【急募】このガンプラチームのまとめ方   作:猫好きの餅

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 今回は息抜き回です。

 この2人書いててすごい癒されます。



2人きりのガンダムトーク

 

 

 

 

 

 カフェ「砂漠の虎」に訪れた日の翌日。土日明けの月曜日ともあって普通に或美学園に登校したミツキは、欠伸を噛み殺しながら席に着いた。

 

 昨日自宅に帰ってからも砂漠の虎で見たガンプラやバトルのことを想像してしまい、寝るのが遅れてしまった。

 

 そんなミツキに近づく人影があった。何故かちょっともじもじしているアマツカ・ノゾミは、意を決した表情で話しかける。

 

「…い、委員長?」

「ん?…あ、アマツカさん。おはよ」

「お、おはよう。……その」

「ん、どうしたの?」

 

 何か言いたそうに、それでいて言いにくそうにもじもじとするノゾミにミツキの頭の中が「?」でいっぱいになる。それに頬を種に染めながらもじもじするノゾミが可憐でちょっと見蕩れたりもした。

 

 ノゾミは覚悟が決まったのか、顔を真っ赤にして目をキュッと閉じながら口を開いた。

 

 

 

 

「ほ、放課後、じ、時間…あるかなっ?……ふ、2人で話したいことがあるのっ…!」

 

 

 

 

 

「へ?」

「おぉっ」

『あ"ぁ"?』

 

 ちなみに間抜けな声はミツキの、次はニヤついた笑みを浮かべたユウトの、そして最後の怨嗟の怒号はクラスの男子たちの声だ。

 

 言い切った様子のノゾミはぷるぷる震えながら目を閉じたままだ。

 

「ちょ、ちょっとノゾミっ?…あ、朝からこんなとこで…何してんのよっ?」

 

 思考停止したミツキに変わって、彼の隣の席のノゾミの友人、コトネが席から立ち上がり、唖然とした顔でノゾミの肩を揺する。それに反応して目を開け、クラスの空気の変わりようにぱちくりと瞬きをするノゾミはこてんと首を傾げた。

 

「え、コトネ?どうしたの?」

「どうしたのはこっちのセリフっ!一体何を…」

「…あ、でっ……委員長っ、どう?」

「え、えと、……どうって?」

「時間……どうなの?」

「えっあっ、あ、ありますけど…?」

「……よかったぁ」

 

 ミツキはもう何が何だか。ノゾミの勢いに押されるように口が動いた。ミツキからOKの答えを貰ったノゾミはにっこりと笑い「じゃ、また後でねっ」とほわほわとした空気のまま席へ戻って行った。

 

「…………………え?」

 

 備考だが、ノゾミは緊張したり、興奮するとセリフを飛ばして話してしまう癖がある。彼女は彼女で目的があったのだが、その要件を飛ばした今のセリフは完全に。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ソラザキィィィィ………!!』

 

 

 クラスのマドンナに誘われたミツキへ、襲いかかる獣達の逆鱗を砕くには十分すぎる出来事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなクラスの空気など露知らず。昨日から考えていた事をミツキに言えたノゾミさんはご機嫌だった。

 

(やった、やったぁ!…誘えたっ!)

 

 そんな事を内心で叫びながら胸の前でちゃっちゃくガッツポーズを何回もする。何やら気合いが入っているノゾミに周りから好機の視線が飛んでくるが、緊張しながらミツキに要件を伝えた彼女は今自分がどんな事を起こしたのかわかっていない。

 

(こ、これで……やっと委員長とガンダムの話ができるよっ)

 

 そう。彼女の目的はミツキとガンダムトークをすることであった。

 

 つい昨日機動戦士ガンダム00のセカンドシーズンをリンと共に見終わったノゾミは、その感想を彼と共有したかったのだ。ちなみに最後の方は泣きっぱなしだったので、彼女の目はちょっと赤い。

 

 生真面目に話す内容のメモまで取ってきたノゾミはちらちらとそれを見る。彼女は、放課後が楽しみだなぁとひとりでふふっと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 3時間目、体育。

 

 

「っしゃああああ死ねやぁソラザキィ!!滅殺!」

「うわっ!?」

「…オルァァァァこれで御陀仏ゥっ!ってな!」

「ちょっ!」

「………ゴアアアアアアアア!!!」

「危なっ!?って最後人間じゃないのいなかった!?」

 

 男子たちの元気な声が体育館に響き渡る。

 

 体育は男女別で、さらに18人いる男子が半分に分かれてドッジボールをプレイしている。だが…

 

「ヒャーハッハッハッ!ソラザキィ、どうして避ける?お前は死んだんだぞ?駄目じゃないか!死んだやつがでてきちゃあ!」

 

 内野で逃げ回るミツキに、怨嗟の表情をした男子たちが豪速球を放つ。ミツキはそれを横っ飛びや転がりで何とか躱す。

 

 ミツキのすぐ横を通過してバウンドしたボールを反対側の男子が取り、すぐ様全力投球。それをしゃがんで避けると今度はまた反対側からボールが飛んでくる。

 

 それを必死になって避けながらミツキは男子たちに向けて叫んだ。

 

「ちょ、なんで俺ばっかりぃ!?」

「そんなこと無いよソラザキくん。たまたまだよ、たまたまァァ!!」

「あっぶねぇ!?」

 

 何を隠そう、朝の出来事が原因でクラスの男子全員を敵に回したのだ。敵チームの内野、外野問わずにボールが飛んで来てミツキは必死に避けるしかない。

 

 そんな中、ミツキを狙ったボールが他の男子にヒットした。転がったボールを味方チームのユウトが取る。

 

「…あ、よしっ、これでボールはうちのチームが…」

「あっ、手が滑っちった☆」

「は?」

 

 直後、ユウトはすっとぼけた顔で敵外野にへろへろのボールを放つ。それをナイスっ!とか言いながら取った外野は狙いをミツキにつけた。

 

「はぁ!?てめぇ!」

「んだよ、アシストしてやってんじゃねぇか。……弾幕回避の練習の」

「リアルでやっても意味ねェんだよ!?」

 

 スカした顔で言ってくるユウトに、青筋を立てたミツキ。彼を潜入してる味方のような目線を向けてくるクラスの男子達はおおよそ人とは思えない笑い声を上げながら、どこからそんな力が出るのかとツッコミたくなる勢いの球を放ってくる。

 

 これじゃ埒が明かないとミツキはユウトの方を見た。使えるものは使う。GPDでよく彼に教わっている通りにする為に、ミツキは声を張上げる。

 

「……っあ〜!……そういえばこの前、ユウトも他校のかわいい女の子と話してたっけなぁ〜!確か、亜楼学園の子だっけ?」

「ちょっ、おい待『あ"あ"あ"?』

 

 ユウトは引きつった顔で見てくるが、嘘は言ってない。別に2人きりでもなく、周りにミツキもコウスケも居たのだが、そんな事を言わなくても。

 

 

『────カミヤァ……お前もなのかァ!?』

「マジかよ」

 

 この獣達の矛先を変えるのには十分だった。

 

「亜楼学園っていえば、あの美少女レベルが高いって話のあの女子校かよ!」

「さようならぁ!カミヤぁぁ!!」

 

 当然、ボールがユウトにも飛び始める。

 

「おいっ、俺は関係ねぇだろっ!他校だぞっ?このクラスの女子じゃないんだからいいだろうが!」

「はっはっは。知ってるんだぞ俺たちは。……カミヤが密かに女子に人気だってなァ!……それ以上の理由が必要か!?そりゃあ!撃殺!」

「…それ俺が初耳なんだけどぉ!?」

 

 ユウトもミツキと並ぶほどのガンダム馬鹿なのでそこら辺は鈍いらしい。ちなみに初耳だったミツキもげんなりとした視線を向ける。

 

「…てめぇミツキ!…よくもやってくれたなっ!俺の肉壁にしてくれるわァ!」

「黙れぇ!元はと言えばユウトが焚き付けたんろうがっ!そんな外道、修正してやる!」

「俺はただボールを相手外野に渡しただけだろうが!俺がどうもしなくてもお前はこいつらに処刑されるだろ。俺のせいにすんじゃねぇよ!」

 

 そんな風にコート内で取っ組み合いを始めた2人にボールがぶち当たった。そのボールを拾い上げてドッジボールからキャッチボールへ種目を変更する2人を見て周りの男子たちが爆笑する。

 

 

 

 そんな喧騒を体育館のネット越しに眺めていたノゾミはぱちくりと瞬きをした。男子は元気だなぁと、自分があの騒ぎの主な原因だということには気付きもしない。そんな彼女の頬をニヤついたコトネがつんつん指で突っついた。

 

「ひゃ、な、なによ?」

「なによって、ノゾミこそなにソラザキくんのこと見てんのよ」

「べ、別に見てなんかないよっ」

 

 そんな事を言いつつも、すすっと視線が彼の方を向く。傍から見ると恋する乙女にしか見えようがないが、彼女の心の中ではまず何を話そうかを考えているところだった。

 

 ちょっと楽し見にしている様子でミツキを見る。そんな彼女を見てコトネとミキは横目を向けあって口を開いた。

 

「……こりゃ、本当になんかある?」

「…なんにもないってば。……ただ、ちょっとお話したいだけ…」

「そのお話の内容くらい、私たちに教えてくれてもいいんだけど〜?」

「ひ、ひみつ!」

 

 

 そんな会話をしているノゾミがミツキを見ていることに男子達が気付き、標的がまた移り変わるのはそ直後のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして放課後。

 

 ホームルームが終わったあと、ミツキは机に突っ伏して伸びていた。

 

「な、なんなんだよ今日は…」

 

 朝を境にクラスの男子が凶暴化(強化人間化)したせいで忘れていたが、この後ノゾミと会うのだ。朝に言われたセリフを思い出し、顔が熱くなる。

 

「……あ、アマツカさんが俺に話って……?」

 

 こっちの会話デッキの大半はガンダムの話だ。そんなデッキでクラスのマドンナと会話とか、無茶にも程がある。

 

 ミツキはユウトに助けを求めようと席を見たが、本人はもうとっくに帰ってしまった。ため息を吐いたミツキは、出席簿を職員室に返そうと立ち上がる。

 

「…あっ、委員長?」

「アマツカさんっ?」

 

 その瞬間、ガラリと扉が開きノゾミが顔を覗かせた。 ドキドキして上擦った声になるミツキにこてんと首を傾げている。

 

「出席簿を返そうと思って戻ってきたんだけど……」

「ああ、それなら俺が持ってくよ。……えと、今朝言ってた「わたしも行く」…え、あうん」

 

 ノゾミは何やら楽しげな表情でミツキが持った出席簿を奪い取る。そのまま教室を出るので、急いで荷物を持って後を追いかけた。

 

 

 

 

「「失礼しました」」

 

 職員室を出た2人は、ちらりとお互いを見る。立ち止まってるのも変なのでとりあえず昇降口へ歩きながら、このまま黙ったままだとアレだとミツキが口を開いた。

 

「……え、えっと、この後はどうするの?……なにか、話があるって言ってたけど…」

「…う、うん。……その、学校の中だとアレだし……ちょっと移動しない?」

「うん、いいけど…」

「えへへ、じゃあ、行こっか。ここから近いから」

 

 さらりとした栗色の髪を揺らしながら、ノゾミは振り向いて微笑む。その顔に少し目を奪われながら、ミツキはこくりと頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って、えっ……ここって…?」

「ん?委員長も来たことあるの?…ここ、コーヒーとケーキが美味しいんだよね〜」

 

 学園から少し歩いた場所にあるカフェに着いたミツキは、記憶に近しい看板に書かれた店名を見て目を瞬かせた。

 

 ノゾミはそんなミツキに首をかしげつつも、カフェ「砂漠の虎」に入る。昨日来たばっかりのミツキは夜との雰囲気の違いに驚いた。

 

「いらっしゃい」

 

 やはりというかなんというか、カウンター裏から出迎えたアンドウと目がバッチリ会う。アンドウはノゾミとミツキの格好をチラ見し、時計を見て時間帯を確認。なるほどと頷くと2人席に案内しようとする。その顔は「君も、案外やるな」と何かを察したような顔をしていた。

 

「アンドウさんっ、違いますからねっ?」

「何、別に否定しなくてもいいだろう?そういうのは若いうちにしか出来ないんだからな」

 

 そう含んだ笑いを浮かべながらミツキの背中を押す。ミツキは窓側の席をノゾミに譲り、ついでにと彼女の席の椅子を少し引いた。

 

「…あ、ありがと…」

「え、うん」

 

 今ノゾミは不意打ちでちょっとドキッとしたのだが、この鈍感ガンプラバカはそれに気が付かない。椅子を引いたのだって普通に椅子がそのままだと座り辛い位置にあったから、前を通った自分が引いておくかと思っただけだ。

 

 そういう小さい気遣いがノゾミへのポイントを着実に稼いでいたことに、彼はまだ気が付かない。

 

「…委員長、店長さんと知り合いだったの?」

「あー…うん、前に来た時にね。アマツカさんはここ来たことあるの」

「ううん、初めて。前にリンのお父さんがコーヒーが美味しいって言ってたのを思い出してね」

「へぇ〜」

 

 ミツキは直接見たことはないが、恐らくカシワギ・リンという子はガンダムが好きなのだろう。自分は隠してるつもりだとは思うが、この前モリタ模型店に父親のおつかいとしてきた時に改造中のAGE-1ルミナスにものすごい視線を感じた。その彼女の父親なのだから、恐らく夜の部の…。

 

 そこまで考えたところで、ノゾミが「何飲む?」と聞いてきたのでメニュー表を見る。子供舌なミツキはユウトの様にコーヒーを砂糖なしでは飲めないので、苦くなさそうなカフェラテのアイスを頼んだ。

 

「……もしかして、委員長って苦いの苦手?」

「うん、全体的に甘いものが好きなんだよね」

「ふふ、わたしも。委員長と同じのにしよっと」

 

 注文が終わったところで、ミツキは思っていたことを口に出す。

 

「ね、アマツカさん。ここ学校の外だし、委員長呼びは辞めてくれないかな?…なんか恥ずかしいし」

「あっ、そうだよね……そ、ソラザキくん?」

「うん。……そういえばちゃんと呼ばれるのってて初めてか」

「そうかも。すっかり委員長呼びが定着しちゃってたから」

「委員長じゃなくなっても呼ばれそうだね……。俺だけが一方的に恥ずかしいやつ」

「よ、読んじゃったわたしもちゃんと恥ずかしいから安心して?」

「恥ずかしい人が2人に増えるだけでしょそれ」

 

 ここまで会話を繋いだところで、ミツキは本題に入ることにした。届いたカフェラテを一口飲んで、そういえばと聞いてみる。

 

「そういえば、アマツカさん。お、俺に話したいことって……?」

「……ぁ、う、うん」

 

 「あ、う、えっとね」と言葉を濁しながら視線を右往左往させるノゾミ。そんな彼女の様子にミツキの心拍が跳ね上がる。

 

(ま、まさかっ、……そんなっ、アマツカさんがっ!?)

 

「えっと、そのね?……わ、わたし…っ」

 

 ミツキは、そう言いながらこっちを見たノゾミと目が合った。身長差と俯き気味な彼女の高低差のせいで上目遣いに見え、無意識の魅力のブーストに顔が熱くなる。

 

「う、うんっ」

「わたしね、君と──────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────ガンダムの話がしたいのっ!」

 

 

 

 

 

 

 

「……………ん?」

 

 自分でもなんだかわからない心の準備を終わらせて身構えたミツキに届いたのは、予想外すぎる言葉だった。

 

「がんだむ?」

「う、うんっ」

 

 完全に停止したミツキの頭上にloadingマークがくるくる回る。数秒してスタックから解放されたミツキは目をひん剥いた。

 

「……………………えっ、ガンダムの話っ?……アマツカさんがっ?」

 

 確かこの前AGE見たことあるって言ってたっけと未だ半分驚きで動いてない頭で考える。いきなりの事でミツキが反応出来ずにいると、ノゾミが事の顛末を話し始めた。

 

「…その、わたしこの前から、機動戦士ガンダム00っていうのをリンと見てて…」

「お、おおっ!ダブルオー!?マジでっ?」

「うんっ、昨日2部まで見終わったから、それの話をい…ソラザキくんとしてみたかったの……えと、ソラザキくんは00のことは…」

「もっちろんめっちゃ好きだよっ!」

 

 ノゾミは一瞬にして顔に光が灯り花が咲いたミツキにびっくりする。その顔は心から嬉しそうで、その嬉しさをはっとなって一旦引っ込めた彼は恐る恐る聞いてきた。

 

「……それで、どう…だった?その、全体的に……」

 

 00はまぁ、全ガンダム作品ある程度そうなのだが、結構ショッキングなシーンが多い。割と簡単に人が死ぬし、ストーリー的にも一転二転するような作品だ。そういうものをノゾミはどう思ったのか。

 

 そのミツキのと問いに、ノゾミは穏やかな表情で答える。

 

「うん、すっごい面白かった。……なんだろ、面白いって以外に言いたいことあるんだけど、感想がいい意味で出てこないというか、一言で言えないって言うか…」

「そうそうっ!」

 

 スイッチを入れた電球みたいにミツキの顔に再度光が灯り、ノゾミは思わず笑いそうになる。ミツキは腕を組んでうんうんと頷いて「そうだよなぁ」と呟いている。

 

「……わたし、見てて凄い泣いちゃって…。特に沙慈くんとルイスさんの」

「あ〜、わかるぅ〜。ファーストシーズンからすごい目立ってたもんね」

「うん、……わたし、沙慈くんがプロポーズするところでめちゃくちゃ泣いちゃった」

「……ぅー、だよねぇ」

 

 作中五本の指に入る鬱シーンだ。それにも渋い顔をしながらミツキが肯定する。

 

「…あ、あとは?」

「あとは………ぁ…」

「ごめん辛いシーン思い出させちゃったねっ!あ、すみませんカフェラテおかわりっ」

 

 カウンター奥から「了解だ」と声が聞こえてお礼を言っていると、落ち着いてきたのか表情に影を指しながらも話してくれる。

 

「……わたし、マイスターのなかだとアレルヤさんが好きなんだけど。2部でソーマさんのお義父さんに娘を下さいって頼んで、了承されて良かったね…!ってなってたのに…」

「……も、もしかして」

「……まさか、その後実の息子さんに……」

「あああああああ」

「あ、あと、兄貴分でずっと好きだったロックオンさんが……」

「わかるぅ……当時見てた時ずっと放心状態だったよ俺」

 

 夕方のカフェに、男女揃って頭を抱える謎なテーブルが出現した。

 

 どれもこれも、ミツキも絶望を味わったシーンだ。首が千切れんばかりに縦に振るミツキを見ていると、ノゾミは作品のことを話す口が止まらない。

 

「で、でもねっ!それ以上にいいシーンも沢山あって!」

「うんっ!信念を貫き通すマイスター達とか、見ててすごく応援したくなるよね」

「みんな、それぞれに辛い過去があって…、それを繰り返さないためにガンダムに乗って戦ってるところが凄く尊敬するなぁ」

 

 そこまで話したところで、ミツキは少し、話題の方向を変えてみることにする。

 

「…アマツカさんはお気に入りの機体、見つかった?」

「…うーん、やっぱりロックオンさんが乗ってた機体が好きかも。…えーっと、最初に乗ってた方の…」

「ああ、デュナメスの方?」

「うんっ。私、あんまりロボットのことはわからないから、どこがどう好き…って説明ができないんだけど…、長い銃がかっこいいなぁって」

「わかるっ!」

 

 ガンダムデュナメスの長大なスナイパーライフルは、コックピットの銃型の操縦桿と合わせてカッコイイとミツキは頷く。それを聞いたノゾミはその操縦桿とロックオンの最期が結びついて白くなりかけ、ミツキが慌てて話を変えた。

 

「…でも、アマツカさんがガンダム見るなんて……ちょっと驚いたや。お兄さんの影響?」

「ううん、そういう訳じゃないよ。…まぁ、私がガンダム見てたらお兄ちゃんがなんか涙流してたけど…」

「あはは、ちょっとお兄さんの気持ちわかるかも。…えっと、…それが違うなら、なんでなの?」

 

 ミツキの問いに、飲んでいたカフェラテのストローから口を離したノゾミは自分の肩にかかる栗色の髪の毛を指先で弄る。ちょっと言い難そうな、恥ずかしそうな髪でノゾミは目を逸らして言う。

 

「……だって、……………ソラザキくんと話したかったから…」

「……え」

 

 どこがいじけた様に言うノゾミに、ミツキは目を奪われた。心臓が高鳴っているミツキの事など知らないノゾミはちょっと照れた顔をする。

 

「……他にもいろいろあるのよ?ソラザキくんを驚かせたかったって言うのもあるし……君があんなに楽しそうに話すガンダムを知りたいって思ったのもそう」

「…お、俺の為…?」

 

 ミツキが呆然と呟いたところでノゾミはようやく自分が何を言っているのか気が付き、顔を赤くする。

 

「ち、ちがう!……ゃ、違くないけどぉ……い、色々あってっ!リンからも勧められたしっ、実際ガンプラ流行ってるしっ!」

「ち、違くないんだ…。って、だ、大丈夫。落ち着いてアマツカさん」

 

 しゅ〜っと頭から湯気が出ているノゾミを見てミツキはそんな彼女を嬉しく思った。

 

「………まぁ、とりあえず。アマツカさんはガンダムを好きになってくれた……って言うことでいいの?」

「……うん。…まだ00しか見てないから胸を張って言えないけど」

「そんなことないよ。ガンダム作品を見て面白いって思ったらそれは好きだってことなんだ。……だから」

 

 ミツキはノゾミの顔を真っ直ぐ見た。そして、今の彼にできる最高の感謝を伝える。

 

「─────ありがとう。ガンダムを好きになってくれて。……すっごい嬉しいよ」

「……ぁ」

 

 その彼の笑顔に、ノゾミは目を奪われた。心から嬉しそうな、楽しげな笑みを浮かべるミツキを見て、心臓が早鐘を打つ。

 

「…ぅ、うんっ……ど、どういたしまして?」

 

 ノゾミは思わず胸を抑えてミツキから目を逸らして謎に頭を下げた。ミツキもなんだから照れくさくなってお辞儀をする。

 

 お互いに頭を下げ合い、変な笑いを交換する2人。

 

 そんな中、カウンター裏からお盆を持ったアンドウが現れる。すっと2人の前に出されたのはショートケーキだ。

 

「え、アンドウさん?」

「俺からのサービスだ。君らのお陰でコーヒーが沢山売れたからな。定期的にやってくれると助かる」

 

 一体どういうことだろうか。「ごゆっくりどうぞ」とカウンター裏に戻るアンドウを尻目に、自覚していないミツキとノゾミはぱちくりと瞬きをしてお互いを見る。

 

「……えっと、どういうことなんだろ?俺たちが話すとコーヒーが売れるの?」

「…確かに周りのお客さん、コーヒー飲んでる人ばっかりだけど…」

 

 周りを見ると、座っている客全員がコーヒーのブラックを美味そうに飲んでいる。中には連れの人たちと「いいもん見たわ〜」「眼福眼福。青いねぇ」と謎に肌ツヤが良くなっている人が沢山いる。

 

 そんな店内の様子に首を傾げた2人は、気を取り直してケーキに視線を戻すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……うーん、結構話し込んじゃったね」

「うん。もうこんな時間」

 

 カフェからの帰り道。並んで歩いていた2人はそれぞれ時刻を確認して苦笑いする。

 

「…あー、まさかアマツカさんとガンダムトークをすることになるなんて」

「もーっ、今日何回目のセリフ?…私が見てると変なの?」

「いやいやそんなことは。実際嬉しいし、もっと見てもらって感想聞きたいくらいだよ」

「うん、私もソラザキくんのお話を聞いて他の作品にも興味出てきたし、リンにまた頼んでみようかな」

 

 そんなやり取りをするミツキとノゾミの距離感が、以前よりも柔らかくなっている。普段はクラス委員同士での会話が多かった所が、今回のお喋りで2人の仲も確実に深まっていた。

 

 ノゾミはちらりとミツキの方を見る。ノゾミにとって、今回の時間はとても楽しいものだった。仲がいい友人やリンとお喋りを長時間することはままあるが、今日のミツキとの時間で感じた「楽しい」はまた別の印象を覚える。

 

 

 

 

 

 気がつけば、ノゾミは動き出していた。

 

「……ん、どうしたの?」

「あ、……ぇ、えっと…」

 

 なんで今自分は彼の制服の袖を摘んだのか。振り向いて聞いてくるミツキにもじもじとする。でも口は淀みなく動いた。

 

「……ね、またこうしてお喋りしない?」

「…今日みたいに、ガンダムトークを?」

「それももちろんそうなんだけど……、他にもいろいろと話してみたくて……だめ?」

 

 今のノゾミが放った「…だめ?」で一体どれ程の男子が落とされるだろうか。当然ミツキにも普通に効き、顔が熱を持ちそうになる。

 

 色々とどういう話をするのかすごく気になったミツキだが、深く考える前に首が勝手に縦に動いた。

 

「う、うん。……俺でよければ…」

「…えへへ…じゃ、そういうことでっ。…私、こっちだから」

 

 なんだろう、すごい照れるとミツキは顔を手のひらでパンパン叩く。とても照れくさいし、なんだか落ち着かないが、その中でも1番ミツキに響いた言葉があった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガンダム、好きになってくれて……すげぇ嬉しいなぁ」

 

 

 以上が、2人で下校するところを目撃されたミツキが、クラスの男子達に襲いかかられる前の最期の言葉であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






 ソラザキ・ミツキ
鈍感。ガンダムバカ。
ノゾミに誘われた時にはドギマギしていた癖に、いざガンダムトークが始まると楽しくて緊張が抜け落ちてしまった。
1日中強化人間化した男子生徒の攻撃を捌き切り、ユウトに肩ポンをされながら「…成長したな」と言われたのでシャニングフィンガーをくらわせた。

 カミヤ・ユウト
鈍感。ガンダムバカ。
端正な容姿と顔の広さのせいで女子生徒から密かに人気があるらしい。ただ当の本人はGPDにしか興味がない。好きなタイプは「インパルスガンダムみたいな子」意味不明である。

 アマツカ・ノゾミ
騒ぎの元凶にして、それに全く気がついていないちょっと豪胆な子。
土日で機動戦士ガンダム00のセカンドシーズンをリンと共にを泣きながら観た。劇場版もあるのは知っているが、これはいつかミツキと見てみたいかも…なんて心の中で思っている。
次の日からミツキへの態度が砕けてきて、男子たちの矛先が彼に飛んでいくが、やっぱり気付いてない。



 次回は砂漠の虎に来ていた3人組のお話になります。お楽しみに。

戦闘描写、どうですか?

  • 文を読んで想像しやすい。
  • ガンプラの動きや戦法がかっこいい
  • ちょっとわかりにくかった……
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