アリウスシロオオカミ 作:ふしあな
ん、5ヶ月ぶり
「“高級焼肉食べ放題!時間無制限パックを奢るよ!!”」
─────その瞬間、白狼シロの脳内に溢れ出した
先生とシロは対面の椅子に座り、焼肉を焼いていた。エデン条約の戦場の風景、そして襲いかかる【戒律の守護者たち】その全ての現状を置き去りにして2人は今も机に運ばれてきた肉を机の真ん中のロースターでトングを使い、焼いていた。
肉が香ばしく焼ける匂い、そして溢れる肉汁が肉を輝かせ、我々の口に入るその瞬間を待っているかのような光景に先生もシロも喉を鳴らす。だがこれでは肉の最も美味しい焼き加減では無い。そう五感全てで把握しているシロは先生をアイコンタクトで制止し、先にタレを先生の小皿に注ぐ。
「………………」
「“………………”」
そんなシロの行動に、先生も同じことをしようとしていたのだろう。レモンだれを手に取った先生はそのまま先にシロの小皿へと注ぐ。この互いの手を取り合いながら踊るようなダンスはまるでワルツのよう。
肉が焼けるその肉汁の音で踊る2人の無駄のない動きは、かの美食研究会が涙を流してこれこそ美食だと褒め称えるかのようなそんな2人のデュエットは焼けた肉に滴るほどのタレを付けて白米と共にかき込み口の中で溶ける肉と、白米と、タレの完璧に調和されたこの宇宙を頬張り、飲み込んだところだった。
「“シロはさ、トリニティでの生活は楽しくなかった?”」
先生は再度肉を焼くようにトングで取った肉は上カルビ。中々見ないほど厚切りのカルビを先生はそのまま網の上に転がし、シロへ言葉をかける。共にこうして席を囲み食事を取っている先生はシロが実は結構トリニティでの生活を楽しそうに、ミカと送っていた姿が脳裏に浮かぶほどであった。
「………ん。確かに悪くはなかった」
確かに、シロはミカによくして貰っていた。あの日サオリとアリウス自治区を共に巡回していたところで出会ったトリニティのお姫さま。“貴方たちと仲直りしに来たの”というあまりにも純真無垢なまでの言葉に、私もサオリも想像していなかったと思い出す。だがひとえにその純真さを裏切ってしまったのは私たちだということも理解している。
「………ねぇ。先生」
「“どうしたの?”」
シロの優れた嗅覚がちょうどよく焼けたであろう上カルビをひっくり返して焼いていく。パチパチと燃えるかのような火の音。きっと、この場所にサオリやミサキ、ヒヨリやアツコだけでなく……あの子も連れてきたかったと“本来ならアリウスとトリニティの架け橋となる筈だった子”を話題に出す。
「アズサは、どう?元気しているの?」
「“うん。補習授業部って言ってね周りと仲良くしてるよ”」
全ては虚しい。そう、アリウスの教えから唯一それでもと最初から言い続けた彼女。そんなアズサにシロは……期待、していたのだろうか。何か変わる、何か変えるというのならきっとこの少女なのだろうとシロは1人考えていたことがないかと言われるとウソになる。だからこそ余計トリニティでどんな事をしているのか気になった。
そんな心配そうにこちらを見るシロの視線にはいつか先生が感じた様な無機質さは薄れて、そこにはどこにでもいる責任感が大きな長女みたいな大人になりつつある少女がそこにはいた。この子の心には戦いだけではないキチンと大切なモノがあるのだろうと先生は確信した。
「そっか……あの子、少しばかりマイペースなところあるから」
「“あはは……”」
それ君が言っちゃうんだと先生は一瞬思ったが、それは抑えて。確かにアズサの戦い方にはアビドスのシロコの様な全身を使いながら動くゲリラだけでは無い動きが仕込まれていた。……今考えれば、きっとこの心配性なシロがトリニティへと向かうアズサに戦い方を教えたのだろう。
シロの顔を見る。肉を食い、穏やかな顔で咀嚼するその姿こそ本当のシロなのだと分かる。揺れる髪から密かに見える奇しくもシロコと対になるように付けられたその左耳のピアス。
「“ねぇ、シロ”」
「なに?」
おそらくこのある意味で無頓着なシロが自分で付けたとは思えない。おそらくアリウスの仲の良い子と一緒に付けたのだろうか。小さく首を傾げる姿も、どこかまだあどけないその顔は先生が最初にアビドスで出会った彼女、砂狼シロコとよく似ていて
「“君は、その道を選んで後悔は無いかい?”」
「……………」
シロコが言っていたアビドスで離れ離れになった片割れ。がシロなのだろう。
仲間意識が強く、強さと共に優しさもある生徒。そんなシロに惹かれて多くの子が君の周りにはいるのだと、虚しさだけではないこの世界を知っていると確信している先生は問う。
シロと一緒に甘いものを食べに行ったりする子がトリニティの中にだっているのだろう。……それでもシロはアリウスを取った。その選択が悪いとかではない。この選択がキチンとシロが納得して出した結論であるのかどうか。それだけが先生の心配している事だった。
「ねぇ、先生……白状するとね」
そんな先生の言葉にシロは重い口を開く。今まで一度も誰にも打ち明けたことのないシロの本当の想い。きっとスクワッドたちは受け入れてくれるだろうけどまだどこかシロには群れの仲間だからこそ言えなかった想いがここでは吐き出せる、“信じられる大人”がいると口にする。
「今まで私、アリウスにいて虚しいとか、全ては虚しい?とか教えられてきたけど…」
「“うん。昔の格言だね”」
アズサもよく言っていたvanitas vanitatum et omnia vanitas。その意味は全ては虚しいものだ。どこまで行こうとも虚しいだけという厭世的な価値観で語られるその言葉。……だが、ここで先生がよくよく考えてみれば、一つのことを思い出す。
そういえば、シロ。このvanitasを一度も口にしたことがないぞ?と
「………あれ実はよく分からないで口にしてたの」
「“………えぇ?そ、そうなの?”」
その瞬間、シロのまっすぐな眼差しと共に伝えられた衝撃的な一言。
まさかアリウスの猟犬と名高いシロこそがまさかアリウスの理念であるvanitasを理解していなかったなんてそりゃ誰にも言えないわと先生は納得すると同時に、それこそがシロの強さで、シロのあり方なのだと納得する。
「全然。別に虚しいとは特に思ってないし、できる事なら美味しいものをみんなで一緒に食べたい」
「でも信じてもらえるかわからないけど…そんなんでも本当に私」
そう。みんなで同じ食卓につき、美味しいものを美味しいねと言い合いながら食べるその夢想の時間こそがシロの幸せなのだ。つまりシロの楽園とは誰かと一緒に食べるご飯の時間であるといつかの夢の中で会った狐さんに言えば軽快に笑われた事をシロはふと思い出す。
「心の底からアリウスの仲間が大好きなの。それだけは事実なんだ」
「“そっか……そうなんだね”」
アツコと、サオリと、ミサキと、ヒヨリと、アズサと、アリウスのみんな。シロはどれほど劣悪な世界であろうとも、大好きなのだ。みんながいるアリウスが好きで好きで仕方ないのだ。
いつか先生に吼えた子がいた。“ここが私たちの居場所だから”と
あの子と同じ真っ直ぐな眼差し。守りたいもののためにどこまでも愚直な、その姿に先生はようやく白狼シロという生徒を色眼鏡なく、等身大のシロを認識する。
「“じゃあ早くみんなで焼肉行かないと、ね”」
「………ん!」
元々、この戦いは不毛である事。そしてシロの恩人であるマダムが混乱を起こすためだけに捨て石にされたのだとシロは類稀なる勘と感覚で言語化できずとも理解していた。
……正直にいうと群れを使い捨てるマダムのやり方には納得はしていない。
だが、少なくともシロにはまだマダムに恩義がある。それこそマダムがシロの特に大切なスクワッドたちを
「………白狼シロ。その名前を覚えて、負けてね」
「“ううん。シロ、私たちが勝つよ。だって”」
焼肉屋の席を立つ。デザートとは程遠い、この現状で先生もシロも満足だった。これより先は全て終わった後にシロはアリウスのみんなを連れて、先生はシロに会いたがってる子を連れて同じ食卓で美味しいものを食べようと握手した。
「“私の自慢の生徒だからね!”」
「………ん」
「……な、に?この……きおく……?」
「“く……っ!?”」
その瞬間だった。先生が訳のわからない焼肉食べ放題を叫んだ瞬間、目の前のアリウス生…いや、おそらく白狼シロが先生と共に頭を抱えて身体を捩っている。私たちの声も届かないみたいに数秒ほど身体を捩っていたその瞬間だった。
「ぅあ……せん、せい……!」
「“ぐっ……シロォ!”」
先生と、白狼シロの脳内に溢れた、
───────時は、春。
先生がシャーレの先生として着任して数日。キヴォトスでの生活にも少しづつ慣れてきたある日、気まぐれに歩いていたDU地区のある場所で先生はその生徒と出会った。
「“おや?君は……”」
「ん?………お菓子、食べる?」
町外れの公園。路地の裏の裏を抜けたその場所で、その生徒はひとりベンチに座りながら黄昏れるようにエンジェル24の袋からお菓子を食べていた。白色の髪に頭の上の狼耳のようなケモ耳の生徒。
キヴォトスの生徒では特に珍しく無いが先生が気になったのはその生徒の特徴ではなく、先生が目を通した中でどこの学園の制服とも合致しない服を着ている事だった。
「“じゃあ一個だけ貰おうかな”」
「カルパスでいい?」
だが先生の目から見てその少女はヘルメット団だとか不良たちの雰囲気でも無い。不思議な生徒だと、一口サイズのカルパスを食べているその少女から手渡されたお馴染みのカルパスを食べる。
この塩味と駄菓子でしか味わえないジャンクな旨味。普通の酒屋で買う様なカルパスも美味いと言えば美味いが、こういう駄菓子のカルパスはたまに食べるのが美味しいと思いながら一個食べ終えたらもう一個欲しくなってきた。駄菓子の魔力とはそれなのだ。
小ささ故の、もう一個食べたい……!という欲求。
「はい。カルパスは1個じゃ物足りない」
「“………!いいのかい?”」
が、そんな先生の思考を読んでいたとばかりにその子は指で器用に先生のところに投げる。確かに口寂しかったがその思考を読んだとばかりにタイミングぴったしなその子の共有。
だが先生は腐っても先生だ。流石にこれ以上貰うのは先生としてあまりよろしく無いとその子を見るが、既にその子の視界は目の前の誰もいない公園を眺めている。その子には一体何が見えているのか。だがわかることは邪魔してはならないということ。
そうして無言の中、その子が共有とばかりにくれた駄菓子を隣で一緒に食べること少し。太陽が丁度頭の真上に上がり、春にしては少し暑いなと感じ始めたその時だった。その子が立ったのは
「お昼ご飯食べよう」
「“そうだね。…どうだい奢るよ?”」
お腹が空いていたのだろう。側から聞いていても分かるぐらいその子のお腹が鳴っているのを先生は愛らしく思いながら、その子にひとつ提案をする。駄菓子といえど施しは施し。流石に返さないと仁義に反するとまあなんともナンパ臭い言葉でその子を誘う。
言ってみてなんだが。なんともナンパ臭い言葉だなと先生がその子の反応を見ていると、少し首を傾げた後に何かを納得したのか。なら一食だけと先生に乗った。さて、ここまで先生の舌を分かっているかのようなその子は一体昼に何を食べるのか気になった。
「………うどんかな。ざるうどんの大と付け合わせに豚天が食べたい気分」
「“………っ!”」
今先生は確信した。間違いなくこの少女とは舌が合うのだ。
今日のような少し暑いと感じるが上着を脱ぐような季節じゃない日は、冷たくて喉越しのいいうどんがマスト。しかもそこで選ぶのがざるの大という丁度程よく午後から眠くならない程度に腹が膨れる量…!
そして付け合わせに選ぶのが豚天というところが先生の神経を刺激する。
そう。そうなのだ…なんと言ってもうどんだけでは物足りない。ここでおにぎりを選んでしまったらそれはそれで炭水化物の取りすぎ…ということでやはり天ぷら、そしてしかも疲労回復効果のある豚天という悪魔的な采配。
「“いいね。あそこでいいかな?”」
「ん。そこがいい」
いつの間にか二人の間にあった心理的な壁はどこか遠くに消えて、まるで昔から馴染み深かったと言わんばかりに隣を歩いて行く。男女の関係では無い、そう。これはまるで親友のような歩み。
互いに名前も身分も名乗っていない。だがそれでも良いのでは無いかと思えてしまう絶妙な空気感。話のノリを無理矢理合わせないといけない雰囲気でもなく、ただありのままの気持ちのいい無言のまま店へと滑り込む。
「らっしゃい!」
「“ざる大ふたつで”」
手慣れたようにお盆に乗せて行く。うどんを取り、心なしか少し大きめの天ぷらを取ってお会計。先生が想像していたよりも安かったが、その領収書はシャーレ宛で切る事を先生は最近覚えた。
だがなんと言っても性格が別れるのはここから、だろう。
そうこの店には付け合わせとなる薬味が自分の手で入れられるのだ。さて、どう入れるかなと先生が薬味の…ネギのトングをとったその時だった。
「…………」
「“……!”」
まず出汁の中にすりごまを入れる。先生の手とその子の手がシンクロするかのように薬味が入っていた瓶を受け渡し、そして出汁から少し出てくるほどに二人とも葱を盛る。先生はそこで終わりだった。
だが、その子は違った。
更にその上に天かすを少し散らし、そしてそこに小匙いっぱい分の食べる辣油を入れた。いや、天かすは分からなくはない。ただ入れる量を間違えると汁を吸って逆に食べにくくなる。だが、辣油はうどんには合わぬだろう……?
「……ん」
そんな戦慄する先生の内心に気がついていないのかその子は先生に辣油の匙を渡す。店に置かれている以上大変なことにはならないとは思うが、先生としては入れても天かすまでだとその子よりも気持ち少なめの天かすを盛る。
(“まさか…信じて飛べ、と?”)
さながら先生の内心は今やロミオとジュリエット。今まで口が似ているその子を信じて飛ぶべきか。いや、もうこの時点で先生のご機嫌な昼ごはんのハードルは飛び越えている。だがここで更に飛ぶ事が出来れば満足感は倍だ。
逃げたらひとつ、進めばふたつ……そして、ん。奪えば全部。
なんか先生の脳裏でその子によく似ている生徒が目出し帽を被って目を輝かせながら笑ったような気がするが気のせいだと、先生は小さく首を振り選択する。
「“ありがとう”」
南無三。既にこの時点で先生の脳内にはあまりにも高くなりすぎたハードルをくぐるという選択も考えていた。その子を疑っているわけではないが、好物の中にも区分分けする物があると先生は大人であるが故によく知っていた。
「「“いただきます”」」
隣座りでカウンターに座る。2人とも手持ちは少ない。先生は護身用のシッテムの箱だけだし、その子は護身用の銃一丁だけなのが見える。あまりにも軽装だが、そういう物なのだとキヴォトスに来てからが短い先生はそう思ってしまった。
それでは、いざ実食。
最初にちょっと過剰気味に盛った葱を一口食べて。うん、美味しい。少し熱った身体を内側から冷やすように出汁の口になったところにちょうど溢れないギリギリを攻めたうどんを出汁の中にドボン。
(“………吉と出るか凶とでるか…いざ!”)
出汁は辣油が入っているおかげで少し赤みを帯びている。本当にこれで食べて良いのか、一瞬の覚悟。“私は先生だからね”、“(これを選んだ)責任は大人が取るからね”────────覚悟を決めて啜る。ただ啜る。無心にただ味を確かめる様に。
(“う、うまい……!”)
辣油の旨味と辛味が程よく出汁に溶け、ネギと絡み合い今うどんと共に口の中で抱擁を交わしている。良い塩梅で絡み合い、少し物足りなかった刺激がちょうど口の中を旨味と共に蹂躙するこの感覚は、今までのうどんでは味わえなかった新食感。
おおハレルヤ!今この時うどんの真理に辿り着いたのだ。美味さ極上、プラチナトロフィー……!
確かに、今ロミオとジュリエットは抱擁を交わしてダンスしたのだ。
「“なるほど、これは…素晴らしい組み合わせだね……”」
あまりにも天才的な組み合わせ。ただ舌が似ているだけではない。
中々素晴らしいと先生は同志を見つけた様にその子を見る。食べ方も綺麗でどこか芯が通っている。おそらく純粋に食べることが好きなのだろうと見ていて晴々しくそして微笑ましい気持ちになってくると先生もパクリ。
そうして舌鼓を打つ時間が過ぎて
「“そういや聞きそびれていたんだ”」
食べ終わり。お盆を返却台に返したあと、先生とその子は共に店を出た。今は昼過ぎ、まだ先生にも少しだけ時間に余裕がある。この名も知らぬ少女から名前を聞き出すぐらい余裕はある。
「“君の名は……?”」
「ん。私は────────」
2人ともほぼ同時に、いやもはやシンクロした様子でその手に収めていた武器を、タブレットを起動する。叫ぶ言葉はただひとつ。もはや
「「“戦闘、開始!!”」」
先生はシッテムの箱からこの場にいる正義実現委員会の子たちに、シロは連れてきていたアリウス生と聖徒会のミメシスに命令を下す。
互いに考えることはひとつ。
シロを、ツルギを消耗させ潰すことのみ。そこさえ潰してしまえば烏合の衆でしか無いのだと考えることは同じ。
『入力を確認、面制圧から範囲制圧モードへと移行。武装の封印を解除』
シロが引き抜いた銃に音にならぬ言葉を口ずさむ。ここから先はリソースの消耗戦。ここがフロントラインだと先生を守る、先生を人質にするとツルギもシロも銃をリロードした瞬間だった。
「「っ!!」」
鋭い金切り声と共に上から攻め込むのはツルギ。歩く戦略兵器と名高く、その威力を見せつけるかのようにシロを攻撃する。だがそんなツルギの消耗を見抜いているのか、シロはこれまた冷静に真正面から突っ込んで攻撃する。
「おかしい。気絶しててもおかしくない傷」
範囲制圧モードの攻撃は、炸裂弾である。
シロの攻撃の全てが間違いなくツルギの傷に当たって大ダメージを与え続けているというのに、一度も攻撃を緩めることがないツルギにシロが小さく首を傾げる。
「きひゃ!!………逆に、この程度でお前は止まるのか?」
「たしかに、納得した」
A.止まらない。攻撃こそ最大の防御という思考においては似通っている2人にとって、ダメージを受けたところで止まらない。いや、自分が落ちるよりも先に相手を落とせば勝ちというがんがん行こうぜ!タイプである2人の戦場は次第に血に汚れ始める。
銃身と銃身が何度も甲高い音を立てながらぶつかり合い、まるで踊るかのように2人は戦闘を続ける。土煙と火の手が上がるこの神聖な聖堂跡で踊る白と黒の舞踊の如き有り様は見ている人に皮肉にも美しさを感じさせる。
(……このまま消耗させ続けて、落とす!だけど)
少なからず神秘にさえも衝撃を与える巡航ミサイルの直撃を喰らって尚、ツルギに決定打を与えきれないシロの衝撃は少なくない。幾ら特別製の銃だとは言えここまで耐久力の高い相手だと焼石に水をやっている気分だと、シロは歯噛みする。
(マズいな……傷が今頃になって痛む)
だがシロが歯噛みをする様に、ツルギも奥歯が砕けるぐらい噛み締めながらシロの猛攻を防ぐ。軽々しく受け止めていると見られたミサイルの一撃は表情には出さずとも、確かにツルギに大ダメージを与えている。
(ん、時間は相手に、有利になる……!)
時間が経てば経つほど援軍は現れる。いくらヒヨリたちがヒナたちを抑えているとはいえ、実力を見れば長い間この手負いの獣を相手にしている時間はない。決めるべきは速攻。
(ここを凌げば、立て直せるだろう……!)
それはツルギにとっても同じだ。時間が経てば経つほど援軍が現れて、先生を守る戦力が増える。この場には同じくゲヘナの最高戦力である風紀委員長空崎ヒナがいる。だが、相手は間違いなく遅延戦術を食い破ってくるという自信があった。
((面倒だ/くさいな……!))
考える事は同じ。地力ではツルギの方が上。だがミサイルの直撃というダメージが重なり優位はシロの方に向いている。ならばもうここから押し切るだけだとシロは神秘を銃に込める。
「………神明、開闢」
シロの言葉に反応する様に持っていたシロの愛銃、その名も《リコポリス》が灰色の光と機械の駆動音のような唸りを上げて輝く。瞬間、シロの銃の先からまるで花開く様に裂け光をそのまま物質化させたかのような光の鏃が銃の先端に装填される。
「我が眼前に在し、全ての障壁よ」
白狼シロの神秘が顕現する。
その役は“道を切り開く者”。紡がれた言の葉は“死と戦争”。そしてそのアトリビュートは“メイスや弓”。例え、白狼シロという存在が自覚していなくとも、その身に刻まれた神秘は彼女の意思に呼応する様にひとつの矢を生成する。
「悉く、打ち砕かれろ」
シロの愛銃を突き破って光の矢が生成される。パチリ…パチリ…と火花を上げて、顕れるその矢はトリニティ最強を、剣先ツルギを緊張させる。
それもそうだろう。今シロが手にしている矢は必中必滅の矢。あらゆる障害を…即ち、この場にいる最も障害となる存在から“未来を切り開く”矢。神よりも強力な鋭い矢と呼ばれたその神秘が今ここで白狼シロの勝利という未来を切り拓いた。
「……………!!!」
言霊と共に放たれた一撃は何よりも鮮烈で、そして戦いの幕引きにとって最も相応しい一撃。必ず“障害に必中する”という概念まで帯びたその一撃を回避という生易しい言葉では防ぐ事はできない。
剣先ツルギの身体をその矢が貫く。誰も彼もがその悲劇的な結末に目を覆うが一瞬の光ののちに、そこにあったのは気絶していた剣先ツルギの姿とボロボロになりながらもまだまだ戦えると言わんばかりの白狼シロだった。
「ん、先生との約束があるから……これぐらいにしとくね」
勝敗は決まった。勝ったのは…白狼シロだ。
ちなみにこれは余談だがシロの矢は、必中がウリではない。
“この世界では”誰も、シロ自身でもそれに気がつく事は無かったが……近しい将来、その矢の真価と相見える事になるとは今この場の誰も知らない話だった。
トリニティ最強は今破られた。つまりは自分こそが最強だと、
だがそんなシロの慢心を打ち砕く様に、白い影がシロを強襲する。
「遊びすぎよ。シロ」
「……!」
瓦礫の合間を飛ぶ黒い翼の影。だがただの影ではない、その影はアリウス兵たちが触れるよりも先に倒していく強者の影にシロの顔色が変わる。まるで深夜起きてゲームしているところを見られた子供の如く、シロの顔色が青く染まる。
身体に四箇所の風穴。巡航ミサイルの一撃が空崎ヒナの身体を傷つけ、額から今も血を流しながらそれでも戦意は衰えていなかった。
「おしおきが必要かしら?」
「…………カヒュッ」
◇シロ、絶体絶命─────!
種族名:アリウスセンセイノアイボウシロイヌ
出現地域:D.U地区
性格:陽気、食いしん坊、美食家
所持武器:ゲマトリア製作 神秘装填式自動変形銃《リコポリス》
アリウスシティにて みつかった シロオオカミのフォルムチェンジと考える
今まで では発見されなかった地区で 見つかったからかその性格は非常に穏やか
食べ物を分けてくれたり 一緒に食べると とても喜んでる姿が確認できる
先生「シロ。どうやら私たちは超親友のようだね」
ミサキ「何を言ってるこのバカは?」
サオリ「何を言ってるこのバカは?」
ヒヨリ「何を言ってるこのバカは?」
シロ「ん……先生のお金で焼肉いく」
ヒナ「どーも、シロ=サン。風紀委員長です。」
〜余談・存在しない記憶二連続の反応〜
画面の向こうの先生「えっ、なにっ!ねーなんなのこれ!」
画面の向こう(ry「存在しない記憶の前に…存在しない記憶が現れたぁ!」
画面の(ry「全てはまやかしだ」
がめ(ry「そうはならんやろ」
感想はとても良い文明
いっぱいもらえるとうれしい文明