花岡ミヤビをプロデュース   作:#NkY

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※原作の批判・原作との比較は絶対にやめてください※


第一印象は最悪

 世の中には、存在するだけで周囲の人間を『その他大勢(モブキャラ)』に追いやるような、規格外の人間がいる。

 

 たとえば、初星学園の生徒会長、十王星南(じゅうおうせな)。幼少期からアイドルの英才教育を受けたアイドルのエリート。圧倒的な経験値の差と恵まれた背景からくるカリスマ性の暴力をもって、昨年のH.I.Fを夏冬連覇し、初星学園を完全制圧した。例年と比較しても有望な新入生が多数入学してきたと言われている今年でさえも、一番星(プリマステラ)だけは彼女で間違いないとの見方が多数を占めている。

 

 たとえば、プロデュース科の新星、犬束静紅(いぬづかしずく)。まだこれといった実績がほとんどないにもかかわらず『プロデュースの天才』と持て囃される彼女の元には、いつもアイドル科の生徒が熱視線を向けている。アイドルとしても通用するであろう美貌も兼ね備えており、実は元アイドルなのではないか、今後ユニットを組んで自分もアイドルとして活動するつもりじゃないか――などという根も葉もない噂が独り歩きしている。

 繰り返すが、彼女にプロデューサーとしての実績はまだほとんどない。

 

 そして、そんな『規格外』が、たった今、もう1人爆誕した。

 

「今回のオーディションの合格者は1人。2番、藤田ことねさん」

 

 藤田ことね。

 中等部時代はずっと実技赤点だった彼女が、『あの』犬束静紅に見初められてからほんの半月で――授業料免除がかかった、超高倍率である特待生制度の学内オーディションを突破してしまった。

 

「……っ……!」

 

 中等部No.4(花岡ミヤビ)をも差し置いて。

 

 

-☆-

 

 

 初星学園、屋上。春の澄んだ南風が頬を撫でる。気持ちのいい晴天。透き通る青。

 そして――淡いライトブラウンの髪をした、育ちの良さそうな女生徒が、ひとりで泣きじゃくっていた。

 

 ――彼女をスカウトするには、()()()()()()()()()()だった。

 

「すみません。花岡ミヤビさんですか?」

「……な、何ですか、あなたは」

「俺はこういう者です」

 

 名刺を差し出す。

 

「花岡ミヤビさん。あなたをプロデュースさせてください」

 

 時が止まったかのように思えた。

 彼女は目をぱちくりさせ、しばらく固まり――

 

「………………………………は???????」

 

 困惑した。

 作戦は成功だ。こんな不意打ちのスカウト、猫をかぶれるはずがあるまい。

 そして、しばらくして、花岡さんは自分が置かれている状況を理解したようだった。

 

「……い、意味が、わかりませんっ!!」

 

 彼女は目を赤くしたまま、俺をギリッと睨みつけた。アイドルがしてはいけない顔、という表現がしっくりくるくらい、怖い。

 

「意味がわからない、とは?」

「何で声をかける先がミヤビなんですか!? 藤田ことね(アイツ)じゃないんですか!?」

「藤田さんには先約がいますからもう無理です。それに、俺は元から彼女をスカウトするつもりはありませんでした」

「へ、変なひと!」

「中等部No.4の実力者をスカウトしようとしているのですよ? 我ながら堅実な選択だと思うのですが」

「……そ、それにしたってタイミングが最悪です。劣等生だったはずのアイツに力の差をまざまざと見せつけられて、気落ちしてる時に声をかけるなんて。性格悪すぎる」

「あなたが言えたことじゃないでしょう」

「……最悪……!」

 

 そっぽを向いてどこかに行こうとする花岡さん。

 

「花岡さん」

 

 俺は普通のテンションで呼び止めた。花岡さんは髪を引かれたようにぴたりと止まり、こちらを向く。

 さっきのセリフを、もう一度。

 

「あなたをプロデュースさせてください」

「…………」

 

 花岡さんは俺のことをギリギリと睨みつけ、歯の奥を噛み締めた。壮絶な表情だ。ステージの上には、到底持っていけない。

 

 こんなとんでもないスカウトを俺が敢行したのは、プロデューサー科という肩書が持つ信頼感を頼ってのことだ。

 アイドル科の生徒は、基本的にはプロデューサー科の学生を信頼している。デビューした生徒には、大抵プロデューサー科の学生がついている、という堅固な実績を先輩方が積み上げてきてくださったからだ。

 それに、プロデューサー科自体の倍率もとんでもなく高い。しかも、現役のアイドル事務所のプロデューサーが学び直しのために初星学園に入学してくるほどに、プロデューサー科のカリキュラムは業界最先鋭を行く。当然、アイドル科の生徒もその事実を知っている。

 

 故に、花岡さんは悩んでいるのだ。腐っても俺はプロデューサー科の人間である。

 そして、花岡さんはついさっきのオーディションで、今まで成績の悪かった生徒に敗北を喫したばかりだ。きっと、今のミヤビに、スカウトしてくるプロデューサーは俺の他に居やしない――なんて、考えているのだろう。感情的になりやすい花岡さんだからこそ、凹んだ時のダメージも大きいし、ネガティブになりやすい。

 そこに差し伸べられた手だ。……取るに違いない。

 

 そう。俺は彼女のその性格につけこんで、今回のスカウトに利用させてもらったのだ。そうでもしなければ、高飛車で傲慢で自信家なお嬢様である彼女はきっと、実績も話題性も威厳も何にもない、俺みたいな若造のスカウトには決してなびかないはずだ。

 

 悩んで、悩んで、悩んで……意を決して、花岡さんが口を開く。

 

「……プロデューサー。そのスカウト、受けてあげます。でも……ミヤビは、プロデューサーのこと、大っっっっっっ嫌いですから!!!!!!」

 

 これはずいぶん派手に嫌われた。

 

 嫌われるだろう、とは思っていたし、なんなら既定路線ではあったのだが……少々、やりすぎたか……? 

 一応、書類を渡すと素直に受け取ってちゃんと書いてはくれたのだが。

 

 とにかく、無事……ではないかもしれないが、俺は花岡ミヤビさんとプロデューサー契約を結ぶことに成功した。

 こんなんだが、目論見どおりではある。

 

「くっ……とっとと成り上がって、こんなヤツなんか踏み台にして、犬束プロデューサーに認めて貰うんだから……!」

「口に出てますよ。思っていること」

「はッ!? ……や、ヤダナー、冗談に決まっているじゃありませんかぁ……ヤッパコイツムカツク……」

 

 ……目論見どおりである。たぶん。

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