Mirror of the golden witch   作:フラット・ホームズ

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魔女のめっせんじゃ。


書斎の手紙と客間への侵入

「話を戻して事件の続きと行こう。次は書斎の手紙についてだよ。

 これまでのことでもうわかっているだろうけど、これも期待したリアクションで説明できる」

「……つまり、生存者たちが書斎に立て籠もったことも、不和によって半数が追い出されたことも、犯人の期待通りというわけだな」

 

 生存者たちが書斎に立て籠もった際、書斎にあった碑文に注目が集まっている時に、テーブルの上に魔女からの手紙が置かれた。

 そして手紙を置いたと疑われる真里亞、源次、熊沢、南條が書斎から追い出された。

 

「“不和”の魔法陣が示しているように、書斎での不和は犯人の手紙にとって引き起こされたもので間違いない。それを期待して手紙を用意したのだろうからね」

「手紙は事前に書いておかなければならないのだから、少なくとも書斎で籠城する前に手紙は書かれたことになる。実際はいつ書かれたかはわからないが……」

「最初からだよ」

「……最初?」

「メッセージボトルには事件の最初から最後までが描かれていた。

 つまり、最初の時点で最後まで期待していたということになる。

 よって、書斎の手紙は最初の地点で用意していたということだよ。

 真里亞に食堂で読むことになる手紙を渡した時に、きっと書斎の手紙も渡されていたのだろうさ」

「真里亞が書斎の手紙を置いたと?」

「真里亞自身が言っていたじゃないか。自分は「魔女のメッセンジャー」だと。

 だから魔女の設定を信じたんだよ」

「……ドアノブに刻まれた魔法陣の効果で魔女であるベアトリーチェは書斎に入ることは不可能。

 だから真里亞がメッセンジャーとなってベアトの代わりに手紙を置いたと?」

「そう。書斎の中には犯人もその共犯者もいなかった。いたのは魔女の使い魔だけ」

 

 真里亞は魔女を信じていた。

 なら魔女が書斎に入れないとも信じていたことになる。

 そして真里亞は自分の願いをベアトリーチェが叶えてくれると信じていた。

 ならベアトリーチェのメッセンジャーくらいは引き受けるだろう。

 

「犯人が期待したのはどのような流れなんだ?」

「被害者が立て続けに出たから生存者たちが一番安全な書斎に立て籠もるのは自然な流れ。

 書斎の主である金蔵の死が明らかになったというのもある。

 それに何よりも、書斎の鍵を預かっている源次が薦めたというのが大きい」

「だから書斎に立て籠もらない理由がない、と」

「源次は金蔵から命令されていた可能性がある。

 朝、書斎の鍵を夏妃に渡したように、自分の死後に書斎に入りたいと言った時には鍵を渡すように」

 

 源次にとっては金蔵の命令は絶対だ。

 書斎の鍵を誰かに渡すということも、金蔵の命令であったなら実行することだろう。

 そして、2度とも源次が自発的に書斎の鍵を渡してきたのだ。

 続けて2度繰り返すのであれば、そこに強固な意思があると疑える。

 

「……なら、書斎から追い出したメンバーは? あれも期待通りなのか?」

「手紙が置かれたのは碑文に注目が集まっている時だったね。

 殺人事件は碑文に見立てられていた。

 書斎に碑文があることからそれに気付かれることは予測できる。

 その際の立ち位置は、親族が前で使用人と客人は後ろになる。

 使用人や客人が親族より前に出しゃばることはないからね。

 さらに言えば親族内では子供たちが前で夏妃が後ろになる。

 これは夏妃が唯一の大人の親族で守るべき子供たちを見守る立場だからだ」

「つまり、碑文に注目が集まった際、真里亞はその場から動かずに手紙を置けば、自然と夏妃の背後にいるのは使用人と客人と真里亞となるわけだ」

「犯人は書斎に入らずに、期待したメンバーを書斎から追い出すことができたということ。

 食堂で真里亞が読み上げた手紙と本質は同じだよ。

 書斎の中にいる8人の中に手紙を書いたものがいる。

 島にいる18人の中に真里亞に手紙を渡した者がいる。

 どちらも内部に犯人がいると強く疑わせようとするものだ。

 戦人が言ったように、書斎の手紙によって一番利益を得るのは外部犯なんだよ」

 

 書斎に手紙を置くことができるのは書斎内部にいる者だけ。

 19人目からの手紙を書いたのは18人の中にいる。

 外部犯を疑うよりは死んだふりをしている人物がいる方が疑いやすい。

 ……全て外部犯よりも内部犯に疑いを向けるものばかりだ。

 安易に内部犯を疑わせるようにしているのであれば、チェス盤を引っ繰り返せば外部犯の犯行となる。

 道理ではあるのだろうが、決定的な証拠はない。

 ……いや、決定的な証拠はないからこその猫箱なのだが。

 

「話を戻して次の客間の事件について話そう。

 書斎を追い出された者たちが向かう先だけど、書斎の次に安心できる場所である客間に戻ることが期待できる」

「……なら、客間の中で隠れて待ち伏せることも可能だった、と」

「正解。真里亞はベアトリーチェは蝶になって扉を抜けてきたと証言したが、そんなわけがない。

 だけど真里亞には嘘を吐いた意識はないだろう。

 つまり人間が扉を開いて客間に入ってきていないことは事実。

 きっとベアトリーチェはいつの間にか客間の中にいたんだ。

 誰も扉から入ってくるところを見ていないから、真里亞は自分が信じるもので解釈したんだよ」

「きっとベアトリーチェは魔法で蝶になって扉をすり抜けてきたのだと?」

「その通り」

 

 真里亞は人間が犯人であるという決定的な証拠を見ない限り、魔女の言うことを信じるだろう。

 そして犯人は真里亞に壁に向かって歌うように命じて、どうやって殺害したかを見せなかった。




TIPS:魔女の使い魔

 魔女が入れない場所でも、使い魔なら入ることができる。
 そのため、魔女は自らの代わりに使い魔を派遣してメッセンジャーとすることがある。
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