狂った世界よこんにちは。今日も今日とて狂気のブラックスケジュールを死に物狂いで消化しています、社畜もといニッヒちゃんでございます。
言わずもがな我が労働環境は生まれた時からずっと過酷極まってたけど、当主代行代行に任じられて以降は危険な領域に突入しつつある。正直、時を止める能力を持たない私には過分なタスク量である。
故に十六夜咲夜さんの偉大さが身に染みるんですよね。私が過労で爆散する前に紅魔館に来てくれると非常に助かるんだけどなぁ。無理かなぁ。
ちなみに私の一日の内訳は訓練訓練訓練訓練訓練世話世話世話世話教育教育教育教育死刑死刑死刑死刑死刑ぐらいの割合になると思う。助けて……助けてクレメンス……。
さてここからが本題。
私の聞くも涙語るも涙な現状はこの通りだが、私は普通に優秀なので何とか元気にやれている。しかしここ最近は何故かお世話をされている筈のマイロードとレミリア閣下の方が疲れている気がするんだよね。これ如何に。
今だってそう。日課である魔力の放出訓練中も、何度も目を擦っては眠たげな様子で頭を左右に小さく揺らしている。こういう仕草はホント子供みたいだよね。
「あのー、マイロード?」
「……なに」
「差し出がましい事を承知でお聞きしたいんですけど、もしや寝不足でいらっしゃる?」
「んな訳ないでしょ殺すよ」
当然素直じゃないマイロードは私の献身的な問いを脅迫とともに突っぱねる。ついでに嫌がらせのように魔力の放出量を引き上げられたので慌てて拮抗させた。一々爆散してたらお世話に支障が出るからね、頑張らないと。
さてさて、口ではああ言っているが相当眠気が溜まっている様子。ここは素直に眠ってもらった方がマイロードの体調的にも、私の精神衛生的にも良さそうだ。
そこで賢将ニッヒちゃんは一計を案じる事にした。
「ところで世間話なんですけど、美鈴さんが帰ってきたらしいですよ。なんでもマイロードに吹っ飛ばされた後、川に墜落して地中海まで流された挙句に
「美鈴? ……ああ、あの中国っぽい門番か。アイツまだ帰ってきてなかったの」
「姉君からの又聞きですけど、相当苦労したみたいですよ。そこで何か労いの言葉とか……」
「もっと精進しろって言っといて」
「鬼ですか!?」
「違う。私は悪魔よ」
伝説の超サイヤ人みたいな思考のもと生きているマイロードにそんな気遣いは無理だったか。なら私から美鈴さんに会いに行くしかないんだけど、まあ私にだって色々と気まずい気持ちはあるのだ。下手人はマイロードだけど発端となる原因を作ったのは私だから。
見舞いの菓子折りでも包んで謝りに行こうね。
「ほら、つい先日姉君が家来を引き連れて外征に出たじゃないですか。どうやら美鈴さんが帰ってきたのを見計らっての決断だったみたいですよ。それだけ紅魔館にとって重宝されてる人って事なんですね」
「当主代行のお前が無能であまり信用されてないってだけの話じゃないの?」
「もっと精進します」
それはその通りだと思うので素直に肯定しておく事にした。まあ引き篭もりで穀潰しのマイロードにだけは言われたくないって気持ちはあるけど、そこはグッと我慢。従者には正論を心の中にしまい込んでおく奥ゆかしさが必要になる時があるのだ。ふふん。
「……はぁ」
「あら、どうされましたか穀潰、マイロード」
「お前と話してると疲れるわ」
「それは大変! どうぞお休みくださいませ」
「……分かった。寝る」
計画通りだ。マイロードは自分にとって興味のない話題を振られると集中力が途切れる傾向がある。それを利用して眠気を誘ったのだ。美鈴さんには悪いけども。
私とマイロードを繋ぐ魔力の花火が立ち消えた事で今日の訓練は終了となった。
その後は船を漕いでいるマイロードを寝巻きに着替えさせて、棺桶までお姫様抱っこで連れて行く。前に俵担ぎしたら消し炭にされたので以降はずっとこの運び方だ。ベビーシッターも楽ではないのである。
「ではおやすみなさいマイロード。私は上で姉君から頼まれたお仕事を片付けちゃいます」
「いつ戻る?」
「ええっと、今が夕暮れ手前なので……夜明けまでには戻ろうかと」
「ん」
「あ、おやすみのチューとかいります?」
「しね」
これにて封印完了。棺桶の蓋を閉めると同時に、背中と羽をググッと伸ばした。今日の山場となる仕事はこれで終わり。正直マイロードのお世話が一番大変だ。
でも多分ね、眠ってるマイロードが世界で一番可愛いと思うんだよね。無害だし。
続いて地下室の掃除をしっかり済ませ、マイロードが起床した時のためにデザートを作り置きしておく。美鈴さんに渡す分も合わせてちょうどいい。
これでニッヒちゃんの仕事は終了。
さてここからはマイロード専属従者のニッヒではなく、フランドール・スカーレットの影として活動する事になる。分身としての役目を果たすのだ。
先述した通り、現在レミリア閣下は紅魔館を離れている。つまり紅魔館運営における大体の裁量は私に委ねられているのだ。マイロードのサンドバッグからとんでもない大出世。
とはいえ最低限の従者を残してみんな出払ってるし、レミリア閣下が出征前に大体の引き継ぎを済ませてくれてるので重大なインシデントが起こることはないと思う。それこそマイロードの機嫌を損ねなければ大丈夫。
なので責任はあるものの結構気楽な仕事である。むしろ普段の方がレミリア閣下がどんどん仕事を回してくるし、従者の人達との接し方に気を使わなきゃいけないしで大変なまであるね。
基本怖がられてるんだよね、私って。「おはよー」ってにこやかに挨拶しただけで泣き叫んで命乞いされた時はもうどうしようかと。これがマイロードパゥワー。
……なお、ちょっと良い気分になったのは内緒。腐っても妖怪としての性分なのか、相手に怖がってもらえると嬉しいのだ。
「ありゃ、ここの日付間違えてる。レミリア閣下にしては珍しいや」
書類の確認を進めていると幾つかのミスを発見した。それに最初は立派だった筆跡も後半にはふにゃふにゃになっており、随所から疲れが滲み出ている気がする。
こんな状態で戦いに出掛けても大丈夫だったのかな。本人は徹夜のテンションで「絶やしちゃうぞー!」なんて息巻いてたけど、ちょっぴり心配だ。
もっともマイロードに外出を禁じられている私に出来ることなんて何もないから、こうしてコツコツと与えられた役割を全うするしかないんだけども。
取り敢えずミスの箇所を後で訂正しやすいよう、注意書きと一緒に仕分けしておこうかな。全部やろうとしたら結構な量になりそうだけど、不眠不休で働ける私が無理した方が紅魔館にとってはプラスだからね。
レミリア閣下のスペルを差し置いて『不夜城レッド』と呼ばれるのも時間の問題か。
咲夜さん、早く来てクレメンス。
◆
という訳で、身も心も社畜色に染まってしまう未来が急に恐ろしくなってきたので、ちょっと気分転換がてらサボる事にした。定期的に自由を噛み締める事で自分を見失わないようにするのだ。
今はともかく、幻想郷に辿り着いた後も社畜だの引き篭もりだのなんてやってられないもんね。私はマイロードと一緒に幻想郷ライフを楽しむんだから。
そして私は知っている。紅魔館には社畜と自由人、二つを両立させる世渡り上手の達人がいる事を。サボり魔とは紅美鈴のことを言うのだ。彼女の生き様こそ私にとっての憧れそのものと言えるのかもしれない。
なので交流を通して彼女から色々と学ばせてもらおう、という言い訳。
美鈴さんは私にとっての数少ない癒しだからね。小動物と戯れることで得られるヒーリング効果のようなものが期待できるのだ。ホスト感覚とかそういうのでは断じてない。多分。
取り敢えず前回の散々な顛末に対するケアとして、菓子を貢ぎつつ真摯な謝罪でこれまでと同じ関係を続けてほしいと乞い願ってみよう。なんか絵面がとんでもない事になりそうな気がしなくもないが、美鈴さんとの仲を修復する方が大切だよね。
そんな事を考えながらエントランスを抜けて、玄関のドアに手を掛ける。もちろん愛用の紫傘をあらかじめ開いて日光のケアも忘れない。
で、開けたら目の前に笑顔の美鈴さんがいるんですよね。しかも顔半分が包帯でぐるぐる巻き。
「うわっ美鈴!? びっくりした!」
「扉の向こうから妹様の気配がしたのでお出迎えしようと思ったんですが……驚かせてしまいましたか。申し訳ございません」
「ううん大丈夫。気にしないで」
私って美鈴さんと出会うたびにびっくりしてるような気がする。なんだか凄く意識してる自意識過剰女みたいに思われそうだから気を付けないと。いや変に意識してるのは確かなんだけども。
というか私のことを『妹様』って呼んだということは、まだ偽物だと気付かれていないのかな? 相変わらず私の胸をチラチラ見てるし。
私とマイロードが一緒にいるところをしっかり見られてたからネタバレしてる前提で会話を考えてたんだけども、殴られた衝撃で記憶が飛んじゃったんだろうか。私も頭を吹っ飛ばされると記憶が一部消えちゃうことがあるからね、仲間仲間。
ひとまず美鈴さんの前ではまだ『フランちゃん』のままでいっか。
「それにしても久しぶりだね美鈴。レミリアお姉様と殺り合ったあの日以来だよね」
「ご無沙汰しております。いやぁ妹様からの重い一撃を食らった後、それはもう色々ありまして」
「その、ごめんね? 穏便に済ませたかったんだけど、ちょっと手心ができなかったというか、アレは私であって私でないというか……」
「いえいえ滅相もない。全ては私如きが妹様を止められるなどと判断した驕りが生んだ結果です。むしろ私としては妹様とレミリアお嬢様が双方無事で安心いたしました」
「ホント? ホントに怒ってない? なんか身体が小刻みに震えてるけど」
「ふふ、この震えは怒りでも武者震いでもございません。恐怖と疲労によるものですので大丈夫ですよ」
全然大丈夫じゃなかった。「別に何も気にしてませんよー」って感じの平気そうな顔してるけど、本当は結構堪えてたんだ!
こんな生まれたての子鹿みたいに足腰ガクガクさせてる美鈴さんなんて見とうなかった!
でもまあマイロードは強烈だからね。その気持ちも分かるってばよ……。
「これ、お詫びにって訳じゃないけど……」
「冷たい珈琲の上にクリームが乗ってて、とても美味しそうですね! これもプリンみたく妹様が独自に作られたのですか?」
「元々はそうだったんだけど、実はそれにお姉様が更にアレンジを考案してくれたから実際に作ってみたの! 名付けて『レミペチーノ』」
「そ、そうだったんですか」
まあ隠し味に少量の血液が含まれている妖怪用ってこと以外は殆どフラペチーノなんだけどね。
レミリア閣下直々のアイディアで新たに開発、というていで誕生したインチキドリンク。正式名称はレミリアブレンドフラペチーノになるのかな。略してレミペチ。
名付けが空振って少し可哀想な事になっていたレミリア閣下のメンツを救うべく生まれた悲しきドリンクである。美味しいらしいけど。
「どうかな、飲める? おいしい?」
「ええ、大変美味でございます。実は私の故郷には冷たい物を食べたり飲んだりする習慣があまり無いものでして、それも合わせて未知の感触を楽しむことができました!」
「……ごめん忘れてた」
「え?」
そういえば中国には冷たい料理を避ける伝統があるんだった。知識はあったのにすっかり失念していた。完全なるミスチョイスである。私のおバカ!
美鈴さん曰く「故郷を離れて久しいのであまり気にならない」とのことで美味しそうにレミペチを飲んでくれてるけど、結局彼女の優しさに甘えてしまったことに変わりはない。そう、仮に相手がマイロードだったらとんでもないことになっていただろう。恐らく足の三本や四本は覚悟しなければなるまい。
「妹様ったら、今日は謝ってばかりですね。らしくないと思いますよ」
「そうかな? そうかも?」
「ええ。いつもみたいに楽しそうに色々な事を話してくれる妹様の方が私は好きですから」
あっ好き。
「負い目なんて何も感じなくて良いのですよ」
「うーん……でもなぁ」
「でしたらこうしませんか? 互いに一つずつ相手のお願いを聞くんです。それで今までのアレコレは全部チャラという事で。ほら私も妹様から沢山の物をいただいてきたので、その分のお返しをしたいですし」
「あっ、それいいかも!」
マイロードからも指摘された事だが、どうも私は美鈴さんに対して一方通行過ぎるんじゃないかと。言われてみればなるほど確かに、側からは結構面倒臭くて重い女に見えてしまうかもしれないと思った。マイロードのくせに的確である。
故にこういうギブアンドテイクな展開は大歓迎。美鈴さんとは健全な
「じゃあフランからは、瞑想補助の続きをお願いしよっかな! ホントはもっと早くにお願いしたかったんだけど、ほら色々あってできなかったから」
「そうですね。本当に色々ありましたね」
遠い目をしながらそんな事を言う美鈴さん。哀愁が漂っている。マイロードから謂れのない暴行を二回も受けているからね、面構えが違う。
前回の瞑想からそれなりに時間が経ってしまったが、そろそろ再開しても良い頃合いだろう。
私の目的はただ一つ。瞑想の謎効果で更なるナイスバディを獲得し、悔しがるマイロードにマウントを取りまくるのだ!
というか私がマイロードに勝てるのはおっぱいと器の大きさだけだからね。主人の持ち得ない部分をさらに伸ばしていこうという方針である。
「妹様。それは狡いですよ」
「ほえ?」
「瞑想の継続は既に命令した内容ではございませんか。同じものを願ってお茶を濁すのは感心しません」
「そ、そっか」
「それに前回も申しましたが、瞑想の継続は妹様の成育にあまり良くないと思います。命令とあらば遂行いたしますが、私自身としてはやや反対です」
「初耳だぁ」
「胸なんて寝てれば勝手に大きくなるんですから、心配しなくても大丈夫ですよ!」
「それは私も思うけど……」
存在しない一幕が勝手に生えてきた。もしかするとマイロードと話した時の事を言ってるのかもしれないけど、それはそれでとんでもない内容である。
なんとなくだけどマイロードがあの日キレ散らかしてた理由が分かった気がする……。
「そ、それじゃあ他のお願いにするね。そうだなー」
「はい」
「そうだ、これからは妹様って呼ぶの禁止! ちゃんと名前で呼ぶこと!」
「と仰いますと……以後フランドール様とお呼びすればよろしいのですか?」
「フランでいーよ!」
「ではそのようにいたしますね」
実に『フランちゃん』らしいお願いができたんじゃないかと私は大満足である。それにマイロード的にも妹様って呼ばれ方はあんまり好きじゃないだろうし丁度いいね。
「では次は私の番ですね」
「うん! なんでもこいだよー!」
「でしたら一つ、悩みがありまして……」
◆
「じゃーね美鈴! お仕事がんばって!」
「フラン様もあまり無理をなさりませんように」
瞑想を終え、紫傘を振り回しながら意気揚々と執務室に戻っていったフランドールを見送ると、美鈴は心意気新たに門番業務へと戻った。鬱屈とした気分を振り払い、紅魔館の門番たる者心晴れやかに在るべきだと独り唱える。
美鈴の悩みなどレミリアやフランドールから見れば酷く矮小で理解に苦しむ内容だろう。そして何よりも自業自得に他ならない。
簡単な話、フランドールへの二度の敗北を通じて力不足を痛感したのである。
そう思うなら気が済むまで勝手に鍛えていればいいだろうとレミリアなら言うかもしれない。今日の優しいフランドールではなく修羅としての一面が肥大化したあのフランドールなら「甘ったれるな」の一言で終いか。
あの二人は自分に雑魚散らし以上の役割を求めていないのだから、当然の言葉だろう。
だが美鈴は武人だ。己の生が続く限り上を目指し続けるのが道理であり、遥か高みを見せつけられたのならそれに強く惹かれるのは当然の話である。
特にフランドールが魅せた、質量を伴った残像が繰り出した虚構の拳。アレには脳を灼かれてしまった。まるでフランドールが二人いるかのように思えるほど鮮明なヴィジョンだった。まさに至高の領域、その一端。
そして紅魔館へと戻る旅の道すがら、自らを一から見直し数百年伸び悩んでいる現状を改めて憂いた。どうすれば自分はもう一段高みに至ることができるだろうかと。
眠っている間も夢の中で武に思い馳せる美鈴ですら辿り着けない境地に足を踏み入れる方法。恐らく、美鈴一人では思い付けない発想が必要になる。
ならばフランドールに聞いてみるのが手っ取り早い。自分より遥か歳若くしてかの領域に至った才覚、その知見。万金に値する。
武術への造詣は浅いようであったが、所謂天才肌なのだろう。経験なくしてあの強さ、という事になる。そんな彼女が見ている世界に興味が湧かないわけがない。
(やはり妹様は凄い方だ。あれだけの暴力性と冷酷さを胸の内に秘めておきながら、奇想天外かつユーモアに溢れた思考を両立させている。あの矛盾にも思える両極端な在り方が、彼女の強さの秘訣なのか……?)
フランドールの着想はぶっ飛んでいた。
美鈴の悩みを聞くや否や、自分ですら思い付かなかった気の扱い方における応用法を間髪を容れずに次々と提案してきたのだ。実現可能かどうかは別として、新たな視点を切り開くのに十分な手助けとなった。
『そうだなぁ。世界中のみんなの元気を自分に集めて敵にぶつける必殺技なんていいんじゃない? 美鈴って人望があるからみんな力を貸してくれるよ、多分』
『弾幕はパワーだぜ美鈴! とにかく高火力のレーザーを両手で打ち出すの! 名前は勿論マスタースパーク! いや絵面的にはかめはめ波……?』
『自爆とか興味ある?』
一部不可解なワードも含まれてはいたものの、フランドール相手では今更な話である。
ただ幾つかのアイデアは明らかに生身の美鈴には過ぎたる空想であり、アドバイスの果てに邪王炎殺黒龍波なる技を勧められた時は流石にどうかと思った。美鈴にとって腕が使えなくなるのは致命傷である。ああいうのは吸血鬼向けの技だ。
(取り敢えずは実戦で使えるかどうか試してみない事には始まらないな。うん、次の相手を実験台にして試行錯誤してみようか)
動機はどうであれ、美鈴には珍しく門番としてのモチベーションが高まった瞬間である。そんな調子でレミペチーノを飲みながら哀れな挑戦者を待ち受けること数分、目当ての気配を感じ取った。
いつもなら数で押し潰さんと波のように押し寄せてくるのだが、今回は珍しく二人組。余程腕に自信があるのかと思えば、風貌も細身で大した事なさそうに見える。
拍子抜け。
しかし美鈴は油断なく構える。門番としての責務を全うする間は、如何なる相手に対しても手加減は無用である。全力で摘み取り、糧とさせてもらう。
猛々しく燃え盛る闘志を胸に、いざ叫ぶ。
「性懲りも無く紅魔館に挑む無謀な挑戦者よ。この門をそう容易く超えられると思うな。我が名は紅美鈴! さあ、いざ尋常に勝──!」
「ぶ」は出なかった。
美鈴は横殴りの魔力に飲まれ、紅魔館を囲う城壁と共に為す術なく吹っ飛んだ。
「あらら……容赦ないですねぇ。門番の人が何やら格好良い事を言ってましたよ?」
「いちいち下っ端の言うことにまで耳を傾ける暇なんかないわ。時間の無駄」
「まあ私も興味ないですけどー」
「つまらない事言ってないで、早く案内しなさい」
「はーい」
西方の魔女パチュリー・ノーレッジ、襲来す。
なお『おっぱいは寝てれば勝手に育つ論』は持つ者の余裕であるものとする。