プラントに滞在するコーディネイター達による独立運動は活性化の一途を辿り、CE69年にプラントと理事国による軍事衝突が発生する。
プラントは極東連邦がパワーローダーを発展させた新型人型工作機械モビルワーカーに着目して、モビルワーカーを戦闘用に転用した人型機動兵器モビルスーツを開発して実戦投入した。
プラントの新型機動兵器に理事国側主力機動兵器であるモビルアーマーは歯が立たず壊滅的な被害を受けた。
この武力衝突によりプラントと理事国による緊張感はより高まるが、年が代わりCE70年一月に理事国側はプラントとの対話を求めるが理事国の代表がテロにより全員死亡し、事故により遅れたプラント側以外は悲惨な事件が起きた。
この事件によりコーディネイターに対する穏健派議員達は軒並み力を失い、ブルーコスモス過激派が属する議員達が勢力を台頭する様になった大西洋連邦が、理事国の議員を狙ったテロ行為をプラントによる本格的な宣戦布告と宣言して地球各国に地球連合の設立を訴えた。
大西洋連邦の提案に極東連邦はある一定の理解は示したが、それでもプラントとの本格的な武力衝突に消極的であった事もあって物資の融通や戦力の派遣は認めたが本格的な参戦はしない事を宣言した。
この提案に地球連合の事実的な盟主である大西洋連邦や、他の理事国であるユーラシア連邦、東アジア共和国が反対したが、そもそも極東連邦は独自の工業・食料生産コロニーを多数保有していた事もあってプラントに対する依存度が他の理事国より圧倒的に低い事もあってプラントの武力介入に消極的であった。
当然の様にと言わんばかりに、極東連邦の対応に納得がいかない大西洋連邦だが、それでも限定的ではあるが極東連邦が参戦してくれるならと割り切り極東連邦の提案を承諾した。
こうしてプラントの独立を阻止する地球連合と、コーディネイター国家樹立を目指すプラントによる独立戦争が本格的に開始された。当初はプラントのモビルスーツの奇襲による攻撃に驚き敗戦したが、それでも規模と物量は地球連合が上回っているのは明白であるため、プラントなどすぐに倒せると理事国の軍上層部の大半は楽観視していた。
しかし、それは悪い意味で覆された。
地球連合とプラントとの戦いは新型機動兵器モビルスーツを保有するプラントに返り討ちにあってプラントに侵攻した地球連合の艦隊は壊滅状態に陥っていた。
この予想外の事態に狂気に走ったのか、地球連合は核ミサイルをプラントのコロニーの一つであるユニウスセブンに向けて発射し、ユニウスセブンは核ミサイルの破壊力により破壊された。この無慈悲な地球連合の核ミサイルの攻撃で、地球連合は罪のないプラントの民間人24万人以上を虐殺し、後に血のバレンタインといわれる悲劇を起こしてしまった。
この倫理観のかけらもない攻撃を実行に移した事に地球連合の一角である極東連邦は、核攻撃を実行に移したのは大西洋連邦宇宙軍所属のMA空母『ルーズベルト』所属のMAの攻撃によるものとして断定し、証拠の映像も全世界に公開して大西洋連邦に対して強く抗議した。
しかし、大西洋連邦は極東連邦の抗議を言いがかりと反論し、大西洋連邦の核攻撃の映像は極東連邦の捏造だと断言して核攻撃の罪を認めず、逆に大西洋連邦は極東連邦は積極的に戦いに参戦しない極東連邦を非難し、それに呼応する様に東アジア共和国も極東連邦を非難して逆に極東連邦に損害分の賠償を求める事を要求した。
この事態に極東連邦はもともとブルーコスモス強行派の意向が強いブルーコスモスの傀儡に近い大西洋連邦と、再構築戦争前から犬猿の仲である東アジア共和国に対して不信感が強くなり、極東連邦は地球連合からの脱退を考えて、大西洋連邦と東アジア共和国との戦争の構えも辞さない考えに変わり、三国はいつ戦争状態に突入してもおかしくない程に極度の緊張感が走る様になった。
なお、この三国の緊張状態に待ったをかけたのはユーラシア連邦であった。
別に彼らは極東連邦との友好国ではないが、それでもプラントを後回しにして三国による戦争状態は彼らが一番望んでないからだ。
ユーラシア連邦からしたら一刻も早く自国の財産でもあるプラントのコロニーを取り返したいが、既にプラントの軍事組織ザフトの戦力はユーラシア連邦単独では難しい事は明らかになっており、そんな状況で理事国四カ国中三国がプラントと戦う前に一触即発の戦争になるのはかなりまずい為に、ユーラシア連邦は何とか三国を納める為に奔走した。
これにより、三国共に不満や不信感が強いが、それでも地球連合による空中分裂は何とか防ぐ事に成功してユーラシア連邦はホッとしていた。
CE70年 2月22日
地球連合の核攻撃に怒りを露わにしたプラントは地球連合と、地球連合に与する組織に対して攻撃するとして本格的に宣戦布告を宣言した。
プラントの国防組織ザフトは、地球連合の月面基地の前線基地の確保の為に月から最も近いL1の世界樹に侵攻を開始した。
ザフトの侵攻を阻止する為に地球連合もL1宙域に艦隊を進めて、後の歴史家達は世界樹に因んで『世界樹攻防戦』と名付けられる事になる戦いが始まった。
この戦いで地球連合とザフトの本格的な戦闘が始まって直ぐに、地球連合は物量でザフトより遥かに優っていたが、戦いはすぐに地球連合の劣勢となっていた。
ザフトが主力としているMA以上の機動力と、戦車クラスの火力を保有しているMSの機動力と火力に地球連合は翻弄されていた。
地球連合は、大西洋連邦製のMA『メビウス』は速度性能ではザフトのMSである『ジン』に若干ではあるが優っているが、逆に火力とAMBACシステムを利用したMSに機動性で劣っていた為に対MS戦闘など知らない多くの地球連合軍人達はザフトのジンに次々と撃破されていた。
更に悪い事に、Nジャマーによる通信障害により精密誘導兵器の性能が低下し、通信手段が著しく低下している事もあって地球連合軍は緻密な連携が取れない事もあり、地球連合軍はザフトのMSに各個撃破されていた。
しかし、ザフトのMS相手に劣勢に立たされている地球連合艦隊であったが、一部の戦闘中域ではザフトと互角に戦っていた。
それは極東連邦が対応しているエリアであり、極東連邦は大西洋連邦のメビウスと違う、新型MA『リオン』の活躍もあって何とか瓦解せずにいた。
それでも極東連邦軍以外の戦域はいつ崩壊してもおかしくないので極東連邦軍、第三宇宙艦隊司令官である坂本中将は何とか戦線維持しようと必死に指示をだしていた。
「MSは旧暦のロボットアニメとは違うんだ。MAもやり方次第で戦える。ザフトのMS共の帰る家をなくしてやれ!」
「中将。我が艦隊が展開してる戦闘宙域は何とか持ち堪えていますが、他の連合宇宙艦隊は壊滅状態です」
「被害は?」
「既に宇宙艦隊の大半が戦闘不可能です。我が艦隊以外に戦闘継続な艦隊は存在しません。MA部隊の被害も七割が撃破されています」
「これ以上この場に留まっては無駄に被害が増すだけか…仕方ない各艦に通達しろ、全艦隊撤退だ。撤退信号を打ち上げろ」
戦艦『金剛』より撤退の発光信号が打ち上げられて極東連邦宇宙軍のMA部隊の隊長である秋山大尉は驚く。
「撤退信号!?」
「互角に戦えてるだろ!」
「どうやら他の戦域が持ち堪えられなかった様だ」
「だったら、撤退しますか隊長?」
「いや、まだ撤退はしない。俺達は友軍の撤退の時間を稼ぐ。ギリギリまで戦闘を継続するぞ」
「了解!」
そう言いながら秋山は自分に突っ込んでくるジンにリオンの主兵装であるレールガンを撃ちこんで撃破する。
リオンはMAとMSの中間の様な形状をしており、そのためMSほどではないが限定的にAMBACを扱える事もあってジン相手に互角に戦えており、中・遠距離戦ではジンよりも有利に戦えるが、近接戦闘では近接武器を持たないリオンは不利であるため、接近されると撃破される事例もあった。
世界樹攻防戦は数で勝る連合軍の敗北という形で幕をおろした。
数で勝る連合軍が、数で劣るザフトに負けたという事実に各国共に衝撃を与えたが、それでもザフトも被害は深刻であり、何より地球連合軍とザフトの激戦により最終的に世界樹は崩壊してしまった事もあって、ザフトの目的であった月面基地による橋頭堡の確保という作戦目的を達成出来なかった事もあり、素直に勝利を喜べるものではなかった。
世界樹攻防戦でMSの脅威は誰の目にも明らかになり、既存の宇宙艦とMAだけではMSには勝てない事を決定付けた。この地球連合の敗北は、かつて西暦時代に行われた第二次世界大戦で戦艦が航空機によって撃破された実例と全く同じ事が起きたと後に多くの歴史家は記録した。
大西洋連邦ではこの戦いの敗北によりMSの脅威は誰の目からも明らかで、大西洋連邦の艦隊司令官ハルバートン提督がMSの開発計画を議会に提出した。
極東連邦政府もリオンだけではMSに対抗するのは厳しいと判断してザフトと同じ土俵で戦う為に本格的にMS開発を開始する事が決定した。
地球連合に所属する各国は対ザフトに向けて対策を練っているが、それはザフトも同じであった。
「極東連邦のMSモドキはジンにとって脅威だと言うのかね」
「はい、大西洋連邦のMA相手には油断しなければそれほど脅威に感じませんでした。しかし極東連邦のMA隊とは最後まで互角で、戦力が拮抗して絶対的な優位を確保する事が出来ませんでした」
「そうか、厄介だな……」
実際に極東連邦宇宙軍と戦った兵士達の報告を聞いてパトリック・ザラと議長であるシーゲル・クラインは深刻そうな表情をする。地球連合相手に圧倒的優位を確保する為に開発したジンが極東連邦のMAに優位を保てない事はあまりにも深刻だったからだ。
「やはり極東連邦は敵に回すべきではなかったのでは?」
「しかし連中も同じ理事国の一員だ。どちらにせよ戦わなければならん」
「そもそも彼らは穏健派だ。血のバレンタインの時に真っ先に大西洋連邦を非難した。彼らは今回の戦いに対して積極的ではない事は明白だ」
「何を生温い事を、所詮は連中もナチュラルの国だ。奴等も他の国の様に徹底的に叩くべきだ!」
この様に穏健派と過激派による議論は平行線を辿って決着がつかない議論は長く続いた。
ある程度の議論が出尽くすと、議長であるシーゲル・クラインが決定を下す。
「穏健派の極東連邦と積極的に敵対するのは避ける。我らを完全に敵視する他の理事国を中心に戦うべきだ」
「だがどうする…他の理事国の宇宙艦隊はともかく、極東連邦の宇宙艦隊は健在で、MSモドキの脅威はここにいる誰もが知っている。いくら連中が穏健派と言っても、地球連合に所属している以上戦うのは必然だ」
「ならば戦える力をなくすだけだ。Nジャマーを地球に投下し、地球の大多数のエネルギーを麻痺させ、戦闘継続能力を低下させる」
これには穏健派、過激派共に関係なく驚愕しでザワザワと騒ぎ出す。
「正気ですか議長!」
「地球にNジャマーを投下すれば極東連邦は穏健派から過激派に転身して本格的に戦争に参加してきますよ!」
「それだけではありません。他の中立国や友好国も地球連合に鞍替えしてしまいます!」
「安心しろ。極東連邦は狙わない。中立国と極東連邦にはダミーだけで、本物を投下するのは大西洋、ユーラシア、東アジアの主要国だけだ。この三国に戦争継続不可能な程のダメージを与えた後、三国が保有するマスドライバーを破壊すれば地上でも宇宙でも地球連合は戦闘継続は不可能になるはずだ」
こうしてシーゲルの提案は可決されて、後に地球全土にNジャマーを大量散布するオペレーション・ウロボロスが決定したが、この作戦はナチュラルに対する復讐心が根強いザフト兵によりねじ曲げられて、後に血のバレンタインよりも悲惨な惨劇を引き起こす『エイプリル・フール・クライシス』の幕開けでもあった。