・「わたし」に憧れていたが、早霜になって長くてきれいな髪を手に入れた「A」
が男(提督)関係でトラブって死別とかいう実質「こころ」が何故か出力されたので供養
私はハピエン厨なんです!信じてください!
――艦娘になる前は、長く美しい髪が密かに自慢だった。
親友のAも「 ちゃんみたいな綺麗な髪、憧れる」なんて。
そんなことない、と返したけれど内心ではそうだろうそうだろうと有頂天。
もっとも、そんなこと彼女にはお見通しだったみたいだけれど。
だから、そんな彼女が早霜に適性があるとわかったときの喜びようは、並々ならぬものがあった。
あれは私達が訓練校に入り、わたしのほうがすこしだけ先に艦娘となってしまった時分のこと。
艦娘型録を広げて写真を指さしながら「みて、この綺麗な髪!!」とたいしたはしゃぎようであった。
いつもの物静かな彼女とは大違いで、周囲の同期が驚いていたことが昨日の事のように思い出される。
あまりに浮かれすぎて、いつもの彼女なら決して言わない言葉が出てきたくらいだ。
「”昔の” ちゃんみたい!」だなんて……。
自分ではきちんと祝福できていたと思っていたけれど……。
「もう必要なくなってしまったから」とお気に入りだった簪を彼女にプレゼントしてからしばらくの間、彼女が妙に後ろめたそうな雰囲気だったので、きっとうまくいっていなかったのだろう。
◇ ◇ ◇
心の奥底にもやもやしたものを抱えつつも日々は過ぎ、訓練校を卒業した後も彼女との付き合いは続いた。
単に続くというより、より深くなっていった、というのが正確なところだろう。
同じ鎮守府に配属され、友人で同じ艦種ということもあって「あの日」まで僚艦で、訓練と出撃の連続だった。
Aと一緒ならどんな敵だって怖くなかった。彼女のためなら命だって賭けれる、そう思っていたのはきっと、私だけではない。
自分で言うのも何だが――わたしと彼女の連携はなかなかのものであり、厳しい教導で有名だった先任軽巡にお褒めの言葉をいただいたこともある。
性格から外見まで正反対だったが……なんというか、とにかくウマがあうのだ。
――とはいえ、男の趣味まで似るとは……。後々のことを思えば、まさに痛恨の極みというほかなかった。
「私、司令官のことが――」そんなふうに切り出されたのは、毎日のように出撃を繰り返し、幾度かの大規模作戦をともに乗り越えたある夏のおわり。
なんだそんなことか、とっくにしっていたよとからかってやれば、顔を真っ赤に染めて俯いてしまった。
わたしが協力してやる……彼を知り、己を知れば――なんていってあの人の周りをうろちょろしだしたのは、これがきっかけ。
◇ ◇ ◇
何時からあの人のことを明確に意識するようになったのかは、よく覚えていない。
なあに百戦錬磨だからまかせておけ、なんて彼女にうそぶいておいて、木乃伊とりが木乃伊になってしまったのだから、とんだお笑い草だ。
表向きは彼女に協力するふりをしてあの人の周りにいつつ、彼女との友情を言い訳に態度をはっきりするわけでもない、板挟みの自分に酔いつつ、ぬるま湯に何時までも浸っていたい、この時間がずっと続けばいいなどと
――あゝ当時のわたしはあまりに卑怯で愚かだったのだ。
転機が訪れたのは、彼女に改二改装の許可が降りた秋のこと。
「 ちゃんって、司令官のこと好きよね」
普段は伏せがちな彼女の目が、はっきりとわたしを見据えていた。
誤魔化そうとしたもののうまくいく筈もなく、煮えきらない態度のわたしに対してAも苛立ちを隠せない。そうこうするうち、お互い熱くなって……そうして、ふだんはいわないことをいってしまった。
こどもでもいわないようなことを。
こうして、わたしと彼女は最初で最後の大喧嘩をした。
一晩経てば頭も冷えてくるものだが、(こんなふうに言うのもおこがましいが)親友との初めての喧嘩に意固地になったわたしは彼女の差し伸べる手を振り払い続けた。
自慢の連携は見る影もなくなり、僚艦関係も解消することになった。
あの人は、こんな私にも我慢強く手を差し伸べてくれた。(私達艦娘の管理が業務なのだから当然なのだが)
そうしてこの稀代の卑怯者にして愚か者が、さんざん振り払った彼女の手を握り返すことを決意した時には、すべてが遅かったのだ。
以下に当時の第一艦隊から聞き取った内容を記す。
10月19日
改二改装の許可に伴う早霜の関連任務が発令され、第一艦隊に配備された彼女は沼南本土航路を北上。
深海棲艦潜水部隊や空襲をかいくぐり、水上艦と潜水艦の混成部隊を撃滅。
ついに台湾近海で「ヒ船団棲姫」率いる混成艦隊との戦闘に入った。
現場海域の天候は曇りであったが、台湾上空の悪天候により基地航空隊は出撃を断念。
対空・対潜・水上戦闘の3つを同時にこなさなければならない状態であった。
艦隊は梯形陣で敵艦隊との戦闘を企図したが、海が荒れていたため6番艦のAが落伍、空襲が集中した。
Aの最期 は
雷撃を回避した直後、深海戦爆複座鷹改の急降下爆撃により500ポンド爆弾が煙突に直撃、主機が爆発し炎上。
踊るようにもがいた後、海中に没した。
戦闘後付近を捜索するも、艤装の一部のみが回収された。
◇ ◇ ◇
あの戦争が終わり、あの人と一緒になって、もう〇〇年が経つ。
それでも脳裏から離れない……焼けた艤装の破片にこびりついた――黒いもの。
あれはきっと髪の毛なのだ。
艦娘となった私が失ってなお心のどこかで執着していたもの。
あるいは、彼女を焼き殺すことであらわになったわたしの醜いこころそのものにちがいない。
・「わたし」がどの艦娘なのかは特に決めていません。
・最初は早霜改二のグラからファサァってしてる髪の毛が特に印象に残り、片方が艦娘になって失ったものをもう片方が得る……これいいよな(ニチャア…だったのですが、ここで三角関係なったら「こころ」感あるよなと思ってたらこうなりました。いうほどこころじゃない気もしますが、最後「わたし」ちゃんも自殺すればこころになるんじゃねぇか?
・人間だったときと艦娘になったときで容姿の差異が発生しないといけないので、なんかこうデミサーヴァントというかオーバーソウル繰り返したら肉体も変異するみたいなふわっとした設定が生えました。でも艦娘サーヴァント説、クラス分けとか同じやつがいっぱいいる理由とか説明できて私はいいと思います。
・本来早霜改二任務だと旗艦指定なので轟沈することは絶対にないのですが、この話は沈んでもらう&お話の都合上6番艦にしました。