フランドールは彼女なのか?   作:とるびす

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RPGでいうところの最後のセーブポイント


熱戦・烈戦・超鈴仙!

 

 

「予備のウサ耳を用意しておいて正解でしたね。備えあれば憂いなしとは正にこの事ですよ!」

「こういう形で使う事になるのは想定外だったけど」

「うふふ。みなさんきっと咲夜ちゃんにビックリしますよね。反応が楽しみです!」

 

 見事目的を果たした私達スカーレット盗賊団は、通ってきた穴を逆走して八意研究所を脱出。月の都を素知らぬ顔で練り歩きマイロード達の待つ海岸を目指していた。

 ついでに、恐らく十六夜咲夜育児ノートとなるであろうレポートの回収も果たしている。

 

 見た目殆ど月人な咲夜さん、もとい咲夜ちゃんを玉兎に扮した私が抱えてると不審に思われるのは当然のことであろう。ついでに真っ裸だしね。

 なので私達と同じく、捕虜さんから剥ぎ取ったブレザーバニーセットで玉兎に変装してもらった。これで即御用は避けられるだろう。

 

 とは言っても、行きは沢山の通行人で溢れていた大路地だが、今は人も疎らで時折焦った様子の玉兎兵さんとすれ違うだけとなっている。私達には見向きもしない。

 楽に越したことはないが、やはり不自然。月の都に大きな変化が生じているのは間違いない。

 

 まあ私とレミリア閣下はその原因を把握している。というより、観測してるんだけどね。

 

 

「うわっ、また大きな揺れ! マイロードったらクッソ張り切ってますよこれ!」

「ええ。現場がどうなっているのかは、正直あまり想像したくないわね……」

「はぁ……どうやって宥めようかなぁ。今から気分がひどーく憂鬱です」

 

 海岸方面から飛んでくる悍ましい気配と魔力。遠方からでも響き渡るクソデカ爆発音。天体そのものが震えているような地響き。いざ状況を羅列すると殆どドラゴンボールだね。それもサイヤ人編。

 

 この時点でマイロードの殺戮ショーの絶賛開催中は決定的なんだよね。その相手は恐らく月の軍勢だと思われるが、万が一身内に対してあれだけの殺気を放っているのなら詰みである。

 

 

「取り敢えず後は撤退するだけだから、陣地に着いたら貴女はすぐにゲートを開きなさい。私は分身と合体した後、美鈴と一緒に頑張ってフランをゲートに引き摺り込む」

「決死隊ですね……」

「その代わり、後は任せるわ」

「うぅ、骨は拾ってクレメンス……」

 

 ちなみにパチュリーさんと小悪魔後輩だけ楽するのは癪なので、どうしようもなくなったら二人に諸々押し付けてしまおう。等しくみんなで苦しもうね。

 

 そんなこんなで、月人と戦争しに来た筈なのに、いつの間にやらマイロード対策に頭を悩ませる羽目になる私とレミリア閣下なのであった。

 

 

 ……。

 

 …………。

 

 

 不意に脳髄を不快がのたうつ感覚。

 

 初めてではない。パチュリーさんの『ロイヤルフレア』からマイロードを庇った時と全く同じだ。

 

 急に立ち止まった私を不審に思ったのだろう、レミリア閣下は怪訝な顔をして振り返る。

 

 

「どうしたのニッヒ」

「なにか嫌な感じがしませんか? 何というか、この場から動きたくありません」

「……なるほど。貴女がそこまで言うという事は、きっと何か良からぬ──」

 

 言い切る直前だった。頭の中の不快感が一気に増大し、それに呼応してシャベルを持つ私の腕が反射的に跳ね上がる。私の意思は介在していないように思えた。

 

 と、鉄と鉄がかち合うような音とともにシャベルに凄まじい衝撃が迸り、私は蹈鞴を踏んで仰け反った。眼前には驚愕に彩られたレミリア閣下の顔。

 シャベルを見遣れば、底の方に僅かな凹みが生じていた。何かが超高速で飛来し、衝突した証である。言わずもがな、銃撃の跡であった。

 

 仮に私がシャベルを掲げていなければ、レミリア閣下を撃ち抜いていただろう。戦闘力を失っている状態では些細な攻撃が致命傷に繋がる。良かった、守れた。

 ニッヒちゃん渾身のファインプレー! 

 

 

「レミリア閣下、私の後ろへ。あと咲夜ちゃんをお願いできると助かります」

「ふん、私の命を狙った凶弾か。アサシンのつもりかは知らんが暗殺とは、酷く舐められたものね。──長くは保たないわ。さっさとやっつけてしまいなさい」

「お茶の子さいさいでございます!」

 

 咲夜ちゃんの重みに潰されそうになりながらも気丈に言葉を掛けてくれたレミリア閣下に後押しされ、ニッヒちゃんの戦闘テンションは爆上がり。シャベルをバトンのようにぐるぐる回して意欲十分である事を敵へと伝える。

 

 取り敢えず弾丸が飛んできた方向一帯を吹っ飛ばしてやろうかと『スターボウサイクロン』の準備に入らんとした、まさにその時。バレているなら隠れる意味は無いと判断したのか、下手人が少し離れた場所に降り立つ。

 

 わざわざ姿を晒してくれるとは、よほど自分の力に自信があるのだろうか。

 

 

「なーんだ、よく見たら兎ですらないじゃん。お前達が依姫様の言っていた地上の下賎な妖怪か」

「あらら完璧な変装だと思ったのに。後学の為に教えて欲しいんですけど、なんで分かったの?」

 

 下手人──玉兎は、そんなことも分からないのか言いたげに肩を竦める。なんだか動作が一々鼻につく人だなって思ったね。思いっきり侮蔑の目を向けてきてるし。

 

 

「私達は独自の波長でやり取りをしているのさ。でもアンタらは私の通信をガン無視するどころか気付いてすらいなかった。バレバレなのよ」

「ふーん。でもその割には随分と簡単に侵入させてもらえたけどねー。今はやる事やってその帰りだし。……もしかしてサボってたり?」

「ここでお前達を倒せば全て無問題よ!」

 

 あっ、開き直った。

 

 というかこの子って優曇華さんだよね多分。正直玉兎は殆ど見分けがつかないんだけど、あの薄桃色の長髪と尊大な態度はまさしく私の知識にある通りだ。

 

 いや、今は『優曇華院』も『イナバ』も付いてないただの鈴仙さんだっけ。あの長ったらしい名前になるのは永琳さんと輝夜さんに出会った後だもんね。

 綿月姉妹ばかり警戒していたので、鈴仙さんを始めとした玉兎の皆さんへの警戒が疎かになっていた。探せば清蘭ちゃんとか鈴瑚さんも居るのかな? 

 

 まさか後世に名高き新参ホイホイの彼女にこんな所で出会えるとは思っていなかったね。十六夜咲夜に続く原作五面ボスの登場に思いを馳せる私であった。

 しかしそんな態度が鈴仙さんは気に食わなかったようで、私達の服装と付け耳に視線を向けて、顔を顰める。

 

 

「その軍服と耳は本物みたいね。無理やり剥ぎ取って自分のものにしたのか。……お前達、どれだけの兎を犠牲にしたというの?」

「ふふ、異な事を言う。貴女は今まで食べてきたパンの枚数を覚えてるの?」

「くっ、外道め……!」

 

 おお、原作の原作じゃない台詞! レミリア閣下ったらノリノリである。やっぱり吸血鬼なら一度は言ってみたいよね。私もいつか機会があれば是非とも使わせてもらおう、そうしよう。

 

 ともあれ戦闘は避けられないようだ。彼女も彼女で私達を倒すべき巨悪と判断したようだし。あんまり戦いは得意じゃ無いんだけどなぁ。致し方無し。

 私の薄い敵意を察知したのか、鈴仙さんは肩を竦めて嘲りの笑みを浮かべる。

 

 

「一つ言っておくけど、私とお前達の間には天と地ほどの戦力差が存在している。痛い目に遭って打ちのめされる前に投降をお勧めするわ」

「ふっ何をバカな。ニッヒ、吸血鬼の力を存分に見せつけてやりなさい!」

「……いえレミリア閣下。はっきり申しますと、この戦いはかなり厳しいものになるかと思います。彼女の言う事は決して大袈裟では無いかと」

「なんですって?」

 

 私の弱音にレミリア閣下は眉を顰めた。常にイケイケな彼女は敗北主義的な言葉というか、弱音が大っ嫌いなのだ。そのあたりは姉妹揃って、といった感じである。ブラック経営者の名は伊達じゃない! 

 

 しかしどれだけ強気を演じても厳しいものは厳しい。正確な情報は予め伝えておかなければ。

 

 此方を侮って踏ん反り返っている鈴仙さんは、一見小物に見えなくもない。しかし実力は紛れもなく本物である。月人を除く月の都最強に君臨できる存在かもしれない。

 なにせ綿月依姫の部下であり、八意永琳の一番弟子であり、将来あの純狐さんを撃破し月を救う英雄となる、それはもうとんでもない兎さんなのだ。

 

 正直積極的に戦いたい相手ではないよね。

 

 

「ふふ、どうやらそっちの金髪妖怪は私との実力差を正確にキャッチできたようね」

「尋常ならざる身のこなし、その佇まい……。相当な手練れとお見受けしました。よ、よもや月の兎がここまでの実力者だとは……」

「その中でも私はエリート中のエリートなの。だが謝ってももう遅い! お前らは私の仲間を殺し過ぎた! さあ、私の瞳で狂い──」

「隙ありッッ喰らえぇ悪質吸血鬼タックル!!!」

「ぐわあああああっ!!?」

 

 瞬時に身体を魔力で強化し、自慢のスピードで対象へと接近。能力を使わせる間もなく勢いそのままに猛牛が如く真上へ跳ね飛ばす。完全に不意を突かれた鈴仙さんは為すすべなくクルクルと宙を舞う事になるのだった。

 

 まずは会話で相手を煽てて油断を誘い、身体能力に物を言わせた初撃で継戦能力を奪う初見殺し。数多の強敵*1を屠ってきたニッヒちゃん十八番の必殺技! 

 自分の力に絶対の自信を持っていて、なおかつ驕り高ぶる人は私の絶好のカモなのだ! 

 

 レミリア閣下もこれにはドン引きである。

 

 

「あ、相変わらず卑怯な戦法ね」

「かつて極東のお偉いさんは言いました。『武者は犬ともいへ、畜生ともいへ、勝つ事が本にて候』と! 取り敢えず勝てば良かろうなのです!」

「変な所だけフランに似るんだから……」

 

 吸血鬼の誇りを重んじた戦い方も一つの強さだと思うけど、私にはこっちの方が性に合ってるんだよね。こう、相手の心の隙間に付け込むというか、とにかく吃驚させて勝つってやり方がさ。マイロードもそれが私の明確な強みだって言ってたし。

 

 と、悠長に話している間に宙を舞っていた鈴仙さんが落ちてきた。かなりの滞空時間だったが、それが私の悪質吸血鬼タックルの凶悪さを物語っている。

 曲がりなりにも吸血鬼のフィジカルから繰り出される渾身のタックルを無防備な身体でまともに受けるのだ。まさに一撃必殺である。

 

 しかしここで私にとって想定外の事態が起こった。

 

 なんと鈴仙さんが足から華麗に着地したのだ。即ち、意識がハッキリしているという事。

 お腹を抑えて苦しそうに踠いているけれど、瞳に宿る憎悪と戦意に陰りはない。

 

 

「げほっ……随分と、な、舐めた真似してくれたわね……! 絶対に許さないからっ!」

「私の必殺技を受け切るとは何たる耐久力! 流石はエリート! 天晴れ!」

「もうその手には乗らないわ……!」

 

 口の端から流れ出る血を拭うと、今度は油断なく構える。右腕を前に突き出しながら他の部位を弛緩させるそれは、変幻自在に形を変える軍隊格闘術の型だ。

 

 滲み出るプロ感にニッヒちゃんはビビった。美鈴さんやパチュリーさんとの戦いで学んだ事だが、私は地に足ついた技巧派のファイトスタイルを得意とする相手に弱いのである。だから初撃で仕留めたかったんだけどね。

 ただかなりの痛手を負ったのは間違いないだろう。私のタックルは無傷で済むほど甘くない。

 

 ならば私も魅せますか──。

 マイロード仕込みのスーパー残虐ファイトを! 

 

 

「狂人どもめ、私の目を見てもっと狂うがいい! 月の狂気を思い知らせてやる!」

「悪いけどもう一発強めのいくからね! 気絶しない貴女が悪いんだからね!」

 

 鈴仙さんの紅き瞳の輝きとともに振動が伝播する。そして空間は崩壊を始め、真っ暗に塗りつぶされていく。これが彼女の能力! 超振動の坩堝に浸かれば、肉体どころか霊体も、原型留めることすらできまい。

 

 こんな殺意満々の必殺技を真っ向から攻略するのは骨が折れる。なんなら死んじゃう。

 なのでここは素直に『スターボウサイクロン』を発動。掟破りのアンチマジックにより、術式の指向性を乱された能力が目標を失い霧散する。

 

 これもまた私の得意とするマイロード直伝の初見殺し、その一である!

 

 

「はあっ!? なんで……!?」

「獲った! 喰らえぃ更にもう一発!!!」

 

 崩壊する空間を踏み越え、トップスピードで接近。勢いそのままに拳が鈴仙さんの頬を捉え──空を切るような虚しい感触が突き抜ける。

 

 躱されたと判断。シャベルを地面へと突き立て、そのまま柄を手掴みで足場とし、リーチの長い回し蹴りを中段へと繰り出した。

 これなら逃げ場は上か下にしかない。その後の対処は私の思うがままだ。

 

 そして蹴りが鈴仙さんの腹を捉え──またもや空を切る不可解な感触。

 

「……あら?」

「──つァッ!!」

 

 横殴りの拳が飛来。私は咄嗟に腕での防御を試みて──顎を撃ち抜かれた。

 あまりの衝撃に私の世界が二転三転とし、何棟もの家屋を突き破りながら墜落した。

 

 不味い。モロに食らっちゃった。

 

 

「これで勝負ありよ。他愛もない」

「何をやっているのニッヒ! 日頃フランの拳を受けている貴女ならその程度を見切るのは造作もない筈よ。しっかりしなさい!」

「あれ……? れれれ……?」

 

 重度の脳震盪。立ち上がるどころか、今の状態を認識することすら困難な状態に陥り、地面に手をついて何度も頭を叩きつける羽目になった。

 

 理解が追いつかない。攻防からその結果に至るまで不可解な現象の目白押しだった。

 

 レミリア閣下の言う通りだ。鈴仙さんの繰り出した拳は、確かに研ぎ澄まされていて相当なスピードと迫力があった。しかしマイロードほどじゃない。

 防御には間に合っていた筈だし、食らってもそこまで痛手になるような威力があるとは思えなかった。

 

 でも受けたダメージは、はっきり言ってマイロードのそれに匹敵する。もしくはそれ以上。

 

 脳内に直接波長をぶち込まれたのだろう。ついでに防御を貫通したように見えたのは、視覚と平衡感覚を狂わされたが故。私の攻撃をすり抜けたのも同様のカラクリか。

 思えば、私の悪質吸血鬼タックルを耐え切ったのも同じロジックなのだろう。クリーンヒットしていなかったと考えれば納得できる。

 

 レミリア閣下には私が見当違いの場所を攻撃して、挙句にまんまとヤワな攻撃を受けてしまい地べたを這い蹲っているようにしか見えないのだろう。無様だぁ。

 

 鈴仙さんの能力にしてやられた。彼女を事前に知っていた私だからこそ、この不可解な現象の正体に行き着くことができた。

 やはり彼女は強い。まともにやったんじゃ勝ち目がないと思えるほどに。

 

 

「立て! 立つのよニッヒ!」

「アハハ無理無理。私の狂気で頭を満たされたんだもの。二度と起き上がる事はできない!」

「貴女は誇り高きスカーレット家の末席。腐っても吸血鬼の端くれよ。この程度の攻撃なんて屁でもない筈。立ち上がりなさい!」

「ううぅうぅぅ……」

 

 ここで私が敗れるということは、マイロードとレミリア閣下の顔に泥を塗るという事。私を送り出してくれたマイロードの信頼を大きく損なってしまう。

 それだけはいけない。ニッヒはあの人にとっての使える道具であり続けなければならないのだ。私の存在意義を証明し続けなければ。

 

 でも頭では分かっている筈なのに身体が動かない。操作を受け付けてくれない。口惜しい。

 

 どうにかしてこの状態から復帰し、なおかつ不利を打開できる方法はあるだろうか。

 めちゃくちゃになった頭でとっても賢いニッヒちゃんは必死に考えた。考えて考えて──とにかく考え抜いた果てに最適解へと辿り着く。

 

 

「はーっ……はーっ……!」

 

 やはりレミリア閣下の言葉はいつだって的確だ。そう、私はマイロードの分身にして気高き吸血鬼。その強みを存分に活かさなければならない。

 

 私はシャベルを掴む手に渾身の力を込めると、自らの頭にそれを振り下ろす。

 何度も、何度でも、完全に破壊されるまで。とにかく全力で叩き潰す。衝撃と一緒に身体がビクビクと痙攣するけれど、まあ慣れたものである。

 

 マイロードみたいな破壊の力があればもっと楽に早く破壊できたんだけどね。まあ無いものねだりをしても仕方ないよね。セルフで頑張ろう。

 

 

「ぐぎぐぐぐぐががが!!!」

「……は?」

「え、なにそれは……」

 

 頭部の完全破壊完了! 頭を失い身体だけとなった私に脳震盪などある筈なく、目も耳も存在しないため狂気攻撃も通用しない。

 頭があるから彼女の能力から逃れられないし、苦痛を感じてしまう。ならその弱点を無くしてしまって、身体だけで戦えばいい。

 

 ここに蛮奇ちゃんリスペクトなニッヒちゃん:飛頭蛮(デュラハン)スタイルが爆誕! これぞ対鈴仙さんにおける『答え』である。今年のノーベル賞は私のものだね! 

 

 

「うわぁっキモ!」

「吸血鬼の戦い方じゃないわ……」

 

 何やら失礼な事を言われている気がするが耳が無いので聞こえないんだよね。今の私は目の前の敵を討ち滅ぼすまで止まらない破壊人形ニッヒちゃんだ! うおォン! 

 

 レミリア閣下と咲夜ちゃんの居る場所を除く全方位を当てずっぽうの弾幕で埋め尽くす。

 何も見えないんだからこれしか攻撃のしようがないからね。でも別に周囲の被害を気にする必要もないので好きにやらせてもらおう。

 

 

「コイツ、私どころか都にまで攻撃を……!?」

 

 数瞬して身体の至るところで風穴の空く感覚が巡る。恐らく座薬型の弾幕を打ち込まれたのだろうが、こんなものじゃ止まらない! 鈴仙さんがやられる意思をみせなければ、私はこの都を破壊し尽くすだけだぁ!

 

 さて弾丸の飛んできた方向へカウンターを叩き込んでやろう──と思ったが、止める事にした。

 

 そういえば鈴仙さんがレミリア閣下と咲夜ちゃんを人質に取る可能性を考慮していなかった。この飛頭蛮スタイルは攻めに特化し過ぎている故に、守らなければならない対象が居る時は問題大アリである事に気づいたのだ。

 それに大暴れ中なマイロードの下に早く駆け付けなきゃいけないしね。

 

 そうと決まれば今の形態に用はない。即座に頭を再生させ、改めて鈴仙さんと相対する。プランBである。

 

 

「ふ、ふん。虚仮威し攻撃は終わりってわけ?」

「そうだね。あの形態のまま戦っても良かったんだけど、それで勝っても私のご主人様は納得しなさそうなんだよね。なので更に完膚なきまでの決着で勝つ事にしたの」

「お前じゃ私には敵わないわ!」

「それはどうかな?」

 

 私からの攻撃が止んで明らかにホッとしている鈴仙さん。どうやら短期決戦を望む気持ちは同じであるようだった。首無しニッヒちゃんも無駄ではなかったね。

 

 

「実はね、貴女の能力を攻略する方法が解っちゃったの。もう勝ち目はないよ!」

「何をバカな。完全無欠の幻朧月睨(ルナティックレッドアイズ)を丸腰で攻略なんて、できるわけがない」

「ふっふっふ……確かに強力だよね、貴女の魔眼」

 

 ピクリ、と。『魔眼』というワードに対して微弱な反応を見せる。多分「カッコいい異名だから今後使わせてもらおう」とでも考えているのだろう。

 彼女の言う幻朧月睨(ルナティックレッドアイズ)も恐らく造語だし。よく思い付くものだと感心するけどね。

 

 鈴仙さんの攻略法。それは、彼女の嗜好を存分に利用することにある。

 

 私は真紅の左眼を瞑り、代わりに蒼空の右眼で場を見据える。この思わせぶりな空色のオッドアイこそが私のアイデンティティにして、彼女の能力を打破し得る特異性を秘めているのだ。

 

 

「魔眼に対抗できるのは魔眼のみ……! 私も魔眼を解放させてもらう!」

「な、なんですって!?」

「貴女の幻朧月睨(ルナティックレッドアイズ)と、私の夢虹霓睨(アブソリュートブルーアイズ)! どちらの位階が上か、尋常に勝負といきましょう」

「アブソリュート……!?」

 

 そんな宣戦布告を叩きつけ、私は悠然と歩み寄っていく。無警戒に、無防備に、ただ自分の右眼だけを武器に鈴仙さんへと挑むのだ。

 

 

 

*1
小悪魔





うどんちゃん「かっけぇ……」
レミリア嬢「かっけぇ……」

ニッヒちゃんの戦法は一から十まで全てハッタリの虚仮威しであるものとする。
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