Mirror of the golden witch   作:フラット・ホームズ

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エピソード3の推理
ヘンペルのカラスの天秤


「さて、そろそろ再開するよ」

「次はエピソード3だな」

 

 エピソード3の難易度は互角。

 魔法説と人間説が互角。

 あるいはスイセンの言うとおりに、人間説と人間説が互角。

 そして特徴はエヴァがベアトリーチェの名を受け継ぐこと。

 

「まずは出題者の意図を探ろう。何で第一の晩の被害者として金蔵と使用人たちを選んだと思う?」

「それはベアトリーチェが言った通り、第1と第2のゲームで使用人たちが最も疑わしいから、第3のゲームでは真っ先に排除したのではないか?」

「その通り。この一手は第1と第2のゲームの犯人が使用人であり、第3のゲームは真犯人はすでに死亡したら別の犯人が事件を起こしているという主張となる。……なら、対戦相手のその主張を鵜呑みにするの?」

「…………いいや。敵の主張を鵜呑みにすることは負けに等しいからな」

「チェス盤思考で相手の立場になって考えてみると、魔女が犯人だと無理やり認めさせる方法は“北風”となるよね。

 そして真犯人候補である使用人たちが死んだから別の犯人である絵羽が怪しいと主張するためのエヴァ・ベアトリーチェを置くことは“太陽”に当たるの」

「……北風と太陽作戦。エヴァ=絵羽という駒はどうぞ取ってくれと差し出すように置かれた駒だと?」

「それ以外の何だと言うの?」

 

 反論し辛いが、建前だけでも反論しておこう。

 

「絵羽が碑文を解いたからエヴァがベアトリーチェの名を受け継いだんじゃないのか」

「それは魔法説の設定だよ。親族会議の日に現実で起こったことが第7のゲームの事件だとしたら、第3のゲームの事件は紙面上のものに過ぎないことになる。

 そうだとするなら、絵羽に碑文を解かれたからじゃなく、執筆者にとって絵羽が碑文を解いた方が都合がいいから第3のゲームとして選ばれたと考えるべきだね。

 つまりは執筆者からのアピールだよ。実際、第8のゲームで、エヴァが絵羽犯人説を象徴していることは示唆されているわけだしね」

 

 第3のゲームが絵羽生存の未来に合わせて作成されているのだから、当然その未来において絵羽犯人説が蔓延っていることは示唆されていることになる。

 であるならば、エヴァが絵羽犯人説を象徴しているというのは自然な話に思える。

 

「だけど、そのまま絵羽が犯人である可能性も否定できないだろう?」

「勿論だよ。並列する真実の真偽を問うならば、天秤の両側にそれぞれ真実を乗せなくてはならない。

 2つの箱のどちらかに真実が入っている時に限り、片方の箱を開ければ、もう片方の箱の中身が空けずともわかる。

 片方の箱が外れなら、反対側の箱は当たり。ヘンペルのカラスはある種、量子もつれの様に2つの箱を結び付けているわけだけど。

 ……私は並び立つ真実とは、ただ並列している真実のことではなくて、ヘンペルのカラスのように天秤の両側に乗せられた対偶となる真実のことだと思っているのよ」

 

 無数に存在する真実の中で、対となる2つの真実。

 出会うはずのなかった2人……。

 ……頭を振ってその思考を振り払う。

 

「エピソード3の難易度は互角。……この「互角」というのは、並び立つ真実となっている対の真実が互角であると解釈したわけだな?」

「戦人とベアトの間のゲームにおいて魔法説と人間説が互角というのは、作中で披露され、アピールされた。ならそれを俯瞰している読み手と書き手の間のゲームで互角なのは何?」

「…………エヴァという触媒を用いて、絵羽犯人説と絵羽無罪説の2つを生み出そうとしていると言いたいのか?」

「そうだよ。ベアトリーチェの紡ぐ3つの物語とはそのような関係性だと私は考えているの。エヴァが魔法説で、そこから2つの人間説の物語が派生する感じ」

「……そのもう一つが19人目犯人説だな」

「エヴァが出題した最後の謎である南條殺害について。それがエヴァという駒が生み出された本来の目的であるのは間違いない。あの謎は大雑把に2つの答えに分岐する仕組みになっている」

 

 南條殺害は第三のゲーム屈指の謎だ。

 赤き真実によって、島には19人以上はいなく、15人は死亡していて、生存者である3人には不可能と断じられた。

 

「時間差か何かで死んだはずの18人の中に犯人がいるか、18人の内事前に死んでいる金蔵の分に19人目が滑り込むか、だな」

「その通り。1つの謎から2つの真実を生み出し、それを互角の情勢に持っていっているんだよ。それが第三のゲームの目的だったと推察できる」

 

 確か、当時の推理情勢はその2つの説で真っ二つになっていたはずだ。

 それが出題者の意図によるものだったのだとすると、まさに思い通りだったということになる。

 

「よって第3のゲームでの私の方針は、できるだけ絵羽を犯人にせずに19人目で説明するということになる」




TIPS:並び立つ真実

 並び立つ真実というのはどういう関係にあるのか?

 エピソード3を見る限り、それは「ヘンペルのカラス」に準じる関係であるように思える。
 そして同エピソードで「シュレディンガーの猫」という量子についての話が出たことから、どちらでもあるという状態を作り出そうとしているように思われる。

 この論で行けば、エピソード8で猫箱が閉ざされたのは当然であると納得できることだろう。
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