時系列は大侵攻、ナザリック転移前のアレでの出来事です。
前置きはここまで。本編どうぞ!
涼風の吹き抜ける豊かな土地に、
その雄大な麦畑のあぜ道には今、この場に相応しき農耕の制服であろうオーバーオールに麦わら帽子でもない、農家とは似ても似つかぬ豪奢な装備に身を包んだ冒険者たちの
「な……何だ、ここは?」
彼らはいずれも
その上で、彼らは虚をつかれた風情でもって辺りをキョロキョロと見回し、不安げに手に持った剣や盾を構え直していたのだ。
そこに突然、彼らの近くの”何か”から大きな声が響いてくる。
『よ〜こそ、ココにいらっしゃいました!』
「っ!?」
とっさに構えた一党。すぐさま索敵に優れた
『転移トラップに驚いておいででしょう? ですがご安心ください、我が主人はあなた方の来訪を心待ちにしておりました!』
そこにいたのは、まさに"太陽"そのものであった。
『ココは我らが"黄金城"! 切り離された転移聖域に存在する
地響きと共に、先ほどまで影も形もなかったはずの建造物が彼らの体に影を落とす。
それは太陽の光を受けてなおも輝く黄金の城。
和洋折衷を取り込んで人類の隆盛をまさしく混沌めいて
その天守閣にてしゃなりと佇み見下ろすその女は、見る者すべてを惹きつけてやまない、麗かな笑みの少女。
少女は髪も瞳も小麦畑と同じ黄金色であり、光を受けて輝くさまは陽光を溶かし込んだ蜂蜜のよう。
黄金の持つ生来のやましさ・卑しさをすべて神々しさに変える美貌、そして纏う衣装は白金のドレス。それは麦藁細工のような編み込みを使い、手間暇をかけて作られているのが遠目からでもわかる上質な出来栄えであった。
『その名も、』
『その名も――――!』
『プレイヤー名が違います』
『プレイヤー名が違います。プレイヤー名が――――』
一党は道化のようだった太陽から一転した無機質なメッセージに目を見開き。
あ!という少女のよく通る甘い声が麦畑全体へと響いた。
「やべ、そこから先直してないんだった。最近
黄金の少女はその身に似合わぬ軽い調子でどこぞの仲間に連絡を取っているようだ。
『分かりました、そっちで惹きつけておいてください。転移系トラップは複数設置して座標も希望通り黄金城にしてあるんで、おかわりもまだまだありますよ』
「おかわりも良いんですか!? そいじゃあ死ぬ気で頑張りますね♡」
『本当に死んでレベル下げないでくださいよ? "アインズ・ウール・ゴウン"始まって以来の大舞台ですし、終わった後の打ち上げは全員参加ですからね』
「え、こんなお祭りで死ねないってアリ? 知ってるでしょモモンガさん、私ってばデスペナならある程度無視できるんだけど~?」
『気軽に死なない! ああもう、そういうとこですからね!』
「はぁーい♪」
『本当に分かってるんだか……んん、ゴホン―――では頼むぞ、我がアインズ・ウール・ゴウンが誇る"黄金城の女主人"よ』
「了解、
『そうなった時はこっちで一緒に時間稼ぎお願いします』
「だからそれまで死ぬなってことかな? モモンガさんてばたいがい健気だねぇ」
『……あんまりからかわないでください、アポロさん』
「モモンガさんのこういうウブな反応、いい……!」
『か、ら、か、う、な!』
「はぁ~い。それじゃ、また後で~」
『はぁ、もう……健闘を祈ります。転移後の処理はあなたが頼りですから』
最後に少しだけ気取ったやり取りをして通信を終えた少女は、ふぅと一息ついて黄金城の天守閣から敵勢を見やる。
小麦畑の
だが、数は彼女にとってさしたる問題ではなかった。
むしろ、楽しみが増えたと言える。
「頼りにしてるって……ふふ、モモンガさんてばあぁ見えて人たらしなんだから。でも……要は死にきらない程度ならいつまでも殴られてて構わないってことだよね? ふふん! 了解、りょうかい!」
彼女は悪戯っぽさを含んだ絶世の笑みを溢し、その様子に招かれた賓客たちは彼女から一切目を離せない。誰ひとりの例外もなく、性別や種族を超えた一切が目を離すことすら許されなかったその光景は、いっそ異様ですらあった。
――――それもそのはず。
彼女の
小麦畑に紛れた
「それじゃあ、この場は黄金城の主にしてヘイト管理系超再生タンク『アポロトーシス』さんに任せなさい! 公式サンドバッグこと
「『召喚・麦藁人』! 小麦を素材に乱立しな~!」
アポロトーシスの掛け声と共に、小麦畑へ無数の
それらはレベルこそ低いものの数が圧倒的に多く、そのすべてが後述する二つの
『ターゲット集中』『カウンター』
それは
「さぁ、私の役目は足止め一本! この黄金城のてっぺんで『
『倫理コードに沿わない不適切な発言が認められました。発言を訂正および中止しない場合ただちにログアウト処理ののち……』
「あー、わかったって
「……クソカカシが150体を越えて……もう数え切れる限界を越えた!」
「ゲ、ヘイトが全方向に逸らされまくって攻撃が定まらねぇ!」
「いいわ、それなら範囲攻撃で」「っ! よせっ!」
「『
第十位階魔法『
初心者応援キャンペーンでレベルを上げた者は知る機会すらなかったであろう麦藁人のとある仕様を知る幾人かが、これから起こるすべてを予見し、せめてもの報復がてら、悪態とともに天守閣へ自身らの最大火力を飛ばしていった。
「「「この初心者狩り野郎めぇっ!!!」」」
「あーあー、聞こえなーい。それにさ……私たち
『麦藁人は隕石落下によって消滅した』『消滅した』『消滅した』『消滅した』『消滅した』『消滅した』『消滅した』『消滅した』『消滅した』『消滅した』『消滅した』『消滅した』『消滅した』『消滅した』『消滅した』『消滅した』
『
『カウンター』『カウンター』『カウンター』『カウンター』『カウンター』『カウンター』『カウンター』『カウンター』『カウンター』『カウンター』『カウンター』『カウンター』『カウンター』『カウンター』『カウンター』
『プレイヤー:アポロトーシスは死亡した』
『
『30秒後、
「く、そ……」
「この
ここで7つの一党は再起不能となり、ナザリック地下大墳墓から強制退去させられた。
『
活性化した太陽の精霊から放たれる波動により黄金城はすぐさま元の様相を取り戻し、天守閣にはもう一度黄金の少女の姿が現れる。
「せっかく取った『
――――この戦いから数時間後、38のパーティを鏖殺して"黄金城の女主人"としてその名を知られることになる彼女の名はアポロトーシス。
"
「計7パーティからの容赦ない最大火力、ゾクゾクした~~~♡ HPバーの減りやっば♡ もう最っ高……やば、ちょっとイっちゃ」
『倫理コードに沿わない不適切な発言が認められました』
「訂正訂正! ごめんて運営、消さないで♡ ちゅっちゅ♡」
こうして猫撫で声で運営に媚を売る姿とは似ても似つかない、報復型の殺戮者。
あらゆる方法でにべもなく殺されては小麦畑のリソースを使ってほぼ無限に蘇る死の雨の請負人、ナザリックに君臨せし至高の41人の一柱にして麦藁人たちの王女、速攻超火力が跋扈・席巻するPvP環境においてカウンタービルドで覇を唱えた、唯一にして生粋の
短編っていいですねぇ。書き手側としては気がとても楽です。
評価や感想次第で続くかも?
どうぞよろしくお願いします!