蒼き雷霆ガンヴォルト 環解   作:灰の熊猫

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・絶対防空領域

「きりんちゃん、大変大変! 今日本に向かってる最中の旅客機にトラブル発生! このままだと、海上に墜落しちゃうって!」

「なんですってぇ!?」

 

 治龍局オフィスにて、いつもの様にパソコンと向き合っていたシロンが唐突に報告してきた内容に対し、きりんは大口を開けて驚いた。

 シロンの業務内容は龍放射の観測・暴龍の探知を最優先とし、それ以外の平時では治龍局や皇神(スメラギ)社内の経理や書類のファイリングなど事務仕事全般である。が、ぶっちゃけシロンの演算能力だとどれも高速で終わってしまう為、負担が集中する事を考慮し最低限の仕事さえしてれば自由にパソコンを使っても良いと特例的な措置をしている。

 なのでシロンは仕事を適当に流しながら――文字通りの”適当”として、既に喫緊の仕事は完了している――パソコンを触っていたのだが、皇神(スメラギ)の防衛観測システムが航空機からの緊急信号を拾った。

 

「航空会社はなんて!?」

「まだトラブルの原因を確認してる段階みたい。旅客機の不安定な動きを考えると、尾翼付近(スタビライザー)の故障なんだと思うけど……まだぼくの推測でしかないよ」

「その調子ならシロン、お前は既に軌道を演算し終えているんだろう? なら、それが真実だ」

 

 慌てて詰め寄ってきたきりんと共に、同様にオフィス内にいたガンヴォルト・シアン・レクサスもシロンの机へと寄ってくる。机の上のパソコンには、既に航空管制システムと同期した演算ソフト(シミュレーター)の画面が出ていた。

 シロンの超速演算(オーバークロック)は計算が関わる分野において、限りなく正確な答えを導き出す。その精度は皇神(スメラギ)の社内でも右に出る者はおらず、故にシロンが出した予測を治龍局の面々が疑う事は無い。

 旅客機はマシントラブルにより、このままだと墜落する。きりん達だけはそれを近い未来の事だと確信した。

 

「シロン! 旅客機が今どこを飛んでいるか、座標を教えて欲しい!」

「GV? それは良いけど……何するの?」

「現地に転移(ワープ)して、旅客機をボクの蒼き雷霆(アームドブルー)で浮かばせる!」

「うええッ!?」

 

 このままでは民間人に犠牲が出る。その前に、ガンヴォルトは極めて早く行動を決めた。

 かつてATEMSがミサイルを打ち込んできた時と同様、空間転移で旅客機に直接乗り込む。そして旅客機の外側から蒼き雷霆(アームドブルー)を使い、巨大な電磁場を発生させて墜落を物理的に阻止する。

 それはガンヴォルトにしか出来ないだろう、圧倒的な力業による解決策だった。

 

「無茶だよ、旅客機を一人で浮かばせるなんて! 小型機ならともかく、これは大型機なんだよ!?」

「昔、シアンの力を借りて暴走させられた飛空艇を持ち上げた事がある。今のボクなら、前より上手くやれる筈だ」

「それに蒼き雷霆(アームドブルー)で上手く着水まで誘導するにしても、まだ海の真ん中だから……そこから脱出する乗客用の救助艇も結局必要になるよ!」

「それなら、空港に着くまで浮かせ続ければいい!」

「どれだけ距離があると思ってるの!? それこそ無茶だよぉ!」

 

 が、いくらなんでも力業過ぎる。確かにガンヴォルトは以前に街中に落ちそうになった自律飛空艇(ドローン)を不時着まで導いた時があるが、その時とは規模も状況も違いすぎる。

 今回の旅客機はその時の飛空艇よりも何倍もの質量を持ち、しかも場所は未だ海上の遥か遠く。確実に安全な形で済ますには、いくらなんでもかかる負担が大きい。

 それでも今のガンヴォルトが全力を出せば、対処可能なラインである。だが、()()()()()()()また別の問題が浮上し得るのだ。

 

「……GV。気持ちはわかるけど、それじゃ皇神(スメラギ)の越権行為と見られる可能性が大きいわ。治龍局はあくまで能力者対策の部門って事、忘れないでよ」

「! きりんは、反対なの!?」

「反対なワケ無いでしょ。……ただ、どこにも面子ってモノがある。それだけの大規模な第七波動(セブンス)の行使を無断ですれば、治龍局どころか皇神(スメラギ)の立場に関わる。何をするにしても、まずは航空会社と連携しないと……」

 

 これ以上無いと言う程の渋面を、きりんは浮かべる。実の所、現時点においてこの緊急事態は治龍局はおろか、皇神(スメラギ)にすら一切関係の無い、対外的には未だ発覚すらしていないトラブルなのだ。

 シロンによる事態の発見だけなら、龍放射の観測や領空・領海の防衛システムにたまたま引っかかっただけという言い訳で済む。しかし当の旅客機側がトラブルを自社に報告し、管制官と連絡を取り合う真っ最中の状態で、外様である皇神(スメラギ)がいきなり首を突っ込むなど論外だ。

 

「くっ……! シロン、旅客機はどれぐらいまで飛べるか、演算出来る?」

「ある程度はシステムの自動制御で航行出来るから、そんなすぐには墜落しないよ。ただ、乱気流に捕まらないと仮定しても、沿海区域より外で着水しちゃうと思う……」

「つまり、二十海里(37キロメートル)以上も陸から離れた地点か。そして気流に巻かれれば、更に遠くになり得る、と……」

「きりん、ここまで分かって何も出来ないの!?」

『GV、少し落ち着いて! すぐに墜落はしないって分かったし、きりんだって何かしたいに決まってるんだから』

「……ごめん、ちょっと冷静じゃなかった」

 

 シアンに窘められ、ガンヴォルトは荒げていた声をようやく収める。焦りのあまり、きりんの苦々しい表情が見えていなかった事に気付いた。

 きりんとしても、民間人に犠牲が出そうだと分かってしまったこの状態で手をこまねいて傍観などしたくはない。しかし治龍局と皇神(スメラギ)の体裁を気にしなければいけないという立場が、安易な判断を許してくれない。

 ガンヴォルトの力を使えばなんとかなる、しかしそれは本当の最終手段だ。力による安易な解決を受け入れてくれる程、社会は簡単に出来ていない。

 

「……例え助けに入るとしても、蒼き雷霆(アームドブルー)で出来る手法は目を引きすぎる。そんな大規模な電磁場を長時間形成し続けるなど、民間人にとっては脅威としか見られないだろうな」

「レクサス……」

『ううう……GVは人を助ける事しか考えてないのに……』

「あくまで第三者からはそう映るだろうという話だ。……悪い言い方をした、済まない」

 

 レクサスはガンヴォルトが介入した結果、外部からどう見えるか冷静に分析する。

 大型旅客機を支える程の電磁場など、まず機内の人間が恐れる。ガンヴォルトの力を知らない乗客からは、旅客機のトラブル以上の不安にしか見えないだろう。

 そしてそのまま空港にまで送り届ければ、国内の多くの民間人にもそれを目撃される。それはガンヴォルトの異常なまでの力を誇示するのと変わらず、事態が下手に転べば国際的な脅威と見なされる可能性すらある。

 暴龍事変もあり能力者への扱いがデリケートとなっている今の時勢において、強すぎる力は逆風にしかならないのだ。

 

「オレもお前らと気持ちは同じだ、民間人の危機を傍観するつもりは無い。……きりん、シロン。なんとか航空会社に助力の許可を取ってくれ」

「そりゃ、言われなくてもやるつもりだけど……ガンヴォルトの力を使うのはまずいって話、レクサス自身が言ったばかりじゃない」

「ああ、ガンヴォルトの力を見せるのはまずい。それなら、()()()()()()()()

「えぇ?」

 

 旅客機の墜落を確実に防ぐにはガンヴォルトの力が必要だが、それは皇神(スメラギ)の体面に関わる。

 しかし逆に言えば、大きな問題はその一点だけなのだ。

 

「ガンヴォルト。きりん達が会社と渡りをつけたら直ぐに旅客機の座標へ、オレとシアンを一緒に転移させて欲しい」

「二人も一緒に? それは良いけど……何をする気なの?」

「シアン。前にオレとやった技を使う。力を貸してくれ」

『へ? レクサスとの技って……なんか、あったっけ?』

「……前にきりんにやらされた、アレだ」

「わたしにやらされた? ……何かやったっけ、わたし」

 

 そう言いながらレクサスは自身の宝剣を取り出して手に握る。何か考えがあるらしいが、何故かこの場にいる全員がハテナマークを浮かべ首を傾げていた。

 ガンヴォルトやシロンが分からないのは良い。しかしレクサスが確かに名指ししたシアンときりんの二人もまた、何の事を言っているのか分からずにいる。

 その姿を見て、レクサスは溜息を一つ吐いた。

 

「ガンヴォルトの力を見せず、目立たないやり方で機体の墜落を防ぐ。オレがシアンの力を借りればそれが可能、という話だ」

『そ、そんな事が出来るの!?』

「あの、なんでそこでシアンが驚くの? ボクにはよく分からないけど、レクサスと一緒に使った事がある技なんだよね?」

 

 レクサスの呆れ顔とシアンの驚き顔を交互に眺めながら、ガンヴォルトは困惑する。

 レクサスは自分が無理である事は、ハッタリであろうと口にしない。出来ると言った事は必ずやり遂げる、そういう人間である。こんな緊急事態の只中であっても、レクサスの言葉を疑う人間は治龍局にはいない。

 が、問題はシアンの方である。何故かレクサスが協力を仰いでいる相手であるシアンは疑問や驚きを口にするばかりで、意図を把握出来ているとはまるで思えない。

 大丈夫なんだろうか。ガンヴォルトは初めてレクサスの言葉に不安を覚えてしまった。

 

「ガンヴォルトは旅客機に着き次第、オレに風除けの電磁場を張ってくれ。その程度なら通常の第七波動(セブンス)行使の範疇だろう」

「ボクがやるのはそれだけで良いの、レクサス?」

「お前は不測の事態の備えでもある。傍に居てくれるだけで十分有り難い」

「……わかった」

 

 レクサスの目に迷いや不安は見られない。ガンヴォルトにとって風除けを作るなど、雷撃鱗を発するよりも遥かに容易な事であり、その程度の事しかやらなくて良いと言われる方が戸惑う。

 つまり、この事態は自分とシアンの二人だけでどうにか出来る。レクサスの言葉は、暗にそう語っていた。

 

「きりんちゃん、航空会社にはいつでも連絡出来るよ! GV、旅客機の座標と軌道は演算済みだから、跳ぶ前にこの軌道(ルート)を頭に入れて!」

「さっすがシロン、仕事が早いわね。善は急げよ、早速繋いで!」

「ありがとう、シロン」

 

 シロンは自身の超速演算(オーバークロック)によるマルチタスクで、今求められる全てを既に先回りして済ませている。きりんもそれに応え、即座に航空会社へ話を通し始めた。

 困惑も疑問も後だ。ガンヴォルトは割り切って自身の転移(しごと)をこなすべく、軌道を映しているモニターに目を向けた。

 

  ◆  ◆  ◆

 

「――空間転移とはこういう感覚なのだな。GVを信じていない訳では無かったが……少し、肝が冷えたな」

「飛翔中のミサイルに転移するよりはずっと簡単だよ。人を連れて跳ぶのも二度目だし、上手く出来たと思う」

『二人共、無事到着したみたいだね! 状況はどう?』

「僅かだが機体がガタついている。こちらはGVのおかげで立つのも支障無い」

 

 きりんが航空会社と速攻で連絡を取り終え、ガンヴォルトとレクサス・シアンの三人は旅客機の機体上面に転移を終えていた。

 長距離の転移は神経を使う能力ではあるが、ATEMSが撃ってきたミサイルに跳躍した時に比べれば遥かに容易であり、苦にもならない。転移してすぐにガンヴォルトは揺れる機体の上で足を留める為の電磁場を風除けと同時に構築し、レクサスの足場を固める。

 だが、問題はここからだ。

 

「シアン、準備は良いか?」

『ねえ、ついさっき思い出したけど、”アレ”って()()()だよね? ……アレで本当に大丈夫なの?』

「問題無い。……あの技はお前らが思うよりもずっと強力な技なんだぞ、自覚してくれ」

「そういえば焦ってたせいで結局聞くタイミングを逃してたけど……どういう技なの?」

「やりながら説明する方が早い。シアン、頼む」

 

 尾翼を損傷した旅客機の対処を始める、まさにそのタイミングでシアンとガンヴォルトがレクサスに問いかける。

 変身を終え、事態に挑まんとするレクサスに焦りはまるで無い。それどころか未だ少し意図を把握出来ていないシアンに対し、呆れた視線を向ける程に余裕があった。

 本当に何をする気なのだろうか。ガンヴォルトはレクサスが今から何をするのか、注視し始めた。

 

『レクサスがそう言うなら、まぁ……それじゃあ一曲、行くよ!』

「……よし。続けて頼む」

『オッケー、()()は?』

「尾翼の周辺だけでいい」

 

 シアンが電子の謡精(サイバーディーヴァ)をレクサスに使い、能力を増幅させる。しかし今回はそれだけで終わらず、レクサスはシアンへ更に指示を飛ばした。

 ”範囲”。それはどういう意味かとガンヴォルトが考えるよりも先に、シアンは自らの歌声を更に大きく()()()

 

「――! これはっ……!?」

「オレの振子(ペンデュラム)第七波動(セブンス)を、同調したシアンが電子の波に乗せて放つ。……そうする事で、だ」

 

 そう言いながらレクサスは両手を尾翼の方へと構え、自身の能力――振子(ペンデュラム)を発動する。

 振子(ペンデュラム)は、物質に任意のベクトルを与えて操る第七波動(セブンス)だ。しかし自身・或いは能力を込めたモノを接触させなければ操作する事が出来ないという欠点がある。

 しかし、もしもその能力の起点となる媒体の”モノ”が、()()()()()()()()()()であったなら――

 

「――捉えたぞ」

 

 レクサスが視線を鋭くすると同時に、()()()()()する。

 シアンが操る電子の波が届く範囲であれば、同調したレクサスの能力も届く。それにより破損している尾翼と周辺の大気、あらゆる全ての力の流れがレクサスの操作対象となる。

 本来対象に触れなければ発動する事が出来ない能力の制限解除。それがこの揺籃の歌(ソングオブペンデュラム)とでも言うべき、レクサスとシアンによる大技だった。

 

「……凄い」

「空間全体のベクトル操作に集中する以上、オレ本人が動けないのだけが難点だ。だが、この技は蒼き雷霆(アームドブルー)が作る電磁場の様に視認出来ない。これなら目立つ事もなく、問題に対処出来る」

 

 動作不良を起こしている尾翼の代わりに、レクサスが気流や揚力を操作して機体を安定化させる。それはガンヴォルトにも難しいだろう、細やかな物質の操作だった。

 今やっている事は尾翼の働きを肩代わりしているだけだが、その実体は空間の支配とすら言える程の広範囲かつ繊細な力量(ベクトル)のコントロールだ。誰の目にも一切映らぬまま、空気など無形の物も含めた全てを手中に収め、思い通りに操っている。

 ことモノを動かすという一点においては、紫電の全力の念動力(サイコキネシス)すら超えるかもしれない。レクサスから放たれる波動を感じ取ったガンヴォルトは、この技に心の底から感嘆していた。

 

「これで機体は安定して航行出来る。シアンが補助してくれている分、オレの負担はかなり小さい。空港に着くまでも問題無く能力を維持出来るだろう」

『わたしが歌い続けないといけないのがちょっと難点なんだけど……まぁ、このぐらいの範囲なら鼻歌(ハミング)でも十分かな。GV、何か聴きたい曲とかあったらリクエストしても良いよー?』

「よ、余裕だね……」

 

 結構な事をやっている筈だが、レクサス・シアンは共に十分な余力を残している。今の電子の謡精(サイバーディーヴァ)の能力範囲を考えれば、機体の周囲全ての支配すら可能なのだ。尾翼付近のみ集中すれば、行使する能力規模は低めですらある。

 ここに来る前は全開で能力を使う事も視野に入れて緊張していた分、余裕のある二人の様子を見たガンヴォルトは安心を通り越して、肩透かしを食らった様な気分になっていた。

 

「……GV。あまり気負いすぎるなよ」

「え?」

「確かに蒼き雷霆(アームドブルー)は極めて強大な能力だ。万能の力かも知れんが……全能では無い」

 

 機体の揺れが完全に収まり、空の雲を真っ直ぐに裂いて飛んでいく中。レクサスはガンヴォルトに語りかけた。

 暴走の危険性が無くなった今の蒼き雷霆(アームドブルー)は、現状紛れもなく世界最強の能力である。単一の能力として、出力・精度・応用性、その全てでガンヴォルトを超える能力者は存在しない。

 だが、願えば全てが叶う魔法という訳では無いのだ。

 

「オレ達をもっと頼れ。どんな事が起きたとしても、お前一人の力で全てを解決しようとする必要は無い。力を合わせれば、もっと良い解決策が見つかる筈だ」

「……!」

 

 レクサスの言葉を聞き、ガンヴォルトは目を見開いた。

 旅客機が墜落するかもしれない、一般人に犠牲が出るかもしれないと聞かされた時、ガンヴォルトは真っ先に自分が力を振るうべきだと考えた。自分の力なら、蒼き雷霆(アームドブルー)を全力で使えば、間違いなく人を助けられるだろうと。

 しかし実際は自分が全力を出す必要など無かった。それどころかレクサスやシアンに任せた今の方が、余程安全でスマートな対応であると断言出来る。

 ”気負いすぎ”。それは的確にガンヴォルトの悪癖を見抜いた指摘であった。

 

「――参ったな。そういうのはもうやめたつもりだったんだけど……どうにも、悪い癖が抜け切ってなかったみたいだ。これじゃあ、きりんやZEDΩ(ジエド).に笑われるよ」

「オレ個人としてはお前のその性格は好ましいと思っている。自虐する程の事では無いさ」

 

 ガンヴォルトは頭を掻いて自省した。今の自分は暴龍事変で対峙した時のジエドと、さして変わりない思考に陥ってしまっていたと気付かされたからである。

 かつてジエドはメビウスの無限の星詠(アストラルオーダー)という魔法の様な力に目が眩み、自分が信じる理想の世界を目指した。メビウスの力さえあれば、間違いの無い正しい結果が得られると信じて。

 今の自分も”蒼き雷霆(アームドブルー)さえあれば出来ない事は無い”と、一つの視野狭窄となってしまっていた。きりんが示して諭した”皆で協力する”という答えを、自分自身が実行出来ていない。

 誰かを頼り、より良い道を探していく。かつて自分が辿り着いた筈の考えが根付いていないのだ、これには苦笑いを浮かべるしか無かった。

 

「適材適所だな。今回はオレの方が上手く出来る事だった、ただそれだけの話だ。だからそこまで気にするな」

『そうだよGV! GVはすーぐ深く考え込んじゃうんだから。もっと気楽にして良いの!』

「はは。……そうだね、これもボクの悪い癖だ。もっと気楽に、か」

 

 レクサスやシアンに励まされ、ガンヴォルトは肩を竦めた。自省したつもりが、それすら考え過ぎの悪い癖と指摘されれば形無しである。

 こういう意識は一朝一夕で治る様なモノではないのかもしれない。ただ、まずは誰かを頼る。そういう簡単な思考から、自分を変えていこうと思った。

 

「……ん? そういえばこの技って、”きりんにやらされた”って言ってたよね。こんな凄い能力、きりんが考えたの?」

「いや……この技には少し、言い辛い経緯があってな」

『いやぁ、確かに言いにくいよね。わたしも正直、この技がこういう風に使えるなんて思ってなかったし』

「?」

 

 状況が落ち着き、頭も冷静になってから。ガンヴォルトは今まで保留にしていた疑問を思い出した。

 転移前、オフィスでの会話中にレクサスは確かにこの技はきりんの命令されたモノだと言っていた。が、それについては協力者であるシアンや、当の本人たるきりんも知らない・覚えていないといった様子だった。

 この疑問点について、二人は何故か揃って言いにくそうに渋い顔を浮かべた。

 

「恐らくだが……この事件が終われば、この技の()()()使()()()を実際に見れると思うぞ」

「”本当の”……?」

「経緯については後で話せば良い。今はこの事態の収束に集中するぞ」

「う、うん。わかった」

『まぁ、空港に着くまで時間もあるし。力まず行こうよ、GV』

「”気楽に”、だね。……レクサス、何かあったら言ってね」

「ああ。頼りにしている」

 

 過程や経緯などは小さな問題に過ぎない。今考えるべき事は、着陸まで機体の制御を維持し続ける事だけだ。

 ガンヴォルトは一旦疑問を頭にしまって、レクサスが操作に集中出来る様に電磁場の生成へ意識を集中させた。

 

  ◆  ◆  ◆

 

「――ぎゃー! 書類崩れたー! レクサス、アレやって! ちょっと前、自販機の下に落ちた小銭拾う時にやったヤツ!」

『えぇー……そのぐらい自分で拾いなよ、きりん……』

「……GV。こういう事だ」

「…………」

 

 後日、航空会社との連携の速さを優先したきりんの元には、皇神(スメラギ)本社への報告・連絡を怠ったとして各部門から後始末の為の書類が大量に届けられた。

 その書類を床にぶち撒けてしまったきりんが要求した揺籃の歌(ソングオブペンデュラム)の本来の使い方――地面に落ちた物をまとめて拾い上げるという、しょうもなさの塊みたいな用途を見せられ。ガンヴォルトは人に頼りすぎるのもやっぱり良くないなと思った。

 




『”揺籃の歌”レクサス&シアン』 Lv MAX
周囲にあるクレジットを吸引したりとか色々出来るようになる。

多分シリーズで一番第七波動(セブンス)の事をフラットな視点で捉えてるのはきりんちゃんだと思います。
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