「――づっ、がれだぁ~……」
「きりんちゃん、おつかれー! はい、飲み物!」
「あ゛ー、ありがとシロン……ぷはー! 仕事の後の一杯は格別だねぇ……」
「淹れたのはオレだが、コーヒーの飲み過ぎはオススメしないぞ」
ガンヴォルトが居なくなった影響は、思った以上に大きなモノだった。覚醒しきった暴龍を封印出来るのはきりんだけであり、そのきりんを直接的にサポートするガンヴォルトの力はもう無い。その分、治龍局の消耗はどうしても一人に集中する。
「BBとカミオムはー?」
「それぞれ部隊を率いて、龍放射の観測地点に出張中だ。……あの二人が隊長というのは、やはり不安しか無いな」
「レクサスみたいに最初からキッチリを求めるのは酷だって。いや、レクサスは慣れすぎだけど」
「昔取った杵柄だからな」
「ホント、杵柄が多いわね」
きりんはオフィスを見渡し、良く知る二人が居ない事に今更気付く。レクサスがいつもより不安な顔で答えるも、二人の人格を考えればさもありなんと思った。
治龍局も設立当時に比べ、必要性を認められ規模が広がった。B.B.などの能力者を隊長にした、暴龍を相手に足止め出来る鎮圧部隊、シロンの能力をベースとした龍放射観測チーム、裏八雲監修下での暴龍用宝剣の研究チーム
モルフォ含めて七人ぽっちだった時に比べると、治龍局の
「……ん? きりんちゃーん、連絡入ってるよー」
「連絡ぅ? そんなのシロンが取り合ってよ、わたし疲れてるんだけど?」
「いやそれが、相手がATEMS――っていうか、
「ジエドから直接? ……
思わぬ所からの連絡をシロンから伝えられ、きりんは訝しむ。
ここ半年の間で、治龍局とATEMSとの同盟関係は随分と強固になった。元々は
その際に治龍局の力を借りる事もあるが、それ以上に
しかし、組織のトップたるジエドが直接きりんへ連絡してくるというのは珍しい。そう思い、きりんは立体映像の通話を繋げた。
「どしたのジエド、珍しい。わたし今疲れてて一眠りしたいから、用事あるならなるべく簡潔にしてくれない?」
『ハハ、相変わらずだねぇきりん。仮にも組織のトップ同士の対話で、アイスブレイクも無しかい?』
「そういうのお互い柄じゃないってわかってんのよ。正式な会談挟まないって事は、公的なおべっかも要らないってことでしょ?」
『やれやれ。キミのそういう真っ直ぐさはとても好ましいけど、少しは慎みを持っても良いんじゃないかい?』
フランク極まったそっけないきりんの態度に、ジエドは肩を竦めて呆れる。
良くも悪くもストレート。相手がかつて敵対した相手だろうが、どれだけ強力な能力者だろうが、きりんはフラットな態度で接してくる。その平等な性格はジエドからしても気楽で助かっている。
とはいえ、年頃の女子がここまでサバサバしてても良いのか。そう思いジエドは思わず提言せずにはいられなかった。
「この国じゃそういうの余計なお世話って呼ぶの。……で? わざわざ直接連絡するんだから、相当な事あったんでしょ。何?」
『あったというか……少し妙な事があってね。それでキミに確認を取りたかった』
「妙な事? またなんとも、曖昧な言い方するわね」
とはいえ、きりんとしても完全に雑な対応をするつもりは最初から無い。というか、そっけない態度その物が場を和ませるアイスブレイクまである。
何せ、ジエドから直接の連絡というだけで只事ではない。かつて
そんな前例を持つジエドが事前のアポイントも介さずにきりんに連絡してきた以上、相応の事態が起きたと考えるべきである。きりんは背伸びをひとつ挟み、ジエドからの言葉に備えた。
『キミはさっき”疲れた”って言っていたけど。やっぱり、暴龍絡みの事件かい?』
「そーよ、当たり前でしょ。全く、こうも件数が多いと溜まった有休どうするか悩むレベルだっての」
『……キミは、休んでいないんだね?』
「ん? ……どういう意味よ、ジエド」
要件を伝えろという要望を無視してかけられる気遣いの言葉に、きりんは愚痴で応える。が、それを再確認される事に変なニュアンスを感じた。
まるで、
『オレやレイラもそうなんだよ、キミに海外は任されてるからね。その信頼に応えるべく、常に全世界にルクシアの力で暴龍反応を探知している』
「なに今更な事言ってんのよ。どっちが事件が多く解決してるかなんて苦労人決定戦はやらないわよ?」
『
「……どういう事よそれ」
ジエドが告げた事実に、きりんの声からまだ少し残っていた余裕が消えた。
半年前のメビウスの覚醒による余波で、龍放射は一時的ではあったが世界規模で広がった。その禊としてジエド達は海外で覚醒した暴龍事件の対応を行っている。
一度広がった龍放射は元に戻らない。爆心地とも言うべき日本ほどではないものの、海外での暴龍覚醒は常に増加傾向にあった。こればかりはどうしようもない事態であり、発見次第鎮圧するという対処療法しか出来ない。
今回の報告は、そんな現状に真っ向から反する吉報であり――全く理由不明の、異常事態だった。
「原因について心当たりは……無いから、わたしに聞いてきてるのよね」
『ああ。キミが気まぐれに海外旅行でもしてくれてたりしてた、という方が説得力があると思ってね。まぁ万が一というぐらいだったんだが……あるいは』
「あるいは?」
『――キミの
「……!」
ジエドの推測を聞いて、思わずきりんは立ち上がった。
きりんの
暴龍化現象に対抗出来る、事実上唯一の存在。そんな人間が、新たに現れた可能性。
『一応聞きたいんだけど。
「わたしの婚期はまだまだ先みたいよ」
『そういう反応に困るジョークはやめてくれないかな?』
少し本気が混じっていそうなきりんのブラックジョークに、ジエドは顔を引き攣らせる。が、質問の答えにはなっていた。
現状、別の
それでも能力自体を否定するかの如き”封印”という能力は、国外を飛び回るジエドも未だ未確認。裏八雲という特定の場所で新たな戦巫女が現れたという可能性を考えての質問だったのだが、その可能性も無くなった。
『今の所、こちらに実害は無いんだけど……そうなると、不思議な事がある』
「まだ何かあるの?」
『海外では事件が目に見えるレベルで減っている。……なのに何故、
「……言っとくけど、また
『ハハッ。流石に今更キミ達の事を疑うつもりは無いさ』
そしてそうなると、新しい疑問が生じる。即ち、国内外での事件傾向の差だ。
きりん達が暴龍事件に対処するケースは、一向に増加傾向である。メビウス以前より龍放射が広がっていた以上、国外と比べて件数が多いのは当然の事だ。
その一方で、ジエドが確認する限り国外での事件は減少傾向を辿っている。これはつまり、現在起きている事態において、
「あんまり考えたくはないけど……以前の
『それは無いね。
「暴龍事件が減少した地域に法則性や特徴は?」
『世界全体的に緩やかな下降傾向だよ。東西南北問わず、国に住む能力者の多寡も誤差レベル。……都合が良過ぎて怖いぐらいだ』
聞けば聞く程、気味が悪い。事件が減る事は吉報で間違いないのだが、その原因がさっぱりわからないとなれば話は別だ。
レイラの能力――
何かが起きている筈なのに、その痕跡が見つからない。そして最も暴龍事件で被害を受けている日本は、その事態の外にいる。きりんはこの明確な異常について少し考え――
「――うん、わっかんないわね! んじゃジエド、なんか追加でわかったらそん時また連絡して!」
『いやいやちょっと待ってくれないかな!? 流石にそこで話を打ち切るのは違わないかい!?』
「だって、わたし達が出来る事無さそうだし。元々そっちが持ち込んだ話なんだし、調査はそっちに任せるわ」
『え、えぇ……いや当然、こっちでも調査は続けるつもりではあったけどね……』
丸投げした。何故なら、どうにもならないからである。
これが暴龍の急な増加だとかの悪い知らせであれば、きりんも解決の為に協力する。が、実際問題起きているのは間違いなく世界的に良い知らせでしか無い。
国内の事件に追われ続けている治龍局に海外の調査に割く人手は無いし、ATEMSやレイラの力でも分からない事が運良く判明するとは到底思えない。となれば、動く理由も余裕も無い。
わからない物はわからない。それがきりんが出した結論であり、今回の対応であった。
「ま、こっちでも何か変化があったら連絡するから。なんか分かったら教えてね、頼りにしてるわよー?」
『……頼られるのは悪い気はしないけど、本当にそれで良いのかい? これで何かあったら――』
「何かあった時は、また力合わせて解決すれば良いだけでしょ?」
『――……弱ったね。そう言われちゃ、何も言い返せないじゃないか』
あまりの投げやりっぷりに零れたジエドの葛藤を、きりんは一言で打ち切った。
異常事態など今に始まった事では無い。仮に何か事件がまた起きたとしても、手遅れになる前であれば自分達が協力して出来ない事など無い。きりんの考えは楽観的だったが、その裏にはジエドを含めた仲間達への確かな信頼があった。
メビウスの暴走も、それからの半年も、どんな大変な事件があろうと全てなんとかしてきた。問題の根本的な解決こそ出来ないまでも、悪化の解消は可能なのだ。
それがたとえ現在の一時凌ぎだとしても、留めた先できっと平和な未来へと繋げられる。きりんのスタンスは、半年前の事件からブレていない。
「――話の途中でゴメン、きりんちゃん!
「うえぇ、言ってる傍からコレかぁ。という事でジエド、
『え、ちょっ――』
「きりん、オレも出る。疲れてるだろう、後詰めだけ頼む」
「サンキューレクサス! そんじゃ、行くわよ!」
シロンからの緊急連絡を受け、きりんはジエドとの通話を一方的に切る。即座に立てかけていた錫杖を手に取った所で、手早く出動態勢についたレクサスが横に並んだ。
暴龍への対処はスピードが命だ。暴走による被害を防ぐのが第一目的だが、早期に処置する事で能力者本人の保護にも繋がる。体が弱い能力者だった場合、封印が遅れれば暴走の反動が体を蝕む事もある。
即決行動・即行解決。悩む事無く、きりんとレクサスはオフィスを飛び出した。
「シロン、目標地点の共有を頼む。きりんはオレに掴まれ、オレの
「おっ、あのワイヤーアクションやるの? んじゃ、遠慮無くタダ乗りさせてもらうよ!」
「ジエドがお前に”慎み”と言っていたが、オレも同意するぞ。……まぁ、今はいい!」
変身したレクサスは先んじて屋上へと駆け出し、ドアを開け放つ。そのまま目的地方向のビルに向け能力を込めた短剣を投擲し、同時にきりんがレクサスの背中におぶさった。
仕事の為だからとはいえ、ノータイムで躊躇いも無く異性に抱き着くのはいかがなものか。そう呆れながらも、レクサスは投げ付けた短剣より伸びるワイヤーへ
「ひゃっほー! いやー、やっぱ移動系の能力か乗物はもっと欲しいわねー! わたしバイクもう使うなって言われちゃったし!」
「無駄口はやめろ、舌を噛むぞ! ……ちなみに、それは何故だ?」
「んー……たぶん二、三台ほど仕事でお釈迦にしちゃったから!?」
「物と経費は大事にし、ろっ!」
シロンよりリアルタイムで通信を受けつつ、レクサスは連続で能力を発動させる事で背負ったきりんと共に高速で宙を飛び回っていく。
何事も即行なのは彼女の美点なのだが、フォローをする側としては後ほんの少しだけ落ち着きを持って欲しい。後で経費の重要性をしっかり教え込む事を決めつつ、レクサスは目標地点を遠目より視認した。
「シロン、対象を確認した! これより鎮圧に入る!」
『りょーかい! 並行して相手の能力を解析するね!』
「……おーおー、また派手な暴龍さんねぇ」
数百メートルは先に居るにも関わらず、文字通り目に見えるレベルで能力を暴走させている暴龍を移動中の二人が見定める。
能力者は自分を中心に白い光を弾けさせ、建物や街灯を破壊している最中だった。一目見る限りその破壊行動に指向性はなく、手当たり次第という風に見える。
おそらく能力者本人が力を制御する気が無い・或いはし切れていない、文字通りの暴走。レクサスは近くの地上へ滑る様に着陸し、短剣を両手に生み出して――
「チッ!」
「うひゃぁっ! ……攻撃!? 早すぎるでしょ!」
レクサスが攻撃態勢に入ろうとした瞬間、能力者から放たれた白光が手元の短剣を焼いた。そんな高速攻撃を危機感で避けた後から遅れて理解した二人は、その速度に驚愕する。
一気に空から接敵したとは言え、余裕を持って構える為にレクサスは相手との距離を二十メートル近くは取っていた。確実に奇襲だったと断言出来る、そんなタイミングだったにも関わらず、逆にこちらが攻撃を受ける。そんな事、普通では有り得ない。
「ガ、アアア……ッ!」
「……理性は完全に失っている様だが。どういうカラクリだ」
「なんにしろ不意打ちは失敗だね。……シロン、解析出来た?」
『まだ始めたばかりだよっ!? あ、あと十秒ぐらい待ってー!』
「なら、こちらは足止めに徹しよう」
きりんの無茶振りに応える様にシロンが相手能力の
投げた短剣の内、敵側へと飛んだ方は再び白光に貫かれ撃ち落とされたが、それ以外はそのまま瓦礫に突き刺さり、そのままレクサスの能力が発動。”敵へ向かって飛ぶ”というベクトルを与えられた数々の破片が、敵へと殺到し――その全てが、光に墜とされた。
「……これもダメか。しかし一つ残らず全て撃ち落とされた、何かあるな」
「なんかちっちゃい破片まで潰してたわね。
建物の外壁から街灯のガラス片まで、レクサスは大小様々な物体を飛ばしたが、それら全てが同時に迎撃された事に二人は違和感を覚えた。
大きな瓦礫はともかく、小さな破片は少し動けば躱せるし、そもそも暴龍化した能力者はそれだけで身体が頑強になっている。わざわざ
そんな能力者が、さして痛手にもならない攻撃まで完全に防ぐ。そんな光景に、
『――パターン解析完了! アレは、生体電流を増幅して放出する
「電気の能力者か。……厄介だな」
「うげぇ。相性悪いわねぇ」
モニターされた二度の迎撃と
シロンの分析が正しければ、敵の速すぎる攻撃は単に電気で攻撃するだけのモノだ。かつて居た最強の暴龍ほど能力で出来る事の幅は無いだろう、しかし純粋な攻撃性で言えば
『能力者の意識が殆ど無いから、自分に近付いてくると感じた物体へ反射的に
「あんなのが何人も居たら世界は終わりよ。……丁度BBやカミオムが居ないのがキツいわねー」
「正直、オレの能力とは相性が悪いな」
自身の周囲に雷撃を纏って放つ技・雷撃鱗。きりん達の脳裏に過ったその技は、単純ではあるが小型のミサイルすら通さない攻防一体の技だった。
それと同様のモノだとすれば、突破手段は限られる。代表的な例は雷を受けても消えない非実体系の攻撃や、雷を受けようが関係が無い質量攻撃の二つ。
B.B.の
「レクサス、そこら辺に転がってるありったけの瓦礫集められる?」
「難しいな。壊された瓦礫の大半はあの能力者の周辺に転がっている、掻き集めるにはそれらを迂回させて動かさなければならない。あの雷撃を確実に抜くだけの塊となれば時間もかかるし……うっかり殺しかねん」
「過失致死なんてやらかしたら、また
大量の瓦礫を固めてぶつけようと考えたきりんの言葉に対し、レクサスは難しい顔を浮かべる。
レクサスに出来る最も簡単な突破手段は、純粋に相手の迎撃を超える程の密度と質量の瓦礫を固めてぶつける事。しかしその為に必要な物体は周辺から調達しなければならないし、加減を間違えてやり過ぎれば保護対象を
組織としての面子を考えれば、事件はスマートに収める必要があるのだ。きりんは頭を捻った。
「あー全く、嫌になるわね! 雷の能力者ってのは、皆めんどくさいのしかいないのかなぁ!」
『――そう言われると、耳が痛いよ』
「……は?」
その瞬間。きりん達の通信に、
同時に、
『き、きりんちゃん! とんでもない能力反応が――何この速度!? 演算が間に合わない!?』
「……あ、あんた……!?」
遅れてきたシロンの焦った声も、きりん達の耳には入って来なかった。
きりん達の前に落ちてきた光の跡には、既に人影が居た。
見覚えがある、ありすぎる、そんな人影を見て。頭の中が、真っ白になった。
「……ホウレンソウも出来てなくてごめんね。非常時だから許してくれないかな、レクサス?」
「お前、は……」
幻聴では無い。幻覚でも無い。申し訳無さそうな声が、それを現実だと教えてくる。
常に冷静を心掛けているレクサスですら、目の前に現れた何者か――頭では分かっていても、理解が追いついていない――に対し、動揺を隠せなかった。
「久々の仕事だね。行こう、シアン」
『オッケー! 本気でいっちゃうよー!』
「……やり過ぎないでね? それじゃあ――」
左腕を上に掲げる。蝶の翅を持つ女性が顕れる。掲げられた掌から、溢れ出る程の蒼雷が弾け飛ぶ。
その全てが、あまりにも見慣れた物であったが故に。きりん達は、身動き一つ取れなかった。
「――迸れ、
掛け声一つ、暴走していた能力者の周辺全てを、白き鎖が囲んで覆い尽くす。そこより数多の鎖が分岐し、放たれる電流さえも容易く穿って能力者の全身を絡め取っていく。
そして顕れた鎖の全てが、耳を劈く程の雷鳴と共に。青よりも蒼い雷と化して、弾け飛んだ。
「……ふう。半年ぶりの仕事とはいえ……少し張り切り過ぎたかな」
『確かに、ここまでしなくても良かったかもねー。まぁ手加減の練習にはなったから、結果オーライじゃない?』
「そういうモノなのかな……?」
雷が迸った後には、暴龍化が解けたらしい能力者がうつ伏せで転がっていた。
きりんに至っては、通信から聞こえるシロンの大声すら、耳を撫でるだけの雑音にしか聞こえていなかった。
「あー、えーと……きりん?」
「――……」
「……どうしよっか、シアン。物凄く気まずいんだけど」
『もー、前も言ったでしょ。言葉にしなきゃダメなんだって。言いたかった事を、そのまま口にすればいいんだよ』
「……うん、そうだね。ボクには、言うべき
振り返った少年が、きりんと向き合う。呆けたままのきりんは、言葉を出そうとしても全てが喉奥で止まっていた。
半年前に別れて、もう二度と会えないと思っていた顔がそこにある。ばつの悪そうな顔で、隣で浮いている蝶の少女と話し合っている。その光景が、信じたいのに信じ切れなくて。
お互いに上手く言葉を出せないその状況で、目の前の少年が先に口を開いた。
「ただいま、きりん」
「……っ」
頬を指でかきながら、少年――ガンヴォルトが口に出したその言葉に。
きりんは我慢出来なくなって、思いっきりガンヴォルトに体当たりした。
「わあっ!? き、きりん!?」
「……バカ、ばかっ! 遅い、遅いっ! 帰って来るのが遅いのよ、無事なら無事って連絡ぐらいしなさいよ!」
「……うん、ごめん」
「ごめんで済まそうとしないでよ! どれだけ、あれからどれだけ大変だったと思ってるのよ! どれだけ皆に心配かけたと思ってるのよ!」
「ごめん」
「だからっ……!」
受け止めたガンヴォルトに縋り付き、胸を叩きながらきりんが大声を上げる。
勝手に居なくなって、もう二度と会えないと思っていて、でもいきなり帰ってきて。半年前の無念と、半年間の苦労が、二つまとめて感情になって溢れ出てくる。そして溢れた分が、全部声となっていく。
こんな事が言いたい訳じゃない。こんな事を言うべきじゃない。だけど、言いたくて仕方なくて。そして仕方なく言いたい分を、ほんの一旦だけ飲み込んで。
きりんは、言うべき言葉を口にした。
「……おかえりっ、GV」
「うん。ただいま――いたっ」
それだけ言ってから、きりんはガンヴォルトの胸に軽く頭突きした。
◆ ◆ ◆
「……シロン。観測出来ているか?」
『うん、うん! 良かった、良かったぁ……! GV、無事だったんだ……!』
「その事は喜ばしいとオレも思うが……今は別の事を質問させて欲しい」
『えっ?』
きりんとガンヴォルトが再会に浸っているのを一歩引いた所で見ながら、レクサスがシロンに通信する。
ガンヴォルトの生還。これ自体は大変喜ばしい事だ。レクサスとしても、友人の帰還に諸手を上げて歓迎したい。
しかし、どうしても無視出来ない事があった。
「今、龍放射は観測出来ているか?」
『? いや、能力者の暴走は終わったから、もう誤差レベルでしか残ってないけど……』
「
『……あれっ?」
暴龍はガンヴォルトの攻撃を受け、鎮圧された。元の人間の姿へと戻っていた。
それはつまり、
「もう一度聞く。龍放射は、誤差レベルしか観測されていないんだな?」
『う、うん。……今その地域全体の観測データを洗い直したけど、殆ど収まってるよ』
「……何故だ」
そしてもう一つ。”龍放射は観測されていない”、そんなシロンからの報告。
冷静さを取り戻したレクサスは、その
「何故ガンヴォルトが此処に居るのに、
考えられ得る最大最強の暴龍が、此処に居る。
にも関わらず。今この場では、
流転する運命
この世界、半年もあれば凄い技術革新してそうですよね。