それは本当に心の底から思っているんだろうか?
どうしようもなく感情に振り回されて、
本心が分からなくなることがあるかもしれないけど、
僕の中にその感情しかないのなら、
それは間違いなく本心だと思う。
「君が新しい防衛室長だね?」
「誰ですか?あなたは」
「私はカイザーPMCの上級指揮官を務めるジェネラルという者だ。今日は君に提携の申し出に来た」
「あなた、私がカイザーと手を組むなどと、本気で思っているのですか?」
「もちろん簡単だとは思っていない。先の事件があった上で、なんの警戒も無く手を握らせてくれる道理はないだろう」
「またしても、私たちを上手く使い潰してやろうとでも?」
「そうだとも」
「自覚があるなら帰ってはいかがです?私は自分を軽んじている奴と仲良くできるほど、能天気ではないので」
「軽んじる?ハハハまさか、聞くところによれば、君は我々が追い出された後に這い寄ってきたハイエナどもを蹴散らしたそうじゃないか。一歩間違えば喰い殺されかねない猛獣を侮るなんてことはできないさ」
「ふうん……」
「だから防衛室長、不知火カヤ君、
「勝負?」
「そうだ、我々はさらなる成長のために連邦生徒会の力が必要だ、そして君も自らの野望のために力が必要だ、ならば互いに力を遣い合おうではないか。もちろんタダでは遣わせない。君も我々も罠を仕掛け、それをくぐり抜けた者が相手を遣うのさ。どうだ?」
「ふふふっ、まさに『大人の勝負』ですか……いいでしょう、しかし勝つのは私ですよ?吠え面かく準備をしておいてくださいね?」
「フフフ、ああ、そう来なくては……」
──信用してはいなかった。
──それでも、大人を従えるという証明は出来ると思っていた。
■
「SRT特殊学園が廃校!?」
「ええ、連邦生徒会長失踪の件、あなたも知っているでしょう?あの一件以来、あなたたちの最大の擁護者の声が薄れ、権益争いが激化している状況です」
「それで廃校論が湧いて出たということか」
「ええ」
「で?私を呼んだのはニュース速報を伝えるためだけか?」
「ふふふっ、察しがいいですね。あのときの約束を憶えていますか?あなたたちが本当の正義の体現者になれるようにするという約束、今ならそれを果たしてあげられます。連邦生徒会のあるべき姿を取り戻し、真にその責任を負える連邦生徒会長の存在を確立することでです。そのためにもユキノ、あなたの力が必要なのです。協力してくれますね?」
「……恐縮です。しかし防衛室長、一つ質問してもよろしいですか?」
「何ですか?」
「
「ユキノ……あなたは忘れたのですか?自分は正義を実行しているというのに、ちっぽけなプライドと権益のためにあなたたちを愚弄した役員どもを……私についてくれば、彼女たちに自らの存在の大きさを直接示すことができるのですよ?」
「防衛室長……それは……違います!我々は私怨のために戦っているのではない!」
「ユキノ……私怨というものは、時にこの世界を動かすものです。そして執念というものは、己の体を動かすものなのですよ。さあ、今こそ変革のために、彼女たちに目にものを見せてやりましょう……ね?」
「……くっ!……はぁ……分かりました……是非……存在意義を証明しましょう──」
──眉根を寄せたユキノの表情は、とても苦しそうでした。
──その時は、一体何に苦しんでいるのか分かりませんでした。
──今ならきっと分かる気がします。
■
「生徒の望まない進路を強制することはできないよ」
──所詮こいつもただの大人か、と思いました。
──思ってもないことを口にして、
──尊敬を掠め取ろうとしているのだと思いました。
「……なるほど、それはそれは」
──本性を暴いてやろうと思った。
──どのみちこいつは
──屈辱を植えられ、憎しみをぶつけられ、
──大人と子供の深い溝を知って諦めを受け入れるでしょうね。
「本当に私が決めちゃっていいの?」
──ええどうぞ、
──きっとあなたの見せる子供騙しに意志を折られることになるでしょう。
──そしてきっと、
──この世界の真実を知る生徒が増えていくでしょうね。
呪われてあげるという言葉は、予想だにしない一言でした。呪われたことのないような人間の放つ声に、どんな強制力があるかも知れませんでしたが、私はその人間の瞳が放つ光にしばし言葉に詰まってしまいました。
「何を……」
「いいよ、カヤ、君の苦しみも憎しみも、全部受け止めるから」
「それで、何をしようと……」
「いや、たったそれだけさ。ただ、そうしたいんだ」
「……それで、どんな説教をしようと言うんですか!?」
「何も言わないよ。何も言えない」
「なら何故?」
「うーん、それは……カヤが可哀想だから、かな」
「舐めないでくださいよ?」
暗闇を這うような声で恫喝する私を、その大人は真っ直ぐ正面から見つめて答えました。
「憎しみだけで心を突き動かして生きるなんて、あまりにも悲惨過ぎるよ。私はそんなふうに生きる生徒を見捨ててはおけないな」
「それなら……どうしてあのとき言葉を尽くそうとしなかったんですか……?本当はそんなこと、露ほどにも思ってないんじゃないんですか?」
「……私はね、心の中に迷いとか悩みを抱えている生徒を、みんな助けてあげたいと思ってるんだ、その中にカヤ、君もいる。でも私の腕は二本しかなくて、誰かを助けている間は、別の誰かを助けてあげることはできない。だから、後回しにしちゃうんだ。今目の前のことを大事にしようって、思っちゃうんだ」
「それで……私の番は後で、今がその時だとでも言うんですか……?」
「うん……」
困ったような表情がわざとらしくて、ますます腹が立ちました。もしあの時かけられた言葉が違ったら……いや、何も変わりはしないでしょう。
「はっ……そんなの、偽善ですよ……救うだなんて無責任もいいとこです……」
「そうだね……」
「どのみちあなたは認めないでしょう、私の意志を、私の信念を、私の覚悟を、私の世界を……」
「……」
「あなたは私の選択した道を間違いだと見做して消したじゃないですか、所詮私には、あなたの作る道の後を辿っていくことを望んでいるんじゃないですか?あなたの言う正道とやらに。いいご身分ですね、人生の先達とやらは、不正解を知っていて」
「そんなことはないよ。君の話を聞いていれば分かる、君は君自身のために生きる理由を見つけて、君自身の道を選択した──」
「それなら!何故私の邪魔をしたんですか!?ははっ……きっとあなたは正解の選択というものを知っていたからなんでしょうね、私の選択が誤りだということを知っていたからなんでしょうね!!」
その大人は少し前を思い出すように目を閉じて、そして再び私を見つめてはぐらかすような口ぶりで告げました。
「あの時は、ミヤコの正義を信じたってのはあるかな。あえて言うなら、君がもう戻れない一線を踏み越えて行きかねなかったから……かな」
その次の句を放つ大人の目は澄み切っていて美しいものでした。まるで私がかつて抱いていたような……純粋な……。
「でも君の話を聞いて確信したよ。カヤ、君の目指したものは気高くて、君が心から望んだことだってことがね」
「なら……もう私の邪魔をしないでください!!」
「うん、そうだね。だからここから飛び立っていく前に、君の呪いの全部を、私にぶつけてきてよ」
その言葉に私は身を乗り出して、私とその大人とを隔てるガラスに掴みかかって、渾身の怒りと憎しみを込めて──
「お前に何が分かる!!私が味わった苦痛を!屈辱を!敗北を!キヴォトスの安定のために練り上げた知恵も!そのために流した汗も!涙も!お前は全部ふいにしたんだ!私がどれだけの時間を費やしてこのキヴォトスを統治する方法を考えたか分かっているのか!?一体どれだけの恥を忍んで平気な顔をしていたか分かっているのか!?どうせ分からないだろう!小賢しい大人の理屈を引っ提げてヒョコヒョコやって来て、長い執念を横から踏み荒らした人間には分からないだろう!ああ忌々しい!私はこの苦しみの対価を支払わせるために、お前にさえも穏当な顔をしてきたんだ!どうせお前も同じ大人の一人に過ぎない……その直感は正しかった!だがお前はもっと卑劣だった!大人のくせに子供みたいなことを言って、ウサギどもを籠絡して、そのくせ一丁前に一歩後ろに控えて状況を眺めていやがる!分かるか?生徒が
燃え盛る怒りの炎に肺が焼かれて、痛いほどの熱さとむせ返るような煙臭さが喉を通っていきました。そして肺の中身が燻ぶって空っぽになるまで叫び通して、煤まみれの吐息がようやく晴れた後、規則的に穴が開けられた窓からその大人の姿を見ると、泣いていました。そしてそのとき、私も泣いていることに気づきました。
あんなに拒絶したのに、軽蔑したのに、素直じゃなかったのに……それでも私のために涙を流してくれているように感じて、涙が止まりませんでした。強張っていた上半身の力が抜けて、ゴシャリとガラスに額からもたれかかりながら泣きました。
その大人は私と同じように、ガラスに額を当てて、ゆっくりと呟くように話を始めました。
「カヤ、今まで……よく頑張ったね。そして、ごめんね……気づいてあげられなくて。ずっと努力していたのに、認めてあげることもできなくて……ごめんね」
「謝らないでくださいよ、私が……嫌いになれないじゃないですか……」
「いいんだ、私が泣きたいだけだから」
「嫌だ……いやだいやだいやだ!同情なんてされたくない!私を否定したお前に!」
「……ごめんね、でも君にかけられた言葉が無意味になって、誰も寄り添えなくて、そして一人ぼっちになってしまった君の話を聞いていると、私も悲しくなってしまうんだ」
「いらない!ほしくない!なんでも持ってるお前に!」
「だけどね、君が理想を抱いていた頃の君の話は意欲に満ちていて、君が心から望んでやろうとしていたことなんだなって、分かるよ」
「だから私を認めると?」
「うん。君の理想は高潔で崇高なものだと思う。私はそれを応援するよ。でも、だからこそ、その道から憎しみを取り除いてほしい」
「あなたは……何が望みなんですか?」
「君が希望する未来……かな……」
もう何も理解らなかったし、理解りたくもなかったし、理解られたくもありませんでした。でも分厚いガラス越しに触れ合って伝わってくる気味の悪い温もりを、もう拒むことができませんでした。だから精一杯の冷たさを、心臓から引き出して吐き出しました。
「何が言いたいんですか?何をさせたいんですか!?この私に一体何が出来ると言うんですか?あなたがいくら私を肯定しようが、この思いから湧き上がる衝動から生まれるものは空虚じゃないですか?私は……何をすればいいんですか?」
「カヤ、君はもうわかってるんじゃないかなって、私は思うんだ。自分が何を選択すべきか、どう考えるべきか、誰と関わるべきなのかをね。だから、私が何か特別教えることは無いと思っているんだ」
「今更……何を言い出すんですか、私はもう復讐しかできませんよ?あなたには見えませんか?この呪いに蝕まれた純朴さというものが──」
「見えるよ。だから私は君を捕らえている呪いを解きたいんだ。君の目と耳と口を歪めている過去の呪縛を──」
不可能だ。
「解いてどうするんですか?」
「君にもっと自由に生きてほしい」
無謀だ。
「私は自由を捨てました」
「それなら、私が自由を教えてあげる」
独りよがりだ。
「そうしたところで、私はあなたを傷つけますよ?」
「いいよ、君に殺されるなら本望さ」
心にも思ってないくせに……!
「私はあなたの全てを奪います!大切なものも、大切な人も、築き上げてきたものの全てを破壊します!それでもそんなことを言うんですか!」
「いいよ、君が自由になれるなら、私はなんでも捧げるよ」
嘘うそウソ嘘うそウソ嘘うそウソ!!!
「何が……一体何があなたをそうさせているというんですか?明らかじゃないですか?私はもう
「それでも!カヤには自由になってほしいんだ!!」
涙を湛えたままの二対の
「カヤ、君に付いた傷跡はきっと消えることはないと思う。だけど憎しみに囚われ続けたまま、新しく付く傷の痛みに見て見ぬ振りをするのは、ただ君を不幸にする。君はその痛みを分からないわけじゃないから。感じられないわけじゃないから。苦しいと思うことができるから。君は君の視界に纏わりついているものを拭い去って、周りにいる人のことをちゃんと見る必要がある。その邪魔になるなら、君の憎しみの全てを私が受けてあげる。他の生徒の姿にかかっていた靄を、私が引き受ける。憎しみのために人生の全てをかけるなんてこと、カヤにはしてほしくないから。カヤが憎しみに囚われたまま、自分を投げ捨ててしまうことを止められなかったら、私は悲しいから」
「私から憎しみを取り除いたら、もう何も残りません……」
「そうかな?これまでみんなと過ごしてきた日々の思い出が、ちゃんと残ってると思うけどな」
「何も無くなった後に残るものとは何か?」──あの問いが再び脳裏によぎりました。それはあまりに微かで今ははっきりとは見えませんでしたが、その影は私を構成するものの全てが憎悪と妄執でできているわけではないことを証明しているようでした。
すっかり肩の力が抜けてしまうと、私の体は椅子の上にすっぽり収まって縮こまってしまいました。先生も肩の力を抜いてゆっくりとまた腰掛けると、憎たらしい笑みを浮かべて尋ねました。
「どう?多少は楽になった?」
私は鼻で笑って否定しました。
「別に、なんにも変わりはしません。ただ……くたびれてきただけです」
その言葉を聞いて安心したように笑う先生には、不思議と怒りが沸くことがありませんでした。
「先生、あなたは所詮ただの大人です。子供にとっての本物にまやかしをかけて騙くらかすような、そんな人間です。でも……まあ、最後に一回ぐらいは、騙されてあげます」
「甘いね……このクレープ……」
「でしょう?あのときも唾液が枯れそうだったんですから」
「なんていうか……お茶が欲しくなるね」
「私はコーヒーの方がいいですね」
先生と私は、再びあの海沿いのベンチでクレープを食べていました。あの時と同じように、同じフードトラックから、同じイチゴとバナナのクレープを、今度は一人一つずつ。妙に甘ったるいクリームは相変わらずむせ返りそうなほどに甘かったのですが、それは決して私の勘違いではなかったということを確認できたのが、それなりに愉快さを覚えている理由ではありました。
「それでごめんね、収監期間は下限があるから、すぐに出所って訳にはいかないんだって」
「別に期待はしてませんでしたよ。あなたに世論をひっくり返せるとは思ってないので」
「えー酷いなー」
「ふふっ、いい気味です」
あれから私の身柄に対する減刑嘆願がなされ、それなりの刑期の減免が行われたようです。先生、リン、FOX小隊、さらにはRABBIT小隊からも証言があったそうです。
「しかしよく証言が出て来ましたね、先生がシャーレの権限をゴリ押しするのかと思いましたが」
「そんなことないよ。それとも何?
「まあ、庇ってもらえると思ってなかったことは確かですね」
「じゃあそれ伝言しておくね」
「そんなことは言わなくていいんです!」
先生はいたずらっぽく笑うと、私の方を見遣って言いました。
「カヤ、君は自分が思うよりずっと、君だけができる役割を果たしていたし、みんな君のことを応援していたんだよ」
「そうですか」
「もちろん君が望んだカタチじゃなかっただろうけどね」
「まあ……そうですね」
甘みに覆われてクタクタになった粘膜を唾液で潤すと、私も減らない口を開きました。
「しかし良かったんですか?私が連邦生徒会に復帰するなんて、行政委員会からは反感が上がりそうなものですが」
「いや?なんだかんだ大変そうにしてたよ。カヤがやってた仕事にみんな慣れてなさそうだったし、戻ってきたら有難がられるんじゃないかな?」
「ああそうですか、一体どこまで本当なんだか」
どんな行いをしたのであれ、連邦生徒会の一人の仲間とでもいったところなのでしょうか?何も知らずに頼りにするなんて、なんと楽観的なことでしょう。
「カヤは復帰したら何がしたい?」
「そうですね……まぁ、SRT復活くらいは真面目に取り組みましょうかね、なんだかんだ言って約束はしたので」
「ふふっ、真面目だね」
「もちろん連邦生徒会長の座は狙いに行きますよ。まあそれなりに王道を行かざるをえないでしょうけど」
「頑張ってね、応援してるよ」
「はーいどうもどうも」
半ば投げやりに返事を返すと、クレープの最後の一口を放り込んで包み紙をグシャグシャと丸めました。先生はまた、「ゴミ捨てるよ」などと宣わったので、今回は捨てさせることにしました。
「カヤ、この先連邦生徒会長になったら、どんなキヴォトスにしたい?」
「そうですね……」
私は立ち上がって先生の顔を見下ろすと、心を決めて宣言しました。
「私はやっぱり、キヴォトスを生徒の手に取り戻そうと思います。学園や自治区をどうするか、そして自分自身をどうするか、大人と社会の事情に振り回されずに決めることが出来るように、
余裕のない心の隙間に企業の手が入りこまないように……そういう仕組みを作ろうと思います」
いずれ
「うん、いい考えだと思う」
「まあ、あなたにどう思われようが関係ありませんがね。ほら、そろそろ戻りますよ」
「はいはい、分かった分かった」
私は手錠越しに繋がれた先生の手を引っ張って歩きました。先生は並んで歩くでも、私を追い越して引っ張り返すでもなく、私の後ろで引っ張られたままでいてくれました。
「また遊びにくるよ」
「暇なんですか?そんなにしょっちゅう来られるなら本気で早く出所したいですね」
「ふふふ、別に出所してからも遊びに行くよ」
「勘弁してくださいよ、一体どんな用事があるっていうんです?」
「ん?たまには愚痴でも聞いてあげようかなって、ちょうどいいでしょ?毒の吐き場があれば」
「……ちっ、はいはい感謝しますよ」
正直、悪い気はしませんでした。
■
矯正局に戻ると、大きな段ボールの包みが出迎えていました。
「不知火カヤさん、荷物が届いています」
「……先生何か送りましたか?」
「いや、何も?差出人は誰なの?」
「はい、レッドウィンター連邦学園のチェリノという方からです。中身はチェリョンカという名前のチョコレートのようです」
記憶からあの憎たらしいガキとのやり取りを思い出すと……
「ああっ!!あのときのやつですか!!遅いですよ!もう何もかも終わってるんです!」
「あっでもなんか手紙が一緒に付いてるね、なになに……」
「別に読まなくていいですよ……もう……」
真意を知り、理解するものは多くはなく、
そして不条理にも怒りをぶつけられるものだ。
しかしそこで大きな懐を持つべきなのだ!
王は常に民のためにあり、民を憂う、
その想いを示してこそ民は付き従うのだ!
然らば君も自ずと示すべき政策というものが見えてくるであろう!
また会う機会を楽しみにしているぞ!
親愛なる不知火カヤ連邦生徒会長代行君!
「まったく……もう代行じゃないんですけど!」
「次チェリノに会うときには、代行にならないとね」
「代行としては会いません!堂々と連邦生徒会長として会いますよ!」
「頑張ってね」
「ええ!」
そう言うと私は牢屋に連れられていきました。そのチェリョンカチョコレートを携えて──もちろん一つだけで、残りは先生に預けてですが。檻の中に戻ると、早速包みを剥いでひと齧りしてみました。
「甘ぇ〜〜〜」
昂ぶって渇いた喉が、ますます渇きました。
子どもというのなら、僕達は一生ずっと子どもだ。
それでも懸命に生きようとして、
敗北を重ねながら茨の道を行こうというのなら、
それはただの大人ではなく、
「超人」というべきなのかもしれない。
お読みいただきありがとうございます。
この話を書くにあたって、カヤにどんな言葉をかけるかというところから始まりました。理屈で叩けば頑なになってしまうでしょうし、慰撫だけしてもプライドをぐずぐずにしてしまうだけだろうという推測がありました。
そのうえでどんな言葉をかけるかなのですが。ここはやはりシンプルな労いと共感、感情のぶつけ合いが一番良いと判断しました。これも個人の経験になってしまいますが、挫折に心が崩れてしまったときに一番ありがたかったのは、一緒に悲しんでくれたことでしたので。
先生の説得は、本編にかかわらず、極めて個人的な経験に依拠したものではあります。ですがそれゆえに、生徒1人1人に響く言葉はあるのだと思うことにしています。
もっとも、カヤの場合、応援してくれる人もいるでしょうから、ちゃんと背中を押すということも忘れたくなかったな、というのが本作での会話になります。
というわけでお付き合いいただきありがとうございました。少しでもカヤの目の曇りを晴らしたいと思って始めたシリーズでしたがいかがだったでしょうか?おそらく来るであろうカルバノグ2章の続きが公式から出る前に、私なりの方法でフォローアップしておきたかったという目標を達成できたので。個人的には満足しています。感想の方もブラッシュアップに活用させていただいております。ありがとうございました。
それではまた別の作品でお会いしましょう。感想・高評価など頂けると励みになります。よろしくお願いいたします。