ユニバース・グレイル 試作版 作:gfd
「イツキ、オマエ……」
「ええっと……お、俺は何もしてませんよ?」
「
ピッカピカ……? と思わず両手を見れば。
「うっわホントだピッカピカだ……なにこれ!?」
まるで葉脈のように手のひらから指先に至るまで光の筋が通っており、まさしくピカピカと光っている。
なんか気持ち悪い! と悲鳴をあげれば、コレンは手鏡を俺に向けてきて──絶叫、倍増。
「頬にも出てる! なんか
「能力をフルで使うとみんなそーなんだよ」
曰く、エーテル能力の励起に伴い、体内を循環するエーテルが感応して発光、それが体表に浮かび上がるらしい。
ゆえに“光の経路”、レイラインと呼ばれるのだとか。
「つってもそんなに光ってるのは珍しいけどな。そんだけオマエの能力が強いって証明だろーよ……さて」
コレンはにこりと笑う。
いつもの“にかり”ではない。とても可憐な“にこり”である。その意味とは、つまり。
「何やってたか全部話せ。まずはそっからだ」
「はい……コソ練してました……」
/
「……なーるほどな。船内の把握、現状の認識……引き渡し、ね」
すべて洗いざらいに吐いた後、コレンは眉間を抑えて唸った。
気分は閻魔大王の前で沙汰を待つ罪人である。
「……オイ、そんな縮こまんなよ。もう怒ってねーぞ、アタシは」
「えっ」
「えっ、じゃねえよ。まずそっからって言っただろーが、何をやるにしてもな」
はぁ、とコレンはため息を吐いて、どっかりと椅子に座り込んだ。
「しょーじきな話、イツキがコソ練しようってなるのもわかるんだわ。ずっとこの部屋で監禁状態だからな、アタシも回りに睨まれててこれ以上は時間を増やせそうにねえ」
「もうできる限り時間を捻出してくれてるだろ? そんな厚かましいことは……」
「アタシが気にすンだよ。つーか一般常識もまだろくに教えられてねーのに、中途半端に終わらせられるか」
苦笑する。男気があるというか面倒見がいいというか、いずれにしろありがたいにも程がある。
「……ごほん」
弛緩した空気を咳払いで引き締めてから、コレンは続けた。
「ただアタシに何も言わずに、ってのはいただけねーな。前に能力の暴走でぶっ倒れただろ? また倒れたらどーするつもりだったんだよ」
「一応、前の体験を踏まえて対策はしてたんだけど……」
「だとしても、アタシに言わない理由にはならねーだろ。ぶっ倒れた時に世話するのはアタシなんだぜ?」
「……うん、それはそうだ」
世話になっている側としては、それを言われると何も言えない。大人しく白旗を上げた。
改めて自分を鑑みる。
何故俺は言わなかったのだろう。
地球ではあり得ないギフトに浮かれてたから? コレンに隠して能力を使うことに愉悦を覚えていたから?
『──にしてもすげえレイラインだな、ったく』
……。多分、そんな愉快な理由じゃない。
「イツキが何考えてるかは……わかんねーけどさ」
言い淀んでから、それを打ち消すように俺を見る。
「変な遠慮すんなよ。何度も言ってるけど、アタシは大丈夫だ。気にせず巻き込め」
「……そうか。……そうだな」
変な遠慮、と言われて気づく。
遠慮と配慮を履き違えていたのだ、俺は。
「わかった、これからは必要なことは報告する。遠慮なく、巻き込む」
彼女の陰が視えてしまったからこその勘違い。ある意味で能力に振り回された結果だろう。
それをそのままにはできないが、秘密というのは今後は肝に命じなければ、と気を引き締めれば、コレンも大きく頷いた。
「おう、そーしろそーしろ。言ってくれればアタシも手伝えるかもしれねーしな」
「うん、ありがとう……ところでさ、なんで部屋にいるんだ? ちょっと前までガレージで仕事してたよな?」
「休憩時間だから来たに決まっ、て」
そこまで口に出して、コレンは急にぽっと顔を赤らめた。
「おま、盗み見しやがったな!?」
「え、……あ! ごめん!」
「いや別に!? べつにいーけど! いーけどさ! 今後も別に見てもらっていーけどよぉ!!」
「絶対見てほしくない声色じゃないか! そこは嫌だって遠慮してくれよ!」
「うるせーそういうことじゃねーんだよ! この話終わりな! 時間もったいねーんだから授業すんぞ!!」
結局、その日のコレンはプンスカと怒りながらも律儀に授業を進めてくれた。
何故怒ったのかはよくわからない。いくら訊いても嫌そうな割に直截的に嫌と言わないし……とりあえず、仕事中の彼女には目を向けない、と自分で決めたのだった。
「…………アタシが毎回小走りでココに来てるってバレるじゃねーか」
「ん、なんか言った?」
「なんもいってねーよ!!」
/
……能力で視たもの、把握したものは、そのほとんどをコレンに明かした。
だが一つだけ、言っていないものがある。
執務室で発見した船内の地図──その近くで放置されていた一枚の書類。
俺は観測先に干渉することはできない。それはきっと念動系統の領分だ。だからこそ、それを見れたのは幸運だった。
『捕獲した稀人について』
『先日惑星サフィラにて出現した稀人個体。
年齢は10代後半と推測。性別は男。黒髪、黒目。外見は通常の人種と同一。第三等整備士(個体名:コレン・バーニー。縁者なし)を監視につけ、捕虜収容部屋にて監禁を開始。能力の暴走が発生した場合、第三等整備士のみで被害が収まるよう調整』
『第三等整備士の供述により、エーテル能力は未発現と判断。しかし当整備士は元コスモス連盟所属であり、信頼性に欠ける。近日中にエーテル能力者による尋問を予定』
『また、第三等整備士が規則に反し信頼関係を築いている可能性あり。罰則を検討。←稀人に警戒される可能性があるため取り消し。
稀人がエーテル能力者であり、総統閣下の求める基準値に達していた場合、当整備士を用いて稀人を帝国に留め置ける可能性を提案』
『以上稀人についての報告を総統閣下に奏上。総統閣下の御多忙により、返答までは期日を要する』
明確に俺についての記述だ。
そしてこの内容は、間違いなくコレンには明かされていないはず。俺が彼女を信じる気持ちとは別に、理屈として知らされるわけがない。
「……さて、どうするかな」
コレンが帰ったあとの部屋で、ベッドに横たわりながらぼやいた。