突っ込んでいく。

 

ストライクとリッパーに接近されないように残ったドラグーンと大型のビームライフルで迎撃するが、極限まで研ぎ澄まされた勘を働かせた二人はこれを突っ込みながら回避し、キラのストライクがプロヴィデンスのビームライフルを腕ごと切り裂いて、その瞬間にクルーゼは機体バランスを損ない一瞬だが隙が生まれ、その隙を逃さない様にミアのリッパーはプロヴィデンスの胴体を貫いた。

 

『ここまで……か……』

 

「テメーの下らない『野望』モ、ココまでデスヨ」

 

ミアの通信越しの言葉にクルーゼは驚いた様に反応する。

 

『何故……知って……いる』

 

「バトルしてヤガル最中に、テメーの考えが頭にストライクしてヤガルデスヨ」

 

ミアの答えに、クルーゼは何処か納得した様に笑う。

 

『フフフ……本当は……人類を……』

 

「ヒューマンはダレシモ、大なり小なりツレエ過去を背負って生キテルんデスヨ。ツレエのはテメーだけじゃネエンデスーヨ」

 

その瞬間にプロヴィデンスのコックピット付近で爆発が起こった事で、世界を憎み、人類全てを抹殺するという壮大な野望を達成する為に通常の人間よりも遥かに少ない自身の命を燃やして戦ったラウ・ル・クルーゼという男の生涯は終わりを告げた。

 

「クルーゼ……」

 

連合・プラント大戦初期から奇妙な因縁が生まれ、何度も戦い続けてきたラウ・ル・クルーゼとの因縁が終わった事に、ムウは何とも言えない気持ちになっていた。

 

クルーゼとの戦いが終わった後にムウはヤキン・ドゥーエの周辺では爆発光が少なくなっている事に気が付き、ヤキン・ドゥーエ内部に歩兵を突入させる為の宇宙強襲上陸艦が制圧した宇宙港に向かって突入していく様子を目撃し、ムウはあと少しで戦争が終わる事を実感するのであった。

 

ーーー。

 

もはやヤキン・ドゥーエは陥落は時間の問題である事は誰の目から見ても明白であった。ヤキンを防衛する為の艦艇もMSも防御装置もその殆どが破壊され、地球連合のヤキン・ドゥーエ攻略は時間の問題であった。

 

「議長、ヤキン・ドゥーエの放棄を提案します」

 

ザラ派の側近の一人がヤキン・ドゥーエの放棄を提案した。しかし、パトリック・ザラは側近の進言を拒否した。

 

「今更何処に逃げるというんだ。逃げる提案をするくらいなら一人でも多くのナチュラルを殺す提案を提出しろ」

 

「議長、恥を忍んでお願いします」

 

「もはやこの戦争はザフトが勝利する事は不可能です」

 

「しかし、議長には何が何でも生きて貰わなければならないのです」

 

「ほう、私にどうしろというのだ」

 

側近達の言葉をそのまま鵜呑みにするなら、敗戦の責任を取る為に生き延びろと言っている様にも聞こえるが、側近達が言った言葉がその様な意味でない事を理解したパトリックは側近達に問いただす。

 

「この戦争で連合に勝てない事は確かです」

 

「そうなれば、地球連合は戦争前以上にプラントに対する規制を強めて前以上に取り締まる様になるでしょう。今は戦争に反対しているプラントの民衆も、反連合勢力に傾くでしょう」

 

「何より反連合勢力は我々だけではありません」

 

「地球には理事国が中心の連合に反発する勢力はいくつもあります」

 

「彼らと協力すれば、強大な勢力を形成する事が可能となります。彼らを利用すれば反連合勢力が強くなり、地球連合は瓦解し、プラントが独立する可能性が高くなります」

 

「しかしこのプランを実行し、プラントが独立するには議長が必要です」

 

「軟弱なクライン派や中道派の連中では成り立ちません」

 

「議長さえ生きていれば、プラントはいつでも再建出来ます。プラントの未来の為にお願いします議長」

 

この様な状況でもプラント独立を諦めない側近達に、パトリックを除くザラ派ではないザフト兵達は驚愕する。

 

彼らにとって、新人類であるコーディネイターが旧人類であるナチュラルに敗北を認める事は、決してあってはならないと考えているからだ。

 

そしてパトリック本人は、もはやプラントの独立という目的は考えておらず、自分の全てを奪ったナチュラル達に復讐する事だけを考えていた。側近達のプラント独立という信念はどうでもいいと思っているが、それでも側近達の言う通り、プラントがこの状況で逆転して地球連合に勝つ事は不可能である事を理解していた。

 

皆殺しが不可能であるなら、一人でも多くのナチュラルを殺して地獄の道連れにしようと考えを改めたパトリックは、側近達の提案を受け入れる事にした。

 

「いいだろう、既に選り好みするほどプラントに選択肢はない」

 

「ありがとうございます閣下」

 

一方で、ヤキン・ドゥーエの陥落が時間の問題でありながらも徹底抗戦を続けるザラ派の議員やザフト兵を早期に排除しなければプラントに未来はないと痛感する、プラント最高評議会で元過激派№2であるエザリアと現穏健派№1であるカナーバを中核とする地下組織は、派閥の垣根を越えてどんな手を使ってもパトリックを排除する必要があると判断するのであった。

 

「このまま戦い続けてはプラントに未来はない」

 

「ええ、彼を排除しなければプラントは明日すらなくなる」

 

「プラントの若者達の未来の為にも」

 

「我々も覚悟を決めなければいけません」

 

既に徴兵制度の導入でプラントの人手不足は凄まじい事になっている。これ以上戦死者を出し続ければ、プラント社会は再起不能な程のダメージを受けてしまう。

 

実際に既にプラント社会にはその様な兆候が見えて来ており、このまま連合と戦争を継続すれば本当にプラントの再建は不可能となってしまうからだ。

 

そのため地下組織は本来の予定を変更して強硬的にパトリックを排除する事を決定した。

 

本来なら指揮系統が麻痺した段階でパトリックを排除しようと考えたが、地球連合の戦力が想定を遥かに上回ってザフト軍の消耗が予想以上に速い事に焦り、ヤキン・ドゥーエの指揮系統が完全に崩壊してないこの段階でパトリックを排除するのは危険と判断はしたが、このまま手をこまねいていては更にまずい状況になる事は明白であった。

 

何よりヤキン・ドゥーエが陥落しても、ザラ派のパトリックの側近がパトリック本人を地下に潜伏させて逃がす様な事をすれば、プラントを既にテロリスト集団と認識している地球連合はパトリックを排除する為に手段を選ばない危険性もある。パトリックにこれ以上戦い続けられても、地下に潜って潜伏されても困る為に、地下組織が密かにヤキン・ドゥーエの治安部隊に潜伏させていた暗殺部隊に早期にパトリック・ザラの暗殺を命じるのであった。

 

そして、ヤキン・ドゥーエに潜伏していた暗殺部隊は上から予定を繰り上げてパトリック・ザラの暗殺命令を下された事に驚くが、暗殺部隊の隊長は予定よりもザフトの崩壊が早い事が理由であると理解し、上からの命令通りにヤキン・ドゥーエの総司令部にまだいるパトリック・ザラの排除の為に動き出すのであった。

 

「何者だ貴様らは!」

 

ヤキン・ドゥーエの司令部に、自動小銃で武装したザフト歩兵部隊を装った暗殺部隊が飛び込んできたのだ。

 

いきなりヤキン・ドゥーエ総司令部に現れた暗殺部隊に質問をするパトリック・ザラだが、その返答は自動小銃による銃弾であった。

 

いきなり眉間に撃ち込まれた事もあって断末魔と悲鳴を上げる余裕がなかったのか、パトリックは糸が切れた人形の様に崩れ落ちた。

 

プラントの過激派№1であり、ナチュラルとの徹底抗戦を叫び続け、後の歴史家からCEのヒトラーと称されたプラント最高評議会議長であったパトリック・ザラは呆気なく死亡した。

 

「き、貴様らあぁぁあ!!」

 

パトリックの側近は激情に駆られて護身用の拳銃を抜いて正体不明の襲撃者に向けて撃とうとしたが、それより早くパトリック・ザラを撃ち殺した歩兵部隊は自動小銃で反撃して、パトリックの側近を撃ち殺した。

 

その光景にオペレーター達は唖然としたが、謎の歩兵部隊はオペレーター達に向けて銃口を向けて、自動小銃を発射して次々と撃ち殺していく。

 

「や、やめ」

 

「ひ、助け……!」

 

降伏する為のポーズをオペレーター達が取ろうとも、彼等は無慈悲にオペレーター達を一人残らず撃ち殺していく。何とか通信で助けを呼ぼうにも、通信が『何故か』遮断されている為に助けを呼ぶ事は叶わず、総司令部にいる人間が襲撃者を除いて全員殺されたのであった。

 

「クリア」

 

「クリア」

 

「よし、極秘コードERを入力しろ」

 

「了解」

 

ヤキン・ドゥーエ総司令部を実質乗っ取りに成功した暗殺部隊は、ザフトの軍上層部にしか教えられてない極秘コードを入力して極秘回線を開き、パトリック・ザラ暗殺が成功した事をプラント地下組織に報告した。

 

この報告を受け取ったエザリアとカナーバはパトリックが死亡した事を確信し、カナーバは議長であるパトリック・ザラはヤキン・ドゥーエにて地球連合の攻撃により戦死した事を伝え、現時刻をもって政権はプラント最高評議会でパトリックの次に影響力を有しているカナーバが引き継ぎ、プラントは地球連合に降伏する事を宣言した。

 

「地球連合に降伏すると言うのですか」

 

「ならばまだ戦うと言うのですか?」

 

「そ、それは……」

 

その言葉に影響力はないが、地下組織にもザラ派に所属してない過激派の議員やザフト兵の反対意見は沈黙した。いくらナチュラル相手に負けを認めたくない彼等でも、この状態から地球連合に逆転する事は不可能である事は理解しているからだ。

 

「貴方達の気持ちは分かります。しかし、未来あるプラントの若者の明日の為に敗北を受け入れましょう」

 

カナーバは周りにそう宣言して、プラントは地球連合に対して全面降伏する事を通信で通達した。

 

全面降伏の通信を受け取ったヤキン・ドゥーエを攻略を続けている地球連合艦隊は戦闘を停止し、ヤキン・ドゥーエで抵抗を続けているザフト軍も、一部の過激な部隊を除いて戦闘を停止した。

 

こうして一年以上続き、連合・プラント双方の軍民関係なく地球総人口の一割以上の戦死者を出したCE初の世界大戦は終了したのであった

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