Mirror of the golden witch 作:フラット・ホームズ
「まずは第一の晩から。連鎖密室の特徴は発見者たちが最初に入る部屋が決まっている点だね」
「窓を破って入るなら1階にある部屋でなければならず、それは1階客間のみということだな」
「そう。だから連鎖密室は輪ではなく、最初の密室から最後の密室まで順番が決まっていたことになるよね」
「……となると順番が肝になるわけだな」
「怪しいのは最初か最後だよね。真っ先に疑えるのは最初の密室に入った発見者が鍵を見付けたふりをして自分が持っている鍵を取り出してみせたというものだけど、19人目で説明したい私にとってこれは不採用」
「そうだろうな。……となると最後の密室に何か仕掛けられていたのか?」
「犠牲者以外の人物は室内には存在しない、という赤き真実があるから、部屋の外から19人目が密室を構築するには個別の鍵かマスターキーが必要不可欠だよね。
そうなると第2のゲーム同様に鍵を偽物とすり替えたと考えるのが妥当。……君ならどの部屋にある鍵をすり替える?」
そう問われたので脳内で事件を再構築する。
発見者たちは1階客間の窓を破って中にあった2階貴賓室の鍵とマスターキーを回収。
2階客室に移動して、先ほど回収した客室の鍵を使って開錠。
客室の中で、3階控え室の鍵とマスターキーを回収。
3階控え室に移動して、先ほど回収した控室の鍵を使って開錠。
控室の中で、2階貴賓室の鍵とマスターキーを回収。
2階貴賓室に移動して、先ほど回収した貴賓室の鍵を使って開錠。
貴賓室の中で、地下ボイラー室の鍵とマスターキーを回収。
ボイラー室に移動して、先ほど回収したボイラー室の鍵を使って開錠。
ボイラー室の中で、礼拝堂の鍵とマスターキーを回収。
礼拝堂に移動して、先ほど回収した礼拝堂の鍵を使って開錠。
礼拝堂の中で、1階客間の鍵とマスターキーを回収……。
「………………最後の礼拝堂の密室に置かれていた1階客間の鍵だ」
「それはどうして?」
「1階客間の鍵だけ使用されていないからだ」
「正解。すでに一階客間の密室は開錠されているのだから、客間の鍵を使う必要はない。そして、同じシチュエーションを何度も繰り返すことで状況に慣れさせ、どうせまた同じだと信じ込ませたの」
「それが密室を6つも用意した理由……」
魔女とは魔法を信じさせる者。
ならこれは立派な魔法だ。
「このトリックは最初に入った部屋が1階客間以外だったら成立しないの」
礼拝堂にあった客間の鍵が偽物であれば、そこで必ず連鎖密室は途切れてしまう。
だから最初に入る部屋を定める必要があったのだ。
「……確かに、エピソード3では連鎖密室の鍵について赤き真実で宣言されていない。だがそれは最初に入った部屋で所持していた鍵を今発見したふりをした可能性を否定したくないからでもあるだろう」
「うん。そこが巧妙だよね。直前に赤き真実で19人目を否定することで、最初の部屋が疑わしいとする方向に誘導しているんだから」
「19人目がピックアップされるのは南條殺害の時で、南條殺害のみを説明するためだけに留めさせたわけだ」
「実際、南條殺害を19人目と推理した人の中で、連鎖密室のトリックも全て19人目一人の仕業であると推理した人はどのくらいいたのだろうね? 私以外にはほぼ皆無だったんじゃないかな」
それもそうだろう。19人目という駒が必要となるのは南條殺害時のみ。わざわざ他の事件も19人目の仕業にする必要はないのだ。
あって連鎖密室のトリックは可能でも連鎖密室の犯人には成り得ない親たちの代わりに19人目が連鎖密室での殺害を担当するというものくらい。
実際、そういう推理をした人たちはそれなりにいた。
だがそれでは19人目一人の仕業ではなくなってしまう。
スイセンは19人目と金蔵が犯人だと考えているから、全ての事件をそれで説明する必要がある。
前提が違えば推理内容も異なることになるのだ。
TIPS:輪になる密室
連鎖密室の、終わりと始まりが、重なる。
これはヤスが犯人だった場合の主張。
よって、幻は幻に帰るべきであろう。
客間の鍵は使用されていないので、本物とは証明されてはいない。
輪になる密室は途切れている可能性を否定できない。
どのように騙そうとしてきているのかを考えれば解くのは容易いので、第2のゲームの貴賓室の鍵を使用したトリックと比べると難易度は低いように思う。
ただ、連鎖密室は並び立つ真実の重ね合わせ具合の芸術点が高い。
最初を定めれば最後が定まるという点から2つの異なる真実を生み出す様は、全ゲームを通しても最高峰であると評価したい。