Mirror of the golden witch 作:フラット・ホームズ
「第1のゲームはこんなところかな」
「いや、第一の晩の殺害方法についてはまだだろう?」
第1のゲームの一連の流れについては大体わかった。
だが最初の部分がまだ曖昧だったので聞いてみた。
「そういえば言ってなかったね。ごめんごめん」
「犯人は金蔵と暫定19人目。その2人では6人を同時に殺害するのは不可能じゃないか?」
「そうだね。真っ向からやれば誰かに逃げられてしまうだろう。……なら搦手で行けばいい」
「……搦手だと」
「例えば……睡眠薬とか」
「薬なら南條か?」
「いやいや。夏妃が睡眠薬を持っていたじゃないか」
「夏妃? ……夏妃の部屋の扉のイタズラか?」
「あのイタズラは部屋に入ろうとして入れなかったというアピールだ。
……チェス盤を引っ繰り返してみよう。
部屋の中に入れなかったと思わせることで得をするのは、部屋の中に入った者さ。
……これは第二の晩の魔法陣の時と似ているね」
確かに、気紛れにイタズラをしたというよりも合理的な理由付けだ。
そして、部屋に入って夏妃を殺害していないのであればそれ以外の理由が必要で、それが睡眠薬だと言われれば頷かざるをえない。
「夏妃の部屋にイタズラをするためには、部屋に入れなかった理由となるサソリのお守りがドアノブに掛けられている必要があるよな」
「うん。犯人はそれを期待していたはずだよ」
「つまり、真里亞が朱志香にサソリのお守りを渡すことを期待していた」
「真里亞がサソリのお守りを渡すのは偶然だったと思うけどね。
……ただし犯人はその偶然がありえると読んでいた。
その偶然が起こったかは金蔵が食族の使用人から報告を受ければ把握できる。
だから第1のゲームに分岐するフラグは、真里亞がサソリのお守りを朱志香に譲ったかどうかじゃないかと思うんだよ」
「…………夏妃が殺せなかったから紗音を殺害したのではないということか」
「たぶんそうだと思うよ。読み切った上で執筆しているはずだからね」
「では、どうやって睡眠薬を飲ませたんだ?」
「2通り考えられる。1つは金蔵が出張ってきて睡眠薬入りの飲み物を振舞った可能性。これだと飲み物を拒否することもできない」
「なるほど」
「もう1つは19人目が飲み物に睡眠薬を入れた可能性」
「未知の人物が飲み物に睡眠薬を入れられるのか?」
「紗音が郷田の代わりに屋敷の中を見回っている時に蝶を見ただろう?
黄金の蝶はベアトリーチェが出現する合図のようなもの」
「……つまり、紗音はベアトリーチェに出会った?」
「うん。19人目はベアトリーチェに扮装して紗音の前に現れた。
使用人たちはベアトリーチェを敬っているため、ある程度ベアトリーチェの命令を受けると思われる。
……これはエピソード2の情報だけど、紗音はベアトリーチェと会っていた。
そして魔法で恋を成就してもらった恩があった。
……例えば、譲治に指輪を送られたことを祝いに現れたとでも言って、次は親族を説得する必要があるだろうからこれを飲み物に入れるといい、とでも言って睡眠薬を入れた可能性がある」
確かに紗音の前であればベアトリーチェとして現れることができるだろう。
それに恋を応援するとでも言えば、何かのまじないとでも言って睡眠薬を飲み物に混ぜることは可能かもしれない。
「そして、飲み物を配膳する使用人が手伝ってもらえば、絵羽と秀吉の飲み物にまず睡眠薬を調節して入れ、2人が眠気を催しゲストハウスに追い払うことも可能だろう。
そしてその後、残った者に濃い目の睡眠薬を入れて眠らせれば、残るは紗音と郷田だけになる。
後は蔵臼たちが眠ってしまったので寝室に運ぶために郷田を呼んでくるように紗音に命じ、郷田と紗音が眠っている蔵臼たちを持ち上げようとしているところを背後からこっそり忍び寄って射殺すればいい」
不自然な部分はないように感じる。
絵羽と秀吉をゲストハウスに追い出すことまで説明できるという点で秀逸だ。
「眠っていれば、散弾を綺麗に頭部に命中させることができる。
起きて逃げまどっている複数人に対して、散弾で頭部だけめに命中させることはほぼ不可能だろうしね」
これでスイセンは一通りエピソード1をしたことになる。
TIPS:夏妃の部屋の扉へのイタズラ
夏妃の部屋の扉にされていた引っ搔いたような赤い塗料のイタズラ。
全ての描写に意味があるのであれば、当然これにも意味があるはずである。