転生したらヒルチャールだった件   作:良いスライム

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燃焼

 血が沸騰するように熱い。体中にあった傷の痛みが火種となって全身を突き動かす。

 身体の内外から伝わる熱が全身から溢れるようだった。

 全身に巡る力を確かめるように手を開く。そこには小さな真紅の炎が掌の上でゆらゆらと燃えていた。

 

「…ッ!コイツは危険だ!今ここで排除する!」

 

 ハンマーを持った男が、凄まじい速度で突っ込みながらハンマーを振り下す。

 俺は半身を捌くことで、紙一重で攻撃を避ける。そしてそのまま、奴の懐に潜り込み、両掌を腹へと突きつけた。

 流れるような動作に、ハンマー男がギョッとする様子が仮面越しにも感じられた。

 

「燃え尽きろ!」

「ぐぉぉッ‥‥!」

 

 全身の力を開放し、そのまま放出する。掌から放たれた炎の奔流は、凄まじい衝撃と共に男を吹き飛ばした。

 男は器用にも吹き飛ばされながら体勢を整え、両の足で地面を捉えると、ハンマーを地面に突き立ててザリザリと地面を削りながら減速し、勢いを殺した。

 

「へぇ、意外とタフだな」

「ば、馬鹿な…こんな威力の元素攻撃をヒルチャールが使えるはずが…」

「オイ、しっかりしろ!このクソがッ……」

 

 銃を持った男が慌てた様子で炎を纏った銃弾を乱射する。

 だが、その攻撃はすべて身体に届く寸前で、俺の身体を纏う炎によって燃やし尽くされた。

 

「効いていないだと!?そんなコトあるかよ!?」

「そんな豆鉄砲が効くわけねぇだろうが。炎ってのはこう使うんだよ!」

 

 手を広げて巨大な火焔を生み出す。そして円を描くようにして炎を球状に圧縮し、一気に解き放つ!

 放たれた火球は男を包み込むと、その血肉を薪とするように激しく燃え上がった。

 

「グォァァァ!熱ィ!肉が!俺の肉がァ!」

 

 男は火だるまとなって地面を転げまわる。炎がようやく収まった体からは、肉の焦げた嫌なにおいが立ち上っていた。

 

「フン、下種は焼いても喰えそうにないな」

 

 二人は全身から煙を上げて、満身創痍といった様子だ。

 俺は全身から真紅の炎を迸らせると、ゆっくりと二人に向かって歩み寄る。

 

「ウッ……」

 

 一瞬、眩暈がするほどの疲労が体を襲い、その場でよろける。

 この感覚は、以前にも味わったことがある。力を使い過ぎた時の反動だ。この力もどうやら長くは使えないらしい。

 

 俺は疲れを振り払うように頭を振ると、改めて二人を見る。

 流石と言うべきか、いつの間にか体勢を立て直しており、その姿からは気迫が感じられた。なんだ?まだ何かあるのか?

 

「オイ!こうなりゃ仕方ねぇ!アレ使うぞ!」

 

「あぁ。たかがヒルチャールに使うのはもったいねぇがな」

 

 男たちはそれぞれ武器を構えると、その体から力を迸らせた。ハンマーの男は雷を、銃の男は炎を、それぞれの身体に身に纏わせる。

 

 なるほど、こいつらも俺と似たようなことができるわけだ。だが…

 

「だからどうした!」

 

 姿勢を低くして地面を蹴る。俺は全身に纏う炎を推進力に変えて接近すると、零距離で炎を放った。凄まじい爆発が起こり、瞬間的に視界の全てを紅が埋め尽くす。

 先ほどよりも高火力の炎だ、この威力なら塵も残らないだろう。

 

「ご‥‥‥ッッ!」

 

 土煙が揺れたかと思うと、腹部に強烈な衝撃が走り、俺は後ろに吹き飛ばされた。

 勢いのまま壁に全身を打ち付けると、鎧が音を立てて砕け、肺から空気が漏れ出す。

 

「カハッ……グ…」

 

 馬鹿な、確かに爆炎はあいつらを飲みこんだはずだ。生きていられるはずがない。

 しかし、そんな思いをあざ笑うかのように、土煙が晴れた先に立っていたのは、五体満足で武器を構えた男たちだった。

 

「ハハハハッ!テメェにできることが俺らにもできねェワケがねぇだろうが!」

「少々手こずったが、お遊びはもう終わりだ。魔物風情が」

 

 二人の男がそれぞれの武器を構えて近づいてくる。

 オイオイ、マジか。あれ喰らって生きてるのかよ。しかも、ピンピンしてやがる。

 

 恐らくだが、奴らの身に纏っている炎や雷が、爆発のダメージを防いだのだろう。力の使い方に関しては、あちらが一枚上手だったか。

 思考もそこそこに、全身を締め付けるかのような痛みと力を使い切った時に訪れる倦怠感がすぐさま体を支配する。

 

「チッ、ここでガス欠かよ…つくづく運がねぇな」

 

 俺は自嘲気味に呟く。命を燃やした灯ですら運命を焼き尽くすまでには至らなかった。結局、俺はその程度の存在だったのだろう。

 全身に迸っていた炎の痣はいつの間にか消えており、身体から急激に熱が奪われていくのが感じられる。瞼は自然と落ちていき、懐かしい冷たさと暗闇が俺の身体を包み込む。

 薄れゆく意識の中で最後に聞こえたのは、どこかで聞いたような不思議な声だった。

 

 

 

 

「もう、世話が焼けるなぁ」

 




原神あるある:序盤のファデュイ強いがち
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