「ここが、そのカフェか?」
「そうみたいだね」
日没後、3人は街中にあるテナントの前にいた。オシャレな看板に「Dessert Tiger」……砂漠の虎という名前が筆記体で書いてある。
そして店の前に立て札が置いてあり、そこに夜の部のルールが書いてあった。
「えっと、なになに……。『ガンプラご持参のお客様のみが入店頂けます。奥のバトルスペースに入る際はガンプラのチェックをさせていただきますのでご了承ください』って、モリタさんの言った通りだね」
「とりあえず入ってみようか。みんなガンプラは持ってきたでしょ?」
コウスケが扉に手をかけながら言うと、それぞれAGE-1ルミナスとウィンダムを取り出す。頷いてフラッグを出したコウスケは扉を押し開けた。
カランカランとトビの上に着いていた鈴がなる。その音で3人に気がついた店員が1人こっちへやってくる。
「いらっしゃいませ。恐れ入りますが、外の看板はご覧になられましたか?」
「「っ、ダコ…」」
「どうかされました?」
「い、いえ、なんでもないです」
「2人とも、どうしたの?」
「いや、なんでもないよ?」
こちらにやってきた受付の顔がどう見ても劇中の砂漠の虎さんの部下にしか見えなかったので思わず固まってしまった。
咳払いをしながら会話に戻る。奥のバトルエリアに入りたいと言うとガンプラ見せるように言われたのでモリタの紹介だと説明しながらもそれぞれ見せた。それを見て店員さん……名札には「マチダ・コウスケ」と書いてある男性が納得したように頷いた。
「なるほど、あの方の紹介でしたか。ガンプラもよく手入れが施してありますね。さ、奥へどうぞ。バトルも大丈夫ですよ」
3人はお礼を行って奥に入る。
歩きながら、ミツキはユウトに耳打ちした。
「……俺、前から思ってたんだけど……絶対何人かガンダム史から転生してる人いるでしょ」
「……カトー先生ならともかく、ダコスタくんは死んでねぇだろ」
「そうだけど……いくらなんでも似すぎでしょ…」
そんな会話をしながら中に通してもらうと、目に飛び込んできた光景にミツキは歓声を漏らした。
元々は四人席があったであろう場所が片付けられていて、代わりにGPDの筐体が置いてある。そのまわりにガンプラを整備している人や、それを見せ合うひと、バトルを振る人など様々なプレイヤーが賑わっていた。
「君たちがモリタさんの紹介で来たお客かい?」
「あ、はい。そうで……」
「…ん?どうした?俺の顔になにかついてるか?」
「いえ、ナンデモナイデス)
そりゃそうだ。とミツキとユウトは内心乾いた笑いを漏らす。店員がああなんだから店主もそうか。とカウンター裏でマグカップを拭く砂漠の虎さんに酷似した男性を見た。
「さて、カフェ砂漠の虎へようこそ。俺はアンドウ・ハルトだ。ゆっくりくつろいで行くといい」
「ありがとうございます」
「えっと、ふたりとも、さっきからどうしたの?」
この異常事態にガンダム初心者故に知らないコウスケが聞いてくる。
「まぁ、ちょっとガンダムのキャラに似てる人がいてな。今度詳しく教えるよ」
「へぇ〜…もしかして僕みたいな?」
「お前は特別だ」
「同感」
ミツキとユウトにそう評されてなんかちょっと嬉しそうなコウスケ。2人からすればあれは似てるとかじゃなくてもう本人だ。コウスケが加入してからグラハム化してる彼を幾度となく見たが、もう大体劇中のセリフは網羅していた。それを見て笑いを堪える対決を密かにモリタと、この前来たカシワギと4人でやってる程だ。
どの道バトルは出来ないので筐体でやってる対戦を感染することにた4人がそれぞれ飲み物を注文する。店内の大きいモニターで映された対戦を眺めていると、カウンターに座ってたおじさんから話しかけられた、
「なんだ、君たちはバトルしないのか?」
「俺たち、人の紹介で初めて来たんで……最初は見てようかなって」
「……ああ、モリタの紹介か。なるほどな」
モリタさん、一体何者なんだと目を瞬かせる3人。そのまま対戦画面を見直した時、後ろの入口から誰かが入店した。恐らくその客もガンプラ審査をするはず。ミツキはどんな機体なら通るのかとちょっと気になって後ろを向いた。
「……あれ?」
見たところ、入ってきたのは同年代くらいの男女3人。黒髪白メッシュに三白眼の男子と亜麻色のボブカットの女の子に、メッシュなしの黒髪を後ろで束ねたどこか眠そうな目をした男の子。その中の1人がガンプラを出すかと思いきや、ダコスタくん……マチダさんに普通に通された。
まさかの顔パスにミツキが驚いていると、ちょうど目の前の試合が終わった。対戦者同士顔見知りのようで、バトルの感想をそれぞれ話している。
「次、やる人いませんかー?」
店内に響く声にユウトが周りを見るとミツキとコウスケは少し緊張しているようだ。それを見たユウトはガンプラを取り出すと前へ出る。
「ユウト?やるの?」
「おう。せっかくだしな」
「白パーカーのお兄さん、やりますか?」
「はい。お願いします」
受付の人に頷いたユウトを見て、さっきカウンターにいたおじさんが手を上げる。
「じゃ、俺が出るか」
その言葉に店内が少しザワつく。
3人は知らないが、この「砂漠の虎」というカフェはガンプラ審査ありという経営形態もあって夜の人入りに新規が来ることは稀だ。よって、店内にいる人の大半はみんな顔見知りである。そのなかで始めてきた新顔がバトルをやるというのは大変注目されていた。
そして今名乗りを上げたこの男も、その新規とよく戦っている。モリタの紹介と聞いて興味が出たようだ。
「あんちゃん。ここの対戦はデュエル限定だが、大丈夫か?」
「はい。平気です」
「そうか。よろしく頼む」
「こちらこそ」
両者がGPD筐体の反対側に着いた頃にはバトルエリアのほぼ全ての人が注目ていた。特に視線は新顔のユウトに集中しているのだが、そんな中でもユウトは涼しい顔をしている。
そんな中筐体が起動してステージを形作る。今回のステージは宇宙。月面の弱重力地帯だ。
相手のガンプラは見えないから出撃してから考えるとして、ユウトは筐体に端末と、それに登録した自分の愛機を載せる。
「カミヤユウト、ウィンダム出る」
合図と一緒に操縦桿を倒し、ユウトは不敵な笑みで宇宙に躍り出た。
「……珍しく、新規の客が戦うようだなァ」
試合が始まった筐体のモニターをみて、トガ・カナタはそう呟いた。
筐体の前に歩いていく白パーカーの男子を眺めで腕を組む彼に隣のヒイラギ・ミユが首を傾げる。
「カナタにぃ、わたしのガンプラの試運転はどうするの?」
「そうだなァ、あの試合に勝った方にしてみるか?」
「えぇ〜、わたし自信ないよぉ。……アキトにぃはどうするの?」
「…俺はあれを見てようかな」
束ねた黒髪を揺らして、アキトと呼ばれた少年は筐体に少し近づいた。腕を組んで、モニターではなく実際のステージを見つめている。
「あの人、見ない顔だけど……」
「ああ、新規なんだと。カウンターのおっさんが相手するってこたァ、見込みありの相手なんだろうなァ」
そんな2人の会話を尻目に、試合が始まった。カナタ曰くカウンターのおっさんが使うのはザクと同じく深緑色に染められたサザビー。月面の宇宙ステージを進みながら背中のラックからファンネルを発進させる。
次に相手の少年の機体を映す画面を見たカナタの目が見開かれた。
「……素組みか?」
月面ギリギリを進むガンプラの名はウィンダム。ガンダムSEEDDestinyに登場する量産機。性能や活躍も量産機らしく、主人公機にバカスカ落とされていたのをよく覚えている。背中に高機動バックパックのエールストライカーを装備してはいるが、パッと見だと性能は素組みと大差ないことが分かる。
サザビーは、展開したファンネルを月面スレスレに飛ぶウィンダムに向けて、進行方向を塞ぐように一斉射撃した。
そのまま行けば、自分からビームの雨に突っ込んでバラバラになって終わりだ。………そのウィンダムを動かしているやつが変態では無い場合の話だが。
ウィンダムは、自分の周りにファンネルが展開されたと確認するや否や、月面を蹴って真上に進路を変えた。自分を包囲した六機のファンネルの内の一機に迫り、被弾面積を抑えながら放たれたビームを機体の角度を変えて躱すとそのままファンネルを通り過ぎる。
お手本のようなファンネル対策だ。包囲を脱することで、ビームが飛んでくる方向を1つに絞ることができる。ただ、それの許すほどサザビーも甘っちょろくはない。ファンネルを抜けてきたウィンダムに先回りしていたサザビーは手にしたビームショットライフルを向ける。直後、拡散されたビームが吐き出された。
回避しにくいように放たれたショットライフルのビームを、ウィンダムはシールドで受けながらサザビーに接近する。
ウィンダムを後ろから追随するファンネルがビームを放つが、ウィンダムは進路を変えずにそのまま飛び、機体の両脇をファンネルのビームが通り過ぎた。
それを見た、アンドウの笑みが深まる。それを尻目に画面を見ていたミツキは首を傾げた。
「……今のはどういうことなの?ファンネルを外したってこと?」
「…いや、多分アラートでのフェイントをかけたんだろう」
ミツキの言葉に、アンドウが答えた。
ガンプラからの映像をモニターで見るGPDは、その仕様上後ろ側が死角になる。そのために後方警戒用のアラートが攻撃を教える仕組みなのだが、サザビーはそれを誘発させたというわけだ。
「……そもそも今の局面、後ろからのファンネル攻撃をウィンダムに向けると、自分も流れ弾を食らう位置関係になっていた。そこで自分達を囲うように射撃し、アラートを鳴らせて反射的に回避行動を取らせて被弾させる、という行動をとったってことだ。頭ではわかっていても咄嗟に動いてしまう。人間の癖の隙を着いた戦法を、まさか躱すとはね」
「……まぐれって線はないんですか?」
ミツキが気になったところをコウスケが聞くが、無言で画面を指さされたのでそのまま見てみると、ウィンダムは突撃をしながら、後ろに向けてビームライフルを一発撃っていた。
緑色のビームが向かうのは、六機の中で唯一命中コースで狙っていたファンネルだ。それが無惨に撃ち抜かれ、宇宙の中に爆発の華を咲かせる。
「……わかってなきゃ、あんなこと普通しないな」
そう言って改めてマグカップを拭き出すアンドウに乾いた笑いしか出ないふたりだった。
先程話題となったプレイは、ミツキ達のところだけではなく、店中の視線の的となっていた。ビームを防ぎながら接近したウィンダムは、近づきすぎてショットライフルの威力が上がらないように散弾の根元をバレルロールで躱すと、サザビーの関節に向かってビームライフルを放つ。
それをシールドで防ぎながら後退したサザビーはシールド裏のミサイルを発射する。ウィンダムはそれを伸ばした右手軸でぐるぐるとバレルロールで避けながらビームライフルを続けて撃った。右手が回転軸なので、機体が回ってもライフルの射線がブレない。ガンプラ離れしたその動きに店内から歓声が上がる。
しれっと回転しながらシールド裏のミサイルも撃ち込んだウィンダムはライフルを左手に持ち変えると、エールストライカーに装備されたビームサーベルを抜刀した。
サザビーは弾速の速いビームの中にミサイルが混ざっていて動きにくい。2発の弾頭をショットライフルで迎撃し、爆炎を盾にファンネルを展開しようとして。
『……おぉっ!』
直後、爆炎を切り裂いて飛来したビームがサザビーの右のファンネルラックを撃ち抜いた。背中のプロペラントタンクも巻き込んで爆発を起こしたサザビーはファンネルを失い、機動力が下がる。
そのプレイングに周りから歓声が上がった。
腕を組んで見てきたカナタも、興味津々出みていたミユも驚きで目を見開く。
「カナタにぃ、今の…」
「…ああ、当てずっぽうって訳じゃァ無さそうだが」
映像の中ライフルを構え直したサザビーにウィンダムが突貫する。機体の進路軸をずらしてビームをギリギリで躱すと、右手を狙ってビームサーベルを振り下ろす。盾では防ぎにくい軌道の斬撃に、サザビーは下がるしかない。
下がって避けたビームサーベルの返す刃を盾を掲げて防ぐ。攻撃を受け止めながらサザビーは右脚を上げて、ウィンダムに回し蹴りを叩き込もうとする。
蹴りを盾で受け止めたウィンダムはエールストライカーのスラスターを全開。フルスペックだったら押し負けていいる力比べを、サザビーのバックバックの損傷で優劣を返した。
しかし、脚を離したサザビーもさしたるもの。ウィンダムがショットライフルの懐に潜り込んできたと確認するや否やライフルから手を離し、盾裏に装備れたビームトマホークを抜刀。トマホークという名の通り、肉厚なビーム刃はショットライフルを真っ二つにしながらウィンダムに迫る。
ウィンダムは辛くもシールドでトマホークを受けるが、ガンプラの出来の違いかシールドが斬られてしまった。左手に持ったビームライフルは無事なのでサザビーのシールドに膝蹴りを叩き込み、ビームライフルを連射させながら距離をとる。
そのウィンダムの撃ち方にミツキは既視感を感じた。
「……あ、これって前の…」
「……前の?何か言ってたの?」
「ああやって盾が大きい機体は、ワザと盾に撃つのが強いんだって。今攻撃を防げているって気にさせるのが大切だって言ってた」
ユウト駆るウィンダムは今、サザビーに択を押し付けている。……ビームトマホークの威力が怖く、機動力が下がりファンネルを失った状態なら離れて射撃戦に持ち込みたいと、そう思わせるために。そして、反撃のカードを隠せるように「ザザビーの腹に装備された兵装」が光を貯めているのに気がついていない。……そう、相手に思わせる為に。
ザザビーの腹部メガ粒子砲のチャージが終わり、ビームライフルを盾で防ぐ。距離を開けるために連射しているのだろうが、もうそろそろ弾が切れるはずだ。予想通り、ビームライフルの連射が止まった。距離が空いたので、ウィンダムはビームライフルをマウントして、右手にビームライフルを持ち直す。…その瞬間を狙った。
直後、フルチャージしたメガ粒子砲が光を吐き出した。
ガンプラ一機丸々覆い隠すような幅のビームが宇宙を貫き、月面に着弾して大爆発を起こす。
不意打ち気味の大出力ビーム。それに、相手の意識が逸れる瞬間を狙った。そしてウィンダムの位置で爆発が生じた。これを喰らえば流石に無事では済まないと判断したザザビーはメガ粒子砲の掃射を辞める。
その瞬間。
斬撃音と共に、サザビーの右腕が根元から切断された。なけなしのスラスターでその場を離れると、エールストライカーを脱いだウィンダムの姿が。
誘われた。
そう理解したサザビーは残った盾を構えた。相手のウィンダムのビームライフルは弾切れ。自分にとどめを刺すにはサーベルで突撃するしかない。
しかし、ウィンダムのビームライフルが火を吹いた。
ユウトは弾切れと見せかけて一発だけエネルギーを残していたのだ。
「……っな……!?」
ザザビーのパイロットが驚いた声を上げた直後、コックピット部分の頭部がビームライフルによって貫かれていた。
《WINNER Player 2》
『……おおぉおおおお!』
店内が歓声に包まれる。
ガンプラを回収して対戦の礼と握手をしたユウトは対戦相手のおっさんに興奮気味に話しかけられていた。
「…あんちゃんやるなぁ!……まんまと腹メガ粒子砲を誘われたよ…!」
「ありがとうございます。俺もそちらのトマホークの抜刀には驚きましたよ」
「それ、普通に避けてビームライフルの弾数のブラフかけてくるあんちゃんにゃ言われたくねぇなぁ〜。いやぁ、ナイスファイト!久々に血が騒ぐ戦いができたよ」
そんなふうに語るおっちゃんとユウトを他の観客が取り囲む。そんな様子を眺めながら、ミユは同じ場所に立つアキトに話しかけた。
「…アキトにぃ、今の戦い凄かったね」
「…ああ。俺、あいつと戦いたいな」
「今日はガンプラ持ってきてねェだろ?我慢しとけって」
そういうカタナも笑みは深かった。カナタが見ていて1番衝撃的だったのは、彼が使っていたガンプラがほぼ素組みだった事だ。アイツが、俺のガンプラを使ったら一体どうやってしまうのか。面識はないが、見ていて創作意欲を刺激される男だった。
「…するとまァ、あのウィンダム使いの連れの2人も只者じゃないかもなァ」
喧騒から解放されたユウトに話しかけてハイタッチをしている2人の男子を見ながらカナタは言う。
普段の感情の動きが少ないアキトが燃えている様子は珍しい。
そんな幼なじみの様子を見て口角を上げたカナタは、ミユにガンプラを渡した。
「よし、今度は俺らだ。行くぞ」
「うう、今の試合のあとだと緊張するよぅ」
いつか、アイツらとも戦いてェな。
自分のガンプラを持ちながら楽しそうに会話する3人を見て、カナタは内心でそう呟いた。
ソラザキ・ミツキ
ユウトのプレイにドン引き。バトルを見ながら飲んだコーヒーの美味しさに驚いて、帰る際にパックで売られてるコーヒーを買った。
カミヤ・ユウト
強いプレイヤーと戦えてウキウキ。今回の戦いで店内の色んな人と顔見知りになり、知り合いが増えた。じーっと自分を見ていた黒髪を束ねた少年と目が合い、お互いに顔を覚える。コーヒー好きで今後昼の部にちょくちょく顔を出すこととなる。
アイノ・コウスケ
グラハム化してないので影薄め。他のプレイヤーのバトルを見て、可変機の動きの勉強中。
トガ・カナタ
新登場した変態の1人で、三白眼に黒髪白メッシュが特徴的。
下記のふたりとは幼馴染。
コドウ・アキト
静かな雰囲気の、束ねた黒髪と眠そうな目が特徴的な少年。ユウトと戦いたいそう。
ヒイラギ・ミユ
上気2人の幼なじみで一歳年下。甘色のボブカットが特徴の天真爛漫少女。
戦闘描写、どうですか?
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文を読んで想像しやすい。
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ガンプラの動きや戦法がかっこいい
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ちょっとわかりにくかった……