極東連邦のMSアクシオを始めモビルタンクであるガンタンク、ヒルドルブも販売を開始して地球連合の戦力の底上げに成功したお陰でザフトの侵攻を止める事に成功し、地球でNジャマーの被害が軽微であった極東連邦のエネルギーや食料支援によりNジャマーで被害を受けた地域も復興が進み、戦前程ではないが地球連合のインフラも回復していき、各国の軍事力の立て直しも確実に進んでいた。
更にCE70年9月頃になると極東連邦ではリオンシリーズの全軍配備が問題なく完了、新型MSであるゲシュペンストとガーリオンも来年の一月には実戦配備が本格的に始まる事と、ハイエンド機である特機のグルンガストも開発が順調という事もあって他国に対してリオンシリーズの販売にも踏み切った。
大和会からは核融合炉ならまだしも小型化したテスラドライブの情報漏洩はマズイと反対意見も強かったが既にテスラドライブに関しては極東連邦では空中戦艦や外宇宙探索艦にも採用されている実績もあるためそこまで新しい技術ではなく、テスラドライブの存在自体は一般にも広く知れ渡っているため情報漏洩防止を強化しても意味はないとされていた。
リオンシリーズに関しても、既にザフトとの戦いで多く使用されて戦場に散っていったリオンをジャンク屋を経由して捕獲されている事は確認されているため、小型化したテスラドライブの技術が解読されるのは時間の問題と結論された。何よりリオンシリーズは構造が比較的簡素で量産性も高い為に、それなりに設備が整った工場を保有してる国家ならザフトのジンの様にコピー品を作る事は難しくはないため、それなら粗悪なコピー品が世に出回って商品価値を下げるよりも情報漏洩を恐れないで販売した方が良いと決定された。
CE70年10月頃になると宇宙・地上共に膠着状態が続く。この状況を打破する為にマルキオ導師の働きかけにより地球連合とプラントの代表であるオルバーニとシーゲルによる秘密会談が行われた。後に10月会談と呼ばれた秘密会談であったがお互いに妥協点を見出せずに終わり交渉は決裂した。
10月会談終了後も膠着状態が続いている状況にプラントは現政権の最高議長であるシーゲル・クラインの政策に不満が高まり過激派のパトリック・ザラに支持が集まる様になっていた。
パトリックは地球連合が今だに打倒出来ないのは極東連邦のせいであり、Nジャマーの被害が軽微な極東連邦が被害が大きい各国にエネルギー資源や食料を提供している事、更にはMSの開発にも成功し、地球連合に所属する各国に対してMSを提供して地球連合の戦力強化に貢献している現状を問題視していた。
このまま極東連邦を野放しにしては地球連合の戦力は日に日に増していき、戦争序盤に積み上げたアドバンテージがなくなる危険性を説いて、地球連合の戦力と補給能力を断つことを目的とした極東連邦が保有している工場・食料生産コロニー攻略を議会に提案した。
パトリック・ザラのこの提案にコーディネイターに比較的寛容で連合でも穏健派である極東連邦との敵対を極力避けたいシーゲル・クラインを筆頭とした穏健派は反対意見を出したが、地球連合との戦争が膠着状態が続いて現状を打破できる案を出せない穏健派の勢いが低下し、過激派の勢いが増した事もあって過激派が提案した極東連邦が保有する宇宙コロニー攻略案は賛成票が反対票を上回り可決された。
ーーー。
CE70年11月22日にザフトの正規軍と、ジャンク屋経由で購入した戦場に破棄されていたメビウスやジンを修理した機体で武装したザフトに雇われた傭兵部隊が、極東連邦軍が自国コロニー防衛の為に資源衛星を改造してアステロイドベルトに建設された宇宙要塞ソロモンに駐屯している極東連邦宇宙軍に向けて攻撃を開始した。
後にソロモン攻防戦と呼ばれる戦いがこの時に始まった。
襲いかかってくるザフトと傭兵の混成部隊に対してリオンの中で宇宙戦に特化したコスモリオン部隊は連携を崩さないで戦い、技量はあるものの義勇兵の性質が強く階級という絶対的な上下関係が存在しないザフトのMS部隊を孤立させて各個撃破していた。
「くそ、コイツらチョコマカと、ナチュラルのクセに生意気な!」
「バカ、連携を崩すな」
「うるさい、俺に命令するな!」
この様に下等なナチュラルが扱う出来損ないのMSに撃破されていく事に選民意識が強いプラントのコーディネイターは我慢が出来ずに激昂して、連携を崩して個人プレイに走ってしまう光景が多く見られた。
隊長を任されたコーディネイターは比較的冷静である人物が多かった為に先走って戦う事は少なかったが、ザフトが本格的な軍隊ではなく民兵組織に近い組織の為にこの様に隊長に強制力が低い事が災いし、命令を無視して個人プレイに走るザフト兵は珍しくなかった。
「馬鹿かコイツら」
「どうして自分から的になる様な行為をしてるんだ?」
極東連邦軍のコスモリオン部隊はフォーメーションを組んでいるジン部隊の一角を撃破すると一部のザフト兵が激昂し、連携を崩して勝手に一人で突っ込んでくる様子に呆れていた。
流石はコーディネイターという事もあって個人の技量は高い事は認めるが、それでも簡単に連携を崩して一人で突っ走って敵のキルゾーンに来てしまえば簡単に的になってしまうのは軍事の常識である。
(いくら能力が高いコーディネイターでもちゃんとした訓練を受けなければ宝の持ち腐れという事だな)
極東連邦の兵士はザフト兵の独断専行に呆れた様子だ。
だが、開戦当初はその様な光景は少なく軍として普通に機能はしていたが、MAが主体のメビウスやリニアガンタンクといった既存兵器が思った以上に簡単に撃破でき、宇宙や地上でも快勝(負けなしではない)が続いた事で、やはりナチュラルは大した事がないという考えが蔓延した。この傾向は一般の緑服や赤服に目立ち、中には現場指揮官である白服や、白服をサポートする副官の立ち位置にいる黒服の一部ですらナチュラルを軽視して個人プレイに走る事もあるため、余計に現場が個人プレイに走る事に対して問題視されない傾向が強かった。
「くそ、ナチュラルのMSモドキやMS相手に何を手こずっているんだ」
「どうしますか隊長。まだコチラの兵力にはだいぶ余裕がありますが……」
「ええい、このままではイタズラに被害が増すばかりだ。此方の兵力を全て投入しろ、私も出撃する!」
ザフト艦隊の最高指揮官である白服の命令でローラシア級から予備兵力のジンが出撃し、中には隊長機として作られたシグーや少数ではあるがグリマルディ戦役で活躍したジンハイマニューバも確認出来た。
「隊長、このままでは……」
「狼狽えるな、コロニーから援軍の艦隊がもうすぐ到着する。もう少しだけ持ち堪えろ」
ソロモンの守備隊についているコスモリオンとアクシオの部隊は、杜撰な連携ながらも相手は能力が高いコーディネイターが操縦している事もあって油断は出来ず、これまではジンや傭兵が扱うメビウスだけだった相手がジンの上位機種であるシグーやジンハイマニューバも投入して来たので、出し惜しみは無しになった事も理解できた。
動揺する部下を冷静にさせる為に気遣うコスモリオンに乗るソロモン要塞MA隊の中隊隊長だったが、その一瞬の隙にジンハイマニューバーが重斬刀で切り掛かって来た事に気がついて回避しようとしたが、反応が遅れてやられると思った瞬間にピンク色の閃光がジンハイマニューバを貫き爆散する。
「隊長、無事ですか!?」
「あ、ああ何とかな。しかし、アレはビーム、艦砲射撃か?」
「いえ、アレを見てください」
ビームが撃たれたと思われる場所にカメラを向けると、ウサギの耳の様な形状をしたセンサーの極東連邦軍では見慣れたバイザー型MS。
一機は緑色の機体で残りはそれに随伴する様についてくる11機の黒色同型のMS。
「あれはゲシュペンスト!」
「もう量産が始まっていたのか!」
『こちらは極東連邦第四艦隊所属北村海少佐だ。後は我々に任せてくれ』
無線でそう言いながら北村海少佐率いるゲシュペンスト中隊は手持ちのビームライフルで一撃でジンを貫き、ジン以上の機動性を誇るジンハイマニューバやシグーに簡単に追いついてビームサーベルで切り裂き、北村海少佐の緑色のゲシュペンストは一気に間合いを詰めてジンが重斬刀を振り抜く前にゲシュペンストの固定武装であるプラズマステークを起動させて胴体に打ち込んで撃破した。
「す、スゲー」
「アレが噂に聞いたゲシュペンストと北村少佐の部隊の実力かよ」
「俺達が手こずっていた敵を簡単に……」
たった一個中隊で次々とザフトのMSを撃破していき、劣勢だった戦況を一気に逆転させて今度は自分達の番だと士気を上げてザフトのMS部隊を倒していく。
こうして戦いの形勢は逆転し、数多くいた傭兵部隊も巻き返しが不可能な程に戦局が不利と判断して撤退、または極東連邦軍に降伏する部隊が続出し、ザフトの方も戦力の八割を失い残存する戦闘艦もローラシア級一隻だけという有様であった。
「くそ、ナチュラルのMSに良い様にやられるとは、そんな事はありえん、あってはならんのだ!」
選ばれた新人類であるコーディネイターがナチュラルに負けるのは絶対にあり得ないという選民意識の感情を爆発させたザフト兵はゲシュペンストに向かって突撃した。
一気に戦況を変えた緑色のMS率いる部隊に一矢報いなければ気が済まない様で北村海のゲシュペンスト隊に向かってシグーのスラスターをフル加速させてシグーの盾に内臓されている28ミリバルカン砲を連射しながら突っ込んでいく。
「くたばれナチュラル!」
「ジェットマグナム!」
だが北村海少佐は自暴自棄になって一機で突っ込んでくるシグーに気がついてカウンター気味にプラズマステークを打ち込みシグーを無力化させた。
「私情を戦場に持ち込むとは未熟だな」
その後も北村海率いるゲシュペンスト隊に続く様にコロニーからの援軍が到着していき、現場を指揮する白服がいなくなった事でザフトは更に烏合の衆と化して次々と各個撃破された。本国に帰還出来たMSはボロボロな状態の僅か数機と大破寸前のローラシア級一隻だけという悲惨な大敗となった。
過激派が力をつけてきた段階のこの大敗はプラントに衝撃を与え、更に貴重な艦隊がほぼ壊滅した事と貴重なベテランとエースが全て戦死した事もあって今回の作戦を立案したパトリック・ザラを筆頭とした過激派の影響力は大幅に低下し、プラント評議会に穏健派の影響力が戻ったのであった。
しかしプラントは極東連邦の新型MSの性能に驚愕し、地球連合は本格的にザフトを上回るMSを開発した事を認識し、更に貴重な艦隊が壊滅した事もあってザフトの宇宙における活動にかなり影響を与えるのであった。
登場人物紹介
北村海
性別 男性
年齢 36
種族 ナチュラル
極東連邦軍に所属するベテラン兵士。MSを始め、モビルワーカー時代から人型起動兵器の戦場における有効活用というプロジェクトに参加してるため機動兵器の操縦に長けていた事もあって極東連邦軍が採用しているTC-OSのコンバットパターンに大きく貢献してる為にMSの教官を勤めていた事もある為に極東連邦軍のMSパイロットなら知らない人間はいないほどに影響力が強い人物。
自他共に厳しい性格だが、それでも多少は融通が聞く為に年下の部下からは親父殿と称されて慕われてる。
妻子持ちで最近は高校生に上がった長女が気になる男性がいるという報告を聞いて激しく動揺する親馬鹿な一面もある。