CE70年 4月1日
後に血のバレンタイン以上の惨劇と称され、ナチュラルとコーディネイターとの間にさらなる溝を深め、同じコーディネイター同士でも地球出身のコーディネイターとプラント出身のコーディネイターの間にも深い溝が生まれたエイプリル・フール・クライシスと呼ばれる惨劇の日であった。
地球連合の規模と物量を支えているエネルギーの大元である原子力発電所と原子力機関を無力化する為にNジャマーを搭載した降下ポットを投下する為の艦隊をザフトは派遣した。
この艦隊を阻止する為に動いたのは先の戦いで唯一ザフトと互角に戦えた極東連邦艦隊を中核としたユーラシア連邦と東アジア共和国艦隊による混戦艦隊であった。
これまでの戦いで地球連合軍のMAパイロット達はMS相手に格闘戦を用いると不利という事も理解しており、限定的にではあるがMSと同じ様な戦法が使えるリオンならまだしもAMBAC機能を持たない戦闘機の沿線上の機動兵器でしかないメビウスとミストラルでは厳しい為に、かつて有視界による戦闘が当たり前で、誘導兵器を一切持たない戦闘機同士で戦っていた格闘戦と同じ様に一撃離脱戦法を採用する事を決定した。
こうして始まった戦いでMSの格闘戦能力と火力に痛い目にあった地球連合軍は一撃離脱戦法を徹底して戦いMSの土俵で極力戦わない様に努めて世界樹の攻防戦の様に圧倒的な被害を受ける様な事は免れているが、それでもNジャマー散布下による戦場は誘導兵器やレーダーの性能が低下している事もあってMSの土俵で戦わないといけない状況が増えており、メビウス、ミストラルを中心としたMA部隊の被害は徐々にではあるが増えていた。
そして一部のNジャマーを降下する降下艦隊の突破を許してしまった。
これにより予定よりも少ない数となってしまったが、それでも目標となった地域にダミーや本物を含めてNジャマーを地球に後下させる事に成功してザフトのオペレーション・ウロボロスは成功したとザフトは認識したが、ここでザフトにとっても想定外の事が起きてしまった。
それは本来なら極東連邦と中立国に降下する予定だったダミーにしていた筈のNジャマーが一部の過激なザフト兵により全て本物に変えられていた事であった。
この事に気がついたのはオペレーションウロボロスが終了してしばらく経った後であった。地球全土に降下したNジャマーは全て本物であった事に驚愕したプラント評議会は直ぐにダミーを本物にすり替えた犯人を見つける事に成功して事情を問い詰めると「野蛮なナチュラルに対する正当な復讐だ!」と証言し、これは後の歴史家からザフトが軍ではなく民兵の集まりの弊害として記される様になる。
地球全土に降下したNジャマーの効力は凄まじく、中立国を含めた地球の国家全てのエネルギー不足が深刻になり、地球連合に加盟している国と、そして中立国も例外なくNジャマーに対する対策を講じる事になった。
ーーー。
「そうか、Nジャマーの被害はかなりのものか」
「はい、我々極東連邦は原子力から核融合炉に変更し宇宙発電にも力を入れていますから予想よりも被害はそこまで高くありませんが、まだ核融合炉が試験段階の国の被害はかなりのもので、原子力に依存してる各国のエネルギー不足はかなりのものです」
「そう考えると早期に核融合炉に変更して助かったな。太陽光発電だけではどうなっていたか」
「実際に他の国はエネルギー不足によりインフラが壊滅している地域もありますからね」
ここに集まっているのは極東連邦の政治家だけでなく、高級軍人や極東連邦の経済を支える経済の重鎮達も集まっている。
政治家・軍人・民間人が揃って会議を開いているのにはある理由が存在する。
それは極東連邦の利益をその時の情勢にともない必要な時に分配し必要な量を問題なく渡す事を目的とされた裏の組織の一員だからだ。
組織の名は『大和会』。この組織が立ち上がったのは利害の調整という事も上記の理由の通りだが、二つ目の目的は転生者、または憑依者を監視する事を目的としている事だ。
俄かに信じられないが大和会の歴史は古く、極東連邦がまだ西暦1800年代から存続する組織であり、その時代から日本には転生者の時代の違いはあれどそれなりの数の転生者が存在していた。
転生者達は未来人や並行世界からの地球の出身者が多く、中には地球とは全く異なる異世界人が転生者として現れる事も稀で存在している。
大半の人間は転生者だからといって問題なく日本で普通に暮らす人間も多かったのだが、それでも転生者達は一度死んで若返った事や過去の人間に転生した事を幸として前世で果たせなかった事や前世以上に良い暮らしや夢を実現する為に動くものも多かった。
日本の為に動く者もいたが、自分の欲望を満たす為に動く者もいた為に、転生者達はその時代の人間の常識が通用しない変人という認識が強い、しかしなまじ未来や並行世界の知識は得難いもので、何より転生者達は知識・身体能力を含めた異能を持ち合わせている人間も多かった為に下手に日本に害を及ぼす組織に所属されても困る為に、時の為政者達や良識のある転生者達は未来や並行世界の知識を日本の為に、そして世界に無駄にばら撒いて混乱させる事を防ぐ為に大和会を発足させた。
その組織は今でも機能しており、転生者以外にもこの時代に生まれた人間も所属しているが、その場合は未来や並行世界の知識の秘密をちゃんと守る人間を厳選して所属させている。
「とにかく今はMSの開発を急がせないといけないな。新型のAM……いや、MAのリオンだけだとこの先は厳しいからな」
大和会の最高議長で極東連邦首相である赤星は言い直す。
元々リオンはMAではなくアーマードモジュールと呼ばれるロボットと航空機の中間のデザインをした別のカテゴリーの人型機動兵器であり、並行世界の地球ではあるが、地球を侵略に来たエアロゲイター、またはバルマーと呼ばれた異星人の侵略を防ぐ事に対して高く貢献した機動兵器の一つである。
しかし、この世界ではMAに分類される為にリオンはMAとして扱われている。
「それに関しては問題ありません。現在の所リオンシリーズは陸・海・空・宇宙軍の配備は問題なく進んでおり、MSも繋ぎのアクシオの機種転換訓練ももう直ぐ終了するとの事でいつでも問題なく戦えるとの事です」
「他のMSもガーリオン、ゲシュペンストを含めた他のMSや特機の開発も順調との事です」
「とりあえずは今の所はリオンシリーズとMSは繋ぎのアクシオだけで問題はないか、それよりMSの販売はどうする」
「今から販売ですか?宇宙ならともかく地上では実践証明されてないMSを購入したい国がありますかね?」
「我々はモビルワーカーなら実績はありますが、軍用のMSとなるとまだ確たる実績がありませんからね。逆にMSと互角に戦えるという事でリオンシリーズを購入したいという国は相次いでいますが」
「全軍配備がまだ終わってないリオンシリーズの輸出は難しいですよね。それなら戦車の延長上という事でガンタンクやヒルドルブを輸出しますか?」
「ガンタンクはともかく整備性や運用が壊滅的なヒルドルブをか……アレを購入したい軍があると思うか?」
「戦車として考えれば破格の性能なのは間違いないですよ」
「どちらにせよ暫くは自分達の出番はないと思いますよ。今のところザフトとマトモに戦えているのは我々ですから、地球連合の盟主を気取って世界のリーダーを自負している大西洋連邦を筆頭に理事国としての意地を見せたい様ですからね」
大和会の議員の言葉の通りに極東連邦が戦場に出る機会は減った。
それでも地球国家の中でインフラの被害が比較的軽微であった事もあって極東連邦は理事国を始めとしたNジャマーで被害が多い国に対してエネルギー供給や食料支援を始めとした後方勤務的な立ち位置にいる事になった。
登場人物紹介
赤星首相
性別 男性
年齢 64
種族 ナチュラル
極東連邦の首相であり極東連邦の秘密結社『大和会』の最高議長。年々プラントとの緊張感の高まりから軍備増強案を強行する手腕から極東連邦の一般市民からタカ派の筆頭格と認識されており、本人も前世の日本を経験した影響から国内の平和を維持するなら先ずは他国に侵略をさせない為に軍事力が必要と強く認識してる為に国防に手を抜かない姿勢を貫いている。