評判良さげなので設定放出しながら続きます!
読者の皆さんありがとー!
今回はリアルの話。原作開始まではちょっと待ってね!
「ハロハロリスナー、今日も晴れてる? スモッグだらけでも気分は上げてこ! アポロンちゃんねるでーす!」
ピョコ、と可愛らしい効果音付きで画角の外から登場するのは金髪のかわいい手描きキャラクター。
213x年、過去の人類政府による決定的ミスにより工業排気と酸性雨に晒され、企業連合メガコーポによって行政ともども牛耳られたアーコロジーのみが人類の最後に残されたまともな生存圏である、行き詰まったディストピアの日本にて。
そのアーコロジーの外、使い潰されることが確定した消耗品の烙印を押された人間のみが住む防毒のないあばら家の群れから、陽気な動画を誰かが楽しむ音が近所にも少しだけ漏れ聞こえていた。
「今日のテーマは〜、これ!」
『ユグドラシル』の手書き文字とともに、もはや外において絶滅したトネリコの木にじょうろで水をあげるアポロンのイラストが映し出される。
「みんな知ってる大人気DMMO、私もやり込んでるこのゲーム『ユグドラシル』の紹介でっす! それと私の加入しているギルド、アインズ・ウール・ゴウンってどんなとこ? ヤベー奴らばっかのDQNギルドってホント? そんなウワサを千本ノック! 実はここってば良い人ばっかなの! そいじゃあ前置きはこんくらいで、Wikiに書いてあること以上のうちのギルドの魅力をこの場で赤裸々に紹介しちゃいまっす!」
『ギルドメンバーに許可は取ってます』というただし書きが案山子の動画内サブキャラクターから吹き出しで動画の邪魔になることなく挿入され、アポロンが実写のフルダイブVR機器に器用に合成され、まるで手描きのキャラクターが現実世界にいるような演出の中、画面はユグドラシルのゲーム画面に遷移する。
この世界の現代日本において配信機材というものはメガコーポの愚民化施策によりろくに学校も通えず未就学の会社員も多い中では購入のハードルがべらぼうに高く、簡単に用意はできない額だ。
ましてや定期的に動画を撮り編集する動画投稿者および生配信者というものは、アーコロジーの外にいる希望なき人々にとって、成功者と社会の歯車の狭間に位置する、一種の偶像にすらなっている。
こういう呼び方も廃れて久しいが、彼らをいわゆる"生きがい"というものにしながら日々を生き抜いている視聴者も少なくなかった。
動画投稿者アポロンもアーコロジー外部のブラック企業に勤めながらもソレを面白おかしい軽快なトークでブラックなあるあるを笑い飛ばす作風で若い視聴者層を中心に親しまれる、人気と言い切って憚らないユーザーのひとりである。
その年齢は現役の高校生ほどであると噂されており、事実それは彼女が中学校卒業で就職をしていること以外はその通りであった。
その後の動画の内容はギルド"アインズ・ウール・ゴウン"について非公式ユグドラシルWikiの第三者から見た簡単な紹介文を読み上げてDQNギルドという評価を笑い飛ばしたあと、ギルドについての改めての紹介と許可を得たギルドメンバーのインタビュー、そして最近起こった大侵攻についても言及する内容だった。
「私もあの時は有給取って参加してたんだけど、私の活躍って聞いたことある? 転移トラップ踏んだみんなのねずみ取りみてーな役なわけ! 分かんない人向けに言うと罠にかかったプレイヤーたちをキルする初見殺し担当だったのね」
性格わるーっ!とけらけら笑いつつ、大侵攻の裏話をする。ゲーム内ではもはや伝説に近い1500人規模の連合の全滅はゲーム系記事を扱うニュースサイトでも取り上げられており、いちオンラインゲームのプレイヤー主催イベントとは思えないほどの注目を集めていたため、渦中のアポロンについても次の動画のネタはこれしかないと踏んでこういった趣旨の動画を撮っていた。
その後もユグドラシルあるあるに絡めた大侵攻の思い出に続き、勤め先がブラックすぎて有給申請が握り潰され形としては無断欠勤になっていた話などを笑い話に変えていき、動画は終了のジングルが流れてユグドラシルのゲーム画面から普段のパステルな手描きの部屋の背景に戻ってピョコピョコとアポロンのアバターが動いて締めの挨拶を飾る。
「非公式ラスボスことギルマスモモンガを筆頭に、悪のギルドアインズ・ウール・ゴウンって実はわりと社畜ギルド? っていう意外な事実も明らかになったところで今日は終わり! みんなもゲームの課金はほどほどにしてたまには良いメシ食っとけよ! 私はこのあとちょっと高い完全食チューブ買ってみようかなって思ってまーす! そいじゃあリスナーまた次の動画で会おうな! チャンネル登録・グッドボタン・それとSNSのフォローもよろしく! まったね〜!」
ブンブンと手を振る手描きのアバターが映し出され、お決まりの終了画面へと遷移して動画は終了する。
アーコロジー内のメガコーポを称えるプロパガンダ気味な自動広告を5秒後にスキップして、視聴者は動画の視聴を終える。
そして、今回の視聴回数も上々であることを会社のわずかな昼休みに確認したアポロンこと日野 千晴(ひの ちはる)。
彼女のリアルでの姿もアバターとそう大きく変わらない、赤い編み物のストールを巻いていることが仕事着としては特徴的な、溌剌なオフィスレディといった風情の金髪の美しい女性であった。
「ご飯食べながらコメント読んでんのがいっちゃん気持ちいいんだから……」
カタカタとPCを動かして休憩中も積もりに積もった事務作業を片付けながら妄言を垂れ流しつつ、千晴は動画で発言していた、少し奮発した完全食のチューブを啜っていた。
人工甘味料の味が舌に広がる作り物の多幸感に包まれながら、昨日に投稿した動画の反響として盛り上がっているコメント欄をスクロールしながらパラパラと見ることが今の彼女の生き甲斐だ。
現在のところはこうして中小企業の事務職として活動している千晴だが、過去には中学校を卒業し高校進学も控えた、現代アーコロジー外においてはエリート街道をも走れる有望な人材であった。
そのスタイルの良さと美貌からモデル活動も打診され一時期は紙面の一部を飾ることもあったものの、両親の急死により高校進学の道は絶たれ、モデル活動も数回の活動でアーコロジー内部の資産家の目に留まり肉奴隷として飼い殺しになりかけたところをどうにか逃げ出し、彼女は僅かばかりの遺産とボロボロの借家でまだ子供であろうと一人で生き抜くことを余儀なくされた。
その過程でまだ成長の過渡期にあった千晴は急激な環境の変化を「こういうこともある、間の悪かったありふれた悲劇」と笑い飛ばしつつ、過去のモデル活動を足がかりにインフルエンサーの真似事をしながら副業を続け、配信機材を多少の無理をして購入し、ゲーム内でのちに異形種狩りと呼ばれるPKに遭い引退した知人からフルダイブ機器を譲り受け、自身もまた異形種狩りブームの真っ只中であることを知り、それならばあえて異形種を作ろうと初見から気に入った麦藁人のアバターを作り、案の定メインストーリーに触れる前にPKに遭っていたところを現在のアインズ・ウール・ゴウンの前身であるクラン『ナインズ・オウン・ゴール』に助けられた縁からクラン入りし、大規模ダンジョン時代のナザリック大墳墓攻略メンバーのひとりやギルド創設メンバーのひとりとして、DMMORPGユグドラシルの世界へと足を踏み入れたのだった。
こういった半生のどこで麦藁人の持つ高いHPとカウンターおよび背水効果を上手に併用した破滅的戦法に快感を見出すマゾヒスティックな精神性が育まれたのかは不明だったが、おそらくそれ自体は生来のものであったというのが実際のところ的を射ているのだろう。
──残業を終えて帰った千晴はかつてのバリアフリー精神の名残であるスロープを渡って家に入り、外の危険から自分を守る防毒スーツを脱いで洗濯機に取り込んでから、今日もユグドラシルへとログインする。
ログイン先はナザリック大墳墓の第九階層ロイヤルスイート、玉座の間。円卓の一席に座った状態で、千晴の作成したアバター本来の姿である巨大な五寸釘が胸に突き刺さった人間大の藁人形の姿がサイバーなログインエフェクトと共に浮かび上がる。
「こんです、皆さ〜ん! この前収録した動画の反響、なかなか感触良さげでしたよ〜♡」
課金ガチャのハズレ枠にあたる有料エモートアクションで大量のハートとピンクなゾーンを形成しながら、境遇にそぐわぬ明るい調子で千晴ことハンドルネーム・アポロトーシスはユグドラシルでの日課を始める。
生まれつき足の不自由な車椅子の麗人にして、頭脳明晰ながら快楽主義者。ある意味アインズ・ウール・ゴウンに相応しい彼女は、自由に歩く感覚を得られ、気心知れた仲間も存在するここに新たな居場所を見出していたのだ。
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